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竿斬りの舞  作者: 凪子
第二夜
18/146

18.

「ONE plus ONE」と書かれた看板を見上げると、舞は扉を開けた。


標的の働いているコンビニの目前に位置する、広々としたカフェ。


歩道に面した全ての部分がガラス張りで、向かいにある店舗内の様子をほぼ死角なしで捉えることができる。


監視にはもってこいの位置取りであった。


ケーキセットが運ばれてくると、舞はゆるやかな渦を巻いた栗色のモンブランにフォークを突き刺し、波立つ心を静めようと試みた。


先ほどの口ぶりを聞く限り、やはり女帝は狭山コーポレーションと敵対しているらしい。


窓の外を見れば、いつの間にか降りだした雨粒がガラスをこすっていた。


無色透明な水滴に小さく映る街の姿を見つめると、遠い日の記憶が蘇る。





当主から竿斬りの能力を与えられた後、舞は力の影響か、高熱を出して三日三晩寝込むことになった。


絶望の果てに知ったのは、あの夜起こった世にもおぞましい災いは、舞が生まれたときから全て定められていたということだった。


しかし、まだ希望は残されている。


舞に力を与えた張本人の萌ならば、同様にそれを取り除くことも可能なはずだ。


だからこそ、今はただ御剱のために働く従順な駒でいなければならない。


御剱萌に恩を売り、貸しを作る。そして虎視眈々(こしたんたん)と機会を待つのだ。


条件がそろい、萌と対等に渡り合えるだけの実力と取引材料が手に入るそのときを。


コンビニでは女子店員と店長らしき初老の男が、商品を陳列しながら和やかに話している。


標的が現れるまで、あと数分は余裕があった。


腕時計の長針を確認しながら、ぬるくなった紅茶に口をつけたとき、


「ねえねえ」


馴れ馴れしい口調に振り向くと、舞と同じくらいの年頃の男が右手をあげて微笑みかけていた。


言うまでもなく知らない顔だ。


男の肩越しに首を伸ばして見ると、奥のボックス席に陣取っている一団が、冷やかすような笑い声を立てている。

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