↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天上の不適合者~クソクラスと言われた式神使いで世界を歪めた者たちへ反逆する~  作者: 風間悟
第3章:幼馴染と不適合者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/73

エピローグ② 死闘の果てと出発

(………………なんだか、両(・)手(・)が(・)温(・)か(・)い(・)。俺は今、どこにいる?)


 意識が覚醒し、ゆっくりと目を開ける。



(知らない天井だ)



 まさか、このセリフを言う日が来るとは思いもしなかった。


 天井の色からして、どこかの病室だろうか。



(それにしても、腕(・)が(・)動(・)か(・)な(・)い(・)な)


 腕を動かそうとするが、一向に動かない。

 正確には、何かが乗っかっている感じだ。


 何なのかと、左右を見てみれば──



「なるほど、これは動けないわけだ」



 スヤスヤと気持ちよさそうに、俺の手を握りながら寝ている藤宮さんと永久がいた。



(無事で良かった……)



 そんな二人の寝顔を見て安堵する。

 さて、あれからどれくらい時間が経ったのだろうか。


 そして、この状態からどうしようかと思っていると、ボフンッと、コノエが俺の胸の上に現れる。



──キュル!



「コノエ、おはよう」


──キュルル♪



 状況を分かっているのか、コノエは二人を起こさないよう、小さな声で相槌をする。



「はぁ……、生きてるんだな……」


 時間にして30分にも満たない激闘だった。

 その僅かな時間の中で、あれほどの激闘を繰り広げたと思うと、よくもまぁ生き残れたなと感心する。


 そういえば、倉瀬たちは大丈夫なのだろうか。



「んんぅ……」

「うにゃ……」


「ん?」



 ゆっくりと二人が目を覚ます。

 そしてお互いにその存在を視界に収める。



「「…………」」

「えぇ〜と、おはよう?」


「和人!!」

「かずくん!!」


「ぐはぁっ!?」


 ガバッと、二人から抱きしめられる。

 それも首を圧迫してくるもんだから、本当にキツイ。



「ぎっ、ギブッ……、そ、それは、キツイ」

「「あっ」」


 必死に伝えれば、二人はスッと、俺から離れる。



「はぁ、死ぬかと思った……」

「あ、あははは……、ごめんね、かずくん。だって急に倒れたんだもん」

「でもよかった。よ(・)う(・)や(・)く(・)目が覚めたんだね、和人」



「ったく……。ん、ようやく? 俺、どれくらい寝てたんだ?」



***



「丸3日、俺は寝てたのか……」

「うん。先生が言うには、身体に負荷をかけすぎたのと……」


「右腕の欠損状態から復元したことによる、反動じゃないのかって。ねぇ、どうやって復元したの? 再生持ちだなんて聞いてないよ?」


「それか……」



 目を覚ましてから、ひとまず二人からある程度の状況を教えてもらった。



 倉瀬たちは五体満足で無事だということ。


 カリスの手により、4等星以上の守護者《ガーディアン》が200名以上死亡したという事実。


 俺たちの学校に籍を置いていた生徒で、カリスに挑んだ者たちのうち、50名以上が死亡。更に腕や足を欠損した者は、その倍はいるということだった。


 これが全て、たった一人の者が行ったと考えると恐ろしくなる。


 イーリスからは、分霊体でも『ゼロ』と同格と聞かされていたが、天上という俺たちの敵が如何に強大であるかを思い知らされた。



 そして永久からは、欠損から復帰出来た理由を問われ、どう説明するべきかと悩む。


(まぁ、俺たちはイーリスという存在と話した訳だし、話しても問題はないか……)



「話してもいいが、あまり言いふらすなよ」

「どういうこと、かずくん?」


(かず……くん?)



 不意に藤宮さんから、下の名前、それも愛称で呼ばれてしまい、ピクンと反応する。


(え? いつの間に?)



「か〜ず〜と〜?」

「っ! わ、分かった、話すから……」


 永久の目からハイライトが消える。背筋が凍るほどに恐ろしかったので、急いで二人に何があったのかを話すことにした。



***



「まっ、こんなところだ」

「かずくんも、私と同じ所に?」

「…………ま、まぁ、そうなるな」


「光の空間と、そこにいる変な奴、ねぇ。……和人、頭おかしくなった?」

「なるか! ……俺だって信じ難い。だが『纏』が強化され、右腕で復元されたのは、そいつのおかげだ」


「それに、あいつは色々と知っているようだった」



 こっちの状況に、俺や藤宮さんの存在。

 星の守護者に、星の巫女。

 そして──



(裂け目の突破……)




──何、裂(・)け(・)目(・)を(・)突(・)破(・)できれば、いずれ会える




 あいつはあの時、確かにそう言った。

 これまで誰一人として、突破はおろか、中がどうなっているのか、確認すら出来ていないというのに。


 だが、突破という言葉を使ったということは、何らかの手立てがあるということだ。



「どうも、俺と藤宮さんには、不適合者というだけじゃなく、特殊な役割があるっぽいんだよなぁ」


「藤宮、さん?」

「っ!?」


 ビクンッと、身体が震える。

 視線だけを藤宮さんへと向ければ、永久と同様、目からハイライトが消えていた。



「ど、どうした?」

「ねぇかずくん、私のこと──『あら、ちゃんと目を覚ましたようね』」



 藤宮さんが何かを言おうとしたタイミングで、ガラガラと病室のドアが開き、ソフィアさんと笹倉さんが中へと入ってきた。



「ソフィアさん、それに笹倉さんも」


「ソフィアが目を覚ますと言っていたからね。話は倉(・)瀬(・)2(・)等(・)星(・)や藤(・)宮(・)1(・)等(・)星(・)たちから聞いてはいたが、君からも色々と話を聞きたくてね」



「なるほど……。んん? 藤宮さんが1等星? それに倉瀬も2等星?」


「君が知らないのも無理はない。分霊体とはいえ、天上を倒したんだ。それくらいはしないと示しがつかないだろ? 君も既に1(・)等(・)星(・)として再登録されている」



「んなっ!?」



 まさかすぎる言葉を笹倉さんから聞き、思考が停止する。


 ついこの間、2等星になったばかりだというのに、もう限界点の1等星に上がってしまうとは、これいかに……。



「ふふっ、これが日本文化でかの有名な、『成り上がり物』というものなのね。初めて見たわ!」


「ソフィア、それは創作の話だ。……と、言いたいのだが、僅か数ヶ月で10等星から1等星へと上り詰めた者はいない。それも、不適合者ともなれば尚更」


「────」

「す、凄いよね。私たちこの間まで10等星だったのに……」


「和人が私と同じ等級ってのは、不服だけどね〜」



 開いた口がふさがらないとはまさにこのこと。


 まるで浦島太郎になった気分を味わいながら、笹倉さんたちにも、さっき藤宮さんたちに話した内容を伝えることにした。



***



「ふむ、裂け目を突破……。確かにそう言ったんだね?」

「はい。間違いなく、そう言いました。それに、俺のことを『星の守護者』とも……」


「聞いたことのない名前ね。咲ちゃんみたいに、クラス名という訳でもないのでしょ?」


「そ、そうですね。それに、私には『星の子』とも言ってました」


「意味わかんないね、それ。というかあいつも和人のことを『星の守護者』って呼んでたよね」

「ふむ……、天上としても神薙1等星たちの存在はイレギュラーというわけだろうか」



 きっと、全員の頭の上にクエスチョンマークが出ていることだろう。


 それほどまでによく分からないんだ。


 だけど、や(・)る(・)べ(・)き(・)こ(・)と(・)だけは明確だ。



「気になることは多いですが、裂け目をどうにかできる可能性があると分かっただけ、儲けものだと思います」


「そうね。これまで何一つとして手がかりがなかったことを踏まえれば、かなり前進したと考える方が得策ね。それに、天上が神気取りのた(・)だ(・)の(・)人(・)間(・)だというのも分かったのだから」



 そう、あいつらは人間だった。

 赤い血を流し、感情があり、そして醜い心を持っている。まさしく人間のソレだ。



「ソフィアの言う通りだな。これまで見えてこなかったものが、ようやく鮮明に見え始めてきたようだ」



「まさに、天上に反逆せし、不適合者だね」



「だいそれた意味ですね。俺はただの、不適合者で良いです」



「はははは! 兎も角、君たちが無事で本当によかった」



 軽く笑ったかと思えば、スッとどこか重苦しい表情を浮かべる。


 まるで、大人としての責任を背負ったような顔つきで、そのまま笹倉さんは言葉を続ける。



「……さっきは等級を上げないと示しがつかないと言ったが、本当は別の理由がある」


「先の天上との戦い……いや、蹂躙により、有望な守護者《ガーディアン》が多数死亡した。それに、我々が守るべき国民だってそうだ」


「行方不明者も含めれば、その数は7000人は下らないし、今後更に増える見込みだ」


「国民は今、否応なく不安に押しつぶされようとしている。だからこそ、少しでも安心させる必要があった」



「だから、俺たちを……」

「汚い大人で申し訳ない。君らを体の良いプロパガンダとして利用したのだから……」



 笹倉さんは、スッと頭を下げる。


「すまなかった」



「……俺は気にしてないですよ。いずれは1等星になる予定だったんですから」

「そうですよ。私たちは守護者《ガーディアン》。戦えない人たちが安心して過ごせるよう、戦ってるんですから」


「まぁ、名前が売れればそれだけ英雄に近づくしね〜。むしろ私にとってはメリットしかないよ」



「ね? この子たちなら大丈夫って言ったでしょ?」

「……そのようだな」



 苦笑いを浮かべながら、笹倉さんは元の表情へと戻る。なので今度は俺の方から気になったことを尋ねることにした。



「ところで、ソフィアさんはどうしてここに?」

「元々別件で来日するつもりだったの。それで向かってる最中に、天上が現れたと笹倉さんから聞いて、急(・)い(・)で(・)飛(・)ん(・)で(・)来(・)た(・)の(・)」


「まぁ途中からは案内人《ポーター》に運んでもらったけどね」



「「「飛んできた?」」」



 三人で声を揃える。

 向かってる最中と言っていたから、飛行機に乗っていたのは、なんとなく分かる。


 だが、その後の飛んで来たとは?



「ふふっ、文字通りよ。魔力を足に収束させて、一気に放出する。それを断続的に続けることで、一時的に飛行機を超える速度での滑空が可能なの」


「これを応用すれば、水の上を滑りながら移動することも可能ね♪」



「「「────」」」



 改めて、『ゼロ』と呼ばれる人たちの規格外に脱帽する。

 普通、そんな方法思いつかないだろうに……。



「やっぱり『ゼロ』って、頭1つおかしいよね」

「ちょっと、分かるかも……」


「さてと、私たちはそろそろ行くわね」

「別件というやつですか?」


「そうね。まぁ、それはもう少し落ち着いてからになるだろうけどね」



「そうそう和人君。貴方はついに入(・)り(・)口(・)に立った。これからは、より期待しているわ」



 それを伝えて、ソフィアさんは病室を後にする。

 そして笹倉さんも、『頑張ってくれ』と激を入れ、同様に病室を出ていった。




「はぁぁ、疲れたぁ〜」

「そ、そうだね」

「永久でも緊張するんだな」


「そりゃね。それより、私たちは退院の手続きしてくるから、和人は帰る準備しててよね」

「へいへい」



「すぐに戻ってくるからね!」


 そう言って二人も病室を後にする。

 なんというか、仲良くなったのか?



(まぁ、今はいいや……)


 生きて帰ってこれた。

 それだけで、今はいい。


 それから俺はすぐに退院となり、三人で家へと帰っていった。


 永久の依頼も終わった以上、俺たちの不思議な共同生活も終わりを迎えようとしていた。



***



「本当に帰るんだな。お前のことだから残るとか言いかねないのに」


 翌日の朝。

 永久はいきなり、『今日帰るね』と言い出したので、俺たちはタクシーが来るまでの時間で、別れの挨拶をしていた。



「まぁね。和人に会いに来たのもそうだけど、元々こっちに来たのは依頼目的だったわけだしね。終われば地元に戻るよ」


「そっか。少し、寂しくなるね」

「こっちに来てもいいんだよ?」


「悪いけど、断る。や(・)る(・)こ(・)と(・)が出来たからな」

「やること?」


「あぁ」


 昨日の夜、永久が寝ている時に藤宮さんと二人で話して決めたことがある。それを永久に伝えた。



「……海外に行こうと思うんだ。俺(・)た(・)ち(・)以(・)外(・)の(・)不(・)適(・)合(・)者(・)。その人たちに会おうと思う」


 恐らく不適合者と呼ばれるクラスには、なんらかの役割が存在している。それを確かめるためにも、俺はその人たちに会わないといけない。


 そんな気がしてならなかった。


 それにあいつは、今度は二人で来いと言っていた。

 俺たちはまだ弱い。そのためにも、あいつに何としても会わなければならない。



「ふぅ〜ん。それも面白そうだね」

「来るか?」

「ううん。私はいいや」

「珍しいな。お前のことだから、進んで来ると思ったんだが」



「まぁね。でも今回のことで、まだまだ力不足なんだって分かったから、私は私で鍛えなおすよ」


「だから、次会う時にはもっと強くなってるからね!」



 ある意味、永久らしい回答だった。

 であれば、俺が返す言葉は決まってる。



「安心しろ。俺も、その時にはもっと強くなってやる。今度こそ、お前に勝つためにな」

「あははは、弱っちい和人には無理だよ。でもまぁ、期待しておくね♪」


「あぁ」



 それからも三人で話していれば、タクシーがやってきた。連絡は取り合えるとはいえ、当面永久とは会えないだろう。


 次の防衛戦開催日も、未だに分からないらしいからな。



「永久さん、またね」

「気をつけろよな、永久」

「うん、咲もじゃあね! それと、和人」


「ん?」


 にっこりと笑みを浮かべながら、永久は俺に近づく。


 そして、そのまま──



──チュッ



「っ!?!?」

「へひゃ!?」



「へへへ、世界で1番愛してるよ、和人♪ 咲には渡さないんだから! じゃあね〜〜」



「────」

「永久さん!!」



 呆然としている中、永久はタクシーに乗り、帰っていく。


 そして残されたのは、俺と──



「かずくん?」

「き、気にするな!」

「む・り♪」



(あいつは、本当に……)



 ぐぬぬと拳を握りしめていれば、プンプンと怒っていた藤宮さんが、『ところで……』と、あることを尋ねてくる。

 


「いつになったら、呼んでくれるの?」

「……呼ぶって、何を?」

「……咲(・)って、カリスと戦ってた時に、呼んでたよね?」


「え? あっ、いや、あれは……」


 そう言われて、思い返してみれば、確かに呼んでいた気がする。



(いや待て、そういえば、防衛戦でも……)



 無意識だったのだろう。

 それなりに、『咲』と、呼んでいたことに気づく。


「もう、呼んでくれないの?」

「え? あぁ〜と、それは……」

「私はか(・)ず(・)く(・)ん(・)って呼んでるのに……」


「────」


 そんな風に、上目遣いをされては、呼ばないという選択肢はなかった。



「え、えぇ〜と……、さ、咲(・)」

「うん!これからもずっとよろしくね、かずくん♪」

「……あぁ、よろしく」


 なんというか、改めて名前で呼ぶというのは、むず痒い感じだ。でも、悪くはないな。



「帰るか」

「うん!」



 そうして俺たちは、家へと帰る。

 永久との再会から始まった不思議な共同生活は終わりを迎えた。


 次にやるべきことは決まった。

 であればまっすぐ突き進もう。


 そう考えながら咲と二人で、日常へと帰っていった。




***



(和人、強くなったなぁ……)


 タクシーで岩手へと戻りながら考える。

 ステータスでは依然として私の方が優位だ。


 だけど、総合的にみれば、今の和人と私に、そこまでの差はないかもしれない。


 特に、あの『纏』というスキル。

 あれが私との実力差を埋めている。

 このままでは本当に……。



「天使……ねぇ」



 あのカリスとかいう天上。

 分霊体という話だったけど、それにしては強すぎた。一体あれだけの力、どのようにして手にしたのだろうか。


 もし私にも、あ(・)の(・)力(・)を(・)手(・)に(・)出(・)来(・)た(・)ら(・)、英雄への道がより鮮明となると思う。



(まっ、ないものねだりしないで、レベル上げ頑張るしかないかな)



「あっ、そういえば、いつレアダンジョンに行くか決めるの忘れてた。……まぁいいや。それは和人たちが戻ってきてから話し合お♪」


(和人……、私の愛しい愛しい未来の旦那様)



「私が英雄になったら、絶対に結婚しようね♪」




第3章:完

本作品を読んでいただきありがとうございます!


さて、既にお気づきかと思われますが、本作品はここまでで完結とさせてください


というのも、フォローや、視聴数からみてもこれ以上の変化は見込めないような気がして、果たしてこれ以上続ける意味があるのか、怪しくなってきたからです


既に、今の倍以上の話は作ってあるのですが、キリが良いのがここだったので、この作品はここまでにしようかなと思いました


力足らずで申し訳ありません……


別ジャンルですが、執筆中のものがありますので、いずれそちらを投稿して復活しようかなと思いますので、気長にお待ちください



それではまた!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。