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初手でやらかしてしまった俺が、一目惚れしたあの子と結婚するまで  作者: アカツキユイ
五年目

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13/19

13「怒ってくださって、ありがとうございました」

ブックマーク・評価・ご感想ありがとうございます!

 その後、ソファに座ることが許され、冷めかけた紅茶を飲んでいると、そこに父が戻って来た。


『やあレックス。何か喧嘩をしたと聞いたが』

『ジョセフィーヌがパッとしない女だって言われたから自分の顔を見ろって返しただけだよ』


『……途中を端折られている気がするけれどまあ良いか。

 確認なんだけど、模擬統治は次のシーズンは初戦から参加で良いよね?』


『もちろん!!今年は優勝する!!』

『その意気だ。僕は僕で参加しようと思う』

『へ?そうなの?』

『思っていた以上の収穫があったからね。あれはやっておいた方がいいと判断した』

『??どういうこと??』


『戦術にも流行りがあるんだ。といっても単純なブームじゃない、複合的に流れを読んだ上での最前線っていうのかな。

 それに、模擬統治の試合に参加できるのは貴族だけではないんだよ』


 この時に初めて知ったのだ。

 実は市井でも模擬統治のプレイヤーはいて、当時の俺と同年代、十歳そこらで大会に勝つ子もいるということを。


『さすがに僕たちが出るような大会には出られないんだけど、街の中に試合できるスペースがあったりしてね。そこで我々とは違ってシーズン関係なく試合をしてる』

『へえ……でもなんでそんなことを?』


『なんで、って何が?』

『貴族じゃなければ実際には領地を治めることはないよね?なんで模擬統治をやるの?』

『ゲームの中であっても領主になれる、というのは彼らにとって魅力なんだ。思うように領地を経営できるからね。

 我々は特権階級だよね?ただ楽して社交して税金を巻き上げて暮らしているように見ている人もいるんだ』

『全然、そんなことないのに……』


 毎日あくせくと働く両親を見てきた。とてもそんな風には思えない。


『実際、そうやって暮らす家もあるんだよ。僕たちのことをレックスはちゃんと見ていてくれて嬉しいな』

『……うん』


『それで、模擬統治をやって「実際は大変だ」と知ってもらうというのも、庶民の人たちがプレイできる理由なんだ。あとは、統治の才能がある人を見つけるという目的もある。僕が参加しようと思った理由はそれなんだよ。実際、貴族が見込んで補佐として雇う動きもわずかながらあるんだ』

『へえ!!』


『リスクが大きいから多くはないし、貴族は庶民を実地を知らないからと見下しがちだ。実際に、実現不可能な突飛な戦略も多い。僕は実地に囚われないアイデアを見に行ってる』

『え?見に行ってる?』

『参加するんだよ。模擬統治は遠隔対戦も可能だから、身分関係なく対戦できる』

『ええっ!?』


 何それ!俺もやりたい!!


『あと、遠隔対戦の一番面白いところは、違う国の人たちといつでも戦えることだ』


『!!やりたい!!』


『そういうと思ったよ』

 ニヤリと父が笑った。

『遠隔対戦は登録が必要だ。好きな名前で登録できるから考えておいてね。

 定石はあるけれど、各国の地理や統治制度によって戦法が違ったりするらしいよ。楽しみだね』


 ジョセフィーヌをパッとしないと言ったチンチクリンの家は翌日夫人が謝罪に来た。

 しかし母の出自をチクリと皮肉ったために、母がその場でぶち切れ、結局家ごと関わりを断つことになった。


 俺は友人を一人失った。

 大人の都合ではあるが、姉があれで母親もこれでは、いずれこうなっただろうなと自分を納得させた。


 夜、勉強の報告をした後。

 父が何も言わずに、ポンポン肩を優しく叩いてくれた。

 堪えていた涙が、ポロリとこぼれた。



 二日後、授業のためにジョセフィーヌがうちに来た。


『やあ、ジョセフィーヌ!ああ、今日も可愛い』

『レックス様』


 玄関まで迎えに出た俺の言葉を、ジョセフィーヌが深刻そうな顔で遮ると、深く頭を下げた。

『私のせいでお友達との関わりを断たれたとお聞きしました。申し訳ありません』


『違う!おま……ジョセフィーヌが謝ることじゃない』

『ですが』


 頭を下げたままのジョセフィーヌに駆け寄る。

『悪いのはあのチンチクリンとその母親だ。ジョセフィーヌは何も悪くない」

『……!』


『ジョセフィーヌは誰がなんと言おうと可愛い。それにものすごく頑張ってる。わからない奴には言わせておけば良いんだ』


『……レックス、様』

 ジョセフィーヌはうつむいたままだ。

 しまった、言葉遣いがいけなかったのか?


『……って、母さんが言ってた。俺もそう思う。だから気にするな。ジョセフィーヌは今のまま、ジョセフィーヌらしくいて』


『レックス様……』

『ん?何?』

『その……手が』


 ジョセフィーヌの視線を追うと、俺はしっかりとジョセフィーヌの両手を、自分の両手で掴んでいた。


『わっ!ごめん!!つい!』

 慌てて手を離す。

『本当にごめん。痛くなかった?』

『……平気です。レックス様のお気持ちが、伝わってきました』


 ジョセフィーヌが俺の手を見つめた。

『……今度は私が、レックス様の手を取ってもいいですか?』

『へっ!?いや、良いけど!?えっ!?』


 ジョセフィーヌは、俺の右手を、小さな両手で取った。

 そして、俺の目を見て、はにかみながら言った。


『私のために怒ってくださって、ありがとうございました』


 可愛さが溢れて、息をするのを忘れそうになった。

 こんなに可愛いのに、パッとしないとか言うやつは絶対に目が腐ってる。


『これくらい、なんてことない。ジョセフィーヌこそ、ありがとな』

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