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天上の不適合者~クソクラスと言われた式神使いで世界を歪めた者たちへ反逆する~  作者: 風間悟
第3章:幼馴染と不適合者

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天上 VS 不適合者① イーリス

 なぜ青森にいたはずの和人がこの場にいるのか。


 それはカリスが地球へと現界を果たす30分ほど前まで遡る。




─── カリス出現 30分前 ───

─── Sランクダンジョン 残響の間 ───



「Fuaaaaaaaa!!」


「このままたたみかけるぞ、和人!」

「あぁ! 拓真!」

「分かってる!」


 敵ボスの周囲には既に拓真のマーカーが多数設置されている。それらを一斉に起動し、大魔法を発動する。



「終わりの絶氷(ニヴルヘイム)!!」



 パキンッと、ボスが氷晶へと封じられる。

 喰らった身としては、恐ろしい魔法だ。


 それを見た俺と倉瀬、比嘉さんが一斉に走り出し、それぞれの最大火力を乗せる。


 相手はSランクボス。第Ⅷ階位の魔法といえど仕留めきるには火力が足りないからだ。



 そして後方では、森山さんと山口さんが、藤宮さんと永久にバフをかける。



「いいよ!」

「やっちまえ!」



「紫滅雷吼炮《ジガジルグ・ディザスター》!!」

「輝きしは星の剣(エトワール)!!」



「っ!?!?!?」



 二人が放った、凄まじい破壊の一撃により、敵ボスは消失した。




「はぁ、はぁ、はぁ……。やっと終わったか」

「どんぐらい戦ってたよ」

「疲れたぁぁ」


 ペタリとその場で座りながら、歓喜よりも疲労感によるぼやきが出る。



「1時間くらい? ここのボス、特別硬かったね〜」

「こんなのを、1等星たちは討伐してんのかよ。まだまだだな……」



 平川ダンジョンへ入った俺たちは、そのままイリーガルダンジョンへと突入した。


 道中は魔物は出ず、罠《トラップ》だけだったのだが、ボスが中々に硬い敵で、長期戦を強いられることになった。


 それでも永久によれば、まだ優しい方だったらしく、AランクからSランクによる初見殺しこそが、このダンジョンの醍醐味と言っていた。



「これで、永久の依頼は達成だな」

「そうだね〜。いやぁ、中々に楽しかったよ。ねぇねぇ、この際だからさ、岩手の方に来ない? そうすればずっと一緒だよ?」


「断る」

「ぶ〜〜。いいじゃんか〜〜」

「永久さん。その時は私も行くからね?」

「咲は来なくていいよ!」

「はぁ……」


 倉瀬たちの方を見てみれば、そんな俺たちのやり取りを他人事のように笑っていた。


 こっちは他人事ではないというのに……。



「ははは! 和人お前、そういう星の下に生まれたのか?」

「煩い」



「まぁいいや。それより、和人たちは初のSランクダンジョンなんだからさ、報酬見なよ。きっと驚くよ」


「おっと、そうだったな」



 ダンジョン攻略の醍醐味である、報酬確認。


 それを皆で確認しようとした時──




"神薙和人《かんなぎかずと》"

"今すぐ、貴方たちの学び舎へと戻りなさい"




「………………は?」


「神薙君? どうした……の…………」


 藤宮さんも、俺のウィンドウを見て固まる。

 ぞろぞろと俺の元へと皆が来れば、藤宮さんと同様に固まる。


 それもそのはず。本来表示されるはずのない内容がそこには書かれていたのだから。


 そして俺は、これを知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)。




「お前、あの時の天上か!」



──!?!?



 この場でそれを知ってるのは俺が直接伝えた倉瀬と、藤宮さんだけ。


 それでも驚きは隠せないでいた。



「おい和人、お前が言ってたのはこれか!」

「あぁ、そうだ」



(1年後にまた会おうとか言っていたにも関わらず、一体どういうことだ?)




"その通り"

"1年後という約束だったけど、事情が変わった"

"貴方が通っている学び舎付近に、もうじきカリス──天(・)上(・)が(・)現(・)れ(・)る(・)"

"急いで向かわないと、間に合わない"




「は?」




(天上……だと?)


 そこにはあり得ない単語が表示されていて、余計に混乱する。


 こいつの意図がまったく読めない。



「あぁ? こいつはどういうことだ」

「天上が来るってほんと? にわかには信じがたいんだけど」


 拓真たちも疑惑の声をあげる。

 


"私もリスクを負って通信している"

"今は私を信じて"

"学び舎へと通じるゲ(・)ー(・)ト(・)を開ける"

"そこを通ればすぐに目的の場所へと行ける"



 次の瞬間、パァッと、光の門が俺たちの前に現れた。



(どういうことだ。こいつは味方なのか? だが、いきなりこれを信じろと言われても……)



 何もかもが分からない。


 だが、確かなのは──



「ふざけるな。いきなり現れて、天上が来るから、お前を信じろだと? どこにそんな根拠が!」



"なら、このまま貴方の平穏が消えてもいいの?"



「おまえ……」

「待って、神薙君!」



 スッと、藤宮さんは俺の手を握る。

 そして小さく笑みを見せ、俺の変わりに話しかける。



「本当に、来るの?」



"本当よ、星の巫女"

"一部とはいえ、覚醒した巫女にも会えたのは幸運"



「…………色々聞きたいことがあるけど、事情があるんだよね。でも私たちには、いきなりあなたの言葉を信じれるだけの判断材料がないの」


「何でもいい。信じれるものはないの?」



 その問いに、天上は黙る。

 少しの間、沈黙が続くと──




『確かに。貴女の言う通りね、星の巫女』



──っ!?



 突然、ウィンドウから女性の声が聞こえてくる。

 この声の持ち主が天上?



「貴女が、さっきまで話してた人?」

『そうよ。改めて、イーリスと言います』



「イーリス、さん」



『神薙和人《かんなぎかずと》。全てを信じろとは言いません。それでも、それでも今だけは、私のことを信じてほしい。もうこれ以上……、誰(・)か(・)が(・)悲(・)し(・)む(・)の(・)は(・)見(・)た(・)く(・)な(・)い(・)の(・)』


「…………」



 その声色からは、後悔や悲しみ、無念。そういった感情がこもっていた。


 でも、分からない。



「……何で、俺に接触した」

『貴方だけなの。彼(・)と同じ、真に星(・)の(・)守(・)護(・)者(・)と(・)し(・)て(・)の(・)力(・)に覚醒しうる人は』


「星の、守護者?」

『…………今は言えない。でもいつか、貴方はそこに至ると信じている。だからどうかお願い。貴方の世界を救って。そして──』




「そしていつか、無数に存在する世界を、天上の暴虐から解放してほしい。自由にしてあげて」



 誰もいない神殿で一人、滅びた空を見上げながら、女性は願う。


 幾星霜、イーリスは何度も世界が滅びていく様を、その目で見てきた。


 何も出来ず、無力な自分を呪い続け、いつ奴らに捕捉されるのかと怯えながら、それでも観測を止めなかった。


 それは一重に、いつかこの負の連鎖を壊す者が現れると信じて……。



「私は──」




『私は、ただ見ることしか出来ない。だから、どうか……』


「…………永久」

「何?」

「俺(・)を(・)殴(・)れ(・)」


「へ?」

「神薙君!?」


 一旦頭をクリアにする必要があった。

 そのためにも、永久に俺を殴るよう頼む。

 そして、俺のことを理解している永久は『いいの?』と、確認する。



「あぁ、一思いにやれ。ぐはぁっ!?」


「「「─────」」」

「神薙君!?」

「「和人!?」」


「これでいい?」



 即断即決とはこのこと。永久のやつ、やれとは言ったが、ノータイムで殴るとは……。



(まぁいい。ひとまず頭がスッキリしたし)



 どうやら、何でもかんでも天上と決めつけ、色々頭が固くなっていたようだ。


 先生から教わった大原則、『見て、考えて、動く』。それを怠っていたのだから。



「イーリスと言ったな」

『えぇ』


「本当に俺たちの学校に通じてるんだな?」

『そこは信じてとしか言えない』


「分かった。お前を信じる」

『…………感謝します』



 ゆっくりと立ち上がり、手持ちのポーションなどを飲んで回復する。


 すると皆も立ち上がり、同じくポーションを飲み始めた。



「和人、さっさと準備していくぞ」

「本当に来るってんなら、殺してやらねぇとな」

「50年分の怨みは怖いからね」


「天上殺したら、それこそ英雄だよね〜。それに、和人の夢が叶うわけなんだし」

「お前の動機だけはおかしいけどな。……でもま、ありがとな」


「頑張ろうね、神薙君!」

「あぁ」



『良い仲間ね。では私から、あなたたちに《情報》を渡します』


「情報って?」


『ここまで介入したのです。これからやって来る天上について、シ(・)ス(・)テ(・)ム(・)に(・)介(・)入(・)したことで得た情報を、口頭で話しましょう』



 ブゥンッと、ウィンドウに映像が映る。

 そこには6枚の翼を持った人間が映っていた。



「こいつが……」

『名を、カリスと言います』



 ついにこの目で捉えた天上の一人。

 翼が生えていて、いかにも天使や神と名乗りそうな風格だった。



「ふぅ〜ん、神様というよりも、天使っぽいね」

「空を飛ばれるのは、面倒だな。現状、和人しか対応出来ないぞ」



『空を飛ぶことは、そうそうないと思います。彼らは私たちのことを、下等生物(インフィリア)と呼んでいますから』


「舐めたもの言いだな」

『そうですね。そろそろ彼について話します。心して聞いてください』



 それからイーリスはカリスという天上について語り出す。



 固有魔法『消失』のこと。

 得意魔法『暴風』のこと。

 分霊体であることと、『ゼロ』と同格レベルの強さである可能性が高いこと。



『どのような手段で分霊体を創ったのかまでは分かりませんが、これが奴の情報です』



「消失、ねぇ……。私と咲の攻撃なら何とかなるかな?」

「どうだろう。やってみないと分からないかな」



「そっちは咲ちゃんたちに任せて、俺らはインターバルと、射程距離に注意だな」

「だな。式神たちも闇雲に出すのはまずそうだ」



「それもだけど、暴風もヤバくない? これ、私は戦闘に参加しないほうが良いかも」

「俺と森山もだな。対策手段が乏しい」

「だな。悪いが怪我人たちの救護と救援要請を頼む」


「そもそも『ゼロ』と同格って……、勝てんのか?」

「勝たないと意味がないんだ。死ぬ気でやるしかないだろ、倉瀬」

「まぁ、それもそうだな」



 それから俺たちは、現状分かる範囲での情報から、作戦を立てていく。

 



『最後に、これを貴(・)方(・)た(・)ち(・)へ(・)の(・)ク(・)エ(・)ス(・)ト(・)と(・)し(・)て(・)依(・)頼(・)し(・)ま(・)す(・)』

「依頼?」


『えぇ。私が持つリソースを少し削りますが、この反則ギリギリの行為に対して、然るべき報酬が必要であるべきでしょう』



 ブゥンッと、俺たちの前にウィンドウが表示される。そこには──




======================


 SSSランククエスト 『天上討伐戦』


 神を専称する『カリス(分霊体)』を排除せよ


 報酬1:経験値200万の獲得

 報酬2:SSSランクアイテム『鳳凰の羽』を授与

 報酬3:SSSランクアイテム『星核』を授与

     ※神薙和人のみ


======================




「はぁ!?」

「SSSランクなんて、初めて見たよ……」

「す、凄い……」



 SSSランクというのも驚きだが、俺専用のアイテムというのが気になる。



『私が天上のシステムに介入してできる、ギリギリの報酬となります。きっと皆さんの役に立つはずです』


『それと神薙和人《かんなぎかずと》。貴方に贈るそのアイテムは、それ単独では使い物になりません。ですが、いつの日か役立つ日が来ます』



「……分かった。きっちり殺してくる」

「いやぁ、それっぽい雰囲気になってきたじゃん」

「うっし! んじゃま行くか!」



『ご武運を祈ります。…………っ、予測よりもずっと早い。急いで。どうやらカリスは既に現界を果たしています』


『そして既に、かなりの被害が出ているようです』



「そんな!?」

「悠長にしてる暇はねぇな。さっさと行くぞ、お前ら!」

「「「おう!」」」

「うん!」


「イーリスさん、行ってきます!」

「んじゃね〜」



 そうして一人また一人と、光の門を通っていく。



「神薙君?」

「すまない。先に行っててくれ。すぐに行く」

「う、うん!」


 藤宮さんにそう伝えて、最後に残ったのは俺一人。確認したいことがあったからだ。



『早く貴方も』

「イーリス。次に話せるのは、厄災後なのか?」

『…………分かりません。もしかしたらこれが最後になるかもしれません。ですが、私はいつでも貴方のことを見ています』


「そうか。なぁ、出現位置を上(・)空(・)に設定することは出来るか?」

『出来ますが……、どうする気で?』

「まぁ見てろよ。…………ありがとう、手を貸してくれて」


『礼には及びません。私は傍観しかできない、無力な存在。また、話せる日が来ることを祈ります』


「あぁ。行ってくる」


 それだけ伝えて、俺も少し遅れて光の門を通っていく。



(待っていろ。天上)




『勝利を願っています、星の守護者』





「見ていますか、ゾ(・)フ(・)ィ(・)ー(・)。貴方と同じ『星の守護者』が、神の喉元へとナイフを突き立てる。その最初の戦いが始まりましたよ」





─── そして現在 ───



「会いたかったぞ! 『星(・)の(・)守(・)護(・)者(・)』!!」



「天上ぉぉぉおおおお!!」



 ミシミシと、奴の腕が悲鳴をあげる。

 上空からの完全な不意打ちだったにも関わらず、笑いながら受け止める奴の表情は、まだまだ余裕であることを告げていた。



「くははは、このまま貴様を……」

「余所見してていいのか?」

「何? っ!?」



──紫滅雷吼炮《ジガジルグ・ディザスター》!!!!

──輝きしは星の剣(エトワール)!!



(俺と諸共だと!?)



 突如として、二つの巨大な一撃が迫りくる。

 アレらは流石に消失では消しきれない。


 故にすぐさま回避を選択。

 この場から離れよとした瞬間、頭上にいた奴が俺よりも先に、忽然とその姿が消えた。


 更には足元にいた男すら消えていた。



「何!? しまっ!?」



 その一瞬が命取りとなる。

 消えた式(・)神(・)使(・)い(・)に気を取られた瞬間、二人の尋常ならざる一撃がカリスを飲み込んだ。



 和人たちが消えた原理は簡単だ。

 メキシコ跡地防衛戦で得たアイテム。双想《そうそう》のイヤリング。


 その二つ目の効果である、同じ物を身に着けた者の近くへと瞬時に移動出来る能力。


 それを使用したのだ。


 そして大月1等星が消えたのは、カリスが和人に気を取られていた隙に、プランを召喚し、地中へと退避させていたからだ。



 そうして和人は、双想《そうそう》のイヤリングを身に着けている、咲の所へと帰還を果たす。



「お前ら……」

「……来んのが、遅いのよ」



「葉隠ちゃん、鈴木君、大丈夫!?」

「…………想像以上に被害が大きいね。大月さんたちがやられてるだなんて」



 永久たちもこの場へとやってきて、辺りの惨劇に言葉を喪う。



「浩子、比嘉、森山。打ち合わせ通り救護と救援要請を頼む!!」



「死ぬなよ、お前ら!!」

「山口、行く前にバフをかけておくぞ!」

「うん!!」



 二人が身体能力のバフをかける。

 これがどこまで効果あるかは分からないが、ないよりはマシだ。



「和人、気を抜くなよ」

「分かってる。もう誰も殺させやしない。やるぞ、拓真、倉瀬!」

「咲ちゃん、魔力は惜しむなよ?」


「分かってます! こんなことをして、絶対に赦さない!!」



「というか、今ので死んだら嬉しいんだけどなぁ〜」

「永久。それはフラグだぞ。…………ほれ見ろ」



 砂煙が、暴風でかき消される。

 その中心には、右腕に小さな傷が出来ている天上が立っていた。



(あの攻撃でその程度か)



「えぇ〜、全然ダメージ入ってないじゃん」

「魔力での防御かな? もっと魔力を練らないと」




「ははははは!!!!」



 そうして聞こえてくるは、歓喜にも近い笑い声。

 そしてそいつは、悠然と語りかける。



「一体どういうことだ? どうやってここに来れた! 貴様が遥か遠方にいたのは知っていたんだがな?」


「まぁいい。貴様がここにいる。それこそが重要だ。なぁ、『星(・)の(・)守(・)護(・)者(・)』!!!」



(『星の守護者』。さっきも言っていたな。それにイーリスも……)



 守護者という単語からして、何かを守護する役割を担っている? そして星という言葉がある以上、星の巫女と何らかの関係性があるとみるべきか。



(まぁ、今はそんなのどうでもいいか)



 パリパリと、万雷の力を纏わせる。

 そして後ろにいる傷だらけの二人に声をかける。



「葉隠、鈴木。後は俺たちに任せろ。お前らも救護に回っててくれ」

「絶対に勝つからね」


「気をつけなさい。……あいつの情報は?」

「もう知ってる」


「じゃあ、完膚なきまでにボコしなさい!」

「頼む! 仲間の、仇を……」



「うん!」

「あぁ!!」



 バッと、負傷している大月1等星を連れて、二人も山口さんたちと一緒にこの場をは離れる。


 そしてこの場に残った、俺を含めた五人が天上を睨む。


 こんな惨状では、救援がいつ来れるかなんて分からない。であれば、俺たちだけでこいつを殺すつもりで行くしかない。




「良いぞ。巫女もいるなら好都合。2人まとめて絶望の海に沈めよう」


「来るがいい、『星の守護者』!」



──『カリス・シンセシズ・ヴァーミリオン』が、貴様たちを裁く!!




「やれるもんならやってみろ。俺たちが必ず、殺してやる」


「ついて来れるよね、和人」

「もちろんだ。……行くぞ、永久!」



 武器を構え、永久とともに、駆け出す。



 天上対守護者(ガーディアン)、その第2ラウンドが始まった。

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