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薬剤師の四方山話  作者: 座久間 真眼
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ジェネリック

ようやくネタがまとまりました。

 最近タレントの徹子さんとか英樹さんとかがコマーシャルに出演しているジェネリック医薬品。

 今は時の流れに乗って勢いがいいですが、私が薬学部の学生だった頃は酷いものでした。


 とある講義時間中に後発品についての説明があったのですが、

「後発品Aはよく効くのですが脆くて輸送中にかかる衝撃で欠けることもありますが、後発品Bは欠けない代わりに効き目が悪くそのままの形で便に出てくることもあります」

なんて感じで、後発品は安かろう悪かろうの世界なので、あまり使うべきではないと。


 そして最初の就職先の病院での大先輩曰く「特許が切れたら雨後の竹の子の如くゾロゾロ出てくるからゾロって言うんだ」と。

 後発医薬品だとかジェネリックなんてしゃれた呼ばれ方はなくて、ゾロ。


 さらに数年後の研修会では、効き目が弱い後発品を逆用して使っているというドクターの講演もありました。

 曰く「先発品の通常規格では効き過ぎるし半量規格では足りない患者さんに、少し効き目が鈍い後発品を使うとほどよく効きます」と。

 正直、よく調べたなと思いました。


 流石に今は、医薬品GMPと言う製造規格に乗っ取って作られているので、そこまで差はないはず・・・?


 先発品とジェネリックとを比較した「オレンジブック」と言うものがアメリカで作られているので、日本でも日本版オレンジブックが整備されてきました。

 ただまぁ、アメリカ版は治療に使ったときの手応えを元に評価しているのに対して、日本版は医薬品の規格試験に基づいた比較をしているのです。


 アメリカ版の評価基準はファジーなものがありますけど、日本版は医薬品としての規格基準に基づいた評価。

 でも・・・、正直、現実とイマイチ違うような・・・?


 さて、先発品の特許が切れたら後発品が出てくると言うことになっていますが、すぐに同じ医薬品を後発品メーカーが作れるわけではありません。

 と言うのも、大本の成分特許が切れてもまだまだいくつかの特許が先発品にあるのです。


 医薬品の成分は、大部分が自然界にはない有機化合物。

 つまりは合成する必要があります。

 と言うことで、次のハードルは製法特許。

 その成分を作るための合成ルートはいくつか考えることができますが、当然効率の善し悪しというものが存在します。

 先発メーカーは効率のよい合成経路を製法特許として押さえているため、後発メーカーは特許に抵触しない合成経路を探す必要が出てきます。

 必死に探しても、場合によっては特許の侵害として訴えられて製造中止に追い込まれることもあったり。


 そして、成分をどうにかこうにか製法特許に抵触しない方法で合成しても、もう1つの難関が。

 それは製剤特許。

 錠剤自体の重さは100~200mgくらいですが、成分の量は10mg程度。

 つまり、医薬品として形にするためにいろいろと混ぜる必要があります。

 味を調えるため、においを整えるため、色を整えるため、溶け出して吸収される時間を調整するため、そして飲みやすい大きさにするため、いろいろなものを混ぜ合わせるのです。

 これが製剤特許。


 他にもいろいろあるようですが、少なくとも特許権の侵害を避ける必要があるので、なかなか先発品と同じ後発品がでないのです。


 でも、逆に言えば、ここが後発メーカーの腕の見せ所。

 ここでの工夫によって、ものによっては先発品よりも優れたものができたりするのです。


 とある高血圧の先発品。

 成分が早く溶け出すものとゆっくり溶け出すものとが混ぜられている、と言うことだったのですが、よくよく資料をみてみると、粒子が粗めのものと粒子が細かいものとが混ぜられていただけ。

 細かい粒子は単位重量あたりの表面積が大きいので早く溶けてしまうのに対して、粗い粒子は単位重量あたりの表面積が狭いためゆっくりと溶け出すします。

 例えば、寸法1cmの立方体27個の表面積と重量と、寸法3cmの立方体1個の表面積と重量を考えてみましょう。

 重量は同じですが、合計の表面積は1cm角の方が3cm角の3倍。

 溶け出しやすさは表面積に比例するので、小さい粒ほど早く溶け出してしまうのです。

 それで粒子の大きさが違う薬を混ぜて溶け出す速度をコントロールしているのです。

 が、この方法は簡単ですけどムラがあります。

 と言うことで、この方法の特許を侵害しないことも含めて、ある後発品メーカーは考えました。

 消化管の内部のpHなどの条件に応じて溶けるコーティングをしようと。

 その結果、胃の中の酸性条件下で溶けるコーティングをした粒と、酸性では溶けずに腸の中性条件下で溶けるコーティングをした粒とを混ぜたのです。

 こうしてできあがった後発品は、先発品よりも高性能に仕上がりました。


 また、とある後発品メーカー。

 先発メーカーが口の中で溶ける錠剤(口腔内崩壊錠:OD錠)を出しているのを作りたいけど特許の関係で作れないし、もっと持ち運びやすくて溶けやすいものを・・・、と言うことで3cm角程度のシート状にしたものを開発しました。

 錠剤のように転がっていってなくすことはないし、表面積も大きいので溶けやすい。


 先発メーカーが何でそんな工夫をしなかったかと言えば、必要性に駆られなかったから。

 でもまあ、後発メーカーの特許期限が切れたら先発メーカーも・・・。


最初別のネタで書いていたのですが、なかなかまとまらず、ふと思いついてジェネリックについて一気呵成に。

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