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天上の不適合者~クソクラスと言われた式神使いで世界を歪めた者たちへ反逆する~  作者: 風間悟
第1章:2人の不適合者

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星の巫女という不適合者① スカウト

─── 4年前の夏 ───


「あの、大丈夫?」

「…………あぁ。大丈夫だ」



 不適合者の烙印を押されて以来、俺はほぼ毎日、同級生や先生から嘲笑われ、虐められ、色々惨めな思いをしていた。


 そして今日も、訓練と称した虐めに巻き込まれ、真夏の蒸し暑い大地の上で倒れていれば、一人の女の子に声をかけられた。


 見た感じ、俺とそう年齢は変わらない子で、一目見ただけで可愛いなと思えるような女の子だった。



 しゃがみ込みながら、心配そうに俺のことを見つめてくる。



「でも、物凄く痛そうだよ?」

「気にするな。こんなの、いつものことだ」


 痛みを我慢して上半身を起き上がらせる。


 そう、いつものこと。

 こんな無駄なことをする奴らなんて、まともに相手する必要はない。適当に満足させれば勝手に帰るんだから。


 

「で、でも……、手当てしないと」

「しつこいな。俺に構うな!」



 当時は色々と惨めな思いしていたこともあって、色々荒んでたと思う。我ながらカッコ悪い。


 だが声をかけてきた女の子は、俺の目を見て少しだけ怯むが、一向に逃げようともしない。


 なので小さくため息つきながら、話しかける。



「お前、俺が誰なのか知らないのか?」

「……え?」

「本気で言ってるのか? ……不適合者、『式神使い』って言えば、分かるか?」

「っ! それって……」


 ようやく俺が誰なのか分かったらしい。

 滅多に現れない不適合者。


 そんな奴と関われば、この子に余計な火の粉が降りかかるかもしれない。だからこそ、さっさと消えてほしかった。


 だがそんな考えは、すぐに消え去った。


 何故なら──



「そ、そっか。君が、『式神使い』だったんだね」

「そうだ。だから俺なんかと関わらないで──」



──大丈夫だよ。()()、だから



「…………は?」


「『星の巫女』って知らない? 私のクラスなんだ」

「そのクラスは……」


 知らないはずがない。

 俺と同じ不適合者で、()()()()()()()()と言われているんだから。

 まさか、この子が?


「ね? だから私には、敵対心を向けなくても大丈夫なんだよ?」

「────」


 その子の、柔らかく微笑む姿を見て、思わず見惚れてしまった。


 そのままその子は、自己紹介を始める。



「私、藤宮咲ふじみやさきって言うの。あなたは?」

「…………神薙かんなぎ和人かずと

「じゃあ、神薙君って呼んでもいい?」

「あ、あぁ」


 思わず、そう答えてしまった。

 不思議と、彼女の言葉がスッと胸の奥に浸透する。


 それから彼女は、バッグからハンカチと水の入ったペットボトルを取り出す。そしてハンカチを水で濡らし、優しく俺の頬へと当てる。


「っ」


 少し染みるが、我慢する。

 みっともない姿だけは見せたくなかった。



「ごめんね、染みるよね」

「いや、いい」

「でも良かった」

「……何が?」

「だって神薙君、私のことを気遣ってくれたんでしょ? 不適合者といると、色々言われると思って」

「それは……」

「神薙君は優しいね」


「────」


 優しいなんて言われたの、いつぶりだろうか。

 養成学校に入ってからは、虐めの標的にされていたこともあって、すっかり忘れていた。



「はい! これで少しは痛みも和らぐと思うよ」



 頬を触れば、絆創膏が貼られていた。



「ありがとう。……それにしても変な奴だな。普通、関わらろうとしないだろ」

「そんなことないよ。だって、困ってたら助ける。人として、()()()()()()()だよ」

「っ!?」



 そうだった。

 困ってたら助ける。

 助け助けられ、その積み重ねがあったからこそ、俺たちの代まで生命が繋がっていたんだ。


 そんなことすら、忘れていたなんて……。



「ぷっ、あはははは!」

「え、えぇ!? なんで笑うの?」

「君は……、いや、藤宮さんは面白いなと思って」


「ど、どういうこと?」

「いいんだ。大切なことを思い出せたよ」

「んん?」



 これが俺たちの出会い。

 今でも鮮明に思い出せる、大切な俺の思い出だ。



─── 現在 ───



「おい見ろよ」

「は? なんでまだいるんだよ」

「えぇ〜、死んだって話じゃなかった?」

「誰だよ、デマ流した奴」

「つか、なんか増えてねぇか?」

「はぁ? うわ、マジじゃん。じゃあ何か? あいつ、レベルが──」



(なんだろう、廊下が騒がしい気がする)



 月曜日の朝。

 先週はとうとう神薙君が学校に来ることはなかった。噂ではもう……、って話だけど、彼が死んだなんて考えたくなかった。


 それに中途半端な私とは違い、本気で強くなろうと努力している彼が、そう簡単に死ぬとは思えない。



 だけど今日は朝から何やら騒がしい。

 まるで、いないと思ってた人がそこにいるかのような……。



(もしかして)



 そんな期待に胸を膨らませていると、教室の出入り口の方から、一人の男の子の声が聞こえてきた。



──藤宮さん、いるか?



***



(数日ぶりに来たが、変わらないな)


 先週はデッドダンジョンに潜り、戻ってきてからは式神との契約などをしていたらあっという間に休日が終わってしまった。


 なので数日ぶりの登校となるのだが、皆からの視線は冷ややかなものだった。


 ちなみにここ、守護者養成高等学校(赤羽地区)には、関東中から集められた守護者ガーディアンのうち、500名が在籍している。


 こういう学校は日本にはいくつかあり、小中高まで全部合わせれば、現在は100校ほど存在している。


 だが、その全員がすぐに戦える訳ではない。レベルを上げ、経験を積んだ一握りの強者たちだけが、戦場へと行くことが許されている。


 むしろ、恐怖に負けて後方に回る者の方が多い。


 いつだって、戦える守護者ガーディアンは人手不足だ。



 それらを考慮すれば、ここの高校にいる生徒は優秀だ。その大半が前線に行くことを望み、平均レベルも他校と比べれば、上位に入るくらいには優秀である。

 ※平均レベル57(Fランクは除外対象)


 なお協会規定で、防衛戦最低参加条件のレベルは『70』。10年前は『50』であったのだが、あの悲劇を境に、更新されることになった。



(俺のレベルは5。最低参加条件まであと65)



 それを約2ヶ月でクリアする。


 あまりにも無謀な挑戦だが、この程度の逆境を跳ね除けられないのなら、俺に誰かを救う資格なんてありはしない。


 そのためにも、背中を預けれる仲間として、彼女の力が必要だ。



(えぇと、H組は…………っと、ここだな)



 こっちのクラスに来ることは少ないが、唯一の知り合いというか、()()がここにいる。なのでその人物に会うため、教室へと入っていく。



「藤宮さん、いるか?」



 バッと、生徒たちがこっちを向くが、どうでもいい。キョロキョロと辺りを見渡せば、窓際の方に彼女はいた。



「よっ、藤宮さん。久しぶり」


 そう声をかけてみれば、パァッと明るい笑みを浮かべながら、トタトタとこっちへやってくる。


 毎度思うが、どこか小動物じみてるよな。



「神薙君、無事だったの!? 先週はほとんどいなかったから心配してたんだよ?」

「あぁ、悪いな。ちょっと野暮用でサボってた」

「そうだったんだね。……良かったぁぁ」

「心配かけて、悪いな」

「ううん、こうしてまた会えただけで嬉しい」



 藤宮咲ふじみやさき

 背は150と小柄ながらも丁度いい体型をしており、かなりの美少女だ。


 それと、俺とは違う理由で強くなりたいと願っているが、俺と同じ不適合者であることから、強くなることができないでいる。



 だが、俺とは明確に違うことが一つだけある。


 それは、ある特定条件下においてのみ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という、稀有な存在であること。



「それでさ藤宮さん、おりいって君に相談したいことがあるんだが……」

「相談?」

「あぁ、実は──「おいおい、なんでまだここにいんだよ!!」」



 藤宮さんに、笹倉さんにお願いしたことを伝えようとした時、聞き慣れた声が聞こえて来る。


 その方向に顔を向けてみれば、藤堂がそこには立っていた。


 小さくため息を吐きつつ、藤堂に声をかける。



「どうした、()()

「てめぇ、尻尾巻いて逃げたんじゃなかったのか?」

「誰がそんなことを言ったか知らないが、俺が諦めると思ったのか?」


 廊下にいる奴らにも視線を向けてみれば、『なんで生きてるんだ?』とかも聞こえてくる。



 なんとなく察していたが、少しの間サボってただけで、死んだか、逃げだしたと思われてたらしい。



「ははは! ほんと不適合者は口だけ達者だよなぁ。藤堂さん、やっちまいましょうよ!」

「そうそう、身の程を知らせないと!」


 この取り巻きどもも変わらないな。

 いつまでも藤堂にべったりでさ。


 藤堂は藤堂で、取り巻きどもの言葉を聞いて、変なやる気を見せていた。



「そうだなぁ。どうも、あのくらいじゃへこたれないようだし、今度は腕の骨でも折っておくか?」


「はぁ……。藤堂、お前だって守護者ガーディアンの端くれたろ。こんなことしてないで、レベルでも上げたらどうだ?」


「はっ! レベルすら満足に上げれねぇお前には言われたくねぇなぁ!!」


 ゴワッと、俺に目がけて拳が迫る。



「神薙君!!」

「はぁ……、チュン」


「はぁ!?」



 ガンッと、藤堂の拳が和人が召喚した式神、チュンが張った障壁に阻まれる。


 守護者養成校では、守護者ガーディアン同士の揉め事はご法度。30年前、レベル差の暴力による死亡事例があった。


 そのため現在では、能力を抑制する特殊な装置が各所に置かれていて、学内ではレベル20相当まで抑え込まれている。



 チュンは防御特化の式神。

 数秒とは言え、オークの一撃と拮抗する防御性能を有している。であれば、レベル20相当のただの拳程度、防げない道理はない。



「お前!!」

「神薙君、レベルが……」

「俺も、ただやられっぱなしじゃないんだ。()()()!」



 新たに契約した3匹目の式を召喚する。

 鳥型の式神で名前は『クロウ』。

 こいつに付与した能力は、攻撃や防御ではない。


 それは──



「幻惑の霧」



──カァァァ



「なっ!? くそっ、前が……、てめぇ、どこに行きやがった!! …………っ、そこか!」

「ちょっ、藤堂さん、俺っす! 神薙は向こうっすよ!」

「待ってください!! 俺らに攻撃は──」



 クロウの幻惑を受けたことで、藤堂は取り巻きたちを和人だと()()してしまった。


 これがクロウの能力。

 一度攻撃を受ければ解除されてしまうが、対象の認識を30秒間、狂わせる能力を有している。



 式神は和人のレベルに応じて強くなる。

 そのうちダメージによる解除も消えるだろうと考えているが、今でも十分強力な力であることに変わりはない。



 そんな藤堂たちから視線を外し、改めて彼女の方へと身体の向きを替え、さっきの話の続きを始める。



「さてと、ここじゃなんだし、外に行くか」

「え!? で、でも、この後授業が……」

「どうせ俺ら不適合者にまともな授業はさせないし、いなくても何も言われない」

「それは、そうだけど……」


 チラリと藤宮さんは、一人の女子生徒に視線を向ける。その視線の先にいるのは、彼女の()()()()()()()()である葉隠だった。



「はぁ……。葉隠、少し借りるがいいよな?」

「あぁ、はいはい。どうぞご勝手に! どうせ、()()()()()()()使()()()()から」



(ボス部屋……)



 毎度のことだが、よくもまぁ()()()0()に、そんな危険なことをやらせると思う。


 でもまぁ、許可も出たし大丈夫だろう。



「葉隠の許可も出たようだし、早速行くか」

「え!? あ、う、うん……」


「てめぇ和人、待ちやがれ!!」


 もたもたしてると、三人それぞれ順番に掛けてる幻惑が切れてしまう。一応の欠点として、同じ奴にはインターバルを挟まないといけない。


 藤堂たちがうるさいが、気にせず藤宮さんを連れて外へと出る。


 だけど教室から離れる時、葉隠がジッと()()()()()()()()()()ことに気づいていなかった。



***



「さて、いきなり連れ出して、悪いな」

「ううん、少し驚いただけだから。それに、こういう悪いことをするのって、少しだけ憧れてたから」

「そう言ってもらえると助かる」


 学校を抜け出し、藤宮さんと共に近くのカフェへと入る。ここは守護者ガーディアンもよく利用するため、怒られる心配がない。


 店員に案内され、奥のテーブル席へと二人で座る。

 それから飲み物を注文して待っていれば、藤宮さんからレベルが上がったことについて尋ねられる。



「ようやくな。先週学校をサボったのは、ダンジョンに潜ってたからなんだ」

「え!? 神薙君、入場許可がついに貰えたの!?」

「いや、それに限りって感じだ。そもそも自殺志願レベルのダンジョンだったしな」

「ど、どういうこと?」

「掻い摘んで話すけど、実は──」


 それから俺は、藤宮さんに先週の出来事を掻い摘んで話す。


 だけど攻略後の、天上との会話についてはまだ話すわけにはいかないので、そこだけは割愛することにした。



***



 注文した飲み物を飲みながら先日のことを話し終えれば、藤宮さんは信じられないといった表情を浮かべる。



「レッドオークを……」

「そうだ。そのおかげでレベルが5まで上がってな」

「凄いね。私も、葉隠ちゃんたちと潜ってる時に一度だけ見たことがあるけど、物凄く怖かったよ」

「確かに、俺も一度死にかけたよ」


(倉瀬はレア魔物だと言ってたけど、藤宮さんも出会っていたか)


 であれば、この後の話もいくぶんかやり易いかもしれない。



「そっか。やっぱり凄いね、神薙君は。それでその子たちが新しい式神?」


 そう言って藤宮さんは、テイマー用のフードを食べているコノエたちを見る。


──チュン!

──カァァア


「そうだ。チュンと、クロウだ。他にもいるんだが、そいつらの紹介はまた今度だな」

「ふふっ、よろしくね!」


──チュチュン

──カァカァ


 藤宮さんに撫でられ、まんざらでもない表情を浮かべている。こいつら、藤宮さんが美少女だからって、惚けやがって。



「ごほんっ! それで、藤宮さんにお願いがあるんだが……」

「あ、そうだったね。ごめんね、神薙君」

「いや、いいんだ」


 俺の式神たちと触れ合ってるところ悪いが、俺もそこまで時間に余裕がある訳じゃない。むしろ、足りないくらいだ。



「それで、何かな?」

「単刀直入で言う。……藤宮さん、葉隠たちのパーティーから抜けて……、俺と、()()()()()()()()()()()()()()?」

「え!?」


「2ヶ月後に行われる防衛戦。場所は香港・メキシコ跡地・グリーンランドのいずれか。……俺は、その防衛戦に参加しないといけない。そのために君の、『星の巫女』の力を貸してほしい。そして──」



「俺と一緒に、()()()()()()()()()()?」





──────────────



 守護者:神薙和人

 クラス:式神使い

  契約式神:5体

  契約可能数:0体(魔抽:3000/5000)

 レベル:5(EXP:10000/40000)

 称号:ジャイアントキリング


 体力:500

 魔力:900

 筋力:14(+250)

 耐久:14(+250)

 敏捷:14(+250)

 感応:14(+250)

 幸運:14(+250)

 スキルポイント:0


 スキル:

  ・魔力操作



──────────────



 守護者:藤宮咲

 クラス:星の巫女

 レベル:0(EXP:-)

 称号:なし


 体力:150

 魔力:300

 筋力:20

 耐久:30

 敏捷:20

 感応:60

 幸運:100

 スキルポイント:取得不可


 魔法:

  ・全能力向上オールブースト



──────────────



 クラス『星の巫女』


 慈愛の心を以て不浄なる存在を滅する星の代弁者。

 魔法適性が高く、膨大な魔力を消費することで、多くの者を護り癒すことにも長けている。


 制約:

  経験値の取得不可

  本来存在しえないクラスのため、全機能封印

  ※外部からの封印解除不可

本作品を読んでいただきありがとうございます!


プロローグや、途中でも出ていましたが、ようやくメインヒロインが本格参戦となります

こっちも癖のあるクラスではありますが、どう強くなるのかご期待下さい


それではまた!

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