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天上の不適合者~クソクラスと言われた式神使いで世界を歪めた者たちへ反逆する~  作者: 風間悟
第3章:幼馴染と不適合者

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エピローグ① 悪意と怨嗟

─── 霊子次元転移筐体《パラダイム・レイス・トランスファー・システム》管理室 ───



「っ!? はぁっ、はぁっ、はぁっ……。ぐ、ぐぅぅぅ……!?」


 霊子次元転移筐体《パラダイム・レイス・トランスファー・システム》。

 その中に入ることで神を専称する者たちは、自身の魂の一部を切り取り、他次元へと送り込むことが出来る。


 もちろん、事前準備などは必要となるが、カリスの提案により完成した画期的なシステムである。



 そして、分霊体を不適合者の手で殺されたカリスは、システムから開放され、力なくその場に倒れ込む。


 ジュ〜〜と、全身から蒸気が立ちこめ、火傷したようなとてつもない痛みと、疲労感。


 更に一部とはいえ、自身の魂が消失したことによる、気怠さなどが一度に襲いかかった。


 それでも──



「ふ、ふふ、ふふははははは! これが……、これが死か! なんたる体験、なんたる生の実感か!」


 カリスたちは永遠とも言える命を手にしている。

 それゆえに、怒りよりも殺されたことによる、生への喜びの方が勝っていた。


 だが次第に、喜びの感情から怒りの感情へと変わっていく。それは一重に、自身を殺しものたちへの、ある種の逆恨みであった。



「星の守護者に、星の巫女。更にはあの女! よくも俺をコケにしてくれたな!」


 巫女には俺の『消失』が無効化された。

 あの女には、顔を蹴られた。

 そして、守護者には殺された。



 ふつふつと、そんな怒りが湧いてくる。


「もう一度、あの世界に──『それは止めてもらいたいな』」



 システムに再接続しようとしたタイミングで、聞き慣れた声が聞こえてくる。


 そして、その方向へと顔を向けてみれば──



「アーク、それにエムルまで……」


「やっ、ずいぶんと楽しんできたようだね」

「へぇ〜、死ぬとそうなるんだ。魂が傷ついて、少し弱体化もしているね。これは興味深い」



「なんの用だ!」


 二人はまるで値踏みをするかの如く、俺を見る。

 それだけでも、嫌気がさす。



「俺は、もう一度、あの世界に……。今度こそ、守護者たちを……」

「だから、それを止めてほしいんだよね」


「どういうことだ、アーク!」

「君、少しはしゃぎ過ぎ。想定以上に力ある守護者《ガーディアン》を殺しちゃったからね。それ以外の被害も含めれば、防衛戦並みだ。これ以上は運営にも支障をきたす」


「この間のことを考えれば、十分間引きとしては機能したよ」



「それで俺が、はいそうですかと、納得すると思っているのか!」



 苦汁を飲まされた俺にとって、それは許せないことだ。ましてや俺は貴族の当主でもある。


 そんなことは断じて──




──カ(・)リ(・)ス(・)




「っ!?」


「僕を怒らせたいのか?」


 アークが発した言葉が、そのまま圧となりてカリスを押しつぶす。

 ただ押しつぶしているだけじゃない。

 直接魂に働きかけて、重圧をかけている。


 常人であれば、それだけで命を落としているだろう。



「カリス。君が提案した分霊体は確かに素晴らしい。僕たちもそのシステムで遊びたいと思うくらいにはね」


「な、なら……」


「でもね、それで余計な覚醒を促されるのも、困ったものなんだよ。分かる? 今回の件で星の守護者は、力を抑えた僕らを殺し得る力まで、手にしたんだ」



(奴が、俺たちを?)



 あり得ない。あれはただ、俺が消耗していたにすぎない。俺はまだ、万全の状態では負けていない!



「このまま行けば、いつの日か、彼(・)と(・)同(・)じ(・)領(・)域(・)に立つ可能性が高い」

「だが、守護者にはプロテクトが! 巫女もそうだろ!」


「分かってないね。一度施錠した封印であれば確かに強固だ。けどひとたび解かれれば、それを起点にどんどん緩んでしまう」



 アークの言いたいことは分かる。

 だがそれでも、俺たちが施したシステム上の封印が完全に解かれるとは、にわかには……。


 そう考えていると、呆れた表情を浮かべながらエムルが話し始める。



「あのさぁ、カリス。その封印を施すシステムだって、私が作ったんだよ?」

「エムル、貴様! 始めっから封印が解け易い設計にしていたのか!!」


「いやいや、それはない。私でも、そんな悪意あることはしないさ。通常なら絶対に解かれないプロテクトを掛けたつもりさ。とはいえ、それがシステム上許された範囲であったことは認めるよ」


「なにせ、モノリスが自動的に翻訳して、クラスの制約として封印措置をしているんだから」



「それと、私のシステムに介入している者がいる。守護者たちが突然現れたのも、それが原因だろうね。いやはや、どこの誰なんだろうね♪」


「…………」



 ギリッと、歯ぎしりしながら睨みつける。

 そんな言葉をおいそれと信じられるほど、俺は貴様を信頼していない。



「まっ、そういう訳だから、当面は変なことをしないでもらえると助かるね。君のおかげで面(・)白(・)い(・)遊(・)び(・)も思いついたし」


(ふざけるな!)


 グググと、奴の圧に耐えながら、立ち上がる。



「言ってるだろ。俺がそれを──」



──ポトンッ



「ぐ、ぐぁあああああああ!?」


 不意に、右腕が地面へと落ちる。

 何をされたかまったく分からない。


 だが気づけば、右腕が斬られていた。



「カリス。これは命(・)令(・)だ。まさかとは思うけど、6大貴族と言っても、たかが序列5位程度が、序列2位である僕に逆らうのかい?」


「ぐっ……」


 ジッとアークを見つめる。

 分かっている。まともに戦って勝てるほど、こいつは甘くない。


 腸が煮えくり返る思いではあるが、貴族の世界は序列が全て。



「…………分かった」


 そう答えれば、フッと、身体にのしかかっていた圧が消える。



「いやぁ、分かってくれて助かるよ。じきに終(・)焉(・)を(・)迎(・)え(・)る(・)とはいえ、あの地球はまだまだ楽しめるんだから。それまでは楽しまないと勿体ない」


 ケロリと、アークは普段通りの口調へと戻る。

 それが余計に俺の神経を逆撫でしてくる。



「さっ、これからが楽しみだ。分霊体を使って、色々な世界でこれまで出来なかった実験をしないとね」


「やれやれ……、その調整をするのは私なんだがね、アーク」

「いいじゃないか。折角面白い玩具が増えたんだからさ! まずは適当な守護者を使って、本当に覚醒するのか、確かめてみないと」


「なるほど、それは少し興味深い」

「でしょ?」



 『あははは』と笑いながら二人は去っていく。

 そして俺は、斬られた右腕を再生させ、そのまま強く床を殴る。



「クソがぁぁぁぁああああ!!」


 このままでは終わらせない。

 いつの日か、俺が序列1位へと成り上がってみせる。


 そしてヴァーミリオン家当主として、必ず貴様らを殺す。



「精霊使いぃぃぃいい!!」



 カリスは吠える。

 その怨嗟が、いつの日か奴らの喉元へと喰らいつけると信じて。

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