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天上の不適合者~クソクラスと言われた式神使いで世界を歪めた者たちへ反逆する~  作者: 風間悟
第3章:幼馴染と不適合者

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永久の目的① 腕試し

─── 夢現の世界(アルカディア) ───



「本当にやるのか?」


 夢現の世界(アルカディア)へとやってきた俺たちは、そのまま精神世界に入る。


 そして現在、俺と藤宮さんは武器を手にしている永久と対面している。


 何故ここにいるかと言えば──


「もちろん。まともに戦えないんじゃ、私の()()には同行できないよ? ……まぁそれは建前で、今の和人がどこまで出来るのか、見てみたいんだ〜♪」


「まったく……」


 どう考えても、そっちが本命にしか聞こえない。

 そういえば、永久は結構、勝負事が好きだったのを思い出す。


 でもまぁ──


(今の俺がどこまで1等星に、それも、永久相手に戦えるかは確かめたかったからいいか)



 約束の期日まであと1年。そのためのデモンストレーションと考えれば、これほど美味しい話はない。


 そう、俺と永久はこれから戦うことになった。


 俺と永久が、何故ここで戦うことになったのか、それは今から2時間ほど遡ることになる。



─── 2時間前 ───



「やっほ〜、和人。約束通り来たよ〜」


 放課後、高校から少し離れた所で永久から声をかけられる。どうやら朝のことを反省して、周りに迷惑がかからないよう配慮したようだ。



「よく言う。ほとんど強制だっただろ」

「良いじゃん、良いじゃん。私たちの仲でしょ?」


「はぁ……」


 本来なら感動的な場面なんだろうが、こと永久に限っては違う。


 会えて嬉しいという気持ちは、まぁなくはない。

 なにせ、7年ぶりに再会したんだからな。


 だがそれ以上に、めんどうと感じる自分がいる。

 よくもまぁ昔の俺は、この傍若無人の永久を捌いてこれたなと、感心するレベルだ。



「少しは神薙君の事情も考えたらどうなの? 私たち、これからダンジョンに行こうと思ってたんだけど」


 俺の前に出た藤宮さんが、永久に文句を言う。というか、永久に対して少し強気に出てないか?


 そんな藤宮さんを前に、永久は少しだけめんどくさそうな表情を浮かべる。



「ねぇ、和人。なんでこの女もいるの?」

「この女じゃないです。藤宮咲ふじみやさきっていう立派な名前があるんだよ? 人付き合いは、きちんとした方がいいよ、()()()()


「ぐぬぬぬぬ、はぁ……、まぁいいや」


(これは、藤宮さんの1勝でいいのだろうか)



 女同士の戦いは怖いと聞く。


 藪蛇をつついて、燃え上がるのだけは避けたいので静観しているのだけど、二人の雰囲気はとてもじゃないが、良いとは言えないな。



「ダンジョンに行くんでしょ? 私が依頼されていることもダンジョン関連なんだから、別にいいでしょ?」

「……その依頼って?」


 永久の等級は1等星だ。

 その守護者ガーディアンに依頼があったということは、それなりにヤバい案件なのではと、想像がつく。



「それはまだ秘密。そもそも、まだ()()()()()とは言ってないよ?」


「「は?」」


 二人して声を揃える。

 連れていくわけじゃないのに、俺たちに依頼について、ぼかしつつも話すという、そんな永久の意図が掴めず不思議に思っていると、してやったり顔をしながらあることを話す。



「ふっふぅ〜ん。連れていくかどうかは、これからやることをしてからだよ」

「……何をやらせるつもりだ?」


「そんなの決まってるじゃん。私たちは守護者ガーディアンだよ? それに防衛戦に参加したって言うのなら、もう分かるでしょ?」

「お前、まさか……」

「永久さん、もしかして……」


(永久の奴、本気で言ってるのか?)


 確かにそれなら、互いの実力を測ることは可能だ。それにあそこでなら、死んだところで数時間の間、目が覚めないだけで済むから、理にかなっているとは言えるが……。



「何、怖気づいた?」


 そして永久は、俺に挑発するような言葉を投げる。


 こいつは俺の性格をよく理解している。

 怖気づくだと?

 俺が永久に?


「ふざけるな。俺がその程度で怖気づくと思ってるのか!?」

「だよね〜。実はもう向こうには話は通してるし、そろそろ迎えも来ると思うよ」


 ずいぶんと用意がいい。

 元々こうする気だったな?



「用意がいいんだな」

「そりゃね。せっかく和人と殺し合いが出来るんだから、準備くらいは済ませるよ」

「永久さん。貴女は神薙君と戦うことに抵抗はないの? 幼馴染なんでしょ?」


「なんで? 私の和人なんだから、何したって大丈夫でしょ」

「私のって……、神薙君は永久さんの物じゃないでしょ! そうだよね、神薙君!!」


「そ、そりゃな」

「そうだよね」


 ニッコリと笑みを浮かべる藤宮さんが、少し怖い。


「ちょっと、約束が違うじゃん!」

「それは1年後の話だろ。そもそもの話、お前より強くなるんだから、無効だ」

「無理なんだから、諦めればいいのに〜」


「いつまでも余裕ぶっこいてると、足元をすくわれるぞ」

「あははは、ないない」


 本当にこいつは、どこまでも自分だな。

 半ば呆れていると、クイクイッと、藤宮さんは俺の袖を引っ張る。



「神薙君、気になってたんだけど、約束って?」

「移動しながら話すよ。……他愛もない、子供同士の約束さ」

「もったいぶる必要なくない? 和人が18になるまでに、私より弱ければ一生私のために生きるって約束しただけ。だから早く、私の和人から離れてほしいんだけど」


「ふぇ!? 神薙君、そんな約束をしたの!?」

「……まぁな」


 当時はまさか、不適合者になるだなんて思っていなかったからな。とはいえ、なってしまったものはどうしようもない。強くなる見通しては十分経ってるんだし、不可能ではない。



「そんな大切な話、なんで言ってくれなかったの?」

「た、タイミング、かな?」

「嘘。どうせ何とかなるからって、黙ってたよね?」

「…………」


 ここ最近、藤宮さんの俺に対する理解度が上がって来ている気がする。


「ちょっと! 私の和人とイチャイチャしないでよ!」

「イチャイチャってなんですか! 私はただ大切な仲間として当然のことを──」


 右腕に永久。左腕に藤宮さん。二人が俺の腕を掴んで引っ張る。


 端から見たら羨ましい光景なのかもしれないが、やられている身からすれば、たまったものじゃない。



(なんで、こうなった……)



 それからもギャアギャアと二人が騒いでいると、『永久ちゃん、何してるの?』と、女性の声が聞こえてくる。



「……んん? あ、茉莉さん!」


 パッと、俺の腕を離し、その人の所へと永久は向かう。まったくもって自由だ。


 それにしても、格好からして守護者協会の人だろうか。ずいぶんと、永久と親しげだ。



「久しぶり。早かったですね」

「1年ぶり? また綺麗になったね」

「そりゃね。それで準備は?」

「整ってるわよ。…………ところで、その2人が?」


 茉莉さんと呼ばれている人は、俺と藤宮さんを見る。そして『不適合者じゃん』と、つぶやく。


「どうも」

「はじめまして」


「永久ちゃん。どういう関係? 不適合者と親しいだなんて」

「そっちの女は違うけど、和人は将来私の旦那になる男の子だよ」

「あぁ。前に言ってた王子様って奴ね。ふぅ〜ん、笹倉さんが目をかけてるらしいけど、強いの?」

「さぁ? それを確かめるために、夢現の世界(アルカディア)に行くんだから」



(やっぱ、あそこに行くのか……)



 にしても、この人もこの人で、結構言うタイプだな。てっきり協会には俺たちの存在は認知されてると思ってたけど、違うのか?


(そういえば、まだ2等星への昇格通知、来てなかったな)



「神薙君。あの人に魔法を撃ってもいいかな?」

「…………流石に問題になるから、止めような」


 割とマジな目になっていたので、冷や汗が出る。


 今日会ったばかりだというのに、永久が関わると、藤宮さんが少しだけ怖くなるから、不安になる。



「準備は済んでるよ。でも、永久ちゃんが戦うって情報が、どこからか漏れたらしくって、見学人が来てるけどね」

「うへぇ〜、めんどくさ」


(ぜってぇ、嘘だな)



 あの局員の表情からして、面白がって守護者ガーディアンたちに流したと察せた。


 そもそも1等星の戦いだ。

 それだけで金が取れるんじゃないのかと思うくらいには、かなり貴重なことだからな。



「それじゃ行こっか、和人。……そっちは来なくてもいいからね」

「行きます!! 神薙君を1人にはしません!」

「あっそ」


 つまらなさそうに、永久は局員が乗ってきた車の中に入っていく。



「不適合者の君たちもどうぞ」

「「…………」」


 藤宮さんと顔を見合わせながら、大人しく車の中に入っていく。そうして俺たちは、再び協会経由で、夢現の世界(アルカディア)へと向かうことになった。



─── そして現在 ───



(にしても、凄い人数だったな)


 夢現の世界(アルカディア)施設には、永久の戦いを観戦しようと、多くの野次馬がやってきていた。


 更にはどっちが勝つのかと、賭けを始めてる者すらいる始末だった。



 ちなみに俺の倍率は10倍で、誰一人として賭ける者はいなかったけどな。※藤宮さん以外



 色々気が滅入っていると、後ろから藤宮さんが声をかけてくる。


「神薙君。本当に私は戦わなくていいの? 全能力向上オールブーストを使えば……」

「いいんだ。永久に限っては、自分の力で勝たないと意味がないからな」



「だから藤宮さんは、そこで見ていてくれ」

「……分かった。でも、絶対に勝ってね」

「難しい要望だなぁ。でもまぁ、まかせろ」


 藤宮さんから離れ、永久に向き合う。

 こうして永久と勝負するのは、久しぶりだな。


 でもそれは、鬼ごっこやじゃんけんとかの遊びであって、こうして守護者ガーディアンとして戦うのは初めてだ。



「いいの? せっかく勝てるチャンスかもしれないのに」

「そんな勝利に、意味ないだろ。それに、藤宮さんも参加すれば、お前、真っ先に殺しにかかるだろ」

「まぁね〜。でもまぁ仮に20倍強くなろうとも、私が勝つけど」


 ほんと、どこまでも自信満々だな。

 だが俺と永久の間には、かなりの差があるのもまた事実。


 だとしても──



「いつまでも余裕でいられると思うなよ」

「ん?」


 何言ってんの?と言いたげに、永久は首を傾げる。

 いつまでも俺を、弱い人間だと思うなのよ。


「別に、今日永久を倒して、約束を果たしたっていいんだぞ」


 何も出来ず、負けるつもりなんて微塵もない。

 やるからには勝ってみせる。



「……ぷっ、あははは! 本気で言ってるの?」

「俺が冗談を言ったこと、あったか?」

「なかったね。じゃあ、どこまで強くなったか、見せてもらうよ!!」


 ブワッと永久から魔力が迸る。

 それに呼応して、俺も魔力を放出し、臨戦体制を取る。


 次の瞬間、互いに地面を蹴り、武器を抜く。

 そして互いの武器をぶつかり、激しい火花が散る。

 永久との1()()()の戦いが始まった。


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