武器型のおもちゃ
「・・・はぁ」
イリウスが再びテーブルの下に潜ってしまった。
俺達はイリウスが作った武器のおもちゃを今度はおもちゃとして検証したところ、リミの感想通りの地味で面白みがないという結論に行きついてしまった。
イリウス本人もそれをしっかりと自覚してしまい、依頼人の要望に応えられなかった自分を悔いているところだ。
ひとまずイリウスはそのままにしておいて、トーフィスと何が足りないかを考える。
「うーん、どうすれば子供達は喜んでくれるでしょうか」
「そうだなぁ・・・」
前の世界の剣型のおもちゃを思い出す。
ボタンを押すと刀身や鍔が光ったりするものがあったが、基本的には憧れのキャラクターになりきるためのグッズという印象だ。
「ここの子供達って誰かに強く憧れたりするのか?」
「しますよ。男子なら技師の人気が高いですね。女子は特定の人物に憧れる子が多いでしょうか。サチナリア様もその一人ですね」
「警備隊は?」
「うーん、哨戒で飛び回るのが主な仕事ですし、規律が厳しい印象が強く人気は今ひとつと言ったところです。学校への護身指導も警備隊の理解を深めてもらおうという意図もあって始まりましたし。あとはルミナテース様が抜けたのが大きいかと」
「ルミナが?」
「ご自身の強さもさることながら、統率力や対応力も高く、カリスマのような存在でしたから」
「そうだったのか・・・」
今のルミナからは想像できないな。やれば出来る女性ではあるのは確かだが、基本的にのほほんとしたお姉さんというイメージが強い。
「男性からも人気ありましたからね。その、見栄えする姿ですから」
「あー・・・」
確かにルミナはスタイルいいからな。顔も美人だし胸も大きいし。理想の女性像にする男性陣は多そうだ。農園でレストランをやるようになって別の側面が見られるようになった今はどうかわからんが。
「現隊長のフラネンティーヌさんや副隊長のルシエナさんも見栄えする方ですが、フラネンティーヌさんは既婚者ですし、ルシエナさんは融通が利かない性格という印象が定着しているので」
「最近のルシエナは大分まともになってきたと思うが、一度付いた印象はなかなか変わらないか」
「はい。ですから誰かが使っている武器を模したものではなく、一般的なものをイリウスは作ったのだと思います」
「そうか。そうなると別の方向から攻めないとな・・・」
なんとなく剣のおもちゃを手に取って縦に振りながら考える。
「あっ!」
考えに集中してしまって手の方が疎かになってしまい、手から剣がすっぽ抜けて床に叩きつけてしまった。
「っ!?痛っ!」
テーブルの下に居たイリウスが驚いて大きな音を立てて頭をぶつけ、上に置いてたおもちゃの武器達が次々と床に落ちる。
「す、すまん。イリウス、大丈夫か?結構大きな音がしたが」
「大丈夫です。音の割に痛みは大したことは・・・ん?音?・・・そうだ、音だ!」
イリウスは何かひらめいたのか、机から這い出て立ち上がり俺達に協力を求めて来た。
「ソウ様、トーフィス、ちょっと協力して欲しいことがあります!」
「わかった。何をすればいい?」
「それはですね・・・」
先程まで盛大に落ち込んでいたとは思えない程に興奮しながらイリウスは内容を話した。
「はっ!」
イリウスが新たに作った試作の剣をトーフィスが振る。
すると剣からズバッという効果音と派手なエフェクトが剣の軌跡を描いて出た。
「よっ!とうっ!」
続けて剣を振ると別の効果音とエフェクトが出る。
数十回振って軽く息があがったところでやっと動きが止まった。
「これ、思っていた以上に楽しいですね!」
イリウスは音をヒントに疑似効果をおもちゃの剣に付けることを思いつき、俺とトーフィスはその協力をした形だ。
最初はもっと地味な効果音を考えていたようだが、そこはあえて過剰な、嘘くささすら感じてもいいから振って気持ちがいい効果音がいいとアドバイスした。
イリウスはあまり乗り気ではなかったが、とりあえず試作を作ってみようと説得し、音選びをしていくうちに徐々に楽しくなってきたのか、出来上がる頃にはこだわりを見せる程になっていた。
「イリウスもやってみなよ」
「・・・ん」
色々な職業を経験してきたトーフィスとは違い、どちらかというと剣の状態を確かめるような動きでイリウスは剣を振ったり突いたりした。
「どうだ?」
「当初想像していたものと若干変わりましたが、こっちの方が子供受けしそうですね。まだまだ改善点はありますが、一旦この方向で作ってみようと思います」
どうやらイリウスからも一定の評価を得られたようだ。よかった。
「しかし、サウンドエフェクト、ですか・・・まがい物なのに本物より心地よく感じるのは新しい技術ですね。さすがソウ様です」
「俺からすれば音に着目したイリウスが凄いと思うけどな。それで、他にも色々何か思いついたんだろ?」
「・・・ふふ、よくわかっていらっしゃる。そうですね、おもちゃの武器に関してだとひとまずこれが好評だった場合、サウンドエフェクトを何種類か入れたカートリッジを作って入れ替えられるようにしてみようかと」
「ほうほう」
「あとはお土産として観光島に置かせてもらえば飽きられずに済むのではと」
「・・・だそうだ。やれそうか?」
観光島管理人であるトーフィスに話を振ると無茶ぶりに慣れた感じで答える。
「好評でしたら考えましょう。基本的にはブレスレットの時と同じ方式なので配備も円滑にできるかと。子供が来てくれるのは嬉しいですし、個人的にはありがたいです」
「それじゃサチに話を通しておくよ。きっとため息一つで了承してくれるはずだ」
「ため息は付かれるんですか」
「俺が頻繁に思い付きで提案するからな。ダメ出しや修正はあるけどプラスになるような事なら概ね前向きに検討してくれるよ」
「そうなんですか?」
「良く出来た補佐官だよ。よし、それじゃ説得の成功率をあげるために少しでもいい試作を作ろう」
「了解!」
あれこれ相談し、時には脱線しながら俺達は新しいおもちゃの武器の製作に勤しんだ。
帰宅後、少し時間に余裕があったので軽く料理を作る事にした。
作り置きして空間収納に保管してあった料理をあちこちで振舞っていたら大分在庫が減ってサチが嘆いてたからな。
リストにはまだまだ十分な量が記載されていたが、サチは不満なようだし腕が落ちないようにするためと自分を納得させて作っている。
現在下ごしらえ中で野菜を切っているところなのだが・・・。
「・・・サチ」
「はい」
「ものすごくやり難い」
「えー・・・」
「微妙にずれてる」
「む・・・ならば全力でやります」
「止めてはくれないのね」
「これも検証ですから」
諦めて野菜を切ると先ほどより若干マシになったタイミングで効果音が付いてくるようになった。
今サチの手にはおもちゃのナイフの試作品が握られている。
音やエフェクトが出る他に刺すと柄の方に刀身が埋まったり、伸び縮みする柄で刀身を覆って収納できたりとギミック満載にしてみたところ、お気に召したようで先程から俺の包丁の動きに合わせて効果音を出して遊んでいる。
「ソウ、包丁の動きが早すぎて音が付いてきません、もっと遅くやってください」
「だから止めとけって言ってるだろうに」
「これは改善点ですね」
やれやれ、イリウスを困らせないためにも少し速度を落としてやるか。
結局サチはその後もおもちゃのナイフを手放さず、風呂まで持ち込んで耐水テストをし、寝る前の遊びでやっと満足して収納してくれた。
サチがここまで気に入ってくれるならきっとリミも気に入ってくれるだろう。
イリウスの報告が楽しみだ。




