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天上の不適合者~クソクラスと言われた式神使いで世界を歪めた者たちへ反逆する~  作者: 風間悟
第3章:幼馴染と不適合者

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永久の目的⑤ 協会の依頼

──ズキンッ



「っ、…………つまり、神代当麻かみしろとうまが裏で動いていて、まだ未発表ながらも、既に全世界の協会には通達がいっていると?」


「まっ、そうなるね。まさか本当に自国だけで防衛する気でいるなんて、大国は凄いね」


「で、でも……、流石にそれは他国から何か言われるんじゃないの?」

「それはないでしょ。どの国も守護者ガーディアンの数は不足してる。数が足りてる国なんて、それとアメリカやロシア、中国だけでしょ?」


「だから、向こうが勝手にやるって言うなら、無理に派遣する必要なんてない。それに、仮に防衛に失敗したとしても、中国という国が消えるか、その地域周辺だけが消えるだけでしょ?」



──ピキッ



「っ、それは、そうかもしれないが……」

「でしょ? だから今回のは気にしなくていいんだよ、和人」

「神薙君? さっきから顔色悪いように見えるけど」

「いや、大丈夫だ」



 あれから暫くして、俺たちは協会へと戻ってきた。それから会議室を一つ借りた永久は、俺たちに次の防衛戦についてのことを話してくれた。



(少しでも戦力を残したいと考えるのはどこも同じ。であれば、わざわざ危険を犯す必要はないと言うことか……)



 少し釈然としない部分もあるが、ある意味、理に適っているとも言える。けど、前回の防衛戦でのペナルティ内容から考えたら、あまりにも危険と言わざるを得ないのは確かだ。



 それとさっきから、妙に頭が痛い。

 精神世界で死んだからなのか?


 とはいえ、今の話で一つ、気になることがあった。

 なのでそのことを永久に尋ねることにした。



「なぁ永久。神代当麻かみしろとうまって、未来予知のスキルでもあるのか? 噂じゃ、バリバリの前衛職なんだろ?」

「そうだよ。まぁ言ってもいいか。『()()』。それが神代君が持つクラスだよ」




──ズキンッ、ズキンッ!!


(っ!?)



「勇者って……、よく物語とかに出てくる、あれ?」

「そっ。逆境であればあるほど強くなるって話。そんな光景、1度も見たことがないから、本当にそんな力があるかは分からないけどね。けど勇者に恥じぬ強さはあるかな」



(な、なんだ? 頭が……)



 永久が勇者という単語を言った瞬間。さっきとは比べものにならないほどの、激しい頭痛に襲われる。


 まるで万力で締めつけられるかのような痛みだ。



「ぐっ……」

「神薙君!? どうしたの!?」

「ちょっ、和人!?」


 そんな俺を見て、二人は狼狽える。

 けど、それに構うだけの余裕が俺にはなかった。

 ガタンッと、あまりの痛みで椅子から落ちる。


 ズキズキと、頭痛が更に激しくなる。



「がっ、あ、ぁあ……」


 そして次第に、ザ、ザザと、何かが脳内に()()()()()




 燃え盛る炎。

 崩れた街。

 死体の山。


 その中で、今にも死にそうな()()()()()と、それを見ている誰か。

 ここからじゃ、誰と話しているのかは分からない。

 だがおかしい。なぜ俺は俺を見ている?

 こいつは誰だ?



──かな………………みら………………から、ソフィ…………む

──かぎ……ほし…………今度こそ……みや…………助ける…………


──だ…………うぶ、だ


 俺とその人は何かを話している。

 まるで今生の別れのように穏やかで、それでいて今にも泣きそうな表情をお互いに浮かべている。


 だけど同時に、覚悟を決めた表情でもあった。



──ごめ…………あな………………おもに…………

──わた…………



 俺の手を握りながら、何かを言っている。

 ここからじゃ何を言っているのかよく聞こえない。

 だが沸々と、()()だけが込み上げてくる。


 それから少しして、俺とその人はコクリと頷くと、眩い光とともに、周囲に魔法陣が現れる。


 それを見た瞬間、全ての感情が爆発した。






──ふざけるな!!







「っ!? はぁっ、はぁ、はっはぁっ、はぁっ」


(なんだ、今のは……)



 ポタポタと、額からは尋常じゃない量の汗が流れ落ちる。そしてさっきまでのが気の所為だったのではと思うほどに、頭痛が消えていた。


(俺は、何を見た?)



──神薙君、神薙君!? 大丈夫!?

──和人! ねぇ、和人ってば!



 あれは何処だ?

 俺は誰と話していた?

 最後に叫んだのは誰だ?

 何もかもが分からない。


 けど一つだけ、直感的に分かったことがある。


 俺は、()()()()()()()()()()



(どういうことだ? なんであれが現実だと、そう思えた?)




「神薙君!!」

「和人!」

「っ!!」



 ぐるぐると思考の迷路にハマっていると、二人の声を聞こえてきて、ハッと顔を見上げる。その表情は俺のことを心の底から心配しているようだった。


「藤宮さん……、永久」

「大丈夫なの、神薙君。物凄く辛そうだったよ!?」

「和人、一体どうしたの?」


「…………いや、何でもない」

「でも……」

「ほんとに、もう大丈夫なんだ」



 藤宮さんの手を借りて、立ち上がる。

 さっきの事象が何だったのかは分からないが、考えても仕方がない。


 改めて椅子に座り、テーブルの上に置かれている水を飲む。



「はぁ……。すまない、話を続けてくれ」

「本当に大丈夫?」

「あぁ、問題ない」


「無茶……、しないでね」

「ありがとう。…………それで、神代当麻かみしろとうまのことだったよな」


「え? あぁうん。まっ、軽くていけ好かない奴だけど、人を守りたいって気持ちは人一倍あるかな」

「珍しいな。お前が人を褒めるだなんて」

「失敬だね! 私だって敬う人には敬うよ!?」



 まぁ永久のことは置いとくとしても、勇者というクラスには未来予知はないらしい。だとしたら、どうやって先のことを予見した?


 そのことについて考えていると、そんな俺を見た永久が不思議なことを言い出した。



「というか、本当に知らないんだ、神代君のこと。向こうは和人のこと、知ってるのに」

「は? どういうことだ?」


「ん? 神薙君、会ったことあるの?」


 そう尋ねられるので、首を振る。



「俺は不適合者だぞ? 守護者ガーディアンの知り合いなんて、永久を除けば、倉瀬や拓真たちしかいない」


 そう答えれば、『やっぱそうだよね〜』と、永久は笑いながら言う。


 俺のことを向こうが知っているというのは、なんとも不可思議だ。記憶を遡っても、それらしい記憶がまったく思い出せない。


 いや、会ったことがないんだから、それが当たり前なのだが……。



神代当麻かみしろとうまはなんて?」

「う〜ん、和人のことを嫌ってたね」

「余計に分からん」

「ま、それはどうでもいいや。そろそろ、依頼について話してもいいかな?」


「あっ、そういえばそうだったね」

「私は和人だけでいいんだけどね」

「嫌です♪」



 『はぁ』とため息をつきながら、『それで協会から依頼ってのはね』と、永久は本題を話し出す。




「ここ最近現れたイリーガルダンジョンってあるじゃん? 1ヶ月くらい前だったかな? 3等星以上の守護者ガーディアンで構成されたパーティーがそこに行って、()()()()になったらしいの」


「で、そのパーティーの知り合いたちが、救出兼調査としてすぐに行ったんだけど、同じく消息不明になったんだって。んで、そんな似た話が今のところ3ヶ所あるんだよね」



「それってつまり、その……」



「まぁ十中八九、死んでるね。でも、そんなダンジョンを放っておけば、いつまた同じ被害に遭うか分からないよね。禁止令を出せば済む話ではあるけど、不気味なダンジョンをいつまでも野ばらしにするわけにもいかないから……」


「永久に、そのダンジョンの攻略要請が出たと」

「正解!!」


「なるほど……」



 確かに、3等星以上で構成されたパーティーが立て続けに消息不明ともなれば、対応出来る者も限られてくる。


 であれば、現在波に乗ってる永久に解決依頼が来るのも頷けるな。


 隣にいる藤宮さんに視線だけを向けてみれば、少し暗い顔を浮かべている。あの日のことを思い出しているんだろう。



「内容は理解した。それで、なんで()()なんだ?」

「ら、はいらないと思うんだけど? ……まぁいいや。私だって馬鹿じゃないよ」


「背中を任せるなら少しでも信頼出来る人がいい。直近で手伝ってくれそうな知り合いは、予定が埋まってて、どうしようかなぁって思ってた時に、和人たちがこの間の防衛戦で活躍したって聞いてね」



「折角ならと思って、来たんだよね♪ いやぁ、おかげで今の和人の強さも知れたし、良かった良かった」



「…………神代当麻かみしろとうまは誘わなかったのか? 聞けば、ソロでダンジョン攻略をしてるんだろ?」

「やだやだ。言ったでしょ?軽いって。なぁんか薄っぺらいんだよね〜神代君」


「その……、今の話だと、ダンジョン攻略しに行くメンバーが、ここにいる3人だけって聞こえるんだけど、本当に大丈夫なの? それに……」



 そう言って藤宮さんは俺の方を見る。言いたいことは分かる。俺たちはまだやるとは一言も言ってないんだからな。



「業腹だけど、そうなるね〜。本当はヒーラー職がいればバランスも取れるんだろうけど、まぁそこは和人の式神に期待しようかな」


「俺らは、まだやるとは言ってないんだが?」

「あははは! 和人がこんな話を聞いて黙っているわけないじゃん。弱っちいくせに、いつだって正道を進むのが和人なんだから」


「…………」



 ほんと、こいつの俺に対する期待というか、理解度には脱帽だな。


(とはいえ、かなりの危険があるのも確かだ)



 俺の一存だけで、藤宮さんを連れていくことは出来ない。


 最悪、今回は──


「神薙君」


 スッと、藤宮さんは俺の手に自身の手を添える。


「大丈夫だよ。私も着いていくから」

「でも」

「私たちはパーティーメンバーだよ? どんな時だって、一緒。ね?」


 優しく笑みを浮かべながら、藤宮さんは着いてくると言ってくれた。改めて思うが、やっぱり彼女をパーティーメンバーとして迎え入れて良かったと、そう思う。


「分かった。ちゃんと守るからな」

「うん!」



「あのさぁ、私がいる前で、よくもまぁそんなことが出来るのよね?」

「ん?」

「ふぇ? ……あっ、こ、これは違くてっ」


「私の和人に近づかないで!!」

「神薙君は、永久さんの物じゃないです! わた……、何でもない、です」


 何を言おうとしたのか、藤宮さんはボンッと顔を真っ赤にして、縮こまる。



(もしかして、()()って、言おうとしたか?)


 だとしてらめっちゃ嬉しいなぁと思いつつ、永久へと視線を戻すと、物凄く不機嫌そうな表情を浮かべていた。



「和人ぉ?」

「今はいいだろ。それより、イリーガルダンジョンがある所は何処なんだ?」


「…………埼玉、青森、滋賀の、3県だよ」

「かなりバラけてるんだね」

「日本で確認されてるのは、全部で27ヶ所。そのどれもが、あんまり人気のない所らしいからね。元々発見し辛いんじゃない? 知らないけど」



「イリーガルダンジョンってことだから、道中は魔物もいないんだよな?」

「そうじゃない? 私はまだ入ったことがないから知らないけど」


 レベルを上げる目的で考えれば、道中魔物がいないのは、悲しいところだな。



「また、ボス部屋だけなのかな?」

「さぁな。そこは、行ってみないことにはな」

「んん? 和人、行ったことあるの?」

「まぁな。今度話すよ」

「ふぅ〜ん。まっ、いいや」


 そう言って永久は立ち上がる。どうやらここで話すことは終わったらしい。なので俺たちも立ち上がる。



「いつ行くんだ?」

「明後日かな。和人、体調悪そうだし」

「なんだ。気遣う心は残ってるのか」

「失敬な! 私は和人にだけは優しいでしょ?」

「やさ、し、い?」


 ごめん。そう思ってた時期はもう過ぎてるんだ。



「何その、信じられないものを見ているような目は!?」

「日頃の行いじゃないの?」

「むかぁぁ! こんな可愛い女の子が将来のお嫁さんなんだよ!? 普通喜ぶよね?」


「悪いが、期限までに永久より強くなるから、無理だ」

「何をぉぉ!」

「はぁぁ」


 こうやって好意を寄せられるのは、悪くない気持ちにはなるが、もう昔の俺じゃないんだよな。



***



「最初に行くのは埼玉か?」

「ん? そうだね」

「そうか。んじゃ、また明後日な。帰ろうか、藤宮さん」

「うん。それじゃあね、永久さん」


 協会を出てから、永久に明後日のダンジョン攻略の場所だけを確認して、別れようとする。


「へ? 何別れようとしてんの?」

「「ん?」」


 ピタリと、足を止めて二人で振り返る。

 もう時間も遅い。

 まさか、これから遊びに行こうとか言うんじゃないんだろうなと、警戒するが、予期せぬことを言い出した。



「私、泊まる場所ないから、()()()()()()()()()()()()()()()






──はぁぁぁぁああ!?

──えぇええぇぇええ!?

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