裏世界初任務!〜特変体討伐〜⑤
一体目の"特変体”に続いてもう一体"特変体”が一体目の背後にある扉から姿を顕にした。
「げっ…2体……!?」
この巨体の魔モノを俺が一人で戦えと言うのかい・・・?
俺は振り返り俺の後ろにいるアニーの方を向いて「あのー…2vs2でやりませんか……?」
とアニーにダメ元で聞いてみたが、アニーは首を横に振り
「俺は族長達を守らなきゃならんのでね、リク一人で頑張ってくれや」
デスヨネーーー・・・わかってましたよーだ。
でも、諦められない俺は駄目押しで更に聞いてみる。
「でも、その族長を守る為に2人で協力すりゃ、この任務てっとり早く終わるんじゃ・・・・・・・・・」
「リクよぉ…お前なぁ”それ”をコイツが許すと思うのか?」
アニーはすっと横を指指しながら言う。
その指先には腕を組んで仁王立ちしているセフィーの姿が・・・。
「この任務を受けた目的・・・もう忘れたの?」
「い、いいえ!!」
「じゃあ、後ろを見てないで目の前の敵と向き合う!!」
「は…はい!!!」
と、意気込んだ瞬間・・・。
俺の視界が急に陰った。
頭上を見上げると、数十歩先に立っていた筈の"特変体"が俺の頭上で片腕を振り上げ飛んでいた。
刹那にして至近距離まで間合いを詰めた特変体の攻撃を俺は構えていた大剣の刃で咄嗟に受け止め防いだ。
・・・けれど、俺は防いだ瞬間に察した。
これは俺の防御力じゃあ耐えきれない・・・・・・!と。
理性を無くしたデモトロンの怪力がどんなものなのか、体格と表世界にいたデモトロンの腕力の強さから想像はしていたけど、実際にはその想像の倍の重厚感だ。
俺の全身の骨がミシミシと悲鳴を上げている。
さすが・・・ただでさえ筋力値の平均水準が高いデモトロンが変異し、狂った姿だ。
この特変体の筋力・・・下手したら、ちょっと気合いを出した時のアニーの『5分の2』ぐらいの力に匹敵するかもしれない。
「グ・・・・・・!ググギギ・・・・・・!!!」
このままじゃ、俺は特変体の怪力を防ぎ切れず、そのまま巨大な手で地面に圧し潰されてしまう・・・・・・!
そうなったら、サイアクは即死だろう。
いくらヒーラーとしての能力も高い元女性魔法騎士のセフィーが仲間にいるとはいえ、死人を蘇生させる魔法なんて聞いた事がない。
もし、即死は免れたとしても、内臓破裂に粉砕骨折と重傷を負うことになる事は間違いない。
俺の脳裏に勇者見習いの頃、過激な戦闘訓練で粉砕骨折した時の記憶が浮かんだ。
「ぬ"う"う"う"う"!!あんなのもう一生御免だあああああい!!!!!!」
――――また内蔵損傷に続いて粉砕骨折にもなるなんて絶対に嫌だ!!!――――
という、防衛本能により思考力が鋭敏になった俺は
一か八か、俺は己の重心を少し横にズラした。
最悪そのまま俺自身がバランスを崩し、特変体の攻撃をモロに喰らうリスクがある賭けであったが、特変体もバランスを崩し一瞬圧し潰す力が弱まった。
俺はその隙に床を蹴りデモトロンの横に素早く回り込んだ。
そして―――
「一糸超壊!!!」
特変体の横腹目掛けで大剣の先で刺突攻撃を食らわした。
と、その瞬間・・・。
2体目の”特変体”も加勢に拳を振りかざしながら
宙に翔んでいたが、後方に飛ばされた特変体にぶつかり地下への扉がある壁へと2体の特変体は吹っ飛んだ。
ドギーーーン!!!!
本来、民家の壁なら木っ端微塵に壊れてもおかしくない速度で巨体がぶつかった訳だけど
セフィーの結界で守られているから鈍い衝突音が家中に響くだけで済んだようだ。
「このままやられてくれよー?」
俺は攻撃を畳み込もうと大剣を構え直し倒れている特変体に近づこうと一歩踏み歩いた直後、俺の左足に激痛が走った。
「ヴッ・・・!?やば・・・!変な重心の逸らし方したから……!」
まだ特変体は伸びてるみたいだし、痛み止めのポーションを飲む余裕はありそうだな。
俺はポシェットからポーション瓶を取り出して、蓋を開け、くいっと飲んだ。
「そ…そこまでだ!!!」
「ええっ!?」
自分の後ろから急に誰かの大声が聞こえて、俺は驚きのあまり握っていたポーション瓶を床に落としてしまった
「す、すみません!リクさん!私が黙らせておぎすから!」
後ろを振り向くとそこには族長家の外から飛び入って来たデモトロンが族長に羽交い締めにされながらも暴れる姿が
「はなっ…!!離してください!!!」
俺はセフィーとアニーの方を向いたが2人は黙って首を横に振るだけだ。
「ダメだ!!離したらキミは一目散に彼を止めてしまうだろう?そんな事させないよ!」
「だって…!あの特変体は……おいらの友達なんだ!!」
「言ったろう?ヌーとセリーは特変体と化してしまった時点で死んだんだと…!」
「でも!!彼にはまだかすかに意識があります!!!それでも死んでるって言うんですか!?」
デモトロンの少年と思わしき人物は族長に抑えられながら抗議する。
「なりたての頃は僅かにあったかもしれない!しかし……今は……もう・・・」
「でも・・・!まだ2人はヒトの目をしてます!!」
「なら!!このまま彼にどう生きろと言うんだ!!檻に入れるのか!?そうすれば今みたいに破壊して脱走してしまうだけだ!!罪の無いヒトを食い殺す友達の姿なんて見たくないだろう!?」
「勇者さん………!!」
デモトロンの少年はリクに呼び掛け、視線で訴えかける。
どうか。友達を殺さないでくれと・・・。
特変体となったデモトロンが元に戻った事例は過去存在しない。
――――その事を知ったのは任務を受諾した時の冒険者ギルドでの事だった・・・・・・・・・。




