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初手でやらかしてしまった俺が、一目惚れしたあの子と結婚するまで  作者: アカツキユイ
四年目

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11/18

11「この婚約は不公平だなと思いました」

ブックマーク・評価・ご感想ありがとうございます!

『……それなら、何で勝負をかけるかを見極めるのが大事かな。競争相手がいない、もしくは少ないものを選ぶんだ』


『ニッチなのはやってないよ、俺』

『そうね、レックスは満遍なくやっててどれもそこそこだから』

『どれも年齢相応の及第点には達しているよ。僕が見ていて得意だと思うのは魔法制御……』


 ふと、ひとつの考えが頭をよぎった。


『模擬統治……模擬統治はどうかな?俺くらいの歳でやってるって話、あんまり聞かない』


 模擬統治とは、魔法で箱庭のような領地を作り、試合ごとに指定された条件を守って仮想の領地運営をするゲームだ。

 領地経営の教材として使われることもあるが、始めるのは十代半ばが多い。


 大人になると、実際のシミュレーションに使うこともあれば、何かを賭けて生産額を競いあう、なんてこともする。

 これをさらに発展させたものが模擬戦争で、国交の場で有利な条件を勝ち取るために国同士で競うこともあるらしい。


『なるほど模擬統治か』

『レックス、実際にやったことは?』

『授業で、ジョセフィーヌと何回か』

『勝負は?』

『勝てたことはない。けど、良い勝負はしてる』


 ほう、と父が声を漏らした。

『具体的には?』

『いつもだいたい千エルグ差くらい。勝てそうだった時は三十エルグ差だった』


 あの時は最後に雨が半月続いて麦の収穫量が落ちたんだ。それがなければ勝ててた。


『なるほど、悪くないね。何戦かやってみようか。

 エナシア、条件は君が決めて』


 そして、条件を変えながら両親と模擬統治のゲームをした。

 結果、父に二勝一敗、母に一勝一敗。



『……どう思う、エナシア』

 父に問われて、母は少し考えた後に父と俺を交互に見た。


『子どもならではの突飛な発想があるのでは、と思っていたけれど、セオリーからはほとんど逸脱していない。もちろん手加減はしてないし。

 基本をしっかり押さえた上でこの内容なら……飛び道具も使えるようになればいけるかも』


『飛び道具?』

 首をかしげた俺に、母が悪い笑いを見せた。

『直接横槍を入れるのよ。間諜とかね』

『かん、ちょう?』

『スパイのことだな』

『スッ……パイ!!?』


『酸っぱくないわよ、むしろ苦いわね』

 いやわかる、わかるけどそうじゃないよ母さん。

『大人は平気で使うわね。私はあまり好きじゃないけど。この辺は魔法操作の技術が絡んでくるのよ。領地に目を配りながら、同時に相手の領地に毒を垂らす』


 毒。


 ーーまだ九歳の女の子には、大人の思惑は毒だったな。


 王弟殿下の言葉が頭をよぎる。

 ジョセフィーヌは、大人の毒にやられてしまったんだ。


 そこで、渡り歩けなければ、勝てない。

『……わかった。やってみる。今度もっと詳しく教えて、母さん』


『僕は大会の開催予定を確認しておこう。年齢制限は基本的にない。そもそも大会は子どもの参加を想定してないからね』



 毎日の勉強に、さらに張り合いが出るようになった。

 学んだことを模擬統治の中で活かせることはもちろん、具体的な目標ができたのが良かったのだ。


 そして、模擬統治の大会シーズンである冬。

 まずは、父が参加してくれた大会で実戦をたくさん見て大人が使う手を学び、それを元にさらに磨いた。


 シーズンの最終戦、対戦テーブルについた時には周りの大人に鼻で笑われたが、総合成績は五位。デビュー戦としては大成功と言える爪痕を残すことができた。



 ***



『しかし模擬統治とは考えたねえ』

 おじさんがフィナンシェをつまみながら笑っている。

『来年は優勝できるくらいになる』


『応援しているよ。ジョセフィーヌも少し心持ちが変わったみたいでね』

『え?』

『「レックス様が頑張っているなら」って、ただ言い負かすのではない討論の仕方を模索し始めたんだ』

『それは良い相乗効果だね』


『そうだね。あと私から一つ、許可証へ近付くアドバイスを。

 実地で何か成果をあげると、ポイントが高くなる。

 ゲームではなく現実で、だよ』

『なるほど、確かにそれは最短ルートだ』


『?どういうこと?』

『君は基本に忠実にゲーム運びをするよね?それが実地でも通用することを証明するんだ。それができたら、おそらく模擬統治に対する周りの意識も取り組み方も変わるよ。そして、レックスくんへの評価も。

「ジョセフィーヌの婚約者」ではなくなる』

『それは嫌だ。俺、「ジョセフィーヌの婚約者」がいい……』


『意味をわかって嫌だと言っているね?』

『ジョジョの父親としては嬉しいけどねぇ』


 ***


『レックス様、また一年、このままでよろしいですか?』

『もちろん!俺はジョセフィーヌと婚約を続けたい!』


 鼻息荒く答えた俺に、ためらいがちにジョセフィーヌが尋ねてきた。


『……レックス様からも、解消できるようにしませんか?』

『必要ないよ、そんなの。……でも、なんで今年はそんなこと言い出したの?』


 契約内容の変更については、更改のお茶会でのみ可能。

 お互いの同意をもって行う。そういうルールだった。


『……学生の方々と議論やお話をする中で、「不公平」という言葉の意味を考えるようになったのです。それで私とレックス様の婚約は不公平だなと思いました』


 ああ、昨日おじさんが言ってた変化のひとつだ、とわかった。

 でも、俺じゃなくて学生と話してて思ったんだな、と複雑な気持ちになった。


『俺はこのままでも構わないんだけど、ジョセフィーヌは気になるんだな?』

『……はい』


 表情は相変わらずほとんど変わらない。

 でも、目はいつもより真剣だった。


『わかった。ジョセフィーヌがそれで気にならなくなるなら、そうしよう。

 だけど忘れないでジョセフィーヌ。俺から解消することは、絶対にないから』

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