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Earchlo  作者: 稲土瑞穂
第二章/首都の生活
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第十七話「やけと」(#21)

 L’2038/3/1、吹雪の中のダルンデネト、東川に架かる国鉄一号線の橋に、赤い光と青い光とが現れた……らしい。

 私達が其れを知ったのは、エリナーが突然家の扉を開けたからだった。轟々たる吹雪の中で叩いても意味が無かったから仕方が無い。扉は開いた途端に風の流れに沿う儘、飛んで行ってしまった。併しエリナーの語った事は扉の事を後回しにせざるを得ぬ程のものだった。エリナーは慌てた様子と冷静沈着とを行き来しながら、字赤坂の国鉄本社に出社した二人に起こった事を話した。鉄道路線を歩くのは異常なのか普通なのか判断も付かなかったが、兎に角既起の事だからとエリナーは家に居た私達三人を、外は吹雪いているというのに、連れ出した。エリナーは又折畳に対する度を越した研究で吹雪の中でも平気な折り畳める空間を作っていたらしく、国鉄本社の和室に来させるのに一つも難は無かった。和室に敷かれた蒲団の上に寝かされている二人を目にして、くつねは殊に驚き慌てた。エリナーは私らに、二人が斯うなった経緯を家でのより詳しく順序立って話した。其れに拠ると、父――オコンネルは友人に二人が来たらば国鉄本社と一号線とを案内する様にと云っていたが、此れ迄二人は全く来る気配が無かった。然して今日やっと来た。彼れは二人に国鉄本社を予定通り案内し、暫く憩ってから一号線を案内するとなった時に、二人は冒頭に出した其の橋にて然様なことを起こしたらしい。細かく云えば、マコトが転び、ピミャが駈け寄るも嚏をした、と云う事らしいのだが、シルと私とには全く理解できない話だった。

「……ピミャが火龍人だってこと、話してなかったっけ」

 くつねが然う訊く。二人とも頷くと、彼れは溜息を吐いた。大事なことを逃していた、と口の形が動いた。

「……二人は転んで頭を打っているし、マコトは火傷しているから、病院に連れて行かないと」

 エリナーは私達に然う告げた。

「治癒魔法、使えないのかい」

 くつねが彼れに訊くと、使えないんだと答える。

「…………医者探しててよかった」彼れは然う呟く。「エリナー、城壁の外の医者でも構わないかい」

「勿論、構わないわ」

 エリナーの即答に、くつねは笑顔になり尻尾を嬉しそうに振った。

「じゃあ、四人で運びましょうか。体格から考えて、エリナーと私とでピミャを、二人はマコトを運んで。行先は城壁の……東門の外の、平墾郡の診療所。近付けば解るわ」

 私達は大急ぎで、二人を運んだのだった……。

 二人を運んだ先は、一人の女が医師として働く診療所であった。彼れ、スクレイブハという名の女は微笑み、六人を受け入れた。

 マコトは肩に火傷をしているが軽傷、ピミャは風邪と彼れが診断した。エリナーが彼れに、此の子が青い焔を出して怪我させたみたいなのです、と母の様に云った。

 くつねが睨んだのも気にしない彼れだったが、其れはスクレイブハを驚かせた。青い方が温度が高いことは皆知っている通りだ。詰りこんな火傷では済まない、と云う事である。彼れの火傷は右肩のみだったが、首が焼け落ちてもおかしくない筈だと彼れの言うも、吹雪だったから詳細はわからないのです、とくつねが不確実だと云う事を忘れず伝えた。

 くつねは流石に一緒に寝たこともある故(然う言う問題なのだろうか疑問は当然私の他にもある)、彼れがどんな人物であるか詳しく知っていた。そんな彼れは、序でに、と、とある医師会の信頼を謳う張り紙を指差して詳細な解析をしてほしい、と云った。

「私の所属する医師会の病院にて行う検査ですので流石に金をとることになりますよ」

 先生は然う仰有って、四人に金額を伝えた。喫驚仰天の三万圓。銭でものが買える此の時代だ、可也高い。併しエリナーが彼れの為ならと払うと云い出す。自分の財布からだ、国庫からじゃないと付け加えて私らを按堵させるが、シルは何のことか解らずに戸惑うだけだった。私が説明すると、彼れは理解したような顔をした。静寂の後、不安にしかならない、其のマコトにそっくりな顔で矢張り、詳しく教えてと返した。

「触診とかだけで火傷の詳細は判別できないから、内側も見える機械で調べられないか、と云う事ね」

 彼れはやっと理解を意味する頷きをした。

 其れから数分経って、私らはある大きな病院に居た。二人は本格的な病床の中で眠っていて、繋がれた器械は彼れが生きていることと其の詳細を無機質に、定期的に伝えていた。

 彼れはすや〳〵と眠っているが、医師によると肩にも首にも軽い数ヶ月で治る火傷をしただけで他に特に傷はないとのことだった。ピミャも然り、医師は二人共目が覚めたらば帰っても問題ないと各〻の精密検査の結果や写真を見せながら云った。処方箋も特に無く、私達は安心し切って帰宅した。



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