サタンちゃまの思わぬ再会
開始前にアヤネとミツヤとユウナが武器と防具を装備始める。
まずアヤネは制服の上に軽めのアーマーを装着して武器は弓だ。次にミツヤの武器は鉄拳を装備し防具は皆と同じだ。
そしてユウナは長剣を装備し防具は共通。
一方俺はというと、聖女さまに渡された短剣と棍棒と心許ない装備だけど、幼女が装備出来る武器は限られているから仕方ない。
それより頼りになる俺の武器は隣にいる召喚悪魔のユニコーンラビットだ。
「よ、よすにゃくすぐっにゃい!」
ラビットが俺の頬にスリスリしてくる。
しかしなんだ……召喚悪魔は召喚者に決して絶対服従するのは、服従の首輪もないし何故だろう?
それよりクラスメイトが気になる。いや、元と言った方がいいか……だってこの身体じゃもう同じ高校には通えないよな……。
まぁ、幼稚園に逆戻りだけは勘弁だな。
「ユウナ〜アヤネ〜ミツヤ〜」
俺は惚れてる順番に彼女たちの名前を呼んで駆け寄った。最後の望みを掛けてな。
「あら、神崎君どうしたの?」
「にゃっ!」
ユウナから声を掛けてもらい驚いて足をストップさせた。
「あら猫みたいな口癖はどうしたの?」
「にゃにゃっこれには訳にゃっ!」
ユウナにもこの口癖がアザといと思われているのかなと、俺は動揺して両手をワチャワチャと振った。
「聞いてにゃユウナ……この身体の仕様にゃしくこんにゃ口調でしか喋れにゃいんにゃっ」
「ふふっそうなの。本当可愛い」
「にゃっ…………」
ユウナに褒められ俺は思考停止した。
分かっている。彼女はそのつもりがなくても、男たちは好意を持たれたと勘違いするだろう。
それよりも俺は最後の希望のために三人に近寄ったんだ。
「なにゃあユウナ……」
「なぁに神崎君?」
ユウナは微笑みながら目線を合わせ腰を屈めた。
「俺はお前にゃと競い合いたくにゃいっだかにゃコッチに来にゃいか?」
ユウナが了承するなら手を取り合い逃亡する気でいた。しかし彼女は目を瞑り首を横に振った。
「それは出来ないわ」
「にゃっにゃんで!?」
ユウナは優しく頭を撫でてくれた。まるで猫に撫でるように……。
「私は勇者様に選ばれたことを誇りに思っている。そして、この世界を脅かす魔王を倒すために彼について行く覚悟があるの……ねえ皆んな?」
ユウナが振り向くとアヤネとミツヤが首を縦に振る。
「あたしもユウナと同じ考え。勇者様と一緒に旅立つわ」
アヤネ〜お前もか……どこがいいんだよあの見かけだけのイケメン勇者が……。
最後の希望のミツヤに訴え掛けたが目をそらされた。なんでお前もかっ!
目に涙が溜まる。
あきらめかよ。この勝負負けたら俺の居場所が無くなるから……。
ドレスの裾で涙を拭っているとミツヤが駆け寄りしゃがんで肩に触れた。
まさかお前……。
「アンタの事情がどうあれこの勝負絶対手加減しないから覚悟しておいてね」
「にゃっにゃんでにゃっ!」
「ごめん……これ以上情が移るから離れてよ……」
「にゃあ…………」
彼女たちの心が勇者に魅かれていると知った俺は、うつむきながらラビットの元に戻った。
元気のない俺を励ますためにラビットがスリスリしてきた。
「おみゃえ……一緒に戦ってくれるにゃ」
鳴くことが出来ないラビットは、返事をする代わりに首を上に振って背中に乗れと合図した。
俺は背中によじ登るとスタートの合図を待った。
こうなりゃこの勝負に勝つしかない。
勝つ見込みはある。まずはゴブリン相手にユニコーンラビットが狩ってくれる。
本当に頼りになる相棒だ。
それと戦う前にステータスをチェックした。
どうやら一回ガチャ回すのにMP20消費するらしく、今の俺のMPが25だからもう一回ガチャ出来るな。
まぁ、ユニコーンラビットがいるからガチャの出番はなさそうだが。
「制限時間は午後5時まで、それではスタートですっ!」
メイドのサガネさんがスタートの合図を言うと、いち早く三人が駆け出した。
手加減なしで彼女たちは俺を勝たせる気は皆無だ。
「行くにゃユニコーンラビット!」
俺の命令にラビットが立ちあがり大地を蹴った。凄いスピードで彼女たちを追い抜きゴブリン目指して樹海の中に入った。
俺はというと、ラビットに振り落とされまいと必死に背中にしがみついた。
これでは戦えない。なに、命令するだけでラビットが戦ってくれるさ。
走ってるなかラビットの毛が総毛だす。どうやらゴブリンを感知したみたいだ。
ここは先行して点数を稼ぎたい。
前方に数匹のゴブリンが待ち構え弓を引ていた。待ち伏せかっ!?
しかしっ!
「かませラビットッ!稲妻攻撃にゃっ!」
バリバリバリッ!
「ギッ!」
稲妻で弓兵を一掃。首の回収はあとだ。左右から短剣を装備したゴブリンが飛び掛かって来た。
俺は臆することなくラビットに命令した。
「一旦後退っまとめて体当たりだっ!」
命令通りラビットが後ろにジャンプした。すると左右から来たゴブリンが中央に集まった。
そこを真っ直ぐ体当たりさせて粉砕した。
強いっ!レベル1 でこの強さだ。
魔物に比べ悪魔はずば抜けて優れている。このラビットと共に戦い抜けばこの勝負勝てる。
俺はそう確信して小さな手を握り締めた。
しばらくして俺たちを囲むように複数のゴブリンが取り囲む。
数にして二十匹。先ほど倒した分も含めて十分過ぎるほどの数だ。
まだ時間があるし勝てるよ。
『ユニコーンラビットの活動時間が経過しました』
勝利を確信したその矢先に電子メッセージが発せられると、ラビットが突然消えて背中に乗っていた俺は落下した。
「痛たたたっ……」
召喚悪魔の時間制限時間のことをすっかり忘れていた。あれから五時間が経過していたんだ。
なんとか立ちあがった俺は気配を感じた。刺すような殺気が周囲からしていつの間にかゴブリンの群れに囲まれてしまってた。
「にゃあっ!」
パニックになった俺は逃げ出した。
「ジャアッ!」
バキッ!
「にゃんっ!」
飛び出した一匹のゴブリンに俺は、棍棒で殴られ転がって転倒した。
「ぐ、にゃっにゃあ……」
棍棒がどこかに飛んでしまった。ゴブリンの群れに包囲される中、俺はナイフを握り立ちあがった。
死んでたまるか。
一瞬だけ脳裏に白い翼を広げた純白の女騎士の後ろ姿が浮かんだ。
アレはなんだろう?
少なくとも味方ではないっ俺はあの白い翼の女騎士に敵意を抱いた。
今度こそ負けられない。俺はそのために生まれて来たと何故か思った。
だからこんなところでしかもゴブリンなんかに!
「にゃっ!」
ゴブリンに腹を蹴られまた転げた。
「ケケッ……」
ジワジワと俺を取り囲み見おろし、薄笑いを浮かべるゴブリンたち。
俺はというと泥だらけになって立ちあがれない情けない姿だ。
こんな目に遭うとは、全てにおいて考えが甘かった。
ユニコーンラビットの制限時間を計算していなかった俺の痛恨のミスだ。
これで勝負に負けるどころか、今まさにゴブリンたちに寄って命を奪われようとしていた。
「にゃっ……にゃあ……どうちてアタチだけにゃこんにゃ目に…………」
あきらめ掛けたその時脳裏に声がした。
『あきらめちゃなんねえですよサタン様ぁっあ、あんたにゃああるじゃないですかぁ、俺たちサタン軍を呼び出すスキルが……』
誰とも知らない声が俺を励まし俺を慕い求めた。粗暴な声だったが、忠誠を誓うその声を聞いて涙が溢れ出した。
「にゃっ…………にゃあっ……お前にゃ……」
『!!』
力を振り絞って立ちあがるとステータスを開いて悪魔ガチャスキル表示を指でタップした。
すると赤い表示が出た。
【MP20で一回回せます】
俺は迷わずタップすると今度は目の前に、巨大カプセル自販機が空から落ちて来た。
「ギャッ!!」
自販機に驚いたゴブリンたちが離れたスキに俺はハンドルを右に回した。
ガチャガチャッポンッ!
自販機の取り出し口からカプセルが飛び出し転がった。そしてなんと銀色のカプセルだ。
明らかに銅よりレアリティがあるのは間違いない。
カプセルが震え光りを放ちパカッと開いた。すると中から身長約2メートルの人影が現れた。
性別は男で青いパンツ一丁だけど鍛え抜かれた真っ赤な肉体が頼もしい。
ちょっと待て、真っ赤な肌?
精悍な顔立ちに額には二本の角が生えて口から牙が飛び出し、背中にはコウモリを思わせる羽のない黒い翼が生え、腰には尖端が矢印状の黒い尻尾が生えていた。
右手には訳2メートルの長さの三叉の銀色の槍を握っていた。
それはまるで巨大なフォークだ。
この風貌はどう考えたって……俺はステータスを開いた。すると引き当てたガチャの詳細が表示された。
【レアリティ星2 レッドデビル松尾 (亜種)レベル1 】
レッドデビルは分かったけど松尾って個人名か?
混乱しているとレッドデビルと目が合った。
「にゃっ!」
俺を見おろす鬼のような形相にビビッてうしろにすっ転んだ。
するとすかさずレッドデビルが動いて俺を受け止めた。
「にゃっ…………にゃんでかばったにゃっ……?」
不思議に顔を見あげるとレッドデビルが目に涙を溜めていて、顔を震わせていた。
レッドデビルから離れた俺は訳も分からず見ていると突然彼がひざまづいた。
「ど、どうしたにゃ……」
「良くぞっ良くぞご無事で……悪魔軍総大将にして我が主人悪魔王サタン様っ……あっしは、あ、あっしはこの時が来ることを三百年間魔界で待っておりやした」
「にゃんと……」
ひざまづき俺に忠誠を誓う一匹の悪魔に身に覚えがなかった。
だけど、俺を見て涙を流す彼こと松尾を見てはっきりした。彼は俺のことを知っている。
そして、俺の特殊スキル悪魔ガチャは誰の物でもない。
唯一無二で、かつての部下を呼び出せる召喚スキルだと……。
俺は立ちあがった。
「松尾っ」
「ハッ!サタン様っあっしに、なんなりとご命令を」
「うむ、ここにいるゴブリンを一掃するにゃっ!」
「ハハッ!」
決まったが最後に猫が出てしまう。
だけど松尾は笑うとこう言って立ちあがった。
「サタン様。昔からその口調変わりませんね」
なんだ……誰かが設定した仕様じゃなかったのか。そうなるとこの忌々しい猫口調も愛おしくなった。




