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天上の不適合者~クソクラスと言われた式神使いで世界を歪めた者たちへ反逆する~  作者: 風間悟
第2章:メキシコ跡地防衛戦

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防衛戦選抜試験⑥ 試験を終えて

 もし今回の戦いが、本気で命を取り合う死合であれば、こうはならなかっただろう。


 ただ勝ちたいという想いだけでの戦い。その勝敗を分けたのは、奢りでも油断でも実力でもない。



「ごふっ……、くそ、が……、俺の、一瞬の動揺が勝敗を、分けたか」

「ごふっ……、互いに全力だったが、本気じゃなかった。だからこその……、動揺だったな」


「そう、だな……。とりあえず、少し早いが……、2等星昇進、おめ、でと……、さん」



 それだけ伝えると、フッと力が抜けたのか、拓真は後ろへ倒れる。


 そしてこの場に立っているのは俺一人。



「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…………」



「ありがとな、拓真」



***



 死んでからどれくらい経ったかは分からないが、ひとまず起き上がれるだけの力が戻ってきた。


「あぁ〜、()()()()()()の久しぶりだな」



 俺は過去に二度、歳下の守護者ガーディアンに負けている。


 一人は、圧倒的な力の前にねじ伏せられた。

 もう一人は、初見にも関わらず、すべての攻撃を見切られ、なすすべなく殺された。


 どいつもこいつも、人を小馬鹿にしてくる奴らだったが、和人は違う。


 真正面から全力でぶつかり合った末での敗北だ。これほどまでに満足の行く戦いは初めてだ。



「ま、楽しかったからいいや」



 起き上がり、待機所へと向かう。


 するとそこには──



()()なんかして、何してんだ、和人?」

「おっ、起きたか、拓真。1時間で起きてきたのは、新記録だな」

「うっせ。んで、なんだありゃ?」


 俺の目の前には、あの嬢ちゃんに怒られている真っ最中なのか、和人が正座している光景が入ってきた。



「まぁ、お前との戦いが、結構ヒヤヒヤものだったからな。それで反省会、してるんだと、思う」

「お、おう……」


 見た目の可愛さに反してあの嬢ちゃん、しっかり和人を尻に敷いてるんだな。周りの奴らも、少し引いてるぞ。




「もう、変な無茶はしないでって、言ったよね?」

「確かに言ってたが、別に本当に死ぬわけじゃないんだから……」

「そういうことじゃないよ! 見てて、物凄く怖かったんだよ?」

「ぐっ」


「それに、式神も必要最低限しか使わなかったみたいだし。もっと多く展開してたたみかけてたら、()()()()()()()()()よね?」



(いやあの嬢ちゃん、めっちゃはっきり言うな!?)



 つかやっぱり和人の奴、式神をセーブして戦ってたのか! 人のことは言えないが、少し傷つくぞ。



「えと、試験は勝つのが目的じゃないから……」

「言い訳はダメ! ……コノエちゃんも、神薙君に感化されてばっかりはダメだからね?」


──キュルゥ……



「あぁ〜、嬢ちゃん。いや、これは失礼か。藤宮ちゃん、それくらいにしてくれ」

「あ、遠見さん。もう大丈夫なのですか?」

「まぁな。ここで死ぬのには一応慣れてるからな。和人、次があったら、今度は俺が勝たせてもらう」


「いや、次も俺が勝つ」

「もぉう。神薙君、全然反省してないよね?」


 助けに入ったつもりだったが、藪蛇を突いたかもしれない。結局和人は20分くらい、藤宮ちゃんの説教を正座しながら聞くことになった。



***



「諸君、選抜試験お疲れ様。今回の参加者たちは皆、前回よりもハイレベルであることを確認させてもらったよ」


「特に、Fランクと呼ばれた者たちの成長には目を見張るものがあった。我々の常識というのが、如何に甘かったかを痛感するほどに」


「さて、試験を終え休みたい気持ちもあるだろうが、我らにはゆっくりするだけの時間はない。先ほど君たちのスマホに、今回の選抜試験の内容を元に決定した、防衛戦への配属先を送ったので見てほしい」



 試験開始から4時間後、案内人ポーターが言っていた通り、俺たちは夢現の世界(アルカディア)から守護者協会へと再転移された。


 その間、多くの守護者と交流をしていたが、藤宮さん然り、俺然り、既にFランクだの、不適合者だのでバカにするような人らはいなかった。


 誰かに認められるのは、悪くない気持ちだ。


 そして、笹倉さんの指示に従い、俺たちの配属先を確認する。



 そこに記されていたのは──



「神薙君、何処だった?」

「……()()()()()()だ」


 すべてが始まった場所。倉瀬から聞いた話では、今回の防衛戦においての第1候補だと言う。


 これは期待していると、捉えていいのか?



「全部が始まったところだね。どうして天上は……」

「考えても仕方ないことさ。まずは侵略者を押し返すところからだ」

「うん」




「君らは1週間後の11月10日。3手に別れ、他の仲間たちと共に世界を守る戦いへと赴く。そして次に再会出来るのは防衛戦が終わった後」


「戦うことが叶わなかったとしても、恥じることはない。今回は自分たちではなかったと言うだけだ」


「だからどうか、戦場に立つ仲間たちの生還と、侵略者たちを押し返し勝利することを、祈ってほしい」



「何度も君たちに、この言葉を送っているが、やはり慣れるものではないな。……最後に言う言葉は1つ。()()()()()、人類の希望たちよ!!」



「残り1週間、悔いのない時間を過ごすように!! 解散!!」




 その言葉と共に、全員の顔つきが変わる。ここにいる者全員、死ぬつもりはない。だけど、命をかけた戦いである以上、絶対なんてどこにもない。


 だからこそ、限られた時間の中で、各々思い残すことがないよう、これからを生きていくんだろう。



 そしてぞろぞろと、会場から守護者ガーディアンたちが出ていく。



「藤宮さん、俺たちも帰ろうか」

「うん。約2ヶ月も離れてたから、明日、お姉ちゃんに会ってくるよ。……神薙君は?」


「家族への墓参り。話すことが沢山あるからな」

「……私も、着いていっていい?」

「それは構わないが、どうした?」

「私もお母さんたちに挨拶したいから。それと、パーティーメンバーだから、かな」


「なんだそりゃ。……でも、そういうことなら、俺も藤宮さんのお姉さんと会ってみようかな」

「いいの?」

「あぁ」



 明日の予定を軽く話しつつ、二人で会場を後にする。そして外に出たタイミングで、倉瀬たちから声をかけられた。



「和人、お前らは何処だった?」

「俺と藤宮さんはメキシコ跡地だったよ。倉瀬たちは?」

「俺たちも、お前と同じでメキシコ跡地だったよ」


 顔を後ろに向けると、三人の守護者ガーディアンが立っていた。この人たちが、他のパーティーメンバーか。



「左から山口浩子やまぐちひろこ森山純太郎もりやまじゅんたろう比嘉尊ひがたけるだ」


「「「よろしく〜」」」


「お前、拓真を殺したんだって!? 不適合者のくせに、すげぇじゃん!」

「っていうか、遠見君殺せるってことは、1等星に近いってことよね。ほんと凄いよ!」

「拓真、また歳下に負けたのかよ。何お前、そういう宿命でも背負ってんのか?」


「うっせ、お前ら!!」



 ずいぶんと仲のいいパーティーだ。これだけで、如何に信頼されているのかが分かる。



神薙和人かんなぎかずとです」

藤宮咲ふじみやさきです。よろしくお願いします、皆さん」



「和人、それと藤宮ちゃん。分かってるとは思うが、今回のはあくまで予行練習。実際に死ぬ訳じゃないから、多少なりとも抵抗感が和らいでいるだけだ」


「実戦となったら、また違った感覚がある。だから気をつけろ」



「分かってる。ありがとな、拓真」

「ありがとうございます!」


「時に和人たちはこの1週間どうするんだ?」


「ダンジョンに潜るのは一旦止めて、墓参りとか諸々しようかと」



「そうか。んじゃ、次会う時は現地だな。大体の奴らは前日が2日くらい前には集まるから、お前らもそれくらいには来いよな」

「あぁ。またな、倉瀬」



「2人もまたね〜」

「「じゃあな〜」」



 別れの挨拶をして、倉瀬たちは帰っていく。なんというか、死ぬかもしれない戦いが控えているのに、自然だ。


 それは藤宮さんも感じてたようで、『なんだか、いつもの日常みたいだね』とつぶやいている。



「そうだな。これがあの人たちの日常なんだろ」

「私たちも、そうなるのかな」

「これから幾度と、防衛戦に参加し続けたら、そうなるかもな」


──キュルキ〜

──チュチュ、チュ〜



 タイミングを見計らっていたのか、ポンッと、コノエたちが勝手に出てきたと思えば、早速お腹すいたアピールをする。


 こいつらもこいつらで、図太い神経をしてる。



「ふふっ、帰る前にご飯にしよっか」

「なら、何処かで食べるか。樹海ダンジョンのおかげで、多少は余裕できたし」

「そうだね。でも、まだまだ油断は出来ないけど」


「ま、それはこれから解決するだろ。高ランクのダンジョンにも潜れるようになれたんだし」



「希望的観測ばっかりだと、すぐに無くなるからね?」

「はいはい」

「もぉう」



 コノエたちを肩に乗せ、ひとまずの日常へと戻ることにした。

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