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初手でやらかしてしまった俺が、一目惚れしたあの子と結婚するまで  作者: アカツキユイ
五年目

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12/18

12「そこが良いんだよ、母さん」

ブックマーク・評価・ご感想ありがとうございます!

 俺とジョセフィーヌの婚約も、五年目になった。


 ジョセフィーヌは急に背が伸び始めた。

 このまま追い抜かれたりしないだろうか、と不安を口にすると、

『レックス様はきっとすらっと背の高い、格好良い男性になると思いますよ』

 なんて返されて『ふげぇ』と声が出てしまった。


 格好良い大人に、なれるだろうか。


 勉強する科目が、ここにきて一気に増えた。

 ジョセフィーヌが、自分の知識が足りないと言い始めたのだ。

 俺は俺で模擬統治の大会で勝つこと、侯爵領の実地で何か成果を出すこと、入場許可証を手に入れることが目標になっていたからそれに乗った。


 勉強の内容をまとめて父に報告する習慣は続いていて、父は父で新しい知識を得られて助かると喜んでいた。

 母は黙って聞いていることが多かったが、その知識を俺との模擬統治でぶち込んで来るので油断ができない。


 友達と遊ぶ時間は自然と減っていった。

 でも、そんなことが気にならないくらいに、充実していた。



 久しぶりに友達の家に遊びに行くと、知らない女子に話しかけられた。

『レックス君って、あのパッとしない子と婚約してるんでしょう?なんで?』


 ああん!?


『なんで、って、なんで?俺が一目惚れして頼み込んだの』

『ええー!?あんな子のどこが良いの?前にあたしお茶会で見たけど、勉強ばっかりのつまんない子じゃん』


 あれをつまらないと思うなんて、まだまだガキだな。

 ……でもそれをそのまま言ったらめんどくせえよなぁ……。


『レックス君、カッコいいのに美的感覚?はそうでもないんだねー』


 カチン


『ふざけんなよブス』


『ぶ、ブス!?』

『てめえなんかよりもジョセフィーヌの方が一億倍可愛いし可愛いし可愛い!!俺の美的感覚がまともかは知らねえけど、てめえの頭わいてるんじゃねえのか!?』


『姉さん!』

 友達が飛び込んできた。

『何やってんだよ!レックスは姉さんなんてお呼びじゃないよ!』

『何よあんたまで!あんな頭がいいだけの子のどこが良いのよ!!』


『可愛いって言ってんだろうがふざけんなよドブス!!ジョセフィーヌは誰がなんと言おうと世界一可愛いんだ!人の婚約者にケチつける前に鏡でてめえの顔を見ろ!!』



 その後、騒ぎを聞きつけて来た使用人たちによって友人の姉から引き剥がされた。

 友人姉は泣いていた。自分からふっかけて来て泣いてんじゃねえよバーカ。



 帰宅して早々。俺は母の前で東国の座り方であるセイザをさせられていた。

 なお、その前に紅茶を淹れて母に出すところまで完璧に終わっている。母は紅茶を淹れるのが苦手だ。


『出禁です』

『は?俺が?なんで?』

『お互いに出禁です。お友達は止めてくれたんでしょう?その子はうちに来ても良いわよ。ただし姉はダメね』


『それなら、良いけど』

『あんたは格好良いのにって言われたって?

 クソ野郎に似てますます顔が整って来たもんねぇ……まあ、そろそろかなとは思っていたわ』


 格好良い。ジョセフィーヌ以外に言われても、嬉しくも何ともねえ。


『……ジョセフィーヌ、直接言われたりしてないかな』

『言われているかもしれないわね』

『!!』

『あの子のことだから、うまくやり過ごすと思うけど』

『くそっ、変なこと言いやがったらぶっ飛ばしてやる!』


 興奮した俺を見た母が、大きなため息をついた。


『あなたがいる前で言われればぶっ飛ばせるでしょうけど、そうでなければぶっ飛ばせないわね』

『お茶会は無理だ……あと、王城も』

『早く許可証をもぎ取るしかないわね。実地で何をするかは決めたの?』

『……決めてない』


『財政についてはまだ触らない方がいいわね。生産量を上げる、効率化を図る、そういう方がいい』

『うん。さすがに直接お金は、まだ早い』

『それでも思いついたものがあればグレイリオ様に提案しなさい。あなたのアイディアが突破口になるかもしれない』

『わかった』


『ジョセフィーヌちゃんはもう功績をあげているそうだけど……』

 チラリと母が俺を見た。


『さすが俺の婚約者!!自慢の婚約者様です!!』


 食い気味に、鼻息荒く答えると、母は小さく笑った。


『そのブレないところ、息子ながら本当にすごいと思うわ。「女のくせに!」って言ってもおかしくないところをね』


『……あー、それで思い出した。ジョセフィーヌそれ言われたらしい、討論の時に』

『あら。それでどうしたって?』


『あいつ、「女のくせにとおっしゃいますが、男女の見た目の根本的な違いは外性器がぶら下がっているかいないかの違いでしかありませんよね?」って言ったらしいんだ。

 その場で討論打ち切りになったって言ってた……』


 母の口がぽかんと開いた。

 うん、母さん、気持ちはわかる。


 母はしばし呆けた後、現実に戻って紅茶を一口、口にした。


『……純粋にその返しができるんだから、心底恐ろしいわね』

『ジョセフィーヌはそこが良いんだよ、母さん』

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