裏世界初任務!〜特変体討伐〜④
俺はカップに入っているコーヒーを飲み干し、空になったカップをテーブルに置いた直後に族長へ一言尋ねる。
「特変体になったデモトロンはここの住人なんすよね?」
「えぇ」
「本当に殺して良いんですか?凶暴化しているとはいえ、元は同じ村の住人をさ・・・・・・」
「リク・・・アナタね・・・・・・」
セフィーが俺に呆れ顔を向ける。
俺が族長に尋ねた内容が無神経だと思ったのだろう。
一応、俺だってわかっているさ、この事を依頼者に聞くのは無神経だって。
それに、殺したくなくても殺さなければならない状況である事もギルドで特変体による被害報告書を見たから理解している。
けれど・・・・・・
それでも俺は知りたかった。
本当に仲間を殺される覚悟が出来ているのか?
というか、俺が正直出来てない。特変体と戦う覚悟が。
「怖い」というのは勿論、大前提ある!!!!
あります!!!勿論ありますとも!!!!
ええ!!!悪いです!?!?魔王を倒した勇者がビビりでよう!!!!!
あの怪力で顔面を殴られたりしたら、人族の骨なんて木っ端微塵だろうな・・・・・・。
頼む!!!ここで気が変わって依頼を撤回してくれ!!
やっぱり覚悟が揺れて殺して欲しくないってなってくれ!!!!
「特変体は元のデモトロンに戻れないってシーラさんが言ってたでしょう?やるしかないのよ・・・・・・街の人のためにも、村のデモトロンの為にも」
「あぁ、族長さんは覚悟出来てる筈だぜ?」
「えぇ、おふたりの言う通りです。それに・・・・・・」
族長は俺の方を向いた。その顔には影が入り、作り笑顔をしているのは一目瞭然の表情で。
「もう何人も"経験"してます」
その瞬間、俺は族長の本心を察したが同時に強い覚悟も感じ取った。
あぁ・・・・・・マジか〜"ここまで"覚悟決まってるのなら
撤回は無いだろうなぁ〜・・・・・・
マジかぁ〜・・・・・・
た・・・・・・
戦いたくねぇ〜〜・・・・・・。
「これは本来、我々デモトロン族の問題であり自分達で特変体を処分すべき所をアナタ方冒険者にお願いさせて頂いてるんです。寧ろ感謝しかない。村を守る為協力してくださるアナタ方冒険者ギルドの方々に 」
「す、すみません、うちのリクが変なこと聞いてしまって…」
「いいえ、お気になさらずに。さて行きましょうか…」
と、族長が言った瞬間にバゴーーーンッ!!!!という爆音が突然何処からか響き渡った。俺は瞬時にその音の主が任務の対象だと察した。
「まさかッ!?も、もう目覚めたのかッッ!?」
「ゴウドュさん!特変体は何処に捕らえていますか?」
「こ、この家の地下牢です!」
「「「ちっっっっかっっっっ…!!!」」」
「でも、どうりで、さっきこっそり探知魔法を展開した時に強い魔力を感じていたんです。そうか・・・つまり特変体は・・・」
「「グオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」
ドカッドカッドカッ……!!!ドゴッ…ドゴッ…ドゴ…
地下から巨大な生き物が登ってくる足音が聞こえる。それはまさしく巨人か鬼の足音。それでいて明らかに荒々しく目の前の鬼類とは全く別モノから発せられる凶暴な鬼類の足音だ。
「おいおい!もう登ってくるぞ!!」
「アニー!リク!ゴウドュさん達を外に!!」
「え?もしかして…セフィーさん一人で解決してくれるんです?」
「何阿呆なこと言ってんのよ、このまま戦ったらゴウドュさん達が危ないから逃がしてって意味!」
「ですよね…」
特変体の強さは個体差はあるが中でも莫大な腕力が脅威で魔力で超強化した檻でも簡単にへし折って脱走し暴れてしまう故に一度特変体に変われば殺処分しか対処法がないらしい
任務受託の際に見た文書に記されていた情報だ。
これを見ていたから俺はデモトロンに会うのが怖かった。というのをホンネをここで白状しておこう。
―――だってそんなバケモノ腕力の魔モノになる可能性がある種族と知ったら身構えてしまうでしょ!だれでも!
それに・・・ 変異の理由がわかってないという事はいつ誰がなってもおかしくないし、話していたデモトロンが急に特変体に変貌したらどうしようかと・・・
だから、族長も奥さんも怖かった。今も正直言うと少し怖い。
しかし、今の怖さの対象は音を立てて迫り来る
”当任務の対象”であろう何モノかだ。
「待ってください!!!」
バーーーンッ!と音を立てて外から何者かが入ってきた。よりによってこのタイミングで!?
「ギン!!入っちゃダメだ!!特変体が目覚めたんだ!冒険者さん達にお願いするから!この家から離れていなさい!」
「特変体じゃない…!あの2人はグウォン兄さんとファーラ姉さんだ!!まだ意識が残っていたんだ!特変体になりきってない筈なんだ!!!」
突如現れた青年のデモトロンが玄関の前に立ち2人を避難させる出口を塞がれ閉まっている。
ドガッ…ドガッ…ドガッ…!!!!!
下から聞こえる足音はだんだんと大きくなり、もうすぐそこまでやって来ているのだろう、続けて
ドゴッ…!ドゴッ…!!!
家の中にある扉を叩く音が聞こえて、その扉が何処に繋がっているのか察した俺は扉を警戒心を向ける。
「おい、族長さん、あの扉まさか…!!」
「ええ!地下に繋がっている扉です!」
ドゴオオオオオン!!!!!
爆音と共に何者が扉を蹴破った…中からは全身が黒気味の赤に変色した姿はデモトロンと変わらない魔モノが現れた。これが特変体・・・!確かに”デモトロンであってデモトロンではない魔モノ”と称されるのは納得の姿をしている。そんな魔モノが蹴破った扉から一番近い位置にいるセフィーに向かって飛び掛った!
「こうなったら仕方ない!アニー!ゴウドゥさん達を特変体から守って!!」
そう言った直後、セフィーは呪文を唱えた。足元に魔法陣が現れ魔王陣から光が発せられたかと思えばその光は空間一体に発せられ、俺は咄嗟に目を閉じた。
瞼を閉じた一瞬の間に何か物体がぶつかる衝突音が聞こえた。
目を開くと光を見た後遺症でボヤける視界に飛び掛って来た特変体の腕を盾で防いでるセフィーの姿が入った。
そのセフィーに向かって俺の中で生まれたとある懸念を聞いてみる。
「あの・・・これって・・・やっぱり俺が戦う・・・流れ・・・・・・」
「ええ!もちろん!」
って、めっちゃ笑顔で頷くんじゃないよ!!
「あぁ、やっぱり・・・そのー…そのままの勢いで倒してくれたり」
「安心して」
「え?」
「さっきのあまーーーいコーヒとクッキーのおかげで魔力精度が上がってるから瀕死程度の怪我ならすぐに治せるよ!」
いやいや、瀕死程度でて・・・
「さあ、出たでた」
「おっと…!!」
俺は背後から誰かに背中を押された、目の前には特変体の姿のみが俺の視界に収まっている。後ろを振り向くと特変体の攻撃を盾で止めていた筈のセフィーが腕を組んで立っている。
「家中に結界を展開したからここで戦っても村に被害が渡ることはないわ」
「そうか……今の光と魔法陣は結界魔法…!」
「本当は創造魔法で空間ごと変えれたら良かったのだけど、ごめんなさい、中の物は戦闘中に壊されてしまうかも」
「そんなの安いもんです、村と街が守られるのなら…!」
なんて。立派な族長なのだろう。家より村と町を慮るなんて・・・長の鑑だ。俺なんてこの場に来ても尚自分の身の危険に内心怯えているというのに。
「あの・・・援護してくれるよ…ね…?」
「うん、危なくなったらね」
はたして、彼女にとっての”危なくなった”がどの程度の匙加減なのか?想像には難くないが
もう対象を目の前にしてしまっては引き下がれない。(結界まで張られちゃったし・・・)
俺は大きく息吸って吐き、覚悟を決め直すと、背中に刺した大剣を抜き戦闘の構えに入った。




