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天上の不適合者~クソクラスと言われた式神使いで世界を歪めた者たちへ反逆する~  作者: 風間悟
第2章:メキシコ跡地防衛戦

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メキシコ跡地防衛戦 前編③ 開戦

─── AM10:00  ───

─── 旧メキシコ首都から北部7km地点 ───



 メキシコは広大だ。


 今回の防衛戦では、開戦位置が不明であるらしい。だから最も確率の高い首都近辺であると過程し、守護者ガーディアンたちが展開されている。



「お前らが、俺たちと組む守護者ガーディアンか?」


(英語……)



「あぁ。俺は神薙、こっちは藤宮さん。2人とも10等星だ」

「よろしくお願いします」


「はっ、10等星を寄越すとか、ジャパニーズはよっぽど人材不足なんだな」

「ケビン、言い過ぎですよ。私たちに比べたら、どの国もそんなものでしょ?」

「ははは、それもそうだな!」


 見たところアメリカ人だな。まだ10等星の階級だから仕方ないとはいえ、いつまでも舐められてばっかりなのは、嫌なものだ。



「あんたらは?」

「俺はケビン。3等星だ。んでこっちが相棒のアビー。同じく3等星だ。お前らよりも格上だよ」

「よろしくね」


 倉瀬と同じ階級か。まぁ同階級だからといって、同じくらいの強さかと言われたら、怪しいな。どの階級でもピンキリだから。


 それにしても、他のメンバーはどこだ?



「あぁ、よろしく。ところで、指定位置に来たのは、お前らだけか? 通達だと、あと3人は来るって話だったけど……」


「イタリアの3人組だろ? そいつらなら、別の場所に()()()()()()()

「…………は?」

「え? 行って、もらったって……」


 まさかすぎる回答が来て、二人して唖然とする。



「中々俺たちのところで防衛戦が始まらなくてな。聞けば、ここが第1候補だって言うんだろ? だから手柄を少しでも挙げるために、あいつらには退場してもらったって訳だ」


「お前らも邪魔になりそうだったら潰してたかもしれねぇけど、弱っちそうだし、そこら辺にいるだけなら、認めてやるよ」


「「…………」」



 俺は今、本気でこの人らを見捨てるべきかと、真面目に考えてしまった。理由もそうだが、こいつらの動機が俺たちとは相容れない考えだからだ。



「か、神薙君……」

「言うな」


(そりゃ、中にはゲーム感覚の奴だっているよな)



 俺だって、実はこれは夢で、そういう妄想なんだと思う時がないわけではない。



「つーわけで、俺らの邪魔はするなよ?」

「…………分かった。だけど1つ聞かせてくれ」

「あん?」

「仮に、ここへ侵略者が来たとして、()()()()は?」

「は? んなのなくたって、俺らはアメリカだぜ? 余裕余裕。アビー行くぞ」

「は〜い」


 まともに作戦すら練ることもなく、二人は何処かに行ってしまった。


 俺らだって実戦経験はない。だからこそ、慎重になるべきだと思うんだが……。



「神薙君、どうしよう。このままじゃ……」

「まだここに来るとは決まってない。だけど……、もし来て、それで居なくなるのも目覚めが悪いよな」


 盛大にため息をつく。ひとまず耳に着けている無線機を通して、笹倉さんに事情と二人のフォローをする旨を伝えることにした。



(笹倉さんは、結構いると言ってはいたが、頭が痛くなるな)



「プラン、チュン」


──シャァァア!

──チュチュン!



「すまないが、彼らを見守ってくれないか? 俺たちもなるべく近くにいるつもりだが、どうなるかは分からない。危なくなったら守ってほしい」


──チュン!

──シャァァシャァァ


「ありがとな」


 礼を伝えると、プランは地面へと潜り、チュンは低空で飛びながら二人にバレない位置へと向かって行く。



「ふふっ、やっぱり優しいね。神薙君は」

「あれでも、同じ守護者ガーディアンだからな」



─── AM11:00 ───



(もう、いつ防衛戦が始まってもおかしくない時刻だな……)


 過去全てにおいて、防衛戦は11時〜12時の間に始まっている。


 柄にもなく、心臓がバクバクしている。初めての実戦。命をかけた戦い。これまでとは違う緊張感がある。


「そろそろ、始まるんだよね」

「あぁ。絶対に藤宮さんのことは守るから安心しろ」

「なら、私が神薙君を守るね。2人で一緒に生き残ろうね」

「絶対に」



─── AM11:20 ───



 張り詰めた空気の中、それからも二人で作戦を練りつつ、ケビンたちの様子を伺う。


 すると、キィィィィンッと、まるで金属同士がぶつかったかのような音がそこら中から突如聴こえ始める。



「ぐぅっ」

「な、なに!? これ……」


「へっ、ようやく()()()か」

「そのようですね」



 少し離れた所にいるケビンとアビーの身体から、少しずつ魔力が迸る。まるで()()()()()()()()()に武者震いをしているかのようだった。



「か、神薙君、アレ!」

「? …………っ!?」



 藤宮さんがおもむろに空を指差す。その方向を見てみれば、割れた空がバチバチバチバチと、胎動していた。


 それと同時に、ウィンドウが一斉に出現し、俺たちに、その事実を告げる。



「そうか、()()か。……それに」

「か、神薙君!? こ、この……、()()()()()って……、う、嘘、だよね?」


 藤宮さんは、防衛戦の場所がここであることと同時に提示されたペナルティについて言及する。


 狼狽えるのも無理はない。俺だって、認めたくない。


 これまで一度も、どんなペナルティが発生するかについて、知らされることはなかったと聞く。


 敗北の地が防衛場所となったことも踏まえて、あまりにも異質だ。



「おいおい。なんだよ、こりゃぁあ!?」

「ちょっと、こんなの聞いてないわよ!?」


 少し離れた所にいるケビンたちも、その内容には流石に狼狽えているようだ。



「神薙君。この、内容って……」

「藤宮さん、負けた後のことは考えるな」

「で、でも! だって、私たちが、負け、たら……」

「負けない」

「────」



 負ければ、確かに甚大な被害となる。それも、いつ死ぬかと分からない、絶望の運命が待ち受けている。


 でもそれは、負けたらの話だ。もしもの話に興味はない。



「負けられない戦いが、より負けられない戦いになっただけだ」

「…………そう、だったね。うん……、絶対に負けちゃ、ダメだ」


 ギュッと、杖を握る力が強まる。

 もう、悲しむ人たちをこれ以上増やしてはならない。だから私は、神薙君と一緒に戦うことを選んだんだから。



 それから更に20分後、メキシコ跡地一帯に、防衛戦を開始するアナウンスが流れ始めた。



"これより防衛戦を開始します"

"参加者たちは節度ある戦いを"

"神を愉しませることを忘れないように"



 そのアナウンスが流れ終わると同時に、割れた空から無数の光が降り注ぐ。


 それが地表へと到達すると、そこから一斉に、()()()()()()



「藤宮さん!!」

「っ!?」



 近くの光から現れた数人が、私たちの方へと迫ってくる。


 そしてそのうちの一人が、ビュッと、私に向けてナイフの刃を突き刺そうと、物凄い勢いで襲いかかって来た。


(見えてるよ)



 もう、この間のような油断をする訳にはいかない。落ち着きながら、杖の柄で、そのナイフを弾く。


 そして、ナイフが弾かれたことで体勢が崩れたその人に向けて──



(ごめんなさい)



「ジオ・グレイヴ!!」


「っ!? や、やめ、ぐぎゃあぁあああ!?!?」



 目を逸らしたい気持ちをグッと堪え、その光景を脳裏に刻む。


 選抜試験の時は防御用として使ったけど、元々は攻撃用の魔法だ。地面から生み出された巨大な岩が、その人を捕らえ、プチュッと、聞きたくもない音を出しながら、その者を()()した。



(ちゃんと、出来た……)



 震える手を押さえつつ、すかさず周囲を警戒する。幸いなことに、さっきの集団以外、私たちの周りに敵はいないようだ。


 そして残りの人たちが向かっていった神薙君の方へと顔を向ける。



「神薙君、そっちは…………っ!?」


 神薙君の方向に顔を向けた瞬間、視界に収めたその光景に、思わず目を見開いてしまった。



「かん、なぎ……くん」



 視線の先には、私たちに襲いかかってきた人たちが、既に神薙君の手によって斬り伏せられていた。


 刀からは、刀身を伝い、ポタポタと、血が滴り落ちている。


 そして、その刀を握る神薙君の眼が、あまりにも冷たくて、思わずたじろいでしまった。



「藤宮さん、無事か?」

「う、うん……」


 タタッと、神薙君の元に駆け寄る。


「か、神薙君、は?」

「俺の方は大丈夫。ケビンたちの方も、今のところは大丈夫そうだ。けど、さっきので興奮しているのか、無駄に魔力を使って、敵を薙ぎ払ってたけどな」


「そ、そう……。じゃあ、危なくなりそうだったら、助けないと、だね……」

「……怖いか?」

「…………」


 正直に言えば、少しだけ怖い。神薙君の目からは、相手への情が、一切感じられないから。


 でも同時に、氷室先生の言葉を思い出す。




──肝に命じておけ。殺しを正当化するな。その罪を背負え。自分を守るため、そして誰かを守るために、己の心を血で染めろ




 どうやら私は、まだ本当の意味で、それを理解しきれていなかったらしい。


 それによく見てみれば、刀を握ってる左手が小さく震えている。きっと私と同じ気持ちを抱いているはず。それでもなお、自身の心を、血に染めると覚悟しているんだ。



「藤宮さんはそれでいいんだ。俺のように、情を消さなくていい」

「ううん。私も、一緒に背負うよ」


 そっと、刀を握る左手を優しく包み込む。その手は少し、冷たかった。



「……分かった」


 それだけつぶやくと、神薙君は斬り伏せた者たちを見る。



「にしても、なんだこいつらは」

「人なのは、間違いないよね。でもこれはなんだろう。……鎖?」


 改めて見てみれば、その人たちの足首や首元などに、鎖に近い器具が取り付けられていて、更には所々鞭で叩かれたかのような、痛々しい生傷もあった。


 まるで、物語に出てくる奴隷たちみたいだ。



「どうやら、今回攻めてきた奴らの世界は、奴隷に近い人間を使うようだな。ステータスも、そこまで高くないようだし」

「じゃあ、これはまだ様子見ってこと?」

「だろうな。俺たちを分析する目的かどうかまでは分からな────」



 言い切る前に、神薙君はバッと、別の方向へと顔を向ける。そして『まずい』と、それだけをつぶやく。


 それに釣られて、私もその方向へと顔を向けるのだけど、そこには私たちの想像を超えるものが鎮座していた。



「何、アレ……」



 そこに現れていたのは、戦車のようなキャタピラが付いた、とても大きな戦艦? ここから7kmは離れているにも関わらず、それでもなお大きいと言えるくらい、巨大な建造物だった。


 更には、一目で分かる巨大な砲身があり、魔力感知で魔力を感じ取ってみれば、膨大な魔力が、その砲身に()()()()()()()


 まさか…………。


「だ、ダメぇ!」

「…………止めろぉ!!」



 そんな私たちの願いも虚しく、巨大な砲身に収束された、膨大な量の魔力による砲撃が、その射線上に存在する全ての物体に向けて、放たれた。

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