サタンちゃまは勇者の条件に戸惑う
「ちょっとウチのサタンちゃまで遊ばないで頂戴」
俺が勇者パーティーに囲まれているところに、聖女さまが助け舟を出してくれた。
まぁ、こっちも地獄なんだけどね……。
とりあえず彼らからすり抜け聖女さまの元に駆け寄った。
「にゃにゃっ聖女さにゃあぁぁっ!」
「サタンちゃま…………こらぁっお座り!」
「にゃんっ!」
なんかいい場面だったのに、聖女さまの躾けを受けすっ転んだ。
ヒザが擦り剥け痛いのに強制的に起きあがって正座させられた。
しかしなんで怒ってるのかな?
「なに敵チームにステータス見られてるのよ」
「にゃっ……」
腕組みした聖女さま滅茶滅茶優しい顔で俺に詰め寄った。
なるほど、ガチャとかサタンとかまだ仕上がってない段階で知られたから怒ってるんだ。
仕方ないだろう。今のところ俺は悪魔ガチャしか能力のない。か弱い幼女なんだから。
あんな歴戦の冒険者に囲まれたらどうにもなんないよ。だから俺を責めるなら早く助けに来て欲しかったな。
でも……とりあえず謝るか……。
「ご、ごめんなさい……」
「しょうがないわね……今度こんなミスしたら晩飯抜きよ」
「にゃあっ!」
食べ盛りにそれは困る。
まぁ、随分と甘い処分の仕方だけど、とりあえずことなきを得た。
「茶番は終わりか聖女?」
様子を見ていた勇者が嫌味を言って来た。
「ジロジロ見てんじゃないわよ勇者。それよりさっさと勝負始めましょう」
「ああ、そこでルールは、今から日が暮れるまでにゴブリンをより多く仕留めたチームの勝ちというのはどうだ?」
「別に構わないわ。そちらが不正するといけないので、仕留めた証拠に首を集めるのはどうかしら?」
「フッ、君は疑り深いな……ははっ」
勇者は人差し指で鼻の下を擦り苦笑した。『あのなぁ』過去にズルした自覚あんだろ?
「さて、ただ勝つか負けるかでは面白くない。だからお互いなにか掛けてみないか?」
俺も嫌な予感がしていた。案の定勇者が勝つつもりで提案してきた。
「……別に構わないけど貴方は勝ったらあたくしのなにが欲しいの?」
「フッおかしなことを聞く。クク……」
勇者は勿体ぶってほくそ笑んだ。早く言えよ。まぁ、おかしいのはお前の頭だと思うがね。
勇者は聖女さまに向かって指差した。
「ズバリ白銀の聖女パラルッお前が欲しい!」
「…………貴方本当にお馬鹿ですわね」
「なにっ!?」
聖女さまが満面の笑顔で勇者に毒ついた。
「本当先を見る目がないと言うかお馬鹿……」
聖女さまがチラリと俺の顔を見てから言った。『えっ?』先とは俺のこと?
「きっ貴様っぼ、僕に二度も馬鹿と言ったな!」
聖女さまの意図を理解出来ない勇者はただ聞き返すしかなかった。
「……分かりました。もしもあたくしが負けたら勇者様の希望通り自身を差しあげましょう」
信じられないことに聖女さまは胸に手を当て了承した。
「なにっ……よっしゃああっぁぁ!」
嬉しいからってガッツポーズしてはしゃぐな勇者。
しかし、聖女さまはなんでリスクの高い掛けに出たんだ?
もしも負けたら自身の白銀の聖女冒険者チームが消滅するというのに。
「で、仮に勝ったとして、そちらは僕らのなにが欲しい?」
「そうね……とりあえず太陽の獅子の冒険者の一人貰うわ」
「それってもしかして僕も含まれるのかなぁ?」
「それはないわ」
「なんだよ聖女っ!」
即答早い聖女さまに地団駄踏んで悔しがる勇者。本当子供というか、底が浅いよな彼は。
とにかくコッチが勝てば勇者チームの誰か一人引き抜ける。選ぶのは聖女さまだろうけど……出来れば高嶺を希望する。
間違ってもドワーフのおっさんは勘弁な。
「お互い賭ける対象が決まったところで早速始めましょうか?」
聖女さまが聞くと勇者が右手で制した。
またなんか企んでいるのか?
「お互い歴戦の冒険者だから、ゴブリンなんて簡単に狩れるだろう。だから新人同士競わせるのはどうだ?」
ホラ見ろ。コチラが不利になる提案をしてきた。大体新人同士って勇者チームが三人でコッチは俺だけだよ。
どう考えても聖女側の振り。まさかパラルさまは条件を呑むつもりじゃないよな……。
「分かりました。その条件呑みましょう」
「にゃっ!? せ、聖女さまぁ無茶にゃっ!」
幼女の身体で一人で戦うなんて無理。不安になった俺は聖女さまに抱きつき訴えた。
「お黙り犬」
「にゃっ!」
問答無用で強制お座りされた。
しかし、なんで聖女さまは勇者の不利な条件を呑んだんだよう。
俺は泣きそうになっていると察したのか聖女さまが頭を撫でてくれた。
「ただしこちらも条件があります」
「はっ……!」
「勇者様の新人の数は三人。それに対してあたくしの新人はご覧の通り一人。しかもつたない動きの幼女だから圧倒的に不利。だから魔物召喚を許可して欲しいわね」
「魔物っチビの後ろにいる一角ウサギのことか?」
「はいそうです」
しばらく考え込む勇者。
「……う〜む……分かった。許可しよう。だがっ負けたら分かっているな聖女っ!」
「ええ」
そっけなく了承する聖女さま。
しかし何故聖女さまは勇者のくだらない勝負を受けたのだろうか?
例えば太陽の獅子の冒険者の力を見るためならば、聖女さまは新人縛りのルールを了承するはずがない。
だとすると聖女さまなりに意図があって条件を呑んだハズ。
それしか考えられないね。
「それでは始めるぞっ!」
「ハイッ!」
勇者が合図するとアヤネ、ミツヤ、ユウナの新人三人がそれぞれの武器を持って走り出した。
ちょっと皆んなマジか!
俺も慌ててユニコーンラビットの背中に乗って、樹海の中を疾走した。
考えて見れば、俺が負けたら聖女さまが勇者に取られ聖女チームは解散になるな……。
そうなると、家も親もいない俺の行き場がなくなる。だから全力でやらざる得ない。




