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女神から授かった権能“模倣”で異世界を生き抜く  作者: 近藤セカイ
第1部 第3章『パウンド編 ――大貴族会――』
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40/50

第38話『独壇場』

38話です。


 ステラ家の領主、フンケルが腕を振るうと、天上に浮遊していた光球がうねる様に形を変えた。彼が「さぁ、賊徒を照らせ」と、呟けば、形と変えた光球が樹木の枝のように幾筋にも分かれ、天井を覆うように伸びていく。


「逃げるなよ。いや――逃げれないがな」


 その場の誰もが、その光を見ると、立ち止まって静かな感嘆の声すら漏れる。神々しく美しくも儚い光は輝きを増し、周囲を照らし続ける。それはまるで逃げ場すらないと言っているようだった。


「これが裁き――『女神の裁き(リデフィー・ゲリヒト)』」

 

 その瞬間、光が折れ曲がり流星のように、垂直に襲撃者に向かって落ちてゆく。光は目にも止まらぬ速度で貫いた。光は来賓を避けるように通り抜け、役割を終えた光は霧散していった。光の筋は一人、二人、三人と、……同時に――襲撃者を強襲したのだ。

 その後、腹部に大穴を空けた焦げ臭い死体がいくつも作られた。一部始終を見ていた貴族を含めた来賓からは歓喜の声が上がり、彼を「英雄」や「女神(リデフィー)の代行者」と呼び始めたのだ。


「どうだ? この場で動けたのは私のみだぞ?? マルコ以外の領主は何をしていた??」

 嫌味ったらしく、自らの功績を前面に出しながらも笑みを浮かべる。そして、動かなかった――いや、動くことを許されなかった“権能”を持つ者を蔑む。

 周りのものは反論せずに静かに口をつぐむ。本気で悔しそうにしていたのはミヤビのみであった。

「私だって、声を制限すれば……」

「エピタフの“権能”はそのような器用な真似は出来ないはずだが? 何よりもしなかったことが証明だろ? ティーチも私に感謝すればいい。怪我人が少なかったのは幸いだな」

「…ああ、そうだな…」

「ふん、(気取りやがって…)さて、今回の“大貴族会”はお開きだな。今日でこの国を守っている人間が誰かよく分かったな。フフ…私は一足先に帰らせてもらおうか」

「フンケルさんが帰るなら…僕も帰らせていただきますね……お疲れさまですぅ……」

 フレア家の領主が弱々しく、声を出し、そそくさと壇上から降りていく。

「私も帰らせてもらおう。この場は“お門違い”で“荷が重い”からな。」

 フレア家に続いて、シャドウ家が、彼女に続くようにミヤビが「待ってよ〜」と言いながら降りていく。ダンカンは既に降りて、酒を嗜んでいた。壇上にはマルコとティーチのみになった。


「おい、ティーチ。今日はお開きでいいのか? あいつら協調性がないから帰ってくぞ」

「……ああ、そうかもな…」

「?」


 先ほども、少し遅れて返事をしたティーチは襲撃時は襲撃者が何者なのかを推測をしていたが、それは無駄だと決定づけ、次のことを考えていた。それは“襲撃者の目的”である。

 ティーチはまず、「狙いは"7貴族"だ」と考えた。しかし、襲撃者は壇上を素通りし、来賓へと向かった。その時点で、その仮説は捨てた。次に“来賓”のなかに目的があると推測した。だが、彼らの動きは無作為でかつ横暴であった。ティーチ(自身)の“評価”を下げるのならば他にやりようがあったはずだ。しかし、彼らの行為には何らかの合理性も戦略性もない。来賓を狙うだけなら効率が悪い。違う。

  "7貴族"を狙うならもっと近くまで来れた。 警備を突破したのに目的を果たそうとしていない。 つまり、本当の目的は別にある。


「陽動か!?」

「あ!? 陽動? 何の話だ?」


 ティーチは周囲を見渡すが、あるのはフンケルによって作られた焼け焦げた死体と事態の収束により身を案じている貴族たちだけである。混乱はすでに収まっているが、逃げ惑った者や荷物を取りに戻った者、それらが雑多して混雑している。もしも、群衆の中に生き残りがいたとしても気づけるわけがない。


「もし、俺がこの場所で“襲撃”を行うなら…“貴族”、“7貴族”、“政治体制”……この場所にしかない――ユウリ!!」


 ティーチが“正解”に辿り着いた1秒前には、ユウリの眼前には“貴族”に扮した者が立っていた。胸元に手をいれ何かを取り出す。


「ユウリ・パウンドだな……」


 その手には“暗殺用の短刀”が握られており、彼は“警備兵”でもない。狙いは――


「ユウリ・パウンド!! 貴様に“フィリア”により天誅を下す!! 死ぬがいい!!」

 凶刃は確実に、周囲に護衛を持たない“ユウリ・パウンド”を捉えた……。

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