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竿斬りの舞  作者: 凪子
第二夜

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19/146

19.

舞は内心で舌打ちした。


もめごとを起こせば、この店に出入りしにくくなる。


今ここで顔を覚えられるのも厄介だ。


「何でしょう」


事務的に返事をしたが、相手はあまり気に留めていないようだった。


「あのね、俺たち今からカラオケ行こうって言ってるんだけど、君も来ない?」


「申し訳ありませんが、人を待っているので」


若者はあきらめ悪くテーブルに手をつき、身を寄せてきた。


「待って。本当に怪しい者じゃないんだ。そこのW大に通ってる学生だよ。なんなら、学生証見せようか?1時間だけ、それでも無理なら30分でいいんだけど」


舞はきっぱりと首を振り、拒絶きょぜつの意を示した。


「駄目かな。もちろん、全部俺がおごるよ。カラオケが嫌なら別のところでもいいし」


「申し訳ありませんが、人を待っているので」


あえて全く同じ台詞を繰り返すと、ようやく若者の顔に弱気な色が映った。


このままでは引き下がれないのだろう、仲間のところに戻りづらそうにしている。


舞は鞄から文庫本を取り出し、それを開いて読むふりをした。


強制的に男を視界から断ち切る。


目の端でコンビニを見ると、川村耀かわむらようが店内に現れていた。


観察しようにも、若者が視界にちらちらと入ってきて邪魔だった。


「あのさ……じゃあ、せめてLINEだけでも教えてよ。ね、このとおり。お願い」


迷惑がいら立ちから怒りに変わりそうになった瞬間、若者が悲鳴をあげた。


「うわっ」


「申し訳ございません」


カフェ店員が、持っていたお盆ごと若者に衝突したようだった。


幸い食べものや飲みものは無事だったが、若者はよろめき、自然と舞から離れる格好となった。


店員は舞と若者の間にさりげなく割って入り、丁重な物腰で、


「お客様、お怪我はございませんか?」


「あ、はあ、まあ、何でもないっす」


若者は恥じ入った表情で、あたふたと自分の席へ退散していった。

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