式神使いという不適合者① 不適合者
─── 9年前 ───
「和人君。みんなを守れるくらい強くなったら、必ず迎えに行くね。だからそれまで、何もしないで待っててね!」
「それは無理だ。俺だって誰かを守りたい。モノリスの恩恵で、絶対に守護者になってみせる」
「それは無理じゃない? だって和人君、才能ないんだから」
「それがどうした。才能がなくたって、人はどこまでも前に進める」
「ふぅ~ん。じゃあ約束しよっか」
「約束?」
「18歳になるまでは待ってあげる。だけど、それまでに強くなれなかったら、一生私のために生きてね」
「なんだそりゃ。強くってどれくらいだ?」
「私よりも」
「そんなことか。いいさ、約束だ。俺は絶対に永久よりも強くなる。この手で、あのクソったれな神気取りの奴らをぶっ潰すんだから!」
「あははは、出来っこないのにね。でも、応援してるね!」
「あぁ、見とけ! だから永久、待ってろ」
「うん!」
10歳のあの日、孤児院で俺と永久は約束をした。
それからすぐに永久は新しい家族に連れられ、孤児院を出た。なぜなら史上最年少での、守護者としての力に目覚めたからだ。
あれから7年経った今、未だに永久は俺の前に現れない。
18になるまで会うつもりがないのか、それとも約束を忘れてしまったかまでは定かじゃない。
だが、一つだけ確かなことがある。
それは、俺が10等星の底辺守護者であり、永久は人類が到達出来る限界点である1等星の守護者。
そして『ゼロ』へと至れる英雄の一人として、その名を刻んでいるということだ。
─── 7年後 ───
─── 2092年 9月1日 ───
(……今日も、空は割れてるな)
学校の屋上で大の字に倒れながら、殴られた右頬の痛みに堪えつつ、あの忌々しい空を眺める。
50年前、突如として世界中で空が割れた。
正確には空間なのだが、表現としては間違っていないだろう。
同時に、各主要都市にモノリスが出現。
そこには各言語で同じ内容が記されていた。
”これは神の遊戯である”
"数多の世界から現れる侵略者を退き、世界を守れ"
"そのための力は、モノリスが才能を読み取り授ける"
"1ヶ月後、メキシコ・オランダ・イタリアのいずれかの首都に侵略者がやってくる"
"見事、撃退してみせろ"
だが当初、多くの人たちがそれを信じなかった。
なにせ未確認の建造物が現れたと思いきや、いきなり戦えと言われても、無理な話だろう。
だけど、世界中の12~30歳までの一部の人間に、ステータスウィンドウやらクラスといった、まさにゲームのRPGにあるような事象が発生したことで状況が一変した。
それからはもう大騒ぎ。
陰謀論やら神話のラグナロク説など、様々な話で盛り上がっていった。
それから1ヶ月後。
モノリスの記述通り、割れた空から侵略者が現れたことで、それまで平穏な日常は終わりを迎えた。
『終わりと始まりの日』。
後にそう呼ばれる戦いは、凄惨な現実を俺たちに突きつけるものであった。
政府は侵略者に対して、現代兵器を以て立ち向かったのだが、それらは一切通用せず、話し合いすら叶うことはなかった。
結果、その日のうちに、総人口1.3億人と共に、メキシコという国は、地図から消失した。
"対策を怠ったお前たちへの罰だ"
"次も同じなら世界を終わらせる"
"我々からダンジョンを贈ろう"
"ダンジョンへ潜り、戦え"
"レベルを上げて、装備を整えろ"
"侵略者を退ければ、褒美を出す"
"出来なければ、そこに住む人間が苦しみながら死ぬ"
"逃がしても無駄だ"
"次は半年後だ。フランス・日本・カナダ、いずれかの人口が一番少ない地域に侵略者がやってくる"
"見事、撃退してみせろ"
新たにモノリスに書き記された後、各地にダンジョンへと通じる門が出現した。
そして、力を授かった者たちは一斉にダンジョンの攻略を始めた。
家族や友人、恋人。理由は様々だが、全員に共通したものがある。それは、大切な人を守りたいという、純然たる決意。
侵略者への対応や、様々なルールが定まりきらない混沌の時代。
力を授かった者たち、通称『守護者』たちは、そんな時代の中、必死に戦い守り、そして死んでいった。
それから諸々のルールが定まるまでに、10年を要することになった。
死者の総数は20億を軽く超え、地図から消えた国は、両手両足の指を使っても数えることが出来なほどだ。
それでもこの50年間、俺たちの代まで命が繋がっているのは、ひとえに数多の英雄たちが、文字通り命を燃やし続けてきてくれたからに他ならない。
そして、俺もそんな守護者の一人ではあるのだが──
「ぎゃはははは、いつまでぶっ倒れてんだよ! そんなんじゃ、いつまで経っても強くなんてなれねぇよなぁ、和人」
「あははは! まぁそんな雑魚式神じゃ、勝てるもんも勝てないか」
「藤堂さん。こいつの式神、いっちょ前に威嚇してますぜ?」
──キュルルルルル!!
「よせ、コノエ」
──キュルゥ……
唯一の式神で、大切な家族でもあるコノエを宥めながら、和人は暇人共がと、心の中でつぶやきながらゆっくり立ち上がる。
「お? なんだ、やるのか?」
「はぁ……、教室に戻るだけだ。コノエ、おいで」
既に昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いている。コノエを肩に乗せて、教室へ戻ろうと、屋上の出口を目指して歩き出す。
だが藤堂の横を通り過ぎようとした時、グイッと肩を掴まれたかと思えば、藤堂の拳が和人の腹にめり込んでいた。
「ごはっ」
息も出来ず、痛みに負けた和人は、そのまま膝が崩れ倒れ込む。
何の経験も積んでいないレベル1の守護者の拳であっても、一般人と比べれば、3倍は強くて重い。
レベル1ですら一般人の3倍なのだから。経験を積んだレベル62の奴が拳を振るえば、まず間違いなく、人の体なんて壊れる。
それでも倒れ込むだけで済んでいるのは、力に制限がかかっている場所であり、それ以上に、自身も守護者であるからに他ならない。
「ほんと、生意気だな。てめぇ本気で強くなれると思ってんのか? あぁ? 不適合者様よぉぉ!!」
胸倉を掴んだかと思えば、今度は左頬目がけて右ストレートが飛んでくる。目で追えたとしても、対処が出来なければ意味がない。そのまま無防備に拳をもらい、後方へと殴り飛ばされる。
「ひゅぅぅぅう、飛んだねぇ」
「藤堂さん、やるぅ!」
──キュッキュル!
(ほんと、最悪だ……)
こんな、惨めな自分が嫌になる。
守護者に関するルールが定まったことで、多種多様なクラスに『格』を、それまでの偉業や強さに応じた『階級』が設けられた。
クラス:E〜Sランク
階級:10等星〜1等星
そして階級における1等星とは、通常の守護者が到達出来る限界点でもある。
だが極稀に、そのクラスが持つ限界を超え、隔絶した力を手にした者たちがいる。
その者たちのことを『ゼロ』、もしくは『到達者』とも呼び、現在は10名存在している。
であれば、不適合者とは?
「…………」
上半身だけを起き上がらせ、ジッと藤堂を見つめる。その目には、不屈の精神が宿っていた。
「ッチ、なんだよその目はよぉ。ほんとムカつくぜ! 才能もねぇ奴が、なんでそんな生きた目をしていられるんだ」
「お前には、かんけい、ない。……俺は必ず、強くなってみせる」
弱腰なんて見せない。嘆きもしない。いつだって、俺が見るのは前だけだ。
「ッチ、シラケた。行くぞてめぇら」
「「うぃ〜」」
ジッと睨みつけていると、つまらなくなったのか、吐き捨てるように、ある言葉を言いながら藤堂たちは去っていく。
──不適合者が、天上に勝てる訳ないだろ
『天上』。
モノリスを配置し、空を割った者たちの総称だ。
向こうがそう名乗った訳ではないが、この上なく、適した言葉だと思っている。
天から俺たちを見下ろし、クソみたいな戦いを強制する人類の敵だ。
──キュルゥゥ
「そう、落ち込むな。約束しただろ? 俺たちは絶対に強くなるんだ。誰かを守れるだけの、強い守護者にさ」
──キュル!!
コノエを撫でながら立ち上がり、今度こそ屋上を後にする。
それから教室へと戻れば──
「あいつ、また藤堂に殴られたのかよ」
「いい加減、諦めて退学してくれねぇかな。俺たちの評価が下がる」
「クスクス。流石、日本に2人しかいない不適合者」
などと言った陰口が聞こえてくる。
(気にするな。俺は、俺だ)
毅然とした態度を崩さず、まるでその一角だけ、世界から切り離されたかのように、ぽつんと孤立している自身の机へと向かい座る。
そして、少ししてから先生が来るのだが──
「全員いるなぁ。んじゃ、歴史の授業始めるぞ。……あぁ、Fランクの神薙は何もしないでいいからな」
──あははははは!
今日も今日とて、俺は授業からもハブられる。これが俺のいる世界だ。
いつ滅亡してもおかしくない状況でも、人の醜い部分というのは、そう変わることはない。弱い者がいれば、攻撃する。
世界を守る守護者ともなれば、優越感もあって助長するのは当然の帰結。むしろ、こんな世界だからこそ、ストレスのはけ口にしているのではと、和人は考える。
(ふっ、だからどうした)
それでも和人は小さく笑う。
クラスとは、モノリスから授けられた世界を守るための唯一の力。その力を強くするためには、ダンジョンに潜り戦い、レベルを上げなければならない。
だが極稀に、極端にレベルが上がり辛いといった特徴を持つ、不可思議なクラスが存在する。
にも関わらず、強さはレベル1相当でしかないから、まともに戦うこともできない。
つまりはモノリスからも見捨てられた存在。
それらの事実から『Fランク』、または『不適合者』という烙印を押されている。
そんな不適合者の烙印が押された俺、神薙和人には、叶えたい夢がある。
10年前、この日本で起きた未曾有の大侵略、『第二次東京防衛戦』。
膨大な数の侵略者を前に、瞬く間に日本国土の半分が戦場と化した悲劇。
数多の英雄たちの命と引き換えに、侵略者たちを退けることには成功したが、その代償として日本は、総人口の1/3を喪った。
そこには俺の家族も含まれている。
だからこそ、無理やり戦うことを背負わせ、美しい空を奪った天上どもを決して赦さない。
必ずこの戦いを終わらせてみせる。
才能がない? それがどうした。
元々俺に才能なんてありはしない。そういうのは、異例の10歳で守護者となった、永久みたいな奴のことを言うんだ。
それでも俺は、必ず強くなってみせる。
不適合者、『式神使い』として。
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守護者:神薙和人
クラス:式神使い
契約式神:1体
契約可能数:0体
レベル:1(レベルアップまで、25000/40000)
称号:ゴブリンスレイヤー
体力:100
魔力:100
筋力:10(+50)
耐久:10(+50)
敏捷:10(+50)
感応:10(+50)
幸運:10(+50)
スキルポイント:0
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クラス『式神使い』
式神と契約し、共に戦いながら成長する者
契約出来る式神は、レベルを上げるか、特定条件を満たすことで増やせる
式神には格があり、格に応じて、体力と魔力以外の全ての能力値に補正をかける
4級:1体につき、能力値50上昇
3級:1体につき、能力値70上昇
2級:1体につき、能力値100上昇
1級:1体につき、能力値150上昇
特級:1体につき、能力値200上昇
式神の格は、特定の条件を満たすことによって上がる
制約:
レベルを上げるには通常の20倍、経験値が必要
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称号『ゴブリンスレイヤー』
ゴブリンを1000体倒した者だけが得る名誉
効果:
ゴブリン系統に対して50%の特効を付与
与えたダメージの1割、体力を回復させる
称号における共通の制約:
称号を付け替えた際、消滅する
称号をストックすることは出来ない
本作品を読んでいただきありがとうございます!
初っ端から世界観の説明回となってしまいましたが、許してください
入れるタイミングがここしかなかったんです……
なのでもう、割り切りました
さてさて、絶望的な制約がある中、
これから不適合者がどう強くなるのか、お楽しみにください
それではまた!




