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天上の不適合者~クソクラスと言われた式神使いで世界を歪めた者たちへ反逆する~  作者: 風間悟
第3章:幼馴染と不適合者

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イレギュラー④ 蹂躙

「どれ、まずは味見とするか」


 白き翼を羽ばたかせ、急降下する。

 そして上手く力を制御して、地面に足をつける。


 如何に()()()()()されていようと、我らの力は埒外。下手に力を振り撒けば、周りの者たちを消し飛ばしてしまいかねない。



(ふむ、僅かばかり身体が重いな。まぁ()()()()()()()()()のだ。当然と言えば当然か)



 本来、天上たちが次元を超え、他の宇宙へと侵入することは、システム上不可能。


 なぜなら、そのあまりにも強大な力により、存在するだけで、多大な被害を及ぼす可能性があるからだ。


 故にエムルは、天上たちが次元を超えることを良しとしなかった。そうでもしないと、ゲームとして成立しないから。



 だがカリスは、そのルールの抜け道を見つけた。

 強大な力で、世界に影響を与えてしまうなら、影響が出ない範囲まで、自身の力を抑えればいい。


 その手段として提案したのが、魂の一部を切り取り、分身体を創り送り込むという方式だ。



 『分霊体』。

 結果カリスは、本体の約50分の1にまで力を制限することに成功した。そして分霊体が得た経験は全て、本体へとフィードバックされる。



「やはりというべきか、我々の地球とは大分違うな。魔力が薄い」



 そうして辺りを見渡せば、空から降りた俺が気になるのか、ぞろぞろと人集りが出来始める。



(おいおい、これでは選び放題ではないか)



 あまりにも無警戒すぎて笑いが込み上げてくる。そもそもの話、神がこの地に降り立つこと自体がないのだから仕方ない。


 そうして誰にしようかと選んでいると、不意に一人の男が話しかけてきた。



「なぁ、その背中の翼は本物か? 一体なんていうクラスなんだよ。聞いたことないぞ」

「ん?」



 声をかけて来たのは、見た目からして学生だろうか。



(ふふふ、良いではないか。若い奴ほど、死の恐怖は美味だからな)


 だがその前に、この小僧には言わなければならないことがある。



「気になるか?」

「あぁ。そんなクラスがあるなら、防衛戦でも活躍出来たんじゃないか? そうじゃなくても、多くの人を救うことだって……」


「そうか。だがその前に、一つ言っておこう」



「?」

下等生物(インフィリア)風情が、俺に気安く話しかけるな」


「は? いきなり、なに……を…………」



 違和感を感じたのか、その学生はゆっくり視線を自身の右半身へと向け、その表情が絶望へと変化する。


 彼の右半身、正確には右鎖骨から先が、まるで始めっから何もなかったかのように、()()()()()()


 そして、その変化に身体が遅れて反応し、おびただしい量の血が噴き出した。




「ぁ、ぁぁあああ、あわあぁぁあああ!?!?!?」



「はははは、良い! 実に良いぞ!! そうだ、その痛みと恐怖、そして絶望を纏った感情こそ、我ら神…………いや、()()が至高とする娯楽だ!!」




 『天上』。

 その者がそう言った瞬間、まだ若い守護者ガーディアンたちの目つきが変わり、小さな魔力を迸らせる。


 目の前で起きた異常事態。


 本来なら、混乱し逃げ惑うのが常であるが、それは力を持たない一般人や、戦う術を持たない者に限った場合だ。



 少なくとも、この場にいる者たちは皆、将来は防衛戦へと参加し、大切な人たちを守りたいと志す、未来の英雄の雛。


 異常こそが日常となっている者たちだ。



(こいつが天上!?)

(翼を持つクラスは聞いたことがない)

(レベル不足なのは分かってる……)

(空間を切り取った。なら遠距離から)

(南穂の、家族の仇!)

(よくも裕太を!)

(少しでも情報を引き出して、先輩たちに)

(仲間の仇を取るんだ!)

(協会に連絡しないと! 私たちじゃ勝てない)



 一瞬の思考。

 次の瞬間、一斉に己が取れる最適を選んだ。




──状況開始!




 一人の男が叫ぶ。

 大盾を召喚した五人の守護者ガーディアンたちが、天上へと迫る。

 同時に、近接を得意とする者たちが続く。


 後方では、幾人もの守護者ガーディアンたちが魔力を練り、様々な魔法を唱える。


 更に遠距離に秀でた守護者ガーディアンたちは、自分の力が最も発揮できる位置へと移動する。



 和人は防衛戦を集団戦であると考えた。

 それは正しい。

 学校では、防衛戦などを想定した、臨時パーティーを組んだ際の特訓なども行われている。


 だからこそ、この場にいる守護者ガーディアンたちは迷うことなく、自分にできる最大限の選択を実行できた。



「流石はこの50年、ひたすらに世界を守護してきた者たちだ! いい覚悟だ!」



 カリスは笑う。

 そして、大盾を構えながら1()m()という距離にまで接近してきた守護者ガーディアンたちに向けて、スッと小さく、左の人差し指で宙をなぞった。



──!?!?!?


──ぶしゃぁぁあああ



 次の瞬間。

 大盾を構えていたにも関わらず、五人とも上半身と下半身が永遠の別れを迎え、絶命する。



 その光景を見た者たちは、動揺しつつも無策に近づくのは危険と判断。


 すぐさま距離を取り、隙を狙う戦法に変更する。

 そして後方から遅れてくるのは、様々な魔法攻撃。



「流石に強力すぎたか? これでは戦いにもならん」


 左腕をかざせば、それらの攻撃は全て、1m圏内で消失した。



「1m!」

「目を潰します!」


 一人の守護者ガーディアンが魔法で煙幕を張り、一帯を包み込む。



「む? 俺の目を潰しに来たか」



 だが展開された煙幕は、カリスの身体を包み込むこができず、カリスの周囲だけが消失されていく。


 けどそれは永続的ではなく、ライトが点滅するかのように、断続的な消失だった。



(なるほど、俺の魔法を解析しようと……。下等生物(インフィリア)らしい戦法だな)



 そう考えていれば、消失が消えたタイミングで、三人が迫り、剣を振り下ろす。


 それを最小限の行動だけで三人の攻撃を避け、トンッと、軽く拳を土手っ腹へと当てる。


 たったそれだけのことなのに、三人の守護者ガーディアンたちの腹に大きな風穴が空き、息絶える。



「どれ、少し遊んでやろう」



 音もなくその場から消えたと思えば、僅かな時間の間に、煙幕に隠れながらカリスの周囲に展開していた守護者ガーディアンたちの腕や足が消失し、倒れ込む。



「「「があぁああ!?」」」

「あ、足がぁぁ……」



「ふはははは、良い! 最高の叫びだ!!」



 笑っているのも束の間。

 四方八方から、様々なタイミングで銃弾や弓矢が飛来する。恐らく消失対策だろう。



「ほらほら、頑張れ頑張れ!」



 パチンッと右手で、指を鳴らせば、その音を触媒にして暴風が発生。


 全ての攻撃を弾き、そのまま100m圏内にある全ての物質を吹き飛ばす。


 その結果、数分にも満たない戦いが終わり、この場にいた守護者ガーディアン全員が行動不能となった。



「ふむ……、所詮、防衛戦すら参加していない者たちでは、この程度か。これでは、良質な絶望を得るにはまだ──」




──デッドリー・スピアー!!

──四式:疾風はやて

──ブレイジング・アロー!!



「ん?」


 殺気の籠った攻撃が迫り来る。

 左手を前に出し魔法を発動すれば、一瞬のうちにそれらの攻撃が消失する。



「死ね。アクセル・ブロー!!」



 いつの間にか一人の男が俺の背後にいた。そしてそのまま魔力を纏った拳を放つ。


 面白そうだと思い、パシンと右手で受け止める。



「良いジャブだが、腰が入り過ぎではないか?」

「ばぁか。この程度で終わるかよ!」



「聖騎士の威光よ、今ここに!」




       ホーリーヴェール!!





 魔法名が聞こえたと思えば、その者の身体が光輝く。そしてグググと、拳の力が上昇していく。


「ほぉ?」

「ぶっ飛べぇぇ!」


 拳を振り上げれば、カリスの身体がほんの僅かだが浮き、半歩だけ距離が離れる。



「ははは、俺を宙に浮かせるとは、いい拳だったな」

「クソっ、この程度かよ」

「藤堂君、すぐに離れて!」



 バッと男が素早く離れれば、光の斬撃がすぐさま襲いかかり、この身を飲み込んだ。


 避けるまでもないため、周囲に『消失』を展開。

 光の斬撃を消失させ続ける。



(さて、この攻撃が消えたら、誰から……ん?)



 消えない。

 一人の守護者ガーディアンが放った光の斬撃は消えることなく、ひたすらに放出し続けられていた。


(なるほど、考えたな)



 再度指を鳴らせば、暴風が吹き荒れ、光の斬撃を消し飛ばす。



「俺のインターバルか? この短い時間でよく考える」


「余裕でいられるのも今のうちよ」

「ん?」



 頭上を見上げれば、次に飛来したのは、これまでとは比べものにならないほどの魔力を纏った槍だった。


 左腕を掲げて、消失を発動する。

 僅かばかりの拮抗を魅せるが、数秒後にはその槍は消失した。



「今の一撃はいいぞ。……ようやく少しは戦える者が来たか?」



 辺りを見渡せば、中々に上質な魔力を迸らせる者たちが数名いた。



「報告通り消失を確認。拮抗出来たから、突き破れそうね。……早川1等星、現着しました」


「笹倉さん。春日部2等星、現着。学生の守護者ガーディアンたちもいますが、そのほとんどが再起不能。生死は不明」



「同じく、大月1等星現着。まだ十分程度しか経ってないのに、真っ先に異常を知らせてくれた学生たちには感謝だな」


「友瀬3等星、現着。近くにいたのは俺らだけか」

「友瀬、気張れよ? 他の仲間が来るまでな」

「分かってます、大月さん。よくも、まだ芽の若い奴らを……」



 カリスがまだ上空にいた時点で、すぐさま葉隠と鈴木が協会へと連絡していた。


 それは、守護者ガーディアンとしての直感が可能とした、即断即決だった。



「葉隠、闇雲に飛び込むなよ」

「分かってる。邪魔しないよう、援護だけに留める」

「津々良、綾月、健吾。お前らは、まだ生きてる奴らの救護を頼む」

「鈴木君、葉隠ちゃん、死なないでね」


「藤堂君、私たちも援護に回るわよ。いいわね」

「分かってますよ、常世先輩。よくも俺らの仲間を」



 無謀にも挑んできた学生たちは後方へと下がり、援護の姿勢を取る。力不足を理解し、後方支援と救護に留めるつもりのようだ。



「おいひよっこども! 逃げろとは言わねぇ。だが、やるからには生き残れ。いいな?」



──はい!!




(中々に良いではないか)



 勝てないと分かりながらも、俺に挑むその気概。実に良い。この後、一体どれほど絶望を俺に魅せてくれるのだろうか。



「いいぞ、お前ら。前座として実にいい」


「前座だ? お前、本当に天上なのか?」



 そういえば、まだ名乗りすらしていなかったことに気づく。


 ようやく遊び甲斐のある奴らが出てきたのだ。

 であれば、名乗らなくてこいつらにも悪い。




「そうだったな。俺は貴様らが勝手に呼んでいる『天上』、その1人で間違いない。……いいか、心して聞くがいい!!」



 両腕を広げ、声高々に告げる。



「俺の名はカリス。『カリス・シンセシズ・ヴァーミリオン』!! 偉大なる王に仕えし、6大貴族の当主が1人!」


「貴様ら、下等生物(インフィリア)同士を、永劫の戦いへと誘いし全ての元凶にして、上位存在」


「貴様らの言葉に当てはめれば……、神だ」




「そうか」


 四人の守護者ガーディアンたちの魔力が立ち昇る。まさに宿敵を前にしたことで発せられる、怒りといった憤怒の感情だ。



「おぉぉ、素晴らしい」



「50年分の怨み。ここで晴らさせてもらう」

「私たちの自由のために」

「子供たちの未来のために」

「愛する者たちのために」



──お前はここで死ね!



 四人が膨大な魔力をその身に纏い、一斉に俺へと迫りくる。早速俺の魔法への対処を考えたらしい。



「はははは、来るがいい!」



 そうして4つの強大な力がカリスへとぶつかった。



***



「はぁ、はぁ……、はぁ……」


(うそ……、でしょ)



 ペタリと、力なく膝が崩れ落ちる。

 本格的な戦いが始まって、まだ10分も経っていない。


 だけど、目の前に広がっている光景に、目を疑う。



(皆、()()()()



 辺りの建物などは、魔法やスキルによる余波によって倒壊している。


 その中で、私たちより何十倍も強い歴戦の守護者ガーディアンたちは、体中が血塗れとなって、倒れていた。




「ふむ、少々この身体は強すぎたな。これでも貴様らの頂点、『ゼロ』とほぼ同程度のだがな」


「ごふっ……、『ゼロ』と、どう、とう、だと?」


「まだ生きていたか。ははは、良いぞお前。絶望の感情の中に、微かな希望を感じるぞ。仲間が来ると信じているんだな」



 笑いながら、カリスとかいう天上は、大月1等星の首を掴もうとする。



(だめ……ダメ!)



 無理やり身体を動かし、葉隠は槍を構える。そして天上へとスキルを放つ。


「まだ諦めていなかったのか」



 パシュンッと、私が放ったスキルが消え失せる。

 同時に全身傷だらけの常世先輩と藤堂、そして鈴木がカリスへと接近する。



「ははは、学生にしては粘るではないか!」


 パチンッと、右手で指を鳴らす。

 さっきと同じ暴風が吹きあられ、全員を吹き飛ばす。



──ぐわぁぁぁあああ!?




()()!」


 高く飛び上がり、亮太を空中でキャッチし、そのまま地面へとぶつかる。



「ぐっ」

「ばか……、無茶、するな。葉隠……」

「でもっ」





「遠方から複数の魔力を感じるな。……ふむ、俺を倒すための部隊を編成しているといったところか?」


 何かをつぶやいたかと思えば、スッと、カリスは右腕を私たちとは別の方向へと前に出す。


 それだけで何をするのかが察せた。



「や、やめっ」


「さて、()()()()()()?」


 その言葉とともに、尋常ならざる暴風が放たれる。それにより、直線上の物質が、延べ数キロにも及び、大地ごと削り取られた。



「そん、な……」

「くそ、が……」



「良い、良いぞ! いたるところから悲鳴や絶望の声が聞こえる。そう、そうだ! これこそが命! 俺がまだここに生きているという証明に他ならない!」



 声高々に笑いながら、カリスは今度こそ大月1等星の首を掴み、持ち上げる。



「ふ、ふざけないで!」

「ん?」

「あんたらの所為で、どれだけの人たちが!!」



「知らん。お前らは我らを楽しませる道具だ」

「なんっ……」

「命というのは本当に美味だ。それも死を味わった際に放出される負のエネルギー。あの味を一度でも知ってしまえば、もう止められない」



(命、エネルギー、味?)



 わけの分からないことを言っているが、これだけは分かる。こいつらは私たちのことを、見世物同然の認識でしかないと。



「さて、奴が来るまでの間に、()()()を済ませるか」

「ま、間引き、だと……」


「そうだ。先日の防衛戦。あれはダメだ。ゲームにならない戦いほどつまらないものはない」



「どこのどいつかは知らぬが、未来予知すらせずに予知した者がいる。それは許さぬ」



「ふざけないで!」


 あまりにも自分勝手な理屈だ。

 そんな理由のために、大勢の人たちを殺したというの?


 震える足に何とか喝を入れて、槍を構える。

 そして亮太も一緒に立ち上がる。

 もうお互いに限界だ。



「さっきの攻撃で、一体何十、何千っていう人が死んだと思ってるのよ!」

「人の、命を、なんだと……」


「よせ、お前らには……」



「分かってます! でも!」

「逃げないって、きめ、たんだ」



 こんな奴らに家族が、友達が、皆が苦しんでる。そんなの、もう……。



「勇敢だな。どれ、貴様らがどのようにして絶望するか、楽しむのも一興か」



(ごめん咲ちゃん。私、ここまでかも)



「やれるもんならやってみなさい! 醜くても、足掻いてやる!」

守護者ガーディアンを舐めるな!」

「その意気やよし! では、その足から──」





──式神借力:万象!!





「っ!?」


 咄嗟にカリスは、大月1等星を掴んでいた右手を離し、頭上へと掲げる。


 次の瞬間。

 ()()()()()せし、男の一刀を受け止める。


 その一刀は、万象の特性である倍化と、重力加速度が合わさったことで、尋常ならざる一撃となり、その全てが右腕へとのしかかる。



「ぐぅっ!? ……くくく、くはははは!」


 メキメキと、腕が悲鳴を上げる。

 にも関わらず、カリスは笑う。


 なぜならその男こそ、カリスがこの世界へとやってきた、目的だったのだから。




「会いたかったぞ! 『()()()()()』!!」



「天上ぉぉぉおおおお!!」




 不適合者。

 神薙和人かんなぎかずと、現着。

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