子供向けの武器
トーフィスの家にお邪魔すると早々にテーブルの下で体育座りしているイリウスが目に入った。
「はぁ・・・」
見るからに落ち込んでいるので声を掛けていいものか困っているとトーフィスが先に声を掛けた。
「イリウス、ソウ様がいらしたよ」
「・・・ん?あぁ、これはソウ様、どもです」
「お、おう」
「折角だからソウ様に相談したらどうだ?」
「いや、しかし・・・」
「すみません、ちょっと話を聞いて貰ってもいいですか?」
「何を勝手に!痛っ!」
トーフィスの突然の勝手な申し出にイリウスが立ち上がろうとしてテーブルに頭をぶつける。
するとテーブルの上に置いてあった物の幾つかが床に落ちたので拾って手に取ってみる。
「これは・・・剣か?」
下界で見るショートソードよりもさらに短く柄も細い剣で、ナイフというよりは剣の縮尺を小さくしたようなものだった。
刀身を触ると刃はついておらず、金属のような光沢をしているがゴムのような柔らかい素材で出来ていた。
「おもちゃの剣みたいだな。他も似たような物が置いてあるが、子供向けの武器シリーズでも作ってるのか?」
「さすがソウ様。ほら、イリウス、ここまで理解して下さってるのだから聞いて貰おう」
「わ、わかったわかった、ひっぱるなって」
テーブルの下からイリウスを引きずり出して席に着かせてくれたので、まずは事の経緯を聞くことにした。
「実はリミから子供向けの武器の依頼をされまして・・・」
イリウスの話によると農園の子達は定期的に警備隊の手伝いとして子供達に簡単な戦闘訓練をしているらしい。
その中で警備隊の人達で実際に武器を出して戦い合って見せるのだが、子供達にはイマイチその臨場感を理解して貰えてないようで、もう一歩踏み込んで何か持たせてみてはどうかという話が上がった。
しかし実物を持たせるのは危険すぎるし、かといって木の棒程度では子供達はすぐに飽きてしまう。
そこで農園へ頻繁に出入りしているイリウスに実物に似せた安全な武器の依頼が来たらしい。
「それで一応作って見せたのですが、リミの奴に安全面はクリアしてるがそれだけではダメと言われまして」
職人モードになったイリウスが悔しそうに言う。
「で、行き詰ってスランプに陥ってたわけか」
多分職人としての矜持を刺激されたのだろう。だが、その先のアイデアが浮かばずにいて参ってたという感じか。
「ここしばらくうちに来ては作ったものを机にばらまいて机の下に入るので、ソウ様の訪問は本当に助かっているんです」
「待て待て、まだ解決できるとは限らないぞ」
「いえ、大丈夫です。ソウ様なら必ずなんとかできます。先程そう確信しました!」
「先程?・・・それお前、俺が子供っぽいってところだろう!」
「ちが、違いますよー!子供の心を理解できるってところですよー!」
手刀を構えて再び脇腹に水平チョップを決めてやろうかとすると、トーフィスはすぐさま立ち上がって距離を取った。おのれ、学習してやがる。
「それでソウ様。何かアイデアはありますか?何卒よろしくお願いします」
イリウスがトーフィスとのやりとりに全く興味を示さず、神妙な面持ちで深く頭を下げてくる。相当参ってるなこれは。
「・・・わかった、ちょっと考えてみようか」
ここまで友人が困っているなら協力するしかない。
何かいい案は出るかなぁ。
イリウス製のおもちゃの武器を実際に手に取って振ったり払ったりしてみる。
子供向けにしてはなかなかの重量感で、当たれば小さな痣ぐらいは出来そうな仕上がりになっている。
個人的にはこれで十分楽しめると思うのだが・・・。
「うーん・・・」
「難しいですか」
「俺はこれで遊べるけどなぁ。リミは他に何か言ってなかったか?」
「地味だと」
それを聞いて眉間に皺が寄る。
「・・・は?武器に派手さなんていらないだろう。地味だろうが無骨だろうが使い手に合わせて最適化したものが武器じゃないのか?」
「僕もそう思います」
「だよなぁ。リミも元警備隊なんだからその辺りは理解してるはずなんだが・・・」
腕を組んで首を捻る。一体何が不満なんだろうか?
「・・・ちょっと一息入れましょうか」
思考が路頭に迷いそうになったところでトーフィスが休憩を提案してきた。こういう気が利くところがトーフィスのいいところだと思う。
甘みと酸味が丁度いいジュースを飲むと頭が少しずつ落ち着いて行く。
こういう風に行き詰った時は初心に戻るのがいいと言われるが、なかなか難しくあるものだ。
「・・・武器じゃなく、おもちゃとして考えたらどうかな」
コップに口をつけたままトーフィスが思いついたことを口にする。
「おもちゃか・・・もしかしてリミは武器じゃなくおもちゃとして見た感想を言ったのかもしれないな」
「・・・その可能性はありそうです」
あくまで求められるのは武器の形をしたおもちゃであるということか。
「では休憩が終わりったら今度はおもちゃとして改めて見てみましょうか」
「そうしよう」
新しい道筋が見えて来たのを感じ、俺はジュースを一気に飲み干した。




