サタンちゃまとモメる天使たち
「どれ、俺はいくつレベルアップしたかな?」
片ひざあげて座り、ビールコップ片手に上機嫌な谷川シェフが自身のステータスを開いた。
メリーが軽蔑する目で見ている。まぁ、今日位は多目に見て欲しいな。しかし、一人だけ宴会オヤジだな。
【 職業狩人レベル98 魔力0 攻撃力1077 力1300 体力1547 素早さ1600 幸運52 特殊スキル 感知レベル8 トラップレベル10 】
と、覗き見したけどやはり身体能力が突出している。その反面、魔力が一切ないのが彼らしい。
それと特殊スキルはハンターに適したもので今後のダンジョン探索なんかに役立ちそう。
スキルと言えば俺の悪魔ガチャスキルだけどそれは元からあったスキルなのか、それとも今回新たに生まれたスキルなのかは不明。
今のところ分かっているのは悪魔のみ召喚出来る。(魔石ガチャは別物とする) これまで引き当てた悪魔は皆俺のことを知っていた。つまり、元から従えていた部下を呼び出したに過ぎないのか?
俺が悪魔王ならば、何十万のほぼ無限に感じさせるほど、大量の悪魔兵を召喚出来る計算になる。
問題はガチャを引くための魔力量だ。今回クレナのおかげで連続レベルアップしたから、魔力量次第で一気に引く回数が増えるな。
さて……俺はドキドキしながら目の前の空間をタップし、ステータスオープンさせた。
【 職業サタンちゃまレベル132 魔力1000 攻撃力410 力395 体力174 素早さ288 幸運1543 特殊スキル 悪魔ガチャスキルレベル23 魔石ガチャスキル15 】
「にゃっ!?」
まさかの聖女さま超えのレベル132で自分自身驚いて、思わず叫んだ。
聖女さまの限界が120だと言うのにそれを超えた俺は悪魔だからか……嬉しいのやら、逆に微妙な気分だな。
しかし、やはり魔力と幸運が達人並みに数値が増量した。恐らく聖女さまを優に超えているかも知れない。
もちろん彼女のステータスを見たことないから、なんとも言えないけどね。
で、体力面のステータスはレベルに比べると低過ぎるけど、他の数値も高レベルだと手に負えない位強くなるから、きっと神さまがバランス調整したのだと思う。
しかし魔力1000か……一回のガチャMP消費が20だとすると、最大50回回せるのかぁ……これだけ一気に回せばもしかして、星6悪魔を引き当てれるかもな。
いや、まぁ、最高レア星6の存在があるのかまだ分かんないよ。でも過去に俺は、最強と謳われた悪魔五将軍を従えていたらしい。
当事者なのに曖昧な言い方だ。いや、記憶がすっかり消失しているので申し訳ない。
でもさ、特に五将軍の一人。武闘派ソルトの伝説を松尾から聞いたらとても、クレナと同レベルとは思えなかった。
アメリカ軍の空母を持ちあげ地面に突き刺し椅子にしたと言うからどんな巨人かと聞いたら、なんとソルトの身長は180センチの悪魔だと松尾が誇らしく説明した。
そんな人間サイズの身体で、空母を一人で持ちあげたソルトのパワーは想像を絶する。ここまでくると最早レベルの範疇を超えている気がするな。
他の五将軍については記憶にないな、間違いなくソルトこそが最高レアの悪魔に違いない。
もしも、引き当てれば俺は最強の部下を手にすることになる。
「ちょっとどうなってるのよ。アンタのレベル?」
「にゃっ!」
また横から覗き見したメリーがイチャモンつけてきた。まぁ、ついこないだまで格下だと優越感で見ていた俺にレベル超えされちゃ悔しいよね?
「にゃははっ♬」
「こっ、こいつっ!」
俺は両手を腰に添えて思わず笑ってしまった。
このポーズは無意識だった。どうやら愉快な気持ちになると、このような王様みたいな態度で笑ってしまうみたいだ。
これはもしかして、悪魔王と呼ばれた時代の癖なのか? そうなるとあの時、単なる性転換ではなく、元のサタンの姿に戻ったと考えることも出来る。
じゃあ、この世に生を受けた自分。今、俺と認識している自分はなんなのかと、正直混乱していた。
「ふふっこうもあっさりあたくしのレベルを超えていくとは、あの冒険者覚醒儀式の時、見込んだだけはありますわ」
「にゃっ……聖女さま……」
聖女さまは怒るどころか俺の頭を撫でて誉めてくれた。
やっぱり褒められると嬉しいな。心の中で腹黒聖女さまと呼んでごめんなさい。
□ □ □
ステータスチェック会が終わって、海産物メインの豪華な料理が続々と運ばれて来た。
お膳に並べられた料理は見るだけで気分が高まる。果たして俺の小ちゃい胃袋に入るかな?
「ほっほっ♡ 悪いわね〜こんな豪華な料理を頂けるなんて」
谷川シェフの隣に座った紅蜘蛛が言った。
メリーは当然距離を置いて座っていた。まぁ、紅蜘蛛のか弱い獲物だからな。
しかし、同じ天使騎士のエイトさんも何故か紅蜘蛛と距離を取って目を合わせない。それで黙々と口に箸を運んでいた。
まぁ、無理はないか……目をつけられたら最後。メリーみたいに狙われる。
「ほっほっ♬ 貴女太陽天使騎士でしょ?」
「……」
『あ〜あ』思ってる側からエイトさんは紅蜘蛛に目をつけられた。
よっぽどショックなのか箸をパタリと落とした。
「な、なにを言ってるのだ……ひ、ひっ人違いなのだ……」
震えながら視線をそらすエイトさん。
「あら〜…………見え透いた嘘言って目が合わせられないのは、アタシが変態だからか、もしくは罪悪感からかしら?」
「……エ、エイトはなにも悪くないのだ……」
「あら〜? あの大戦時参加した太陽天使騎士の中で唯一消息不明だったのが八番目の騎士。アンタよ」
「…………エ、エイトは別ににっ逃げてはないのだっ!」
額から汗を流し、明らかに動揺したエイトさんが立ちあがって否定した。
事情は分からないけど、天使騎士同士の問題だから俺たちは見守るしかなかった。
「ふ〜ん……別にどこに逃げてたかなんて太陽騎士じゃないあたしは関係ないけど、それでもあの大戦後にほとんどの太陽天使騎士が散ったのよ」
「……」
紅蜘蛛の言う大戦って三百年前に起きた大惨事と関係してるのかな?
でも、仲間が命を落としたのがその後ってことだよな。一体三百年前になにが……。
「黙ってないで答えて頂戴。アンタが逃げてる間に多くの同胞が散り、あの英雄ユウキちゃんも……」
「…………すっすまないのだっ!」
そこまで追詰める必要があったのか疑問だったが、観念したエイトさんが紅蜘蛛の前で土下座して謝罪した。
「ちょっ……べ、別に謝らなくてもいいのよ……ただ、初めて会ったアンタを見たらつい問い詰めたくなったのよ……」
責めすぎたと後悔したのか、少々困った顔の紅蜘蛛が少し態度を和らげた。するとエイトさんが顔をあげて彼女の顔を見つめた。
とにかく人を責めてもなんにもなんないよ。
そう、頭ごなしに説教する。パワハラ教師とかに言ってやりたいね。
「済まないのだっ!だからエ、エイトは逃げた罪を挽回するためにいや、聖女様と共に世界を救うためにこの世界に戻って来たのだっ!」
「そう……貴女の気持ち今十分に分かったわ。もう責めないからこれからもよろしくね」
「おっお、おう……こちらもよろしくなのだ」
『おっ!』なんだかいい感じで二人が握手して和解した。他人事で一部終始見ていたけど清々しい気分だ。
「でっ……」
不意に紅蜘蛛が振り返り俺を睨んだ。
「なんで天使軍の宿敵がそこにいるのかしら?」
「にゃあっ!」
紅蜘蛛が俺の喉元にクナイを突きつけた。
油断してた。逃げた同胞より敵の総大将の方が百倍憎いよな。
それで当然目をつけられたのが俺な訳だ。
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