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女神から授かった権能“模倣”で悪魔ダンジョンを生き抜く  作者: 近藤セカイ
第1部 第3章『パウンド編 ――大貴族会――』
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第40話『挑戦状』

40話です。

 帰りの馬車の中、マコトはマルコの馬車に乗り、王都デフィーへと帰ることにした。カエサルの馬車に誘われたが、“書簡”を渡されていたため、ギルドに戻ることを優先した。

 マコトはティーチの従者から渡された“書簡”を眺める。それは特殊な仕掛けもなくただの円柱上の入れ物に入っているものに見えた。

 馬車の中はマコトにマルコとゲンマの3人だけで、外には御者がいるが、防音性が高い素材のため外に会話が漏れる心配はない。


「開けないんですか? 書簡それ…さっきから眺めてますけど」

 ゲンマは書簡の中身が気になるらしく、渡されたあとから「何でしょうね? それ?」と繰り返し聞いてきていた。


「“信頼できる者しか居ない場所”と言われたからな……このメンツならいいと思うが……」

 マコトは窓の隙間から周囲を見渡すが、一寸先も闇であり人の気配を感じない。

「外にいる御者は俺の息がかかった“デフィー家”の人間だ。ここらは平原で既に遅い時間だ。移動中の馬車の会話を聞ける人間もいないだろ」

 マルコはマコトに促すように、安全を主張した。まるで彼が“誰もいない”ことを確実に保証できるようであった。マルコにはそれができるという“説得力”が確かにあった。


「そうだな。じゃあ、開けるぞ――」


 書簡を筒から取り出し机に広げると、用紙の中央に、大きく書かれた一文を見た瞬間――三人は同時に目を見開いた。


「…どういうことですか?? 何の目的があって??」

「ティーチの野郎め……何考えてんだよ……」

 

 そこに書かれていたのは、


 ――お前らの思惑は読めている。ユウリを取り返したければ、“力”で取り返しに来い。――


 この短い一文であった。用紙の中央にデカデカと十分な余白を残して、それだけを伝えるために書いたとしか思えない書かれ方であった。


 ゲンマが困惑し、マルコが意図を読み取ろうとしている中で、マコトは静かにその文章を眺めていた。そして、小さく息を吹き出した。


「ハハッ!! ――そういうことか!! あー、そうだよな。そっちの方が話が早いよな」

 一人で笑い始めたマコトをゲンマとマルコは異質なものを見るような目で見ていた。二人はその文を見ても、マコト以上のことは得られていないだろう。


「何か分かったんですか??」

「お前とティーチはなんか話してたが、お前にだけ分かる暗号か??」

 二人は詰めるようにマコトに問いかけるが、返ってきた答えは拍子が抜けるようなものであった。


「簡単だよ。俺が“ヴァイシュラ”の領主邸に乗り込めばいいんだ。俺たちパーティの方がユウリを守れることを証明すればいい。――”俺たちは今まで試されてたんだよ」

「試す?? ティーチがお前たちを?? あー。あのシスコン領主が考えそうなことだな」

「ちょっ、待ってくださいよ。今度は二人だけで結論に達しないでくださいよ。僕みたいなバカにも分かるように言ってください」

 ゲンマは図々しくも、結局この書簡の意図は何なのだ、と聞いてきた。


「ティーチはな、俺が偽名で来ていることを知ってたんだよ」

「えっ?? バレてたんですか?? 完璧な作戦だったのに??」

「バレてたかは分からないがな――だけど、ティーチは俺に“名前”を聞いてきた。ユウリを踊りに誘うときに偽名を使ったが、その後の名乗りで本名を言っただろう? マルコさんはその時、壇上にいたから知ってると思うけどな」

「言ってた。デカデカと、俺はアラキ・マコトだ!! ってな。確かにあいつはお前に名前を聞いてたな」

「名前を聞いたのは、ティーチなりの社交辞令だと思うが、ここにいる目的を聞きたかったんだろうな。ユウリのために来てるのか? ってな。――“大貴族会”に行くことが、ユウリを連れ戻すに値するかのテストだったんだ」


 マルコが腑に落ちたように言い始めた。

「…リネットか。俺がティーチの立場なら、情報を集めるために間者を置く。」

「……そうだな。味方だったが、怪しい部分が多かったからな。だけど、これで繋がった」


 ――前提として、ティーチの第一優先は“ユウリ”だ。それは、出会ったときから貫徹していた。あの会話でもユウリの幸せを何度も喋っていた。それと同じような事を言っていたのが、リネットだ。彼女もティーチに逆らい“ユウリの幸せ”のために行動すると言っていた。そのためならば、“身元を偽装”したり、快く“権能”を“模倣”させてくれた。リネットはユウリに冒険者を続けてほしい、と言っていた。

 ならば、ティーチも同じようなことを考えていて、リネットを動かしていたとしても不思議ではない。というか、それしか考えられない。


 マコトの中で積み重なった情報が“正解”へと導いていく。


「この試練は“ヴァイシュラ”に行き、ユウリを取り返すことで終了する。ゲンマ、俺と一緒に行ってくれるか??」

「当たり前ですよ!! 僕たちは仲間で、仲間を迎えに行くのに許可がいります?? 逆に命令してくださいよ。マコトさん!! ――いえ、リーダー!!」

「ああ、俺たちパーティでユウリを迎えに行く。これが次の任務だ!!」

「はい!! 了解です!!」

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