第十五話「大昔」(#19)
--今とは違う紀年法である、西暦と年号とが用いられていた時代、私たちの祖先である、初の文明人「ホモ・サピエンス・サピエンス」は、此処とは違う星に住んでいた。
然う、地球。此の星が属している集団に属している、とある銀河の、中にある「太陽系」にある惑星。私の話していた、「はは」のつちとは、其の地球という星の事だ。……抽象化した理由、か。行き成り地球が云々と云い出したら変な目で見られるかもしれないと思ったからね。其の話は長くなるから又今度にしよう。……地球には、六つの大陸があり、文明人は其の全てに住んでいた。但し、一つ、南極にある「南極大陸」は、定住者は居なんだ。勿論他の我々の祖先も住んでいたわ。
西暦で……一九〇〇年代、元号で明治、不動「明」王に「治」水、の時代、「赤い異邦人」、がやって来たの。彼れらは祖先に、地球を侵掠しようとしている仲間たちが居ることを伝えに来たの。其れで祖先の、文明人は急いで其の異星からの侵掠者への対処法を教わって、何とか其の、「黒い異邦人」、或いは「別のつちが育んだ命」、詰り「黒い異邦人」を殲滅させて戦争に勝つことが出来た。此の戦争は地球全土を巻き込んだので第一次世界大戦と呼ばれてる。
併し、当然文明人や赤い異邦人の中にも別のつちの命と仲良くしようとしていた人たちもいた。だから、彼れらは皆で話し合い、一つの集団としての行動を決める場所、「国連」という組織を作り上げた。
……正式名称国際連盟。其れは自己中心的だった文明人に倫理観を与えた。
彼れらは話し合いの中、黒い異邦人から受けた被害の回復の為、赤きと黒きとの技術を使った。然し此れがいけなかった。倫理観はあっと言う間に崩壊して、「第二次世界大戦」という悲劇を生み出した。其れから文明人は暫くの間、具体的には四十年だったか、異邦人の技術使用を禁じた。
其れから私が生まれた。
……使用が禁じられてから四十年位経って、西暦で二〇一二年、元号だと、ヘイセイ……「平」仮名に「成」吉思汗の頃に、其れの使用が解禁された途端に、島国の技術屋二人が、赤い異邦人の舟、「赤船」と云うのだが、其れを改良して独自の宇宙船をつくった。其れから、黒い異邦人の使っていた宇宙船に似たものが、其れの試験飛行中に地球を襲撃した。其の先は技術屋の故郷だったらしいわ。
此処から先は私の経験したこと。私の生まれた所も黒きに似たものの襲撃に遭って、真っ黒になった。そんな処を二人は助けてくれた。
(ミツグが何か訊きたそうに此方を見ている)
質問どうぞ。
「どんな人だったのかな」
二人とも男だった。今からすると驚くほど華奢で、とてつもなく細い体つきだった。性格は温厚、少なくとも見た目で人の善し悪しを判断しない人間だったわ。
そんな二人に助けられたわけだけど、私は山中の、「はにしな」という首都に送られることになった。戸籍が無かったかららしい。其処で当時の教育を受けることになった。
其の中で、沢山の赤船が地球の周りをまわって赤い川をつくっているのを目撃したり、政治体制がころ〳〵変わっていくのに巻き込まれたりしたわ。
最初の戦争は開戦から一年半後きっかりに終わった。又もや黒い異邦人は殲滅された。
私は彼れに助けられてから、密かに、はにしな……思い出した、そう、「松代都」を抜け出して彼れの旅に付き合いもしたわ。島国を一周したり、地球の彼方此方へ行ったりした。
其れからは会っていないのだけれども、彼れは其の時代、まるで叙事詩の主人公みたいにずっとあらゆるものに関わり続けて居たわ。彼れは赤い異邦人との共存を望んでいたけど、残念なことに今はもう此処に黒い異邦人も赤い異邦人も居ないわ。
まあ、其の後、小惑星Νとか地球とか、赤い異邦人の住んでいた火星とかから「文明人だけ」を乗せた移民船団、二十九団が其の太陽系を去った。其れから残っていた文明人は息絶えた赤船他赤きの資産を巡ってまた争い、「卅番目の移民船団」が太陽系の最初の壊滅と同時に小惑星ξから太陽系を去っていったという話は、今の時代でも神話になる程有名らしかった。
其れから私は死んで、今此処に居るという訳だ。
私は話し終わった。四人は驚いた表情をしている。
「てん……」ミツグが呟きかけて言い直した。「転生したということか」
「まあ、然うだね」
「今と昔とでは色々違うだろうね」
肯定して直ぐに言ったのはシルだ。確かに其の通りだ、と再び頷く。
「まあ、本当に、色々と。違いは……言語や地理以外にもあるね」
話は其の場の流れで其れで終わってしまったが、私が未だ話していないことは沢山ある。訊かれたらいつでも答えるが、其れは一度には話せない。其れに私ばかり話すのも疲れる。…………性染色体のヘテロとホモ…………もう一つの過去………………神話の話………………くつねとしての人生など。
未だ語るべきは仰山残っているのだ。




