天上 VS 不適合者⑤ 天上 VS 不適合者 Ⅳ
「ここは……」
目覚めれば、光の空間に立っていた。
(俺は、死んだのか?)
永久を助けたことで、俺の右上半身は消し飛んだ。
であれば、ここは死後の世界なのだろうか。
困惑しながらも辺りを見渡せば、奥に一人、見知らぬ誰かが立っていた。
(人? いや、死後の世界なら、本物の神か?)
そんなことを考えながら、その者の所へと歩き出せば、俺に気づいたのか、振り向く。
"驚いた。まさか巫女に続き、君までここに来られるだなんて"
「っ!?」
(なんだ、直接脳内に!?)
言葉を発していないのに、意味だけが頭に浮かぶ。あまりにも不可思議な現象だ。
そしてふと、これに似た事象があったという話を思い出す。
「お前、咲とも会ったことがあるな?」
"正解"
(やはり。ならこいつが、咲と話したという……)
警戒を強めようとするが、不思議と目の前にいる者への敵対心が生まれてこない。
むしろ、懐かしささえ……。
"警戒しなくていい"
"僕は敵じゃない"
「……俺は、死んだのか?」
その問いに、その者は首を振る。
"ここはいわば、生と死の狭間みたいなものだ。そして君はまだ死んでない。君の大切な家族が、必死にその命を繋ぎ止めているからね"
「式神たちが?」
その問いに、そいつはコクリと頷く。
「だったら、俺を元の場所に戻してくれ! 咲たちが──」
ブゥンッと、目の前に何かが映し出される。
そこには咲が、今にも殺されそうな場面だった。
「咲!!」
"ここでは、時間の流れを自在に変えられてね"
"君のために、時の流れを限りなく遅くした"
"だから、君が目覚めてからでも十分に間に合う"
(こいつ、何者だ……)
得体のしれない存在に警戒を強める。
そしてそいつは、構わず言葉を続けた。
"全ての扉を開けないで来られたのは、巫女との強い絆があるからかな?"
"……いや、それもあるけど、あの子たちが招いたというべきか"
「何を、言っている?」
"うん、そうだね。僕には君たちの気持ちが痛いほどに分かるよ。……辛いことだろうけど、いずれ大切な■■とお別れする日が来ると思う"
"だけどそれは、今ではない"
「待て! 今、何を言った!? 誰と別れるって言うんだ!」
"ごめんね。今はまだ話せない"
「ふざけるな。そんな思わせぶりなことを言って! お前は一体、誰──」
"話せない代わりに、少しだけ手助けをしよう"
そう言うと、目の前にウィンドウが現れる。
そこには──
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星の守護者から
スキルポイント150を授与されました
自動的にポイントを『纏』に割り振りました
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スキル:「纏」
魔力:1000
使用制限:1日に20分間使用可能
解除と再発動はいつでも可能
威力:絶大
ステータス:400%上昇
追加効果:状態異常半減
制約:スキルポイントを消費することで、本来の性能を取り戻す(SP:250 / 400)
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「なっ!? それに、星の……、守護者?」
そこには、カリスやイーリスが言っていた、『星の守護者』という単語が表示されていた。
更には『纏』が類を見ないほどに強化され、驚愕する。
"式神使いにかけられたプロテクトの解除は無理だけど、スキルの強化くらいなら手伝えるからね"
「お前は、何者なんだ……」
"いずれ分かるよ"
"それと特別に、欠損した身体は治してあげるから、安心して戻るといいよ"
「っ!?」
不意に視界が暗くなっていく。
「ま、待て! 一方的に言うだけ言って……」
"次は巫女と一緒に、正規の手順を踏んで来てくれると嬉しいかな"
"何、裂け目を突破できれば、いずれ会える"
"そして新たに覚醒せし、星の守護者よ"
"願わくば、神──天上を比定せし不適合者であってほしい"
「っ!?」
──キュルル!
──!!!
「コノエ、翡翠……」
意識が戻ると、現実へと戻っていた。
そして右上半身を見てみれば、綺麗に復元されていた。
(分からないことだらけだが……)
やらなければならないことがある。
このままだと、咲が……。
「コノエ、やるぞ!」
──キュルゥ!!
コノエの身体がエネルギー体となり、俺の中へと入っていく。
「翡翠、ありがとな」
──♪♪♪
感謝を伝え、式神使い最強の奥義の名を唱えた。
纏:コノエ────絶焔
***
「すぐ終わらせる。皆で、生きて帰ろう」
「「うん!」」
咲たちにそう伝え、空を飛ぶカリスを再度睨みつける。
(右腕が復元されてる。再生か?)
俺も似たような体験をしてきたばっかりだが、天上というのはなんでもありのようだな。
回復スキルならまだしも、再生スキル持ちなんて、この世界で果たして何人いることやら……。
(まぁ、どうでもいいか)
『纏』が強化されたことで、今は負ける気がしない。
それに──
「纏:万雷」
──パリッ
コノエから万雷に対象を変更し、雷の如く、カリスがいる上空へと移動する。
「速っ!?」
「尖爪雷牙!!」
そのまま刀に万雷の力を乗せ、破壊の一撃を浴びさせる。カリスといえど、反応しきれず無防備に俺の攻撃を浴びることになった。
「ぐぎゃぁぁああああ!?」
全身を雷の刃で焼かれながらも、更に上空へとカリスは逃げる。
「いいのか? 時間切れだぞ」
「な、何? っ!?」
遥か上空から、炎を纏いし槍が飛来する。
更には、四方八方から魔法攻撃が迫り来る。
そう、救援の到着だ。
「このっ、雑魚が!!」
右腕で暴風を発生させ、全てを吹き飛ばす。
が、それで安心するなよ?
「纏:キリカ──疾風神斬の舞!!」
刀を振り上げれば、無数の風刃が雪崩のように迫り来る。
「っ、忌まわしき星の守護者め!」
暴風を纏い、そのままカリスは無数の風刃へと突っ込み、力任せに突破してくる。
「貴様だけは、ここで!」
「纏:クロウ──幻想と現実の混沌」
「なっ!?」
スゥゥと、俺の存在をゼロにする。
そして俺を認識出来なくなったカリスはそのまま、空振りして、地面へと着地する。
「奴め、どこに────ぐぼぉあっ!?」
奴の前に姿を現し、そのまま何度も顔や腹を殴ったり蹴りを喰らわせる。
もう、反撃の暇は与えない。
そのまま、渾身の左ストレートを浴びせ、体勢が崩れたタイミングで、更に追い打ちをかける。
「纏:プラン──エンドレスワルツ」
地面から無数のツルを召喚。そのまま翼をツルで拘束し、今度は刀でカリスを追い詰めていきながら、ツルによる挟撃も合わせる。
「もう空にも飛ばさせない」
「小賢しい手を!」
ガキンガキンと、何度も刀と暴風を纏ったカリスの腕が交わる。
その間も、俺を邪魔しないよう、様々な魔法攻撃や弓や銃といった遠距離攻撃が飛来する。
更には俺たちのツルによる攻撃も合わさり、カリスはじわじわと、対処が間に合わなくなってくる。
それを物語るかのように、カリスの身体には無数の傷が出来ていた。
「ぐぅぅぅ」
「纏:コノエ」
「っ!? ぎゃあああああ!!」
一瞬の隙をつく。
プランからコノエに入れ替え、炎を纏わせた刀で残りの右腕を斬り落とした。
(なぜだ、なぜこうも俺が……)
絶望させるために来た。
俺たちの娯楽のために、そして安寧のために!
初めこそ俺が望んだ結果であったというのに!
「終わりだ、カリス!!」
「っ」
コノエの炎を纏った刀を振り下ろそうとした瞬間、ボコボコと、カリスは左腕を再生させ、『消失』を発動させる。
「貴様が終わりだ!」
「纏:万雷」
「小癪なぁぁ!」
万雷にスイッチし、消失が到達するよりも速く、カリスの背後へと回る。
「尖爪雷牙!!」
「ぐぎぁぁぁああっ!!!!」
6枚のうち4枚の翼を、圧倒的な雷の力によって、消し炭へと変える。
「ぐぅぅぅ……、うぅぅぁぁぁあああ!!」
激しい痛みに耐えつつ、カリスは身体中から魔力を放出する。それで一瞬だけバランスを崩した隙に、カリスは残りの翼で空へと飛び上がる。
そうして再度右腕を再生させれば、残りの魔力を全て使おうとしているのか、膨大な魔力が右腕へと集中していく。
「はぁ、はぁ……、はぁ……。憎き星の守護者め。俺の、最大魔法で貴様を──『あら、グッドタイミングだったわね』」
「貴様はっ!?」
「ソフィアさん?」
『ゼロ』ソフィア、現着。
トンッと、ソフィアはカリスの頭上に降り立つ。
「でも残念。もう終わりそうね」
「貴様、貴族である俺の頭蓋に乗るとは、なんたる不遜な!」
「知らないわ。あなたたち天上にはお似合いね。ところで……、その腕、邪魔ね」
「…………は?」
スパッと、カリスの右腕、更には残りの翼が一瞬のうちに斬り落とされた。
(何……が……)
「いい顔ね。ここに来るまでに聞いたのだと、絶望が好きらしいわね。……どう? 見下してた者に、いいようにしてやられるのは」
──絶望したかしら?
そのままソフィアさんは、カリスの顔を蹴り飛ばし、地面へと突き落とす。
「美味しいところは返してあげるわね。きちんと終わらせなさい、和人君。……まぁ、私が来なくても結果は変わらなかったでしょうけど」
「でも私も、クソったれな天上に一太刀浴びさせたかったから、許してね」
「ありがとうございます、ソフィアさん」
「纏:コノエ!」
コノエをこの身に宿し、カリスの元へと走り出す。
「こ、このっ……」
「カリス! 死んでいった仲間の無念。晴らさせてもらう!!」
カリスは残った左腕に魔力を集中させる。
そして『消失』にて迎え撃とうと、動き出す。
「この……、精霊使いがぁぁぁぁぁぁあああ!!」
「カリスゥゥゥ!!」
『消失』には許容量が存在する。
許容量を超える攻撃を受けた時、『消失』は無力と化す。
そして滅却せし終わりの焔が、カリスの『消失』の力を上回り、悉くを滅却する。
(俺の、『消失』が……)
絶焔!!
空を裂き、音すら焼き尽くすその紅き刃が、カリスの身体を斜めから斬り落とす。
「俺は不適合者……、式神使いだ」
斬られたカリスは声をあげることもなく、そしてその身体は、灰すら残らず完全滅却された。




