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天上の不適合者~クソクラスと言われた式神使いで世界を歪めた者たちへ反逆する~  作者: 風間悟
第1章:2人の不適合者

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悪意との激突⑤ 戦いの後の余韻

「よかったぁぁぁ〜〜」


 神薙君の勝利宣言を聞き、ヘロヘロと膝が崩れ落ちる。



「おい、大丈夫か?」

「少し、疲れちゃっただけ。……神薙君。助けに来てくれて、本当にありがとう」

「礼ならグレイに言ってくれ」


──チュチュ!


 神薙君がグレイちゃんの名前を言うと、ポンッと何処からともなくグレイちゃんが現れた。



「グレイちゃん、ありがとうね」


──チュチュ〜♪


 撫でてあげれば、ハムスターみたいに、気持ちよさそうに溶けていく。そして神薙君はとても羨ましそうに眺めていた。



「神薙」

「ん?」

「葉隠ちゃん!」


 グレイちゃんを撫でていると、前の方から葉隠ちゃんが歩いてくる。無事で本当に良かった。



「あんた、最後のアレ、何? ただのスキルじゃないわよね?」

「あぁ。『纏』っていう専用スキルだ。俺が契約している式神を一時的に自身に降霊させ、何十倍にも強化した一撃を放つ。式神使いの奥義だ」


「それで、あいつを……」

「『絶焔ぜつえん』。触れた部分の周囲を完全滅却する、終わりの焔だ」



======================


 スキル:「纏」

 魔力:1000


 式神使い専用スキル

 式神の力を憑依させることでステータスを強化

 憑依中は、式神に応じた強力な一撃を放つ


 制約:一日一度しか使えない

    スキルポイントを消費することで、本来の性能を取り戻す(SP:10 / 400)


======================



 これがなければ危なかった。手負いとはいえ、他の手持ちの式神だけで倒しきれていたかは、分からないからな。



「そう。それで、鈴木は生きてるの?」


 葉隠がとある壁の方へと顔を向ける。そこには、未だ壁に埋まってる守護者ガーディアンが一人いた。


「辛うじてな。戦闘中に翡翠と同型の式神を向かわせてたから、直に目を覚ますはずだ」


「そ」


 それを聞き安心する。常守たちが死に、あいつまで死んでいたら、あいつが所属しているパーティーメンバーに顔向けが出来なかった。



(もう、常守と弥生は、いないのよね……)



 二人がいたであろう所を見る。もうそこには、何もない。ダンジョンで死んだ者は灰となる。


 そんなの、分かりきってたことなのに……。



「葉隠ちゃん……」

「私が、ここに来ようなんて決めなければ……」



 ぷるぷると震えてる葉隠ちゃんの手を優しく握る。確かに二人はもういない。死者のために嘆くことは悪いことじゃない。


 だけど、今を生きてる私たちは、前を向かないといけないんだ。



「一緒に、2人の家族に会おう? それで、ごめんなさいって……」

「…………」

「いつまでも、後ろだけは見ていられないから……」

「……うん。そう、だね」



 そんな二人のやり取りを見ていると、ブゥンッと、俺たちの前にウィンドウが表示される。


 報酬画面かと思えば、そしてそこに書かれていたのは、あまりにも()()()()()()()()だった。




"Bランクダンジョンの踏破を確認"

"本ダンジョンはテストプレイのため、経験値及び討伐報酬はありません"

"テストプレイは満足出来ましたか?"

"直に開催される防衛戦のためにも、これからも強くなることを祈ります"


"3分後に、ダンジョンは消滅します"




「なによ、これ……」


 そしてこれを読んだ葉隠は、身体を震わせながら、その怒りを顕にする。



「うそ……」


「テストプレイ? …………待ちなさいよ、報酬は、報酬はどこにいったの!? ここに入る前に、提示されてた報酬は!! ねぇ、どこに行ったのよ!!」

「は、葉隠ちゃん。お、落ち着いて……」


「落ち着いていられるかっての!! じゃああいつらは、なんのために死んだって言うの!? ふざけんじゃないわよ!!! 無駄死にも良いところじゃない!! なんで、あいつらが…………」


 ペタリと、葉隠はその場に座り込む。


 無理もない、こんな現実を叩きつけられでもしたら、誰でもこうなるだろう。


 つまり、予め提示していた報酬はダミーであると言っているんだ。しかもテストプレイ? これからもこんな仕様のダンジョンが生まれるかもしれないだと?



(ずいぶんと、舐めたことをしてくれるな)



「藤宮さんは葉隠を頼む。俺はあいつを回収する」

「う、うん」


 怒りをグッと堪えながら、フェルンと共に鈴木を回収する。そして次第にダンジョンが光に包まれ、俺たちは外へと帰還していった。






─── 3日後 ───



「神薙」

「ん?」


 学校の屋上で、授業をサボっていると、鈴木の声が聞こえてくる。


「もう、大丈夫なのか?」

「あぁ。お前の式神が治癒してくれたおかげと、仲間の回復魔法のおかげでな」

「そうか」


 幸いにも鈴木は、後遺症もなく五体満足で帰還することが出来た。



「ありがとな、助けてくれて。レベルが63もあるくせして、何も出来なかった自分が不甲斐ない」

「気にするな。あんな初見殺し、動揺もしてれば普通はそうなる」

「普通……か」


 当たり前のことを言ったつもりだったのだが、少し鈴木の表情が暗くなる。


「どうした?」

「いや、少し自信を無くすな、と。……これまで真剣にやってきたつもりだったが、まだまだ足りないようだ。お前みたいに、強くなるための貪欲さが、俺には足りなかったらしい」


()()()()()?」


 その問いに、鈴木は首を横に振る。


「むしろ、今回のことで頭にキテる。仲間が無駄死にした。それを知らされて心が折れるほど、俺は弱くない。だから俺はもっと強くなる! 前線にだって、いずれは出るつもりだ。守りたい人たちのためにも」

「……そうか」


 鈴木の瞳の奥から、燃え盛る炎が宿ってるように視えた。であれば、大丈夫だろう。



「俺より、お前は大丈夫なのか? ()()()()()()()()んだろ?」

「状況が状況だったし、その後の内容もあって、今回はお咎めなし! 式神たちの傷が癒えたら、またダンジョンに潜るさ」



 あの後、笹倉さんに逃げ込む形で、俺たちは守護者協会へと向かった。


 ダンジョンボス討伐後に現れた、新規ダンジョンの罠。更には嘘の報酬をチラつかせるクソさなどを説明したことで、今回の無断入場については不問となった。


 そしてすぐさま協会から全世界へと、同様の事象が発生しても無闇に挑まないよう、通知されることにもなった。



 通称『イリーガルダンジョン』。これ以降、各地に現れることになるそのダンジョンは、後に絶望へと繋がることを、まだ誰も知らない。



(そういえば、アレはどういう意味なんだ?)




──眉唾で信憑性も薄かったのだが、実は今回のダンジョンを予言していた者がいるんだ。




 帰り際、笹倉さんがそんなことを言っていた。あのダンジョンを予言? 予言系のクラスなら信憑性があるはずだが、そうでないとしたら、一体誰だ?



「そうか。俺は今日からまたダンジョンに潜る。いつか、今度は()()()()()()

「俺は、不適合者だぞ?」

「そんなの、俺にはもう関係ない。むしろ、いい二つ名だと思うな」


 そう言って鈴木は屋上を後にする。


「まっ、響きは良いよな」



***



「「…………」」


 その日の放課後。私と葉隠ちゃんは近くのカフェに二人で入っている。


 この三日、色々なことがあった。協会の人たちへの事情説明や、神薙君への釈明。常守君と弥生さんのご家族への謝罪など、色々だ。


 そして一通りやることが終わったこともあり、こうして二人で話すことになったのだけど、正直、何から話すべきか分からないでいる。



(沢山、話したいことがあるのに……)



 悩んでいると、『あのね』と、葉隠ちゃんの方から話し出す。



()()()

「え?」


「咲ちゃんを守護者ガーディアンから遠ざけるたために、ずっと重荷を背負わせ続けた。もう、私の前から大切な人がいなくならないでほしかった」

「葉隠ちゃん……」


 そこにいたのは、これまで私に怒りをぶつけていた葉隠ちゃんはいなくて、昔の、仲の良かった頃の葉隠ちゃんがいた。



「ずっと、演技だったの?」


 そう尋ねれば、コクリと頷く。そして私に、どうしてそんなことをしていたのかをゆっくりと話し始めた。



***



「じゃあ、本当に、私を守るために……」

「うん。じゃないと、咲ちゃんが死んじゃうと思った。ダンジョンに連れていけば、そのうち恐怖から逃げると思ってた。諦めると思ってた」


「けど、そうはならなかった。それでどんどん……」



 知らなかった。葉隠ちゃんがそこまで思い詰めていただなんて……。


(私、嫌われてると思ってた)


 私が葉隠ちゃんを想うように、葉隠ちゃんも私のことを想ってくれていたなんて……。



「私たち、ちゃんと話し合えば良かったんだね」

「そうかもね。そうすれば、こんな惨劇起きなかったかもしれない」

「葉隠ちゃんは、これからどうするの?」


 後方に行くにしろ、行かないにしろ、新しいパーティーメンバーを見つけないといけない。ソロはとても危険だから。


 それに、私たちの学校は後方希望が少ないこともあって、色々苦労するんじゃないかと思ったのだけど、葉隠ちゃんの回答は、全くの別だった。



「もう、()()()()()()()()()()()()

「え!?」


「あいつらを無駄死にのままにしてやれない。きちんと価値のある死にしてやりたい。……そのためにも、私は()()()()()()

「────」


 その瞳の奥は、怒りや後悔、そして自身への不甲斐なさなどで満たされていた。



「いいの? だって、前線に行ったら……」

「死ぬかもしれないけど、もう決めたの。それに、死ぬつもりはない。だって、お兄ちゃんも()()()()()()()()()んだから」


「葉隠ちゃん」

「だから、これからの私たちは友達であり、そして戦友として、一緒に戦おう」

「っ、うん!」


 こんな嬉しいことはない。

 仲直り出来ただけでも嬉しいのに、これからは一緒に戦えるんだから。



「じゃあ、()()()()()()()()()()()()()?」

「私は、()()()()()()()()()()()()()()

「え!? な、なんで!?」


「あいつは強い。正直、レベルで勝ってる私でも、今のあいつに勝てるかは分からない。だから先ずは、楽していた分、自分を鍛え直す。そのためのパーティーはもう決めてるし、今日からそいつらとダンジョンに潜る」


 それを聞いて、少しだけ寂しく感じた。

 だって、これまでずっと、一緒のパーティーでいたのだから。



(私たち、離れ離れになるんだね……)



「パーティーが別だからって、何も一生会えないってわけじゃないでしょ。学校でも会えるし、助けが必要だったら、言ってくれれば、駆けつけるから」

「……うん。じゃあこれからは別々のところで頑張ろうね! お姉ちゃんを助けて、宗太郎さんを見つけるためにも」


「うん、今度は2人で」



 咲ちゃんと話すことも終えたので立ち上がり、カフェを出る。これからすぐにダンジョンへと潜るからだ。


(本当は、一緒にいたい。だけど……)


 きっと、これからもずっと一緒にいたら、多分強くなれない。甘えてしまう。


 だからこそ、今は強くなるために貪欲となるべきだ。




「もういいのか?」

「これからダンジョン潜るのに、いつまでも感傷に浸るわけにもいかないでしょ。私が1番、レベルが低いんだから」

「俺のパーティー、バトルジャンキーが多いから、さっさとレベルを上げてくれ。そのために少しの間、低ランクのダンジョンに潜るんだからよ」


「分かってる。鈴木も、強くなるんでしょ?」

「あぁ。もう目の前で何も出来ないなんて、嫌だからな」

「私も。んでもって、絶対に天上をぶっ殺す」

「あぁ!」



***



「これからは別々、かぁ」


 少し怖いけど、きっとこれからのためには必要なことなんだと思う。


 それに、私だってやらないといけないことがある。むしろ、ようやく私はスタートラインに立てたのだから。



「行こっか、グレイちゃん」


──チュチュ〜


 そうしてグレイちゃんをポーチに入れて、私たちもカフェを後にする。実を言うと、()()()もこれからダンジョンに潜るからだ。



─── 吉祥寺Eランクダンジョン前 ───



「来たか」

「お待たせ、神薙君」

「時間通りだな。ちゃんと、話せたか?」

「うん。仲直り出来たよ」

「そうか」


 それを聞けて安心する。聞けば、葉隠なりの身を案じた行動だったらしい。不器用にもほどがある。



「さて、改めてこれからの方針を話そうか」

「うん」


「約1ヶ月半後に控えている防衛戦。そしてその1週間前にある、防衛戦の割り振りを決める選抜試験。それまでに俺は、レベルを70以上にする必要がある。そして藤宮さんは──」


「解放された()()()()()を埋めて、レベル70相当以上の強さになること」



 あの後、藤宮さんに星の巫女について聞いたところ、かなりの変化が起きていた。


 レベルは依然として上がらないようだが、その代わり、強化ツリーなる専用ウィンドウが現れたとのことだ。


 そこには各種ステータスの上昇に、魔法の取得、強化といったものがあるようだ。そして、強化するために必要なスキルポイントの取得方法は一つだけ。


 それは──



「パーティーメンバーのレベルアップ時に必要とした経験値。それが最も多い者の1割をスキルポイントとして自動取得……か。これほどまでに、式神使いと相性のいいクラスは存在しないだろうな」

「なんだか、出来すぎた話だよね」

「まったくだ」


 つまり、こと効率だけで言えば、俺と組むのが最も効率がいいと来ている。


 意味が分からない。



(ここまで来ると、不適合者というだけで、片付けることは出来ないな)



 現在確認されているFランクのクラス保持者は、俺たちも含めて4人存在していて、そのどれもが一癖も二癖あるクラスと聞いたことがある。


 もしかすると、本当に天上に対するカウンターなのかもしれないな。



「ま、それは追々だな」

「何が、追々なの?」

「いや、なんでもない」


 答えはそのうちに分かる。

 今は、俺たちに出来るところから始めよう。



「準備はいいか?」

「うん、バッチリ!」


──チュチュ!

──キュルゥ!



「それじゃ、行きますか!」


 新しく仲間に加わってくれた藤宮さんと共に、ダンジョンへと入る。


 強くなるための、長くも短い1ヶ月半の戦いが始まった。

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