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天上の不適合者~クソクラスと言われた式神使いで世界を歪めた者たちへ反逆する~  作者: 風間悟
第1章:2人の不適合者

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悪意との激突② 天上の執行人 VS 不適合者 Ⅰ

─── 3年半前 ───



「私、守護者ガーディアンを続ける。それでいつか、強くなってみせる」


 お兄ちゃんが死んだと聞かされた日の帰り道。あの子が突如、そんなことを言い出した。



「宗太郎さんがその場にいなかったのなら、もしかしたら侵略者の人たちに連れて行かれたかもしれない。それに、お姉ちゃんの呪いだって、解かないと……」

「………………だから?」



 言いたいことは分かる。だけど嫌だ。

 このままでは、お兄ちゃんだけじゃなくて、咲ちゃんもいなくなってしまう。



「だから私、強くなってみせる。今はどうすれば強くなれるかは分からないけど、それでも、いつか1人前になって、宗太郎さんを見つけて、お姉ちゃんや皆を……」


 ダメだ。

 そんなの絶対にダメ。


 Fランクが守護者ガーディアンを続けた先にある末路は決まっている。


 死だ。


 もしこれで咲ちゃんも死んでしまったら、私は本当に独りぼっちになってしまう。


 だから──



「はっ! Fランクの()()が、何言ってるの?」



 もうこれしかなかった。

 瞳さんのことも、お兄ちゃんのことも、誰の所為でもない。

 だけど、咲ちゃんの所為にすれば、いつかその罪に負けて諦めてくれるはずだ。


 例え今すぐは無理でも、私の傍で現実を見せ続けていけば、いつか……。


 だけど、あの子の覚悟は、私が思ってたよりもずっと強かった。


 だって──



「それで、葉隠ちゃんが死なないなら。……私、やるよ」



 それからの私は、心を鬼にした。

 咲ちゃんが死なないために、非情になることを選んだ。その選択が間違いだと分かっていても。


 それなのに──



─── 現在 愚者の断罪の間 ───



「あ、ぁ、ぁぁぁ、あああああ!!」


(なんで、どうして、どうして、咲ちゃんが……)



 あの一撃、私は避けることが出来なかった。諦めていたのに、横から咲ちゃんが割り込んで、身代わりとなってしまった。


 結果、私はまだ生きている。その代わりに咲ちゃんの胴が、7()()()()()()()()()()()()()()



「な、なんで、なんで、さ、咲ちゃんが……」

「ゴフッ、こ、こひゅー、こひゅー」



"汝のその魔力……、見覚えがある"

"汝、星の巫女であるな?"

"よく、我の一撃で即死しなかったな"

"流石、星の巫女と言うべきか"

"だが、汝もまた、存在そのものが罪である"

"代わりに断罪されたとて、その者の執行は変わらぬ"



 再度、執行人は鎌を構えるが、もう私に何かをするだけの気力がない。戦える理由がない。


 ただ呆然と、死にかけている咲ちゃんを見ていることで精一杯だった。


 そして、その鎌が再び私たちの下に振り下ろされた。



***



「?」


 おかしい。なんで私たちはまだ生きている?

 間違いなく、鎌は振り下ろされたはずだ。


 それなのに、どうして──





──()()()() ()()()()()()()



「っ!?」


 バッと、その声が聞こえた方向へと顔を向ける。


「嘘でしょ……、なんで、あんたが……」



"汝は……"



「ぐぅぅぅあぁぁぁああああ!!!」


 それは、あり得ない光景だった。

 私たちの目の前には、さっきまでいなかった男がそこにいたからだ。しかもそいつは、奴の絶命の一撃を、刀一本だけで防ぎ続けていた。



「コノエ、レンゲ、フェルン!!!」



──キュルルルルル!!

──グルルルァア!

──ワオオォォォォン!!



 何かを叫んだかと思えば、後方から炎と氷のブレスが、そして一匹の大きな犬が、その鋭い爪をもってして、防いでいる鎌へと攻撃する。



"ぬぅっ!?"



「はぁぁあああ!!」


 一斉の攻撃により、一瞬だけグラッと鎌がズレる。そしてその隙をついて、刀の刃をズラし、絶命の一撃を、寸前のところでいなしきってしまった。



「クロウ、幻惑の霧!!」


──カァァア!!



"これは、幻覚か? …………そこか!!"


 いきなり執行人はあらぬ方向にへと攻撃を仕掛ける。私たちを認識していていない?




「翡翠、癒しの鈴! 少しでも彼女の身体を繋げろ! フェルン、広範囲に氷を出せ! コノエ、それを燃やし尽くせぇ!!」


──ワフン!

──キュル!


 そう指示をすると、二匹が吐いたブレスによって、辺り一面が水蒸気の霧で包まれる。






「これで少しは時間が稼げるはずだ」

「あんた、なんで、ここに……」

「話は後だ!! まずは彼女にポーションを!」

「っ!? そ、そうだ! さ、咲ちゃん!!」


「ゴフッ、ゴフッ! ……か、かんな、ぎ、くん」

「翡翠、どうだ!?」


 そう尋ねるが、首を振る。


「翡翠、ダメでもいい。そのまま回復を続けてくれ」



 兎型の式神『翡翠』。

 その能力は回復にあるのだが、今の俺たちでは継続回復リジェネ辺りが限界だ。これほどの傷だと、回復よりも先に、藤宮さんの命が尽きる方が早いだろう。



(胴の半分以上が斬られてる。むしろよくこれで生きてるな)



 そういえば、ステータスの幸運値には、数値が高ければ高いほど、極低確率でほんの僅かだが耐えきれるみたいな話を聞いたことがある。


 それが見事、発動したというところなのだろうか。



「さ、咲ちゃん!!」

「こひゅ、よ、良かった。ぶ、ぶじ、で……」

「なんで、なんで、私を……」

「だ、だって……、ま、まも、るって、やく、そく」

「やだやだ、死なないで、死なないでよ、咲ちゃん」


「藤宮さん、今は喋るな!! ゆっくりでいい。何とかしてポーションを飲んでくれ」

「ゴフッ」


 そっとポーションを飲ませるが、すぐに吐き出してしまう。



(流石に1人じゃ無理か……。つか、なんで奴は俺たちを探そうとしないんだ)



 不気味だ。

 だが奴が来ないのなら、いくらでも手はある。


「葉隠、藤宮さんを押さえておけ」

「あんた、一体何を……」

「いいから!!」

「っ!?」


 怒鳴るように言えば、葉隠は藤宮さんの身体を押さえる。そして俺は口にポーションを含み、そのまま藤宮さんと口づけをし、無理やりポーションを流し込む。



「っ!? うぐぅぁぅうぁあああ!!」

「ちょっ、あんた……」

「黙ってろ!!」


 二度三度と繰り返す。飛び出た内臓などの修復による治癒痛は、尋常じゃないほどの痛みのはずだ。後は彼女の生きる意思に賭けるしかない。


 そして激しく暴れた後、まるで力尽きたかのように、藤宮さんの身体は動かなくなる。


「さ、咲ちゃん!?」

「翡翠、どうだ?」


 そう尋ねれば、翡翠はコクリと頷き、ぱあっと治癒の光が強くなる。恐らく瀕死から重症レベルにまで回復したことで、回復が効きやすくなったのだろう。



「ひとまずは、大丈夫のようだな」

「ほ、ほんと!?」

「あぁ。お前は藤宮さんを見ておけ。……『キリカ』!!」


──フルルゥゥ



 イタチ型の式神『キリカ』。

 その能力は風刃。その刃をもって、俺たちが作った霧を切り払う。


 そうして霧が晴れていくと、ここのダンジョンのボスは中央で座っていた。



"もう、よいのか?"



 その言葉と共に、ボスは立ち上がる。とてもじゃないが、魔物とは思えない行動をするな。



「律儀に待つとか……、お前、魔物じゃないのか」



(言葉を喋る魔物とか、聞いたことがない。それに、こいつの名前……)


 ウィンドウを表示してみれば、ボスの名前が『天上の執行人』と書かれている。


 だとしたら、こいつは──



"我を下等な獣と一緒にするな"

"我は神に仕えし、執行人である"



「はっ! その執行人様が、なんでこんな所にいるんだよ」



"知れたこと"

"我は、愚かにも力に溺れし罪人を、断罪しに来たにすぎない"



「罪人?」



"然り"

"身に余る力は、神の遊戯には不要なり"


「身に余る、力……ね」



 つまりこいつは、葉隠が藤宮さんのバフによるダンジョン攻略を不正だと言っているのか。んでもって、いい加減めんどくさくなったから、潰そうと。


(ゲームで言う、不正プレイヤーに対する運営側からのペナルティだな、まるで)



 どこまでも遊び気分でいやがる。本当に気にくわない。そもそも星の巫女だって、クラスとして割り振られたもの。であれば、それも仕様だろうに。



"ところで、貴様は何者だ"

"どうやって、この場所を突き止めた"



「くくくっ、神の遣いなんだろ? だったらそれくらい把握しておけよ」


"何?"


「俺には、()()()()()()()がいるんでね」


──チュチュ!!


"なんだ、その生き物は……"



「俺の家族さ。コイツが俺に、危険を()()()()()()から、ここに来れたって訳さ」


 そう、グレイからの救難信号を受け取れていなければ、今頃大惨事になっているところだった。



─── 30分程前 ───



「藤宮さん、大丈夫かな?」


──キュルゥ



 下北沢Cランクダンジョンへ突入する時間は、前もって教えてくれていたため、少し経ってから、その入り口前までやって来た。


 何故来たかといえば、何か嫌な予感がして、どうしても来ないといけない気がしたからだ。



(無断入場は禁止事項。下手すりゃ今後一生、ダンジョンへの突入が禁止される)


 だからこそ、今はみんなの無事を祈るしかない。


 だが、ここに来て10分としないうちに、事態が急変する。





「っ!?」


──キュル?


(なんだ、グレイか?)



 突然、藤宮さんに預けているグレイから、()()()()を求める念が飛んでくる。


 俺と式神は契約で結ばれている。故に契約違反があれば、式神側は文句が言える権利があるのだが、それが今来ている。それも何度もだ。


(何かが起きていると、そう考えるべきか)


 だとすると、中ではかなり危険な状況になっているのかもしれない。


 正直、Cランクダンジョンに挑めるだけの強さがあるかと言われたら怪しい。それに、入ってしまえば、犯罪者扱いともなる。



「…………考えるまでもないか」


 家族が助けを求めてる。

 接点が無くても、この先には仲間たちがいる。

 藤宮さんがいる。


 なら、考える必要なんてない。



「フェルン!!」


 狼型の式神『フェルン』を呼出し跨る。そして魔力操作でフェルンを強化する。


 式神とは縁で繋がってるから、大雑把な位置は分かる。だからこそ、最速で行くべきだ。


「最短最速で行くぞ!」


──キュルル!

──ワン!



─── 現在 ───



"テイマー? いや違う、汝らが発する魔力はその者と……、そうか"

"汝、()()使()()か"


「霊獣使い? 知らないな。俺は式神使いだ」


"式神? 霊獣ではないと?"

"……だとしても、あり得ぬ"

"何故、その式神使いが、我の一撃を"



 どうやら俺のクラスと似た存在がいるらしいな。


 しかもその物言いからして、その霊獣使いとやらもクソ雑魚みたいな認識らしい。どの世界でも共通の設定なのか? まぁそんな話、俺には知ったことじゃないがな。



「さぁな。コツコツ強くなっただけだし」



"まぁいい"

"霊獣使いでも、式神使いでも、どちらでもよい"

"どのみち汝のクラスもまた、存在そのものが罪なのだから"

"故に、我が断罪しよう"


(クラスの存在そのものが……ね)


 ずいぶんと、含みをもたせた言い方だ。

 強ち、あいつが言っていた逸脱者という言葉に、信憑性が増してきた気がする。


 まぁ、それは今はいい。



(Bランクダンジョン、天上が遣わしたペナルティボス。そして圧倒的なレベル不足)


 俺の生存本能が、今すぐ逃げろと告げている。

 さっきの攻撃だって、かなりギリギリだった。



「はっ、だからどうした!」



 この場で確認できる守護者ガーディアンは俺を除いて三人。藤宮さんから聞いてた話では、五人だったはずだ。


 つまりはそういうことだ。



 仲間の仇を取れずして、何が守護者ガーディアンだ。



(全神経を集中しろ! それに……)



「天上のクソどもを殺すんだ。そのデモンストレーションとしては、うってつけだよなぁぁ!」


──キュルゥ!!

──グルルルル

──ガルルルル!

──フルルル



"神に対する不遜な言葉"

"すぐさま断罪してやろう"


「やれるもんならやってみろ! 不適合者の底力、魅せてやるよ!!」



 鬼神刀を構え、ダッと、執行人目がけて走り出す。



「はぁぁぁあああ!!」

"ぬぅあああ!!"



 互いの切っ先が触れ合い、ガキンッと、火花が散る。天上と不適合者、これから幾度と続く叛逆の戦いの、その最初の戦いの火蓋が幕を開けた。




──────────────



 守護者:神薙和人

 クラス:式神使い

  契約式神:76体

  契約可能数:0体(魔抽:100/5000)

 レベル:28(EXP:20000/100000)

 称号:ジャイアントキリング


 体力:4900

 魔力:7400

 筋力:38(+3800)

 耐久:38(+3800)

 敏捷:38(+3800)

 感応:38(+3800)

 幸運:38(+3800)

 スキルポイント:0


 スキル:

  ・魔力操作 ・自動回復(体力) ・自動回復(魔力) ・魔力感知 ・纏



──────────────



 クラス『式神使い』


 式神と契約し、契約者と共に成長しながら戦う者。

 契約出来る式神は、レベルを上げるか、特定条件を満たすことで増やせる。


 レベル10達成ボーナス:

  レベルアップ時の式神契約数を倍にする

  ※それまでの契約数も倍となる

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