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『女神から授かった権能“模倣”で悪魔ダンジョンを生き抜く』  作者: 近藤セカイ
『第1章 アーム領編』

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『第4話 渓谷下の戦い』

第4話です。

こういうファンタジーしている世界観好き。

 音が近くで響く中、横に馬車を寄せてくる連中がいた。


「おい、お前さんたち。ちょっと協力しないか?あのデカブツを俺たちで倒そうぜ。」

 

 すると馬車の中から太った……丸々とした顔つきの男性が出てきた。装飾的にかなりの金持ちだ。それに討伐といったか?考えたこともなかったな。話を聞いてみるか。 


「要件は――」


「ちょっとマコト!なに頭のいかれたヤツと話してるのよ。」


「いいだろ。話を聞くぐらいは、それに打算があって話しかけてきたんだろ。」


「へへ……。ちょうど、俺がギルドで雇った騎士がBランクなんだよ。名の売れている権能持ちでな。おい、挨拶しろ。」


 すると馬車の中から甲冑を着た、淡い緑の髪色の男性が出てきた。


「カエサル・グリス・ロクサーヌだ。デフィー領、ロクサーヌ家で騎士をしている。よろしく頼む。」


「それで、カエサルさんと……なんだ――」


「ザンロックだ。」


「――ザンロックさんは巨人を倒せると?」


「知らないのか?巨人はBランクでこいつもBランクだ。倒せるからBランクなんだろ?それに俺は成功しない商売はしない主義でね。お前もやれるだろ?カエサル・えーとなんだ?」


 男に揶揄された騎士は怒ろうともせずに冷静に話を進めた。


「いけなくはないが相手は巨人だ。油断しては元の木阿弥(もとのもくあみ)だろう。それにまだ相手の全容が見えていないため、その質問にはお答えできない。」


「だってよザンロックさん。俺たちはここで騒ぎが終わるのを待っているから、あんたらだけで頼む。連れが怖がっているからな。」


「怖がってないわよ!。ちょっとだけ不安なだけよ。」


 それを怖がっていると言うんだけどな。


 その時だった。 巨人の足音がやけに近づいてきた。正面の開けた場所を走っているようだ。こっちに近づいてきている。


「来たぜ……。構えな。」


「はい……。」


 カエサルが剣を抜き、構えに入る。すると、巨人の走る方から声が聞こえた。


「ぬわわ!なんで追ってくるのよ!食われる〜!」


 荷物を抱えながら巨人から逃げる小柄な男がいた。今にも追いつかれそうだ。あのままだとまずいだろう。


「ユウリ――」


「えっ、なに!?」


「――借りるぞ!」


 俺はユウリに触れて、心の中で唱えた。


(―ユウリ・パウンド、権能“高速化”模倣―)。


 話に聞いたユウリの権能の高速化なら、巨人から逃げるあの男を助けれるだろう。俺はそのまま勢いよく飛び出した。


「危ないぞ!青年!」


 カエサルが声をかけるがそのまま走り抜ける。権能が発動するはずだ。発動するはず……。もうすぐ……発動しない!?


 何故だ?条件が違った?声に出さなかったから?何が違った?分からない?とにかくどうする?いや、ここで止まったら次は俺だ。ならば考えるよりも先に答えは決まってる――。


 ――走れ!全速力で!間に合え!!全部救えるように!!


「ぬわわ……もうだめ……」


 巨人の足が迫りくる中で魔法商人のタガモは走馬灯を見たらしい。そして結果はこの状況をくぐり抜けることは不可能となった。

 一方走っていたマコトも間に合わない、逃げることもできない場所にいた。マコトもここ、巨人の足元で走馬灯を見る。

 走馬灯は死ぬ前にどうにかして身体を生かそうと脳が記憶の中から正解を探しているのだと言われている。

 マコトの脳から弾き出されたのはアメフトとラグビーの記憶だった。


「おしまいだねん……ゔっ?」


 横からの急な力により小柄なタガモはそのまま引っ張られた。


 そして足が踏み降ろされた。


「死んだーーっ!!あいつら死んだぞ!どうする?カエサル!」


 ザンロックが叫び、ユウリが唖然としている。


「……マコト……。嘘……。」


「う、嘘だろ……。ハハ……、イカれてるよ。普通はあそこで飛び出さない……。ホントにふざけている……。だが、見上げた精神力と根性だ……。マコトといったか……。素晴らしい騎士道だ。」


 痛え。飛び込んだときに身体を擦りむいたようだ。どうやら2人してぺしゃんこのトマトにはならなかったようだな。


「君が、君が助けてくれたのん?」


「ん、ああ、一応な――」


「ありがとうなのねん!おかげで助かったのねん!どう感謝をすればいいか分からない!」


 小柄な男は抱えていた商品を落としてこちらに抱きついてきた。

 そして降ってきた影が俺を現実に戻した。こちらを見下ろしている。俺はすぐさまうるさい商人の口を塞いだ。

 しかし、その目はこちらを捉えている。まずい、このままじゃ――


 巨人の身体が斜めになる。実際にはアキレスが切れたようだ。体勢を崩し、そのままカエサルの方を睨んだ。俺たちはその隙に岩場の影に潜み、ユウリ達との合流を狙う。


「浅いか……しかし、勇気を見せてもらった……。ならば私は私の騎士道で見せよう!吹き荒れろ!権能解放、“風斬りの太刀(かぜきりのたち)”!」


 カエサルの剣に風がまとわりつく。周囲の風を味方にする権能に見える。

 巨人の標的はカエサルになっていた。足をやられたから今度は腕だと言わんばかりに拳を振るう。


「はぁ!!」


 向かってくる巨人の拳を斬り落とすカエサルはBランクと呼ばれているのが納得の強さだった。


 ――ドスンと重い音が鳴る。その隙に俺はこいつと一緒にユウリたちが待機している馬車まで戻ってきた。


「マコト!死んだと思ったよ~!」


 帰ってすぐにユウリが泣きじゃくりながら抱きついてきた。

 俺はなだめるように頭を触りながら生きているといった。


「相談もせずに飛び出してごめんな……心配かけたよな……。人が死ぬと思ったら、いてもたってもいられなくて。今度から相談するから許してくれ」


 ユウリは服で涙を拭きながらうん、うんと落ち着きを取り戻している。


 それでカエサルが時間を稼いでいる中で、こいつについて考えた。


「はい、魔法商人のタガモですねん。よろしくですねん。」


「魔法だ?あんな辺鄙(へんぴ)な商売をしている日陰者か」


 ザンロックは名乗りを聞いてすぐに話を聞くのをやめて、カエサルの方に歩いていった。


「魔法って何をするの?」


 どうやらユウリも魔法については知らないようだ。


「皆さんも知らないと思いますねん。魔法とはこの魔法具を使って利用するもののことを言うのねん。僕のオリジナルだから誰も真似はできないなのねん。」


 そういうと持っていた魔法具をいくつか説明を交えて見せてくれた。話を聞くになかなか使えそうな物が多くなぜ流通していないかが俺には分からなかった。


「その魔法具をいくつか使ってもいいか?」


「いいのねん!マコトさんは命の恩人なのねん!恩返しができるのなら僕の魔法具をいくらでも貸すのねん!」


 思わぬ収穫だったが、今は巨人の対応をしなければならない。カエサルの様子を見に行こう。


「ザンロック、カエサルはどうだ?苦戦してないか?」


「苦戦はしていないが……決め手にかけるようだ。どうやら巨人という生物は一筋縄では行かないらしい。」


 俺が岩場の影から巨人を見るとその答えがわかった。


「腕が……いや、アキレスもか再生している。」


「そうだ、さっきからカエサルが巨人の身体を斬りつけているんだがな、すぐに再生するようだ。勝てると思ったが……まいったな」


「再生する部位は足と腕だけか?」


「それ以外もだ。首より上は剣が届かないらしくてな。巨人の体長は約10メートル程度……。カエサルでは射程が足りないようだな。」


「なるほど……一度作戦を立てたい。来てくれないか?ザンロック。お前の力が必要になるかもしれない。」


「俺の力が?へへっ……いいだろう。話を聞いてやらなくもない。」


 ヘイト管理をしていてくれているカエサルを抜いた4名で作戦を組む。ここにいるのは7貴族のユウリと火薬商人のザンロックに魔法商人のタガモ。それに転生者(いっぱんじん)の俺だ。


「巨人の倒し方についてだが……何か思いつくやついるか?」


「はいなのねん!」


 勢いよく手を挙げたのはタガモだった。


「ザンロックさんは火薬商なのねん。だから火薬樽を持って巨人のお腹のなかに突っ込むのねん!」


「いい作戦だな。腹を爆発させて巨人を再生できなくするか……。誰が巨人の口のなかに火のついた火薬樽をいれるんだ?」


「あっ……」


「それに、俺の火薬を貸すとはひと言も言ってないがな。」


「うぅ……なのねん。」


「俺に案があるぜ!」


「なんだ?ザンロック言ってみろ。」


「俺はよ、カエサルを置いて逃げるだ。あいつが一人で戦っているだろ?その間にトンズラよ。お前らも――」


 ユウリのげんこつが入った。おれが殴ろうとしたのに。


「バカじゃない!?カエサルさんが戦っているのにあんたは逃げるの!?」


「そうだぞザンロック。お前はここから逃げれると思うなよ。」


「そうよ、ザンロック。んで、……私、一つだけ思ったんだけどいい?」


「なんだ?ユウリ、何かいい案があるか?」


「案じゃなくて倒し方の話なんだけど、巨人の首を切るのはどう?カエサルさんは下半身ばかりに攻撃してたらしいし。それに倒せない生物はいないってお兄ちゃんが言ってた。それに――」


「――そうか!、脳が損傷すれば再生はできないはずだ。なんで思いつかなかったんだろう……。ユウリお手柄だな。この線が厚いはずだから首を切れる作戦を取ろう。」


 となると、何かいいものはあるか。

 あれが良さそうだな。あれを壊せば何とかなるか? ダンカンさん?とマルコさんに謝ればいけるか。

 巨人の弱点は……。

 それに必要な物は……。

 さっきの魔法具とそれに――


「ザンロック!火薬の樽を一つだけ貸してくれ!タダとは言わない!これでどうだ!」


 俺はポケットから充電が残り35%のスマホを取り出した。この世界に来て唯一持っていた元の世界の物だ。


「これは?なんだ?硝子(がらす)にこれは凹凸(おうとつ)レンズか?不思議な板だな……。なにに使うんだ?」


「これは写真機だ。こうやってボタンを押すと風景を写すことができる。これは珍しいはずだ!俺の故郷の工芸品だからな!」


 ザンロックは俺からスマホを奪い取り、まじまじと観察する。ロックはすでに外しているので、開いたらアプリなども見れるはずだ。


「おお!……硝子に写真機か……スマホといったな?魔法はあれだがこいつはいい!気にいった!いいだろう!火薬商ザンロック!その商談を受けようではないか!」


「よしっ!作戦はこうだ!タガモの魔法具を使いーー火薬樽で爆破、ーーカエサルが首を切るだ!タガモは魔法具のセッティングを頼む。」


「わかったのねん!ユウリさんこっちに来てなのねん。ーーこれはこう使ってこう言うのねん……。」


「ユウリはそれをカエサルに伝えて、所定の位置に待機してくれ。魔法具を忘れずにな。」


「任せて!その通りに伝えればいいのよね!」


「ザンロック……お前は……何もしなくていい……。お前が王様ということにしてやるよ。」


「当たり前だ。協力してやってあげているのだから感謝しろ。」


 そう言いながらザンロックはスマホを眺めている。 


「よしっ!作戦開始だ!いくぞ!ユウリ!タガモさん!カエサルも準備はいいか?」


「誘導はできているが本当にできるのか?半信半疑だ!」


 会話をしながら巨人を誘導して、いなしている流石だ。


「マコト!橋の上に着いたよ!ここで石とこれを置けばいいのよね。」


 ユウリは石と周りに魔法具を置いた。


「テレポ!」


 そう唱えるとザンロックの横にあった火薬樽が石と入れ替わった。


「なんだ?樽が消えた!?」


「凄い!ほんとに入れ替わった!次は“チャッカ”と“スピーカン”?」


「ユウリ!今すぐ飛び降りろ!」


 その瞬間、魔法具が火を放ち破裂し、火薬樽に引火した。

 爆音が鳴る。周りにあった魔法具の一つがその音を増強させる。


 俺たちが耳を塞ぐほどの爆音が聴覚を自慢している巨人に突き刺さる。

 軽い脳震盪のような効果が見られる。


「カエサル!足だ!足を切ってくれ!」


「心得た!」


 動けない巨人が体勢を崩し、更に崩れた橋の瓦礫が巨人にのしかかる。


「テレポ!」


 巨人の頭上にいたユウリが詠唱すると、カエサルと入れ替わる。


「これは!素晴らしい作戦立案!魔法具!今、我が力で答えよう!権能解放!“風斬りの太刀”!!」


 カエサルの剣が巨人の首を一刀両断する。その切り口に切り残しはなかった。


「テレポ!」


 俺の足元にある石とカエサルの位置が入れ替わり、巨人はカエサルの石と橋の残骸で潰れた。確認したが死んでいるだろう。


「着地をどうしようかと考えたが……既に対策済みとは驚いた……。」


「凄いわね。魔法!私とカエサルさんが入れ替わった。」


「なあ、魔法が流行らないのって一回限りだからだよな。タガモ。」


「その通りなのねん。どうしても道具が一回で壊れてしまうから値がつくのねん。」


「終わったか!凄かったろ?俺の火薬は!」


「終わったぞ。ザンロック。」


「終わったわよ。ザンロック。」


「なんだ?お前ら?そんなに俺の火薬が強くて不服か?」


「うっせーよ。そんなことよりもアーム領に行こうぜ。巨人はいなくなったし。」


「マコト。君もアーム領に行くのか。俺はザンロック……さんの警護だが滞在期間は分からないが、また出会えると嬉しい」


「俺もだ、カエサル。また出会えたらいいな。」


「僕も行くよ。アーム領。お得意様がいるんだねん。」


 俺たちは馬車を並べながらアーム領の関所へと向かった。

本当なら魔法具には詠唱が必要ですが、事前に詠唱をしていたため魔法名を答えるだけで発動できました。

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