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女神から授かった権能“模倣”で悪魔ダンジョンを生き抜く  作者: 近藤セカイ
第1部 第3章『パウンド編 ――大貴族会――』
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第39話『話の外』

第39話です。



「…な…、なんだ貴様は!? 一体どこからっ――」

 

 凶刃を受け止めたのは、どこからともなく現れた白刃だった。白刃は剣を突き返し、空いた胴へと重い蹴りを入れたのだ。

 

 誰も刃がそこに現れるまで彼に気づかなかった。襲われていたユウリも彼女に何かしらの方法で近づいた襲撃者も、壇上から会場全体を見渡せたティーチでさえもだ。

「誰だ…!? 誰がどの道理で我らの邪魔を……」


「……俺は…――俺はアラキマコト!! 冒険者ギルドの冒険者にして――ユウリのパーティリーダーだ!! 仲間のユウリに手を出してみろ!! この場にいる全員を敵にしたとしても、俺が守ってみせる!!」

 

 それは周囲の貴族からすれば“寸劇”はたまた“余興”のような状況に見えるだろう。実際に貴族の風体をしていた男が短剣を持って歩いていても、彼らは不自然に思っただろう。

 誰もそれを声に出さない。あくまで“傍観者”でいようとするのだ。しかし、この状況で“啖呵”を切った青年に向ける目は熱くなっていた。

 貴族たちは目の前で起きた出来事を理解できず、息を呑む。短剣を抜いた男も、それを受け止めた青年も、まるで舞台の一幕のように映っていた。


「そうか…ならば、貴様も我が神の身元へ送ってやろう!! 死ねぇ――い゛ぃ???」

「――死ぬのは貴様だ……よくも私のユウリへ手を出そうとしたな……万死に…いや、死すら生ぬるい…」

 襲撃者は頭の先から押されるかのように潰れ、襲撃者だったものは赤い床の染みとなった。

 ティーチは手を下ろし、壇上からゆっくりと、笑みを浮かべたまま、大股でこちらへ歩み寄る。その表情はにこやかで笑顔を取り作っていたが、奥には憤怒が見え隠れしていた。


「……よくやったな…褒めて遣わす……見ない顔だが、貴殿の名は?」


 あくまで初対面を演じるつもりということは、言葉以外にも態度や表情から感じ取れた。“貴族”たちの前では“7貴族”を通し抜くようだ。


「……アラキ・マコト…彼女(ユウリ)のパーティリーダーだ」

「ほう、(ユウリ)の? それはユウリを取り返しに来たと捉えてもいいのか?」

「…取り返しに来ても何も…ユウリは今も俺の仲間だ」

「ほう…。……つまり、お前はこの襲撃とは無関係だと言うのか?? こんな襲撃は単独ではなく、“7貴族”レベルの集団の力がなければ出来ない犯行に見えるがな…。」 

「これは…俺じゃない。今の状況もさっきの襲撃も何もかもが予想外だ。むしろ、俺が聞きたいくらいだ」

「ならば、他の誰かが…――この絵を描いたと思っているのか?」

「そうだな。俺は襲撃したのが、“第三者”だと思っている。力を持った“第三者”だ。」

「なるほどな。それに関しては同感だ。良いことを聞いた。アラキマコト。 

 よし――この先は誰にも“聞かれる”わけにはいかないな。」

 

 その時、周りの空気が一気に重くなるような気がした。それ以上に音が折れ曲がっているような、話し声が聞こえにくくなっているようだった。


「おい、何をした? 俺を逃さないつもりか??」

「いや、これから先の話はユウリにも聞かせられない。少なくとも、俺の描いている絵にはユウリの姿はないからな。」

 先ほどとは違う。異様な気配が腹の底から湧き出てくるように感じ取れる。身体中に突き刺さる殺気がティーチの本心を代弁しているようだ。これより先は…言葉を選ばなくてはと、マコトは心の奥底から思った。


「…それはどういうことだ……。ユウリがいない!? ティーチ! お前は何がしたい!?」

「俺は常にユウリのことを考えている。ユウリの幸せは俺の幸せだ。だから…。俺の絵にユウリは必要ない。――今、この力場は長くは持たない。なので、単刀直入に命令する。――2日後にパウンド領の“ヴァイシュラ”の領主邸まで来い。これは“命令”だ。いいな。」

 その瞬間、ティーチは周囲の力場を解いた。音が真っすぐ、世界が元に戻った事が分かる。


「2日後に褒章を出そう。名を覚えたアラキ・マコトだな。それではまた会おう。」

「な、おい…くそっ…まて……」

「ユウリ、“ヴァイシュラ”に帰ろうか。彼にお礼を言っておくのだぞ。――今でなくていい、2日後に褒章を出す際に会えるだろう。」


 穏やかな声でユウリを手引きするティーチは、こちらを2度3度見た後に、従者を呼び出し書状を渡させた。その従者からは「必ず、信頼できる者しか居ない場所で開けること」と強く言いつけられた。

 その後、“大貴族会”は流れで終了したのである。ゲンマとマルコさんが立ち尽くしていた俺を迎えに来るまでは、俺はティーチの意図を考えていた。が、“正解”に辿り着けることはなかった。

 

物事を企てることを「絵を画く(えをえがく)」や、関東の隠語で「絵図えず」と表現し、自身の思惑通りに事態を進める状況を表します。

 絵を画く(えをえがく)自分の有利になるように陰謀を企てたり、筋書きを練ったりすること。

 絵図を画く(えずをえがく)物事の計画やストーリーを組み立てること

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