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天上の不適合者~クソクラスと言われた式神使いで世界を歪めた者たちへ反逆する~  作者: 風間悟
第2章:メキシコ跡地防衛戦

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準備期間③ 武器製作に向けた素材集め

─── 富士の樹海特殊ダンジョン C層 ───



「万雷、痺れさせろ! クウ、壊音波!」


──ブルルー!

──キィィィィン!



 カニ型の魔物に対して、二匹の式神の攻撃が降り注ぐ。アーマードクラブはC()()()()()()()で、殻がかなり硬いと聞く。であれば万雷の雷と、クウの音響攻撃はかなり効くはずだ。


 現に奴は、その攻撃に怯んでいる。



「藤宮さん、今だ!」


「うん!」



"我、星の巫女が唱える"

"貫くは紫電の槍"

"悪しき者への裁きをここに!"

"サンダー・スピア!!"



「っ!?!?!?」


「そこぉ!!」



 藤宮さんが唱えた魔法により、アーマードクラブにかなりのダメージが入り、その硬い殻がボロボロと崩れる。


 そしてその隙を逃さず、俺の刀で剥き出しとなった肉に刃を突き刺す。


 そうしてようやくアーマードクラブはサァ〜ッと灰になっていく。



「和人、後ろじゃ!!」

「神薙君!」



 先生たちの声が聞こえる。視認する時間はない。恐らく既に攻撃モーションに移行しているはずだ。


 とはいっても、それは()()、だけどな。



「っ!?!?!?!?」



 突如として地面からいくつものツルが飛び出してくる。そして、そのツルがアーマードクラブを拘束していく。


「先生!」

「やれやれ、老体を酷使するな! 錬成槌!!」


 先生の振るうハンマーが拘束した敵へと当たる。そしてみるみるうちに、当たった部分からグニャリと、形状が変化し、最後はよく分からない鉱物と化す。


 『錬成槌』。

 効果は、呪いや状態異常に近い攻撃スキルで、耐性がなければこの通り。鉱物へと変化してしまう、恐ろしいスキルだ。



「これで、一通りの敵は狩り終えたか?」

「神薙君、お疲れ様」

「あぁ、藤宮さんもお疲れ。いいタイミングだった」

「ほんとに!? 良かったぁ」

()()()も、お疲れ様」


──シャァァア



 ガガガと、地面からツルの集合体が出てくる。これは俺の式神で『プラン』と言う。今回は拘束目的で呼び出したが、ツルによる攻防一体を得意としている。



「先生も、お疲れ様です」

「まったく。嬢ちゃんはまだしも、お前のは何度見てもヒヤヒヤするわい」

「そりゃ、先生から見ればそうでしょう」

「うっさい。式神使いはその物量が本質じゃろうて。ならもっとそれを主軸にした戦い方もあるじゃろ」


「それだと、テイマーと変わらないですよ。共に戦う。それが式神使いの本質です」

「まったく……」



 そう文句を言いながら、先生はアーマードクラブがいた所へと歩き出し、魔石の他にドロップしたアイテムなどを手にする。


「氷室さん、目標数には到達しましたか?」

「そうじゃな。あともう10体程は必要じゃな」

「そうですか。あともう少しだね、神薙君」

「だな。藤宮さんの()()()()()のためにも、頑張るさ」


 そう、今俺たちは、ここ富士の樹海にある特殊なダンジョンで素材集めをしている。


 そして、何故こんな流れになったかと言えば、時間は4日程前に遡る。



─── 4日前 ───



「あぁ〜、和人。おめぇ、本当にレベルが上がったっていうのか?」

「そう言ってるでしょ」

「んでもって、お前の女じゃねぇと?」

「っーーーーー!!」


「今はまだ大切な仲間です!」


──キュル……

──チュチュ?



 邂逅初っ端から色々間違いだらけだったので、懇切丁寧に、先生にここ最近のことを話すことにした。


 よもや、いきなりお前の女か?と言われるだなんて、思いもしなかったぞ。



「ほぉ〜ん。とりあえず嬢ちゃん。変な勘違いしちまって悪いな」

「い、いえ。だ、大丈夫、です。き、気にしてませんので、はい……」

「…………」


 顔を真っ赤にしながらそう言っても、説得力の欠片もないだろうにと思う。


 若干気まずい空気が流れている中、先生がちょいちょいと呼ぶので、少し離れたところで先生と話す。



「何ですか?」

「おめぇ、マジでその気すらねぇのか?」

「…………」


 視線だけを、藤宮さんの方へと向ける。未だ顔を真っ赤にしている彼女を心配してか、コノエたちがペロペロと、顔を舐めている。


 その気がないだと?

 むしろ──



「普通、強くなりたいという理由だけで、彼女をパーティーに誘うと思いますか?」

「おめぇならあり得る。でもそうか。和人、おめぇも1人の男だったわけだな!」

「ちょっ、叩かないで下さい!」


 『がはははは』とバシバシと背中を叩くので、物凄く痛い。この人、無駄にレベルが高いんだよな。



「おめぇらの馴れ初めは気になるが、ひとまず茶でも淹れるか。久しぶりに愛弟子が来たわけだしな」

「…………弟子、ね」


 そう言われるとむず痒いものだ。特にこの人から言われるとな。


 そうして藤宮さんの調子が落ち着くまでの間、三人と式神たちで暫し、お茶を飲むことになった。



***



「さて、嬢ちゃんの調子も戻ったことだし、遅くなったが、先ずは自己紹介から始めるか。……わしの名は氷室源ひむろげん。クラス『錬成師』を持つ、今年で62の、所謂()()()()守護者ガーディアンじゃ」


「え!? だ、第一世代!?」

「がははは、驚いたか? そうじゃ、今なお現役で生きている第一世代は100もおらんからな。わしはその貴重な1人と言うわけじゃ」


「────」


 開いた口が閉じないのか、ギギギと藤宮さんは俺の方を見る。なので軽く説明することにした。



「氷室先生の言ってることは正しいよ。日本では5人しか残っていない第一世代の守護者ガーディアン。その中でも先生は、10年前までは現役で前線にいたくらいだ。レベルは確か……210でしたか?」


「そうじゃな。錬成師は元々戦闘職ではない。だからレベルを上げようにも、やはりきつくての。そこいらで前線から退いて、本格的に武器製作に力を入れるようにしたんじゃ……」



「なるほど……、あ、ごめんなさい! 改めて、藤宮咲ふじみやさきと言います。その……、神薙君とは、同じパーティーで……」

「がははは! そう畏まらなくていい。和人の仲間なら、わしにとっても仲間じゃからな!」


 笑いながら、そう豪語する先生を見て、心の中でほくそ笑む。


 いいぞ、この流れに乗っていければ、思惑通りにことが運べる。そう考え、ここは一気にしかけようと、先生に声をかける。



「なんじゃ?」

「なんじゃ、じゃないですよ。今日俺たちが来たのは、彼女の()()()()をお願いしに来たんですから」


 そう言ってみれば、ハッとした表情を浮かべながら、コクリコクリと、藤宮さんが頷く。正直言って可愛い。



「そういえば、そんなことを言うておったの。何が欲しいんじゃ?」

「えと……、杖を作ってほしく……」

「ふむ……」

「出来れば魔力効率の良い物にしてほしい。彼女が扱う専用魔法は、どれも燃費が悪いので」


「星の巫女に、式神使い。よくもまぁFランクと言われた者が、そんな状況になれたもんじゃの。……まぁえぇ、愛弟子の頼みでもあるしな」

「っ、ありがとうございます!」 


(っし!!)



 心の中でガッツポーズをする。


 どうやら今回は──



「で? ()()()あるんじゃ?」

「え゛」

「……何の話ですか?」

「しらばっくれるな。おめぇまさか、タダで作らせようって魂胆じゃねぇか?」

「…………」


 やはり一筋縄ではいかなかったか。


 仕方なく、バッグからギリギリ生活出来る金額以外の全財産、30万を取り出す。



「俺の……、全財産、です」

「ほぉ?」

「え、神薙君!?」


 藤宮さんは驚愕の表情を浮かべているが、まぁ無理もない。ここに来る前に、お金は用意しなくていいと伝えているんだからな。



「弟子からせがもうとするの、先生くらいなものですよ」

「どんな時でも、金はいる。そもそも、なんで嬢ちゃんじゃなくて、おめぇなんだ」

「そ、そうだよ、神薙君! なんで……」


「藤宮さんには、入院中のお姉さんがいるだろ? その維持だって、それなりの額が掛かるんだから」

「でも……」


「…………」


──キュルキュルキュ!!



「なんじゃ、大人気ないと言いたいのか」


──キュルキュー!

──チュチュチュチュー!



「お前らも諦めろ。その気持ちだけで十分だ」


──キュルゥゥ

──チュゥ


 しょんぼりするコノエたちを宥めていると、『はぁ……』と、先生はため息をつく。



「おめぇは変わらんな。目的のためなら、身を粉にする。自己犠牲もいいが、もうちっと他人に頼ることを覚えろ」

「先生?」


「言うただろ。命も金も、かけるべき時にかけろと」

「だから俺は」

「バカかっ!」

「いつぁっ」


 ゴツンと、先生のゲンコツが俺の頭上に降りかかる。久々にもらったが、やはり痛い。



「仲間に相談もなく、独断しとる時点で落第じゃ! 環境がそうさせてるのは理解しとるが、もうちっと大人を、()()()()()

「先生……」


「あの、氷室さん。お金でしたら、後日必ず払いますので、だから、神薙君を……」

「藤宮さん」


「はぁ……、そんなこと言わんでも、()()()()()」 

「は?」

「え?」


 二人して声を揃えて、驚く。そして先生はため息混じりで言葉を続ける。



「手段は置いといて、愛弟子が頼りに来たんじゃ。その程度のこと、手を貸さんでどうする。そもそもわしが金云々言うとってたのは、和人の無茶を少しでも抑えるためじゃ」

「先生……」


──キュルル……



 思えば、確かに先生の言う通り、何でもかんでも自分の力でやろうと考えていた。俺はまだ、誰かを信じることに抵抗があったのだろうか。



「ありがとうございます、先生」


「やれやれ。とはいえ、その分働いてもらうから、そのつもりでいろ」


 藤宮さんと顔を見合わせる。



「「はい! よろしくお願いします!」」



「それで、具体的には何を? 昔みたく、家事ですか?」

「それもあるが、お前ら、次の防衛戦に出たいんじゃろ? なら、レベルを上げて強くなる必要がある。違うか?」


「それはそう、ですが……。でも、ここにはダンジョンなんて……」

「知らんのも無理はない。ちと特殊なダンジョンでな。わし個人が()()()()()()()()()()があるんじゃよ」


「え!? 氷室さん、個人が?」

「そうじゃ。そこはな、階層によってダンジョンのランクが変わる特殊ダンジョンでな。無闇に挑戦して、死人を出すわけにもいかんから、わしが管理しておるんじゃ。それに、中々にいい素材も手に入るからの」



 そんなダンジョンがあるだなんて、知らなかった。イリーガルダンジョンもそうだったが、天上は俺たちに何をさせたいんだろうか。


 ただ防衛戦をやらせたいだけじゃない。そんな気がしてならない。


 でも、裏を返せば……。


(先生に同行する形であれば、高ランクのダンジョンに挑める)



「どうじゃ、武器も手に入り、更には強くもなれる。一石二鳥じゃろ」


 ニカッと笑う先生を見て、俺たちは小さく微笑む。



「それに、久しぶりに愛弟子の成長を見て、鍛えてやる。昔よりも厳しくするから覚悟するんじゃな。もちろん、嬢ちゃん含めてな」


 前線を退いたとはいえ、高レベルの守護者ガーディアンから手ほどきを受けれる。これほどまでに美味しい話も、そうはないだろう。


「「お願いします!!」」



 思わぬ形となったが、武器制作の他に、俺たちの防衛戦に向けた特訓が始まることになった。




─── そして現在 ───



「ねぇ、神薙君」

「ん?」


 セーフゾーンで休憩を取っていると、藤宮さんが声をかけてくる。なんだろう、少し怒ってる気がする



「あのね、この間のお金の件なんだけど……」

「そ、それが?」

「私に相談なく、ああいうのはもうダメだからね!」

「いやでも、アレは……」

「それでもだよ!」


 ぎゅっと柔らかい手で俺の手を包みながら、ジッと俺のことを藤宮さんは見つめる。


「私の為なのは分かるし嬉しかったけど、それでも私たちは同じパーティーメンバーなんだから、ちゃんと相談して。それで、2人で一緒に考えよ?」

「いや、でも……」


「い・い・よ・ね!!」

「…………はい。以後、気をつけます」

「ふふっ、よろしい」


 ズイッと、目と鼻の先まで顔を近づけられ、そう言われてしまえば、もう従わざる得なかった。というか、仄かにいい香りが……。



「ごほんっ! あぁ〜、出来ればわしのいない所でしてくれへんか?」


「へ?」


 先生の言葉に、藤宮さんは首を傾げるが、次第に自分が今、どういう状態でいるかに気づいたらしく、カァァアッと顔が赤くなってくる。



「あ、あわわわわわ!!」

「ふ、藤宮さん? 大丈夫か?」

「……………くんの、……か」

「?」

「神薙君の、バカぁぁぁ!」

「がはぁっ」


 バチンと、盛大にビンタを貰いながら、俺は倒れ込む。



──キュッキュル!?

──チュチュ〜♪


──ブルルル!

──わふぅ!



「あ、ご、ごめんなさい、神薙君! つ、つい」


「初初しいのぉ……」


「わっ、ちょ、お前ら、何勝手に!?」


 ポンポンと、俺を心配して勝手に出てきた式神たちに揉みくちゃにされる。



「ふふっ、ほんと、式神の皆から慕われてるね」



 そんな光景を見て微笑む藤宮さんを見て、まぁこういうのもいいかと思いつつ、俺たちは今日の訓練を終えることになった。

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