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女神から授かった権能“模倣”で悪魔ダンジョンを生き抜く  作者: 近藤セカイ
第1部 第3章『パウンド編 ――大貴族会――』
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第25話『好きなところ』

第25話です。

「ユウリがどこにいるかなんて、お兄ちゃんにかかれば分かることだ。ここにいるのは“貴族会”があるからだ。理由は他にいるか? それに――」


 こいつがティーチ・パウンド。

 

 ゲンマ曰く“軍神”と言われてる男。一国を一人で降伏させるような人間だ。


「――母さんや父さんも心配していた。それにこの“貴族会”はお前のこれからを決めることだ。こんなところでうつつを抜かしているわけにはいかない……」


 さっきからユウリの方しか見てないな。俺たちは眼中にないというわけか。


「…聞いているか? そこの平民。いや、違うな。ユウリを誑かした張本人、街に寄越していた間諜(スパイ)から話は聞いている。“パーティ”を組んでいるそうだな。どんな思惑があるかは知らないが、十中八九良くないことだろう。」

「いや、違――」

「――わない。俺の妹のユウリは優しいからな。お前のような平民を見捨てずに“パーティ”を組んでくれているのだろうな。 あー!! まるで“女神”だ!!」


 クソっ、話にならない。なんだこいつ。どうにかしてユウリを逃がす“さなん(ことを)”――?


「何を考えているか分からないが無駄だ。それに貴様らがユウリのために何かを考えることなど、俺の足元にも及ばない」


「俺はユウリが好きだ、お前たちは利用しているだけだ。そこが差だ。さらに、俺はユウリのことならば何でも知っている。知っているか? ユウリは小さい頃からあることのために“牛にゅ”――」

「――ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛!! なんで、今そういうこと言うかなっ!!」


 秘密の一つをティーチが喋りかけると、ユウリは汚い叫び声を上げた。妹の発狂にティーチは笑顔で“?”の文字を出している。


「…普通の“勝負”ならばお前たちの勝機はないだろう。ここで一つどうだ? 俺にある“勝負”で勝てればここを通してやろう」

「勝負?? 内容によるだろ」

「お前たちに聞いてから選ぶ権利があると思うか? 選べ。一方的に蹂躙されるか、俺の勝負に乗って負けるかだ」


 相手は“軍神”……。ゲンマと俺の二人がかりでは、100%無理だろう。

 でも、ここでおめおめとユウリを引き渡すわけにもいかない。


「勝負に乗る、聞かせろ。内容は何だ」

「フッ…賢明な判断だな。内容は“ユウリの好きなところ勝負”だ!!!」


 は? 今なんて言った?

 え? 今なんて言いました?


「何言ってんのよ!! 今すぐにやめなさいよ!!」

「なぜだ!? お兄ちゃんよりもユウリのことを知っている人間ならばまだしも。俺よりもユウリを知らない奴らに冒険させるなどおかしいだろう?」

「“ユウリの好きなところ勝負”? ルールは何だ……?」

「平民にしては乗り気だな、ルールは簡単だ。ユウリの好きなところを言い合って、先に言えなくなった方の負けだ。貴様らは二人で考えてもいい。」

「…マコトさん!? こんな勝負に乗るんですか!? 考え直しましょうよ!!」

「いや、勝機があるのはこっちだろう……。それに、曲がりなりにもユウリと冒険をしてきた仲だ。」


「よし、先行は譲ろう!! 何を言われても俺の勝ちは揺るがんがな」


 好きなところ……言葉にするとなると恥ずかしいな。いや、背に腹は代えられない!!


「ユウリの踏み込んだ発言が好きだ!!」

「なっ!! 何バカなことを始めてんのよ!!」


 ティーチはウンウンと肯定の意を浮かべながら、微笑ましそうに告白を聞いていた。


「よしっ!! いいぞ!! ならば……ユウリの天真爛漫なところが好きだ。笑顔がすてきなところも好きだ。お兄ちゃんより足が速いところも好きだ。お兄ちゃんと呼んでくれる声が好きだ。邪魔と言ってくれるクールな声も好きだ。ユウリが朝起きてくれるところが好きだ。ユウリが今日も生きているところが好きだ。ユウリがご飯を食べているところが好きだ。ユウリが嫌そうな顔をするとこが好きだ。ユウリが笑わない日があるところも好きだ。よし、これで10個だな。貴様らの番だ」

「待て待て、普通は一個ずつ言うだろ!!」

「そうですよ!! 1対10になったじゃないですか!!」

「そうか? ならば、そちらもそうするといい。ルールの確認を怠ったそちらの不備だろう」


「…見ず知らずの俺に施しをくれたところが好きだ!! 準備を怠らないところが好きだ!!」

「ええっと……砂遊びの造形が高いところが好きです」


「いいな!! それで終いか? ならばこちらも言わせてもらおう。ユウリが私を見ないところも好きだ。ユウリが私を見るところはもっと好きだ。ユウリが頑張るところが好きだ。頑張りすぎるところは心配だ。それでも心配させてくれるところも好きだ。茶色の母親譲りのつやつやの髪も好きだ。体重を気にしてご飯を少しだけ減らすところも好きだ。ツンとした猫を思わすような目も好きだ。丸くうるっとしたアーモンド状の瞳が好きだ。サファイアのように美しい瞳が好きだ。シルクのような手触りの肌が好きだ。家族の前での大きな声も好きだ。よそ行きの微笑ましい声も好きだ。日々努力しているその頑張りも好きだ。たくましく育ったふくらはぎも好きだ。ちょっと割れている腹筋も好きだ。毎日牛乳を飲んでいるかわいいところも好きだ……牛乳はさっき言ったな……。会合が嫌いなのに頑張るところも好きだ。友達がいなくてぬいぐるみに話しかけているところも好きだ。リデフィー教を信じていないところも好きだ。猫が好きなところも好きだ。動物なら大半が好きなところも好きだ。虫が苦手で私を頼るところも好きだ。泳げないところも好きだ。泳ごうと努力していたところも好きだ。ダンカンさんの前では口角が2%上がるところも可愛いくて好きだ。そんなユウリを見ると、私の口角も5.4%上がってしまう。砂糖をちょっぴり多めに入れるところも好きだ。お兄ちゃんと結婚してあげると言われたときは幸せだったな。その後、お父さんにも同じ事を言っていた時も可愛かったな。昔の天真爛漫で穢れを知らないユウリも好きだ。今の知恵があって、そういうことも気になっているユウリも好きだ。難しい言葉を知ったかぶりするところも好きだ。小説を読んで、3ページで諦めたところも好きだ。魚の骨を取るのが苦手なところも好きだ。長い時間、じっとしているのが苦手なところも好きだ。私を兄と言ってくれることが好きだ。赤いドレスが似合うところも好きだ。昔集めたどんぐりを未だに持っているところが好きだ。大道芸人が来たら、一目散に走るところも好きだ。おしゃれなところも好きだ。お酒を飲まずにルールを守れるところも好きだ。野菜よりもお肉が好きなところも好きだ。ギルドに匿ってもらったていた際は礼儀正しくしていたところも好きだ。親戚の集まりだと、借りてきた猫のようになるところも好きだ。辛いものが苦手なところも好きだ。……つまりは私はユウリが好きということだ。」


 この場にいるティーチ以外の全員が思った。

 この勝負には勝てない。いや、“軍神”に勝負を挑んだこと自体が間違っていたのではないか。


 ただ1人を除いて――


「…ユウリのどんなときでも先を歩いてくれるところが好きだ。ユウリのまっすぐな気持ちが好きだ。悩んでいる仲間に声をかけられるところが好きだ。仲間としてのユウリが好きだ。冒険者としてのユウリが好きだ!! だから!! お前になんか譲れない!!」


 マコトは諦めていなかった。

 彼を動かしているのは、パーティリーダーとしての責任感などではない、誰よりも冒険者としてユウリを知っているからである。


「舐めていた……すまないな。俺の悪い癖だ。相手を弱く見てしまい、態度を間違える……。貴様、…君は言葉程度で折れるような人間ではないのだな。…よろしい、ここからは“武力”だ」


 ティーチがこちらに手のひらを向ける。

 指を一本一本開きながら、その内の一本をゆっくりと下ろした。その時――


「ゲンマ!! 来れな(くるぞ)!」

ひう(はい)!?」


 ――マコトとゲンマは急激に身体が重くなり、その場で這いつくばった。

 すべてが重くなるような感覚が全身に乗りかかる。思考、語彙、何もかもが押さえつけられているようだ。


「動けないか? まだ“一本”だ。本気じゃないことが分かるだろ?」


 重いが……、動けないほどではない……。権能解放“模倣” 対象 ダンカン・アーム “地歴武器(マインクラフト)” !! 俺を持ち上げろ!!


 土塊を支えにするようマコトは立ち上がる。立ち上がると言うよりは、土塊がマコトを持ち上げたと言ったほうがいいだろう。

 そして、上がるほどに力は霧散するかのように弱くなっていく。


「…いいな…。“一本”で立ち上がる者は久方ぶりだ。“二本”を視野に入れようか」


 強い、あまりにも強すぎる。ダラダラと勝負するよりも、大きな必殺技をぶつけたほうがいい。

 ハウルさんとの修行(たいわ)で思いついたあの技だ。


「“地歴武器(マインクラフト)”!! 喰らえ!!『百の剣(ナイト・レイン)』!!」

好きなところ発表お兄ちゃんが好きなところを発表いたします。のパートは本当は後、Word2枚分はありましたが、必要なところだけを抜き出して、物語に入れ込みました。

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