式神使いという不適合者④ レベルアップ
─── 鎌倉デッドダンジョン 2層 ───
「うぅぉぉおぁぁあ!!」
「ぐぅぉあぁおおお!」
既に何時間ここにいるのかは定かじゃない。倒しても倒しても、奥からオークが湧いてくる。
(右、しゃがむ、前、バック!)
何度も戦っているうちに、ギリギリながらも、余計な動作なく避けられるようになってきている。
それに、攻撃が掠る程度なら、ただ骨が折れたり、肉が抉れるくらいでしかない。その程度なら、称号の効果でダメージを与え続けていれば、いつかは勝手に治る。
それもこれも、ゾンビ戦法が使えるからこその芸当だがな。
「コノエ、一旦戻れ!」
──キュル!
そう指示すると、ポンッと、コノエがこの場から消える。そしてオークから十分距離を取り、パンッと、両の手で合掌する。
「召喚!」
──キュルル〜
式神は一度召喚すれば、自前の魔力で戦うことが出来るし、回復だってする。だが、消費する魔力が回復を上回る場合は、こうして一度戻してから再召喚する方が効率がいい。
それに、式神を召喚する以外に魔力の使い道なんてないんだ。遠慮なく使っていくべきだ。
「行くぞ!」
──キュルゥゥゥ!!
そんな戦い方をひたすらに続け、戦うこと数時間。ようやくオークの群れを討伐しきることを成功する。
「はぁぁぁ……、疲れたぁぁ」
──キュゥゥゥ……
コノエと共にぐったりしながら、休憩を挟む。休みなく戦い続けたこともあり、疲労感が半端ない。
(水飲んで、なんか食おう……)
バッグから水と携帯食料を取り出し、コノエと分ける。
「はぁ……、生き返る。…………にしても、オークの群れが来た時は、死を覚悟したわ」
──キュゥゥウ
途中オーク一体分しか通れない道を見つけて、そこに誘い込めたから、事なきを得た。正直言って、命が幾つあっても足りないだろと思う。
(刀はさっきの戦闘で1本折れ、残りは2本……か)
こんなことなら、もう少し作ってもらえば良かったと和人は後悔する。
が、後悔したところで状況が良くなる訳でもない。
それに、考えることは他にもあった。
それは──
「オープン」
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守護者:神薙和人
クラス:式神使い
契約式神:1体
契約可能数:0 → 1体
レベル:1 → 2(EXP:3000/40000)
称号:ゴブリンスレイヤー
体力:100 → 200
魔力:100 → 300
筋力:10 → 11(+50)
耐久:10 → 11(+50)
敏捷:10 → 11(+50)
感応:10 → 11(+50)
幸運:10 → 11(+50)
スキルポイント:0 → 1
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「はぁぁぁ、レベルアップしてるぅぅ」
道中で倒した奴も合わせて16体も討伐していたらしく、いつの間にか、レベルが2となっていた。
とはいっても、感動よりも、ようやくかぁの方が強く、そもそもレベルが上がる感覚なんてなかった。
──キュゥ、キュゥ!!
コノエが尻尾をピンと立てながら、こっちに向ける。なんとなくやりたいことが分かったので、ハイタッチの姿勢を取れば、ペチンと、コノエの尻尾が当たる。
「ありがとな、コノエ。……にしても、レベルが上がっても、ステータスが1しか上がらないとか、なんちゅう嫌がらせを……」
もしかしたら、式神使いの特性上、そういう仕様になっているのかもしれない。何せ、契約できる式神の数が増えれば増えただけ、強くなるのだから。
(追加された契約数は1。つまりこれで実質倍の強さを手にしたということか。……ステータス100だと、確かレベル6相当だったか?)
守護者の強さは、レベルに依存している。
その中でもレベルが10に到達すると、クラスと本人の資質に合わせて、ステータスに補正が入る仕組みが存在する。
クラスや個人差にもよるが、補正前後で計算すると、最低でも3倍程度は強くなる。
それを鑑みれば、ステータスが50ずつ上昇する和人の場合、レベルが10になった時点での強さは、補正込みと比べても少し弱い程度になるだろう。
だからこそレベル以外による、式神を増やす手段が急務なのだ。
「ま、考えても仕方ない。それより、契約出来る式神が増えたんだ。早速新しい仲間を増やそう」
──キキュゥゥ!
立ち上がり魔力を練り上げる。
頭の中で、どんな式神と契約するべきかを構築する。
(今の俺に必要な要素……)
式神との契約。よく創作では、怪異や土地神などと契約するイメージではあるが、『式神使い』の契約はそれとは異なる。
自身のステータスを参照し、様々なパラメーターを設定していく。そうして設定し創り出した空虚な器に魔力を流すことで、初めて式神が誕生する。
(よし! 構築、完了)
──パンッ!
両の手で合掌し、足元に契約陣を構築する。それから頭に浮かんだ、契約に必要な呪文を口ずさむ。
"契約者の名において命ずる"
"汝、天上へ叛逆せし、守護者であれ"
"我、天上へ叛逆せし、守護者なり"
"人理救済がため、その理、我が契約に応えよ!"
カッと、魔法陣が光輝き、辺り一面を眩い光が覆い尽くす。そして次第に、その光が小さくなっていき、最終的には光は消えていった。
「ふぅぅ。こんな呪文、絶対に誰かに聞かせたくないな。勝手に出るとは言え、恥ずい」
呪文は人それぞれで異なる。
術者の素質や感情などに左右されると考えられていて、例え同じ魔法だとしても、術者が異なれば詠唱も異なる。
恥ずかしさについては目をつむり、頭上を見上げてみれば、クルクルと飛び回っている奴がいる。
なので、手のひらをお皿にしてみれば、そいつは見事着地するので、優しく声をかける。
「これから、よろしく頼むな、『チュン』」
──チュチュン!!
和人が契約したのは、小鳥型の式神。
付与した能力の使用用途から鑑みて、飛んでもらっている方が都合が良かったからだ。
「チュン、早速だが障壁を出してくれ」
そう指示をだせば、バサバサと俺と右肩に乗り、カッと両目が光る。すると、少しだけ分厚い長方形型の光の壁が目の前に出現した。
和人が付与した能力、それは防御用の壁。
更に少しでも性能を上げれるよう、攻撃性能の一切を排除した。
いわゆる足し引きによる能力の向上だ。
「ふむ……」
軽く叩いてみると、ゴンゴンと、分厚い壁を叩いているかのような音が返ってくる。
感覚的に、オークの一撃は防げないと思う。
それでも、一瞬でも拮抗してくれれば、避ける猶予が生まれ被弾も減ると考えた。
しばらく眺めていると、チュンの両目の輝きが消える、障壁が消えていく。どうやら発動時間に制限があるようだ。
「チュン。俺の指示以外の時は、避けれない攻撃に合わせて障壁を出してくれ。無理に出し続ける必要もないからな」
──チュン!
胸を張ってるように見えることから、任せろと言ってるのだろうか。
(コノエもそうだが、感情表現豊かだな)
それからバサバサと俺の肩から飛び降り、コノエの目の前に着陸する。
──チュチュ!
──キュッキュウ!
──チュンチュ?
──キュゥゥウ
──チュッチュン!
──キュルルルルン♪
(何喋ってるのか、全然分からん)
立場的には先輩後輩の関係であるため、チュンがコノエに挨拶をしているんだろうという予想はつく。
(まぁ、仲良くしてくれればなんでもいいか)
「さて、まだまだ先は長い。今日はここで休んで、明日また頑張ろう」
──キュッ!
──チュチュッ!
バッグから掛け布団を取り出す。
それから壁沿いに腰を下ろし、掛け布団に包まる。
流石にガチ寝は出来ない。いつでも動けるよう、半覚醒状態で眠るようにする。
これもゴブリンと戦い続けていたことで身に着けた技能だ。
(あと、どれくらいあるんだろうな……)
願わくば、そこまで深くないことを祈りつつ、コノエとチュンと共に、最初の1日を終えていった。




