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竿斬りの舞  作者: 凪子
第二夜

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20/146

20.

店員は何事もなかったかのように別の客へ給仕をしに行き、再び舞の側を通った。


「すみません」


彼に声をかけ、改めてその容姿を見て驚いた。


凛々しい眉、理知的な切れ長の瞳、高く通る鼻梁びりょう、しなやかで均整の取れた体。


屋敷で容姿端麗な執事に囲まれているにも関わらず、ここまで完璧な男性は見たことがなかった。


「お呼びでしょうか」


あっけに取られていた舞に、彼は感じの良い微笑みで尋ねた。


洒落たデザインの制服の胸元には「秋山」と書かれたプレートがついている。


「いえ、注文はないんですけれど。先ほどのお礼をと思いまして」


頬が熱くなってきて、舞はうろたえた。


「お礼?」


とぼけたように秋山は笑い含みの声で言った。


「さっき、追い払ってくださったんでしょう」


「ばれてましたか。うまくやったつもりだったんだけど」


秋山は白い歯を見せて無邪気に笑った。


「ありがとうございました」


「大変ですね。美人はゆっくりお茶も飲めないんだな」


からかう口調に、舞は恥じらって目を伏せた。


「少なくともこの店では、僕がしっかり目を光らせておきますから、安心してごゆっくりおくつろぎぎください」


見事なお辞儀をすると、秋山は優雅に歩き去った。






その後1週間、舞はカフェ「ONE plus ONE」に通った。


川村ターゲットの勤務時間に合わせて張り込んでいたので、秋山は姿を見せるときもあれば、現れないこともあった。


会えば一言二言会話を交わす、顔見知りにさえ満たない間柄。


たったそれだけの、ささやかな関係だ。


そう言い聞かせるたびに感じる、かすかな胸の痛みに、舞は見向きもせずに封をした。






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