悪意との激突④ 天上の執行人 VS 不適合者 Ⅲ
夢を視た。
真っ白な空間に私はいて、もう一人、誰かが目の前に立っていた。だけどその姿は光に包まれているのか、よく見えない。だけど、とても優しい光。
それと、私を見て微笑んでいることだけは、なんとなく分かった。
"いつだって、未来を決めるのは人の意志だ"
(え?)
声は聞こえない。だけど、何を言っているのかだけは理解出来る。物凄く不思議な感覚だった。
"星の子がここに来れたのは、君が初めてだ"
(星の、子?)
それって、星の巫女のことを言っているのだろうか。
「あなたは、誰?」
"資格を得し者よ"
"扉を解く鍵は、いつだって君たちの中にある"
(資格? 鍵?)
"必要なのは、その鍵を自覚するためのきっかけ"
"そして、君はそれをもう知っている"
"君の優しさ、その原点を思い出すんだ"
そう言ってその人は、スッと、指を指す。その方向に目を向けて見れば、泣いてる女の子がいた。
直感で、それが昔の私だというのが分かった。そして、そこにもう一人の女の子が現れる。
(お姉ちゃん……)
:これからは、お姉ちゃんが咲を守る
:お父さんとお母さんの代わりに私が
:グスッ、じゃあお姉ちゃんは誰が守るの?
:決まってる。咲がお姉ちゃんを守って
:2人で守りあって、そして誰かを守りましょう
:これ以上、悲しむ人が増えないように
:うん、約束する。お姉ちゃんを守って、皆を守って、笑顔にする!
:えぇ、お姉ちゃんとの約束よ!
そうだ。それが私の原点。
守ると決め、そして強くなると誓った日でもある。
"さぁ、目を覚ます時だ、星の子よ"
"そして願わくば──"
「ま、待って! あなたは──」
"願わくば、滅びの運命を否定してほしい"
***
「すぅぅ、はぁぁぁぁ……」
目を閉じ、深呼吸をする。
無理に動いてるから身体中が痛い。
それでも、やらないといけない。
みんなと、生きて帰るためにも。
(扉を解く鍵……)
──恐らく君のクラスに必要なのは、意志力だと思ってる
──君の優しさ、その原点を思い出すんだ
意志力。
そして、私の原点。
どうして私がここにいるのか。
お姉ちゃんを助けたい。
葉隠ちゃんを守りたい。
助けに来てくれた神薙君を助けたい。
それもある。
だけど、根本はもっと傲慢で、単純だった。
(私は、もう誰も悲しまなくて済む世界を作りたい。皆が笑顔でいられる、そんな世界を)
カチリと、何かがハマる感覚がある。
そして自然と、頭に浮かんだその言葉を口ずさむ。
「第1心意、封印解除」
"クラス『星の巫女』の制約解除要請を確認"
"それを承に─────"
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・
"システムはそれを承認しません"
"引き続き、ルールを守り、健全な──"
"ERROR"
"ERROR"
"ERROR"
"ERROR"
"ERROR"
"ERROR"
"想定を超える心意を確認"
"システムの復旧を──"
"ふふふふふふふふ、ふっきゅうを"
・
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・
・
・
・
"繧ッ繝ゥ繧ケ縲取弌縺ョ蟾ォ螂ウ縲上?蛻カ髯占ァ」髯、縺悟━蜈医→縺ェ繧翫∪縺励◆"
・
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・
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・
"クラス『星の巫女』の一部能力を解放いたします"
ウィンドウが現れると同時に、魔力が膨れ上がる。
そしてそのまま、頭に浮かんだ新しい魔法の詠唱準備に入った。
***
"汝が1人増えたところで、何も変わらない"
「うっさいわね。そんなの私が1番理解してるっつうの!!」
あいつのように、あの暴風の中に入る勇気なんてありはしない。だからこうして、ギリギリ攻撃範囲に入らない位置から、遠距離スキルでチマチマと攻撃している。
(本当に、上手くいくんでしょうね?)
別れ際に立てた作戦。それが上手くいくかどうかは、あいつと私の頑張り次第だ。
「くっ」
距離を見誤り、鎌が私目がけて遅いかかるが、それを寸前のところで避ける。
最初こそ、バフが解除されたことや、その後に起きた惨劇に絶望こそした。だけどあいつの言う通り、こいつには技術がない。
その速度に過信し、力任せの攻撃しかしてこない。もちろん当たれば死ぬけど、落ち着いてミスなく対処すれば、とりあえずは生き永らえる。
そもそもの話──
「不適合者に出来て、私に出来ないはずがないでしょ!? 尖爪桜花!!」
勢いよく槍を突き刺す。すると執行人の足元から、魔力で出来た槍が何本も突き出てくる。例え暴風を纏っていようとも、足元は無理に決まっている。
"小癪"
執行人は、その巨体でありながら軽やかにバックステップして、私の攻撃を避ける。
けど、バカね。その隙を逃すあいつじゃないのに。
「レンゲ、キリカ!!」
"ぬぅ!?"
体勢が崩れた瞬間を狙い、レンゲとキリカと共に、砕けた鎧から覗かせる、肉体目がけて、斬りかかる。
すると、さっきまでと打って変わり、ぶしゃあっと、緑色の血が宙を舞い、暴風が消え失せる。
(ようやく血を流したな!)
そしてこの千載一遇の好機を、俺の相棒が見逃すはずがない。
──キュルゥ!!
"ぐぁぁあああ!"
コノエの炎が傷口を焼き、更にダメージを与える。
「体勢を立て直す前にたたみかけろ!」
その言葉と共に、葉隠がデッドリー・スピアの構えをし、俺はヤカデと、鳥型の式神『イズナ』を召喚する。
「イズナ、ヤカデ、突っ込め!!」
イズナもヤカデと同様に、魔力操作による突撃を基本とした式神だ。そして翼に魔力を集中すると、勢いよく突っ込み、焼かれた傷口をその翼で更に抉る。
続けざまに来るのは葉隠の放った『デッドリー・スピア』、そして最後にヤカデの群れによる飽和攻撃。
"ぐぎあぁあぁぁぁあああ!!!"
(バカな。なぜ、なぜ我がこれほどまでに……)
我の世界では、力こそが全てだった。そして我はそこで生き抜いた英雄であり、神が認めし戦士でもあるのだぞ。
それが、それが……。
"我を舐めるな、小僧どもぉぉぉおおお!!"
さっきまでとは桁違いの魔力をもってして奴の周囲が暴風で吹き荒れる。
あの中に無策で入ろうものなら、確実に全身が細切れになるだろう。
「ちょっ、アレどうするのよ!」
「……慌てるな、葉隠」
「あれを見て慌てるなっていう方が無理でしょ!? 何でそんなズタボロのくせして余裕そうな──」
どうやら葉隠も気づいたようだ。途中から藤宮さんの魔力が増大したことに。
「このまま作戦通りに行くぞ。藤宮さんの新しい魔法がどんなのかは分からないが、今はそれに賭ける」
奴が藤宮さんの変化に気づいていない今がチャンス。少しでも長く、俺たちに注意を惹きつける。
ダッとコノエたちと走り出す。そしてコノエたちが遠距離で攻撃しながら、俺は一瞬の隙を伺う。
「あぁもう! 私の全魔力持っていきなさい!!」
千変桜花!!!
槍を掲げれば、現れるは無数の槍。残りの全魔力を使い、消費した魔力に応じて槍の雨を降らせる。槍術士が使える特殊スキル。
だけどそれは見かけ倒しで、消費量の割に威力がさほど高くはない。言わばハリボテの奥義だ。
それでも今の局面であれば、少しは牽制になるはずだと考えた。
「喰らいなさい!!」
ガガガッと、無数の槍の雨を執行人に向けて放つが、その大半があの暴風で防がれる。
だけど、構うものか!
(咲ちゃんと、一緒に帰るんだ!!)
"どこまでも小賢しい"
"やはりまずは、汝から執行すべきか"
葉隠目がけて、高速移動をするために魔力を溜め始める。だが、それを俺が許すと思うか?
「クロウ! 幻惑の霧!」
──カァァア!!
"その鳥め、まだ生きていたのか!"
クロウの幻惑を受けた執行人は、葉隠が走り出した方向とは別の方向に攻撃を仕掛ける。そしてその攻撃の瞬間、奴の暴風が弱まるのが見えた。
「そこぉぉお!!」
レンゲと共に多少弱まった暴風の中へと突入し、全身を切り刻まれながらも、奴の関節部分を斬りつける。鎧があろうと、どうしても薄い部分はあるだろ!
"き、貴様!"
鎌を俺たちの方に向けて、勢いよく振り回す。それをなんとか回避するが、奴も馬鹿じゃなかったらしい。
鎌に風を纏わせていたようで、避けてもその風圧でレンゲ共々弾き飛ばされる。
更にはあの暴風の中、無理に一緒に入ったこともあってか、レンゲに限界が来てしまい、実体化が解けてしまう。
──ワフゥ……
(すまん、レンゲ)
「がはっ」
勢いよく弾き飛ばされたことで、流石に受け身が取れず、背中から地面へとぶつかる。だけど、今は痛がってる場合じゃない。
「イズナ、頭上から──」
"させぬわ!!"
「っ!?」
「神薙!!」
イズナを召喚し指示を送ろうとした瞬間。暴風の中から光が迸り、次の瞬間には、その光の糸に捕まってしまった。
(なんだ、これは!?)
力の限り振り解こうとするが、びくともしない。
「ダメぇぇぇぇえ!!」
ここに来てあいつ、常守たちを捕らえた光の糸を出しやがった。なんでさっきまで使おうとしなかったんだ。
(リキャスト? それとも別の理由?)
正直どっちでもいい。今確かなのは、このままでは神薙が死んじゃう。
あの惨劇の光景がフラッシュバックする。もうあんなの御免だ。だから残り少ない槍を全て使ってでも、神薙を助ける。
そうして残り全ての槍の雨を降らせるが、傷一つつきやしない。
「クソ! 神薙、すぐに助ける!」
"邪魔だ"
「キャッ!」
奴の放った突風が私を襲い、神薙とは逆方向へと吹き飛ばされてしまった。
「か、神薙ぃぃぃぃ!」
「……………………」
"ふふふ、ようやく捕らえたぞ"
勝ちを確信したのか、わざわざ暴風を解いて、俺の方へと歩いてくる。
「ずいぶんと、勝ち誇った顔をしてるな。なんでさっきまで使おうとしなかった」
"これは、一度使うと次に使えるまでに時間を要する"
"だが一度使えば、効果が切れるか、我以上の破壊力がなければ、いかなる攻撃であろうと破壊することは不可能なり"
なるほど、それなりに高性能だが、欠点もあると。
"さぁ、ようやく断罪の時だ"
嬉しそうに、執行人が鎌を振り上げる。
それを振り下ろされたら最後、俺は死ぬだろう。
ほんと、こいつが目の前にしか集中出来ない馬鹿で助かったよ。
「くっくっく」
"何がおかしい、罪人よ"
「いやお前さ……、誰かと共闘したことないだろ」
"何?"
ほんと、天上のクソどもがこの程度の奴らなら、どれほど嬉しいことか。まぁどうせ、末端の末端だから、この程度の馬鹿なんだろうがな。
「個人戦なら、確かにお前の勝ちだな。だがな、こっちは初めっから、仲間と一緒に戦うことを前提にしてるんだよ」
"何の話を…………っ!?"
バッと、その方向へ顔を向けるが、もう遅い。
だからここは、盛大に笑うとしよう。
「俺たちに気を取られすぎたツケだな。さぁ今度は、お前の罪を清算しろ!」
"これは、星の巫女の力か!!"
奴がその言葉を言うと同時に、無数の光の剣が奴の身体を貫いた。
***
(よし、いける)
魔力を練り上げ、詠唱の準備が整う。
そして、頭に浮かんでいる魔法を放つべく。右手を天に仰ぎながら詠唱を始める。
"我、星の巫女が告げる"
"救うは、慈愛の魂を持つ者"
"裁くは、無慈悲な魂を持つ者"
"断罪せしは、美しき光の刃"
"されど慈愛の心にて、罪深き者を救済せよ"
救済と断罪の剣閃!!
詠唱を終え、その魔法名を唱えると、掲げた先に無数の光の剣が現れる。
敵はまだ私に気づいていない。
きっと、神薙君たちが注意を惹きつけてくれたからだ。
だからこそ、この千載一遇のチャンスを無駄にするわけにはいかない!
「いって!」
手を振り下ろせば、光の剣は敵に向かって降り注ぐ。
そして──
"これは、星の巫女の力か!!"
向こうも気づいたようだけどもう遅い。無数の光の剣が、あなたの身体を貫いたのだから。
***
(すげぇな、これは)
レベル0でこの威力か。何が起きたかはまだ分からないが、星の巫女としての力が目覚めたと考えていいだろう。
けど、それでもまだ足りない。
"が、がふっ、ごふゅっ"
"ふ、ふふ……、ははは、耐え、きったぞ"
"今のは驚いたが、我の命を刈り取るには──"
──トンッ
"? なんの、真似だ"
藤宮さんが放った攻撃の余波によって、俺を捕らえていた光の糸が消えている。
そして奴は、鎧が全て砕かれたことで全身が血塗れ。たが、それでもまだ、両膝をつきながらも奴は生きている。
故に、抜き身となった執行人の身体に、左手を添える。葉隠が、そして藤宮さんがここまで繋いでくれたんだ、今度は俺の番だ。
死んだ仲間に報いるためにも、お前は必ず──
「殺す」
"っ!?"
その言葉を聞き、全身の産毛が逆立つ。今すぐに逃げろと、我の本能が告げている。
(身体が、まだ、動かぬ)
魔力も錬れない、動けない。
マズイ!
式神使いとは、式神を使役し、共に戦うことをコンセプトとしている。だが、本当にそれだけか? ただ使役することだけが、式神使いの本領なのか?
答えは否。
このスキルは不完全故に、今はまだ一日一度、そしてゼロ距離でしか使えない一打必滅の奥義。
貴重なスキルポイントを、これからも消費し続けることでようやく完成へと至る、式神使いの極致。
答えは、その身をもって知れ。
纏:コノエ────絶焔
(なんだ? 何が、起きた?)
奴がその言葉を口にした途端、いきなり我の視界が低くなった。そしてなぜか、我が奴らを見上げているではないか。
(一体、何が? …………あれは)
あれは、我の、身体?
何故、下半身しかない。
いや待て、なら我は?
我の身体はどこに行った?
いや待て、何故灰となっていく。
待て、まだ我は罪人を執行しきれていない。
まだ我は神の依頼を何も果たせていない。
待て、待て、待ってくれ。
お願いだ、消えないでくれ。
我は、我は……………………。
「終わった、の?」
神薙が何かのスキルを使った瞬間、奴の上半身が灰も残らず燃え尽きた。そして初めっから何もなかったかのように、執行人の残りの身体の全てが灰となって消えていった。
あれは、一体……。
「かん、なぎくん」
足を引きずりながら、神薙君の元に向かう。魔力も体力も、何もかも使い切った。残ってるのは気力だけ。
「きゃっ」
「おっと!」
足がもつれ、倒れそうになると、神薙君がスッと抱きとめてくれた。
「かん、なぎくん……、おわっ、たの?」
彼の顔を見ながらそう尋ねてみれば、傷だらけではあるけど、ふわっと優しく笑みを浮かべながら、その言葉をつぶやく。
「あぁ、終わった。……俺たちの、勝ちだ」
本作品を読んでいただきありがとうございます!
必殺技の書き方は、特別感がある感じにしてみました
これにて、執行人戦は以上となります
あまり長くならないようにしたつもりですが、ボリュームの方はどうでしたか?
大体の戦闘ボリュームは2~3話程度に抑えたいですね
文字数が多いので、1話2000文字程度の換算で考えると、めっちゃ長いんですけどね……
自分の力では、これで限界でした……
それではまた!




