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天上の不適合者~クソクラスと言われた式神使いで世界を歪めた者たちへ反逆する~  作者: 風間悟
第2章:メキシコ跡地防衛戦

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メキシコ跡地防衛戦 前編④ 制圧戦艦攻略戦 Ⅰ

─── AM11:46 ───

─── 旧メキシコ首都作戦司令拠点 ───



「どこに撃たれた!! すぐに射線上の守護者ガーディアンたちの安否を確認しろ!」



「北西方向への着弾を確認! 被害規模……半径1kmと推測」


「そんなっ、……ヨセフ1等星、叢雲3等星、ソジュン1等星、ジフン1等星、アレッシオ2等星からの信号、途絶……」


「4等星以下の守護者ガーディアンからの反応もありません! 現状確認できているだけでも700は超えています」


「────」



(開戦直後の、長距離砲撃だと!?)


 次々と報告されていく内容は、どれもが信じ難い内容だった。他の局員たちも、言葉を喪っている。


 不幸中の幸いなのは、その方向に、こちら側のボスに設定された者がいなかったことだろうか。でなければ、今ので終わっていた。



「やられたわね。始まってすぐの砲撃だなんて、誰にも読めやしない」

「…………ソフィア。君の力でもか?」

「そうね。未来を視るのだって万能じゃない。そもそも制限が解除された瞬間に狙われては、打つ手なんて存在しない。忌々しいくらい、見事な一手ね」


「…………」


 ギリッと歯ぎしりするしか出来ない。



「なら、貴女は何故ここにいる。前線に出ていれば、何かが変わったかもしれない」



 他の『ゼロ』たちは、率先して前に出ていたが、彼女だけは違った。聞けば、いつも序盤は司令拠点にいると言う。


「防衛戦が始まれば、ここでの未来視が解禁される。正確な情報を手にすればするほど、星詠みの精度が上がり、作戦指示に役立つ。だから最初は情報収集に専念すると決めているの」


「それが今回、裏目に出たのは否めないわ。ごめんなさい」



「そうですか。…………ところでソフィア」

「何かしら?」

「この戦いに負けた場合、我々は何を()()?」


「…………」



 被害報告以外にも、交戦中の守護者ガーディアンから、次々と敵の情報が寄せられてくる。その報告の中には、ペナルティについての言及も多数ある。


 だが、交戦中であることを加味しても、誰一人としてその内容を言う者がいない。


 まるで、その事実を認めたくないかのように。だからこそ、何を喪うのか、知るべきだと思った。


 そしてソフィアは、重苦しい表情を浮かべながら、その内容を言う。



寿()()

「…………何?」


「寿命よ。この世界に住む人々の、4()0()()()()寿()()を奪う。それが、今回のペナルティらしいわ」


「それと、今回の勝利条件と敗北条件は、どっちもボスを殺すこと。それ以外については何もないわね」



 その言葉に、私含めた局員の全員がどよめく。



「ば、馬鹿な!? 天上はそんなことも可能とするのか!!」


「そうらしいわね。私たち守護者ガーディアンの誕生には、魂が関係しているという説もある訳だし、あり得なくはないわね」

「だ、だが……」


 事前の提示もそうだが、これほどまでに重いペナルティは、一度もなかったことだ。ある意味、事故やペナルティによる死などよりもずっと恐ろしい。


 寿命という死のタイムリミットが、常に付き纏うことになれば、想像を絶する恐怖になってしまう。



「これは、いよいよ滅亡という言葉が、現実味を帯びてきたわね。絶対に負けるわけにはいかない」

「当たり前だっ!!」


(クソッ、私にも、戦う力があれば……)


 いつだって無力感に苛まれる。私に出来ることは、ここで作戦の指示を送り、皆の無事を祈ることだけ。



「落ち着きなさい、笹倉さん。私たちは負けない。だから貴方は、やれることをやって」

「……分かって、いますとも」


「私も、少し無茶をするわ。絶対に勝ちましょう」

「あぁ!」



 嘆く暇はない。

 まずはあの巨大戦艦をどうにかしなければ……。



「それでソフィア。次の砲撃は?」

「……5()0()()()。どうやら、ここに来る前からチャージをしていたようね」


 数ある未来を視て、ソフィアはそう断言する。


 現在が12時02分。

 次弾までのタイムリミットは12時52分か。



「他には?」

「……接近は絶対にダメ。強力な電磁バリアが搭載されている。ぐっ……、最低でも、第Ⅵ階位以上の魔法を一斉に使わないと、突破は難しい」


「でも、バリアが展開している間は戦艦を動かせない、みたい……」


 ポタポタと、ソフィアの鼻から血が流れ落ちる。


「それと、あそこにボスはいない。何処かにボスを乗せた別の戦艦がいると、思う。……けど、どこにいるかまでは、今の情報だけじゃ、分から、ない」


 情報が少ない中で、無理に未来を視たからなのか、かなり脳への負担がかかったようで、ソフィアは片膝をつく。


「ありがとう、ソフィア。少し休んでくれ」

「えぇ。回復したら前線に出るわ。視えたいくつもの未来には、砲身が破壊された光景もあった。私抜きでも突破は可能よ」


 それだけ分かれば、やれることはある。



「よし! 敵戦艦を、呼称『制圧戦艦ヴァンガード』とする!」


「北部、南部に展開している遠距離攻撃に秀でた守護者ガーディアンたちを中心に、砲身への一点集中攻撃を行うよう、通達しろ!」


「前衛職は、その間に妨害してくるであろう敵の迎撃に当たれ!」


「残りの者たちには、ボスの索敵を行いつつ、こちら側のボスが誰であるかの調査に当たらせるんだ」



──はい!!



 局員たちにそう指示をすると、一斉に守護者ガーディアンたちへ通達が行われた。



─── AM12:06 ───

─── 旧メキシコ首都から北部地点 ───



「了解しました。…………藤宮さん!」


 断続的に襲いかかってくる敵を斬り払いつつ、藤宮さんを呼ぶ。



「聞いてたよ。アレを破壊するんだね」

「あぁ。だけど、()()()()()は使うな。現状、全ての魔力を使い切るんだ。自動回復も雀の涙ほどだし、マジックポーションで回復出来る量も、今の藤宮さんにはほとんど意味がないんだから」

「うん、分かってる」


 であれば後は、指定ポイントまで行くだけなのだが、その前にやらなければならないことがある。



「クソったれがぁぁ、よくも仲間をぉぉ!」

「許さない!!」


「ケビン、アビー! 魔力を無駄に使うな! すぐにガス欠になるぞ!」

「黙ってろ! 向こうには、マークがいたんだ! それなのに……」


(知り合いがいたのか)



 気持ちは分からなくはないが、戦場で我を喪えば、次に死ぬのは自分だぞ。


 あまり時間はないが、敵を斬り伏せつつ、二人の説得を行う。


「だったらその怒りをアレにぶつけろ! 通達が来ただろ? すぐに移動しないといけない。アビーの火力も必要だ!」


「うっさい! そんなの分かっているわよ! でも、でも……」

「お願いします! どうか、今は……」

「…………っ、分かっ──」


「っ! 藤宮さん、アビー、下がれ!!」

「「っ!?」」




「う、うわぁぁぁあああ!!」




 藤宮さんたちに下がるよう指示すると、物陰に隠れていた敵が、()()()を持って叫びながら突撃してくる。


 あれが何かは分からない。だが俺の直感が、奴が持っている物は危険だと判断した。


 そして藤宮さんたちが下がったことで、標的をケビンへと変え、突撃する。



「しゃらくせぇ!」

「止めろケビン。そいつは殺すな!」



 言葉での静止は届かず、ケビンは勢いよく斧を横に振り、その者を両断する。


 だが、相手が勢いがついていたことで、上半身だけがケビンのすぐ近くにまで到達する。


 そして──



「あ? おめぇ、何を持って」



「ば、()()()()()()()()()に、栄光あれぇぇぇ!!」



 絶命間際、その言葉を叫ぶと同時に、辺り一帯は()()による莫大な熱量と共に、消し飛んだ。



***



「ゴフッ……、な、何が……」


 耳鳴りが酷いし、全身が焼け爛れたみたいでいてぇ。


 なぜ自分が生きているのか、それが分からない。


(アビーは? それに、あの日本人どもは?)



──シャァァ……



「なんだ、こいつ……、まもの、か?」


 黒焦げになっている魔物は、まるで俺を庇うかのように、自身のツルを周囲に展開していた。


 まさか、俺を守った?


 だが、ボロボロと少しずつ崩れている。



「プラン……、ゆっくり、休め。ありがとう」


──シャァァァ



 あの日本人の声を聞いて安心したのか、フッと力が抜けるように、消えていった。



「おめぇ、生きて…………がっ!?」


 最後まで言い切る前に、そいつに俺は殴り飛ばされた。



「時間がない。その程度で済んだことに感謝しろ」

「んだと、てめぇ!! ……っ!」


 文句を言おうとしたが、言えなかった。俺と同じで、こいつも全身が焼け爛れていたからだ。むしろ、俺以上に……。



「翡翠、頼む」


 そう言うと、どこからともなく、別の同じ魔物が数体現れたかと思えば、パァッと、俺たちの身体を癒し始める。


(なんだ、これは……)



「てめぇ、誰だよ」

「取るに足らない10等星だよ」


「神薙君!!!」

「ケビン!!」


「アビー、無事だったのか……」


 見れば、この二人はほとんど無傷ときている。何をしやがった。



「神薙君、ひ、酷い傷!! 私たちを庇うから!」

「いい。それに、感謝を言うのなら俺の式神たちにしてくれ。あいつらが出てこなかったら、()()()()

「無茶、しないでよぉ」

「……すまん」



 まさか、自爆特攻を仕掛けてくるとは思いもしなかった。防御系の式神たちが一斉に出てきて、その身を犠牲に守ってくれなかったら、全滅していたところだ。


 おかげでチュンを含め、ほとんどの防御系の式神たちがしばらく使えなくなったが、命があることに意味がある。



「それより、早く合流ポイントに急ごう。時間が惜しいし、そこら中で爆発音が聴こえる。モタモタしてると、負けるぞ」

「…………うん」


「ケビン、立てますか?」

「あ、あぁ……」


「こい、()()()


──ケェェェン!



 超大型の鳥型式神、『ガルダ』を召喚し、藤宮さんと共にガルダの背に乗る。



「な、なんだよ、こいつは……」

「俺の式神だ」

「式神? ……てめぇ、不適合者か!」

「だからなんだ。悪いが、下らない問答をしてる時間がないんだ。さっさと行くぞ」


 自爆特攻なんていう、クソみたいな戦法を取られて、今すぐにでも今回のボスを殺したい衝動を抑えているんだ。


 無駄な時間を浪費するわけにもいかない。



(人の命をなんだと思ってやがる)



「ケビン、行きましょう。ここは、彼らが正しい」

「…………あぁ」


 二人もガルダの背に乗せ、合流地点へと飛び立つ。


 上空から現在の戦況を見るが、どこも芳しくない状況だった。



「色々な所で、爆発が……」

「私たちの所と同じく、自爆をしているのでしょう」

「クソッ、卑怯なことしやがって……」

「…………視たところ、あいつらの魔力があの爆弾に収束しているようだな」



(魔法が使えない代わりの対応策? いや違うな)




──ば、()()()()()()()()()に、栄光あれぇぇぇ!!




 奴のあの時に見せた表情。ソレは()()だった。暴力なのか、政治なのかは分からないが、彼らは無理やり、死ぬことを強要されているんだ。


「人を消耗品のように使う。敵の世界はかなり陰鬱な世界のようだな」

「許せない……。こんなの、もう戦いでもない……」


「必ず報いを受けさせてやる」

「おい不適合者、見えたぞ」



 ケビンが指差す方向を見てみれば、既に多くの守護者ガーディアンが集合していて、魔力を練り始めていた。


 次に戦艦の方を見てみれば、あらゆる所から、弾幕の雨が降り注いでいて、前衛たちがかなり苦しそうに見える。


 更には、報告にあった電磁バリアが展開されていて、生半可な遠距離攻撃じゃ、びくともしないようだ。



「空から降ろす。二人は他の守護者ガーディアンたちと一緒に、最高火力が出せる魔法の準備をしてくれ。ケビン。ろくに魔力が残ってないんだろ? 二人の護衛でもしてろ」

「なっ!?」

「神薙君は?」


「俺は、()()()()をする」

「危険だよ! 無線だって壊れてるのに」


「信じろ」

「………………絶対、戻ってきてよね」



「あぁ。そろそろ着く。3カウントで、降りろ!」


 そう告げれば、二人はコクリと頷き、遅れてケビンも頷く。状況判断はまだ出来るようだ。



──スリー

──ツー

──ワン



「いまだ!!」


 バッと、三人は一斉に飛び降る。それを確認し、すぐさまガルダを魔力操作で強化した後、最高速で、ある方向へと向かう。


 流石に一人だけで時間稼ぎは不可能だ。少しでも手が欲しい。



─── PM12:20 ───

─── 旧メキシコ首都から南部地点 ───



「倉瀬、上空から何か来る!」

「あぁ!? 別の敵か!?」


「アレは……鳥?」



 確認するよりも早く、その物体は俺たちのすぐ近くへと落ちる。


(くそっ、あの特攻のおかげで、戦線がめちゃくちゃだって言うのに……)



 拓真たちと身構えていると、『倉瀬!』と、土煙の中から和人の声が聞こえてきたかと思えば、全身ボロボロの和人がその中から走ってやってきた。



「和人!? お前、どうした!!」

「え、神薙君?」

「なんでここに神薙がいる?」


「話しは後だ。今すぐ手を貸してほしい」

「何する気だ」

「あの戦艦の弾幕をどうにかしたい。空からバリアの外縁部ギリギリの所まで強襲し、そこから遠距離攻撃で弾幕を潰す」


「近づけば、その分威力も上がるし、仮に壊せなくても、こっちに気を引きつけられれば、それだけでもいい。今は少しでも、後衛職の準備が整うまでの、時間を稼ぎたい」



「理解した。倉瀬、比嘉、お前ら行け!」

「おいおい。いいのか、遠見? こっちだって……」

「お前らしかまともに遠距離攻撃できねぇだろ。俺は空じゃ無力なんだからよ」



「はぁ……、分かった。拓真、こっちは任せるわ」

「あいよ」


「神薙君。気休め程度だけど、3人にバフをかけるから少しだけ待ってて」

「ありがとうございます、山口さん」



「ところで和人、無線はどうした」

「自爆特攻で壊れた」

「なら、俺の予備をやる」


 山口さんからバフをもらっている間に拓真から予備の無線を受け取る。


「さっき笹倉さんから追加の報告があってな。あの自爆特攻、装備者が死んだ時に発動するらしい」

「クソだな」

「あぁ。……んで、仮に殺しても、爆発までにはほんの少しだけ猶予があるから、その間に破壊すれば問題ないそうだ」


「それは助かる。にしても、もう解析がすんだのか?」

「ソフィアさんの力だとよ」

「なるほど」



 流石、最強の『ゼロ』の称号を持つ者は違うな。



「よし! 準備OKだよ!!」


「ありがとうございます!」


 身体強化の魔法をかけてもらったので、そのまま二人をガルダに乗せ、飛び立つ。



「うぉぉお!」

「空を飛ぶとか、新鮮だな」

「他の式神たちも呼ぶ。撹乱しながら接近するから、舌、噛むなよ?」


「「おう!!」」



 イズナたち鳥型の式神を一斉に展開する。数としては80しかいないが、それでも撹乱するだけなら十分すぎる戦力だ。



「すげぇな、式神使いって!」

「ここまで展開出来るのか。和人、魔力は大丈夫なのか?」

「召喚のコストは、そこまで重くないから大丈夫だ。それより、準備はいいな?」


「あぁ」

「問題ない」


「よし! じゃあ皆、行くぞ!!」



 全速力で空を駆け上がり、戦艦へと突撃する。





 次弾砲撃まで、残り25分。

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