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女神から授かった権能“模倣”で悪魔ダンジョンを生き抜く  作者: 近藤セカイ
第1部 第2章『エピタフ編――歌わない歌姫――』
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第20話『海上決戦』

 巨大な帆で風を受けている大型帆船は、遮蔽物がないため、陸風の影響を直に受けて凄まじい速度で運航している。

 先頭にいるのはマコトたちが乗る船であり、その後方、右後方、左後方、カバーするかのように、3つの船が対巡している。

 

 不思議なことに揺れは少なかった。  大型船である以上、多少の波はあるはずなのに、甲板は地面の上を歩いているかのように安定している。

 海を進んでいるというより、巨大な道路の上を走っているような感覚だった。

 これがセンジ王国の技術なのか、それとも――。

 

「次の“マーキン”をお願いしますわ」

 

「はい!――愛しき姫よ、その護り手よ。その手綱を戻し、赤き糸を結べ!――“マーキン”――」

 

 12回目の“マーキン”が唱えられた。

 赤い線の角度は既に50°程度になっており、斜め下に対象がいることは自明の理だ。

 

「近いですわ。私から見て右手側にいますわ。皆さまお伝えくださいまし」

 

 ダイオウ大船団の構成員の一人が、指示を聞き看板に仁王立ちしているダイオウに伝える。

 

「全体伝達だ!!ターゲットはすぐそこだ!!野郎ども!!戦闘態勢及び捕獲態勢に入れ!!ターゲットは現在右舷にいる!!第二艦と主力艦の構成員は直ちに衝撃に備えろ!!」

 

 捕獲銛が当たる角度にまで旋回し、水面に潜む標的を狙う。

 ゆらゆらと揺らめく海面の下には、いるはずのターゲットの姿は見えない。

 

「ボス!!何もいやしませんぜ!!」

 

「何ぃ!!よく見たのか!?」

 

「ええ……下の方にはポツンと黒い点しかないです。あれがクラーケンなわけないですもんね」

 

「クラーケンがそんなに小さく見えるわけねえだろ!!」

 

 ガタン、

 ハーレーがいた部屋のドアが豪快に開いた。

 

 何か異常に気づいたハーレーが叫んだ。

 

「左舷下方から何かが急接近していますわ!!」

 

 混乱の中で「左舷下方!!」ら「面舵一杯!!」と全体に声が響いた時に、大きな水しぶきを上げて、白き巨体が這い上がってきた。

 

「ちィ!!てめぇら触手に巻き込まれんじゃねえぞ!!」

 

 触手が船に叩きつけられるが、手応えはない。

 船は微動だにせず、陸地にクラーケンが現れたかのようにだった。

 

「揺れは心配すんな!!お前たちは戦ってこい!!第二艦、第三艦は撃砲で攻撃を狙え!!弱らせてからやんぞ!!」

「うす!!」

「おお!!」

 

 恐らくだが、ダイオウの権能なんだろうな。揺れはほとんどない。

 俺達にできることはクラーケンを船から剥がして、銛を当てれる状況を作ることだ。

 

「行くぞ!!ユウリ!!ゲンマ!!」

「ほんとにデカいわね!!」

「軽口言って、やられないでくださいよね」

 

「クラーケンの触手は再生する。だから大雑把に根本から切るようにしてくれ!!」

 

 レイチェルがクラーケンの対処法を言う。

 

「んな、そんなこと言ったってよ……」

「こんなでけえのを一刀両断なんて無理だあ!!」

「うわぁぁぁぁ!!」

 

 素早く動く触手は、力強く周囲を薙ぎ払う。

 それを斬りつけるだけではなく、切断するのは至難の業である。

 

「撃砲撃てぇ!!」

 

 ドォォン、という轟音が鳴ると、火薬の爆発がクラーケンを直撃する。

 更には、撃たれた箇所から異臭を放っている黒いヘドロ状の液体が漏れ出した。

 

 

「少しは効いてるぞ!!もう一度だ!!次弾装填を急げ!!」

 

 少しは効いたのか、クラーケンは触手を離し、また水面に潜む。

 

「ッ―――次も来るぞ!!主力艦以外はあいつの攻撃を受けれねぇ!!てめえらは離れてろ!!」 

 

 ダイオウは口からは血が垂れていた。 足元を見ても床が靴の形で沈んでいるのが分かる。

 

「レイチェル、クラーケンは再生するのか!?」

 

「するよ、巨大生物は再生能力を持っているのがほとんどだ。だから弱らせて再生できなくするか、巨大兵器で一撃で仕留めるのがセオリーだ」

 

「―――再生速度は!?」

 

「?大半の巨大生物は損傷個所の再生には数十秒だね」

 

「どんな個体でもか?幼体でも」

「同じだ!!何が言いたい!?」

 

「俺たちが海底ダンジョンで戦った触手は再生していなかった」

 

「はぁ!?どうい―――」

 

 またもや、海面が割れて、クラーケンが姿を現す。

 どうやらここで全てを仕留めたいようだ。

 

「とにかく、再生しない可能性があるかもしれないんだ。あの個体は何かおかしかったんだろ!!なら、そんなこともあるはずだ!!」

 

「分かった!!ならば、その斬った触手を見ればいい。再生していない個所があるのなら、その仮説は正しい」

 

 今、この場に出ている触手は全て新品同様だ。

 つまり、やつは治らない傷がバレないように隠しているはずだ。

 

「ちょっ!!どこ行くの!?マコトちゃん!!そっちは海!!―――」 

「坊主が落ちたぞ!!」

「今は助けられねぇ!!」

 

 マコトは海に落ちた。

 しかし、それは狙い通りだった。

 

 海の中は見通しが悪く、それを見るためには近づかなければならなかった。

 この戦場で流暢に泳いでいては、危険である。

 

 この船は木製の帆船だ。

 つまりはダンカンさん()の権能の対象内だ。

(権能解放“地歴武器(マインクラフト)”)

 

 マコトが船底に手を触れると、木がマコトを押し出すように伸びていく。

 推進力を得たマコトはクラーケンに急接近した。

 

 そこには黒い断面が風化した触手があった。

 

 やはり、ビンゴだ。後はこの事実を上に戻って伝えるだけだ。

 

 マコトは再度、木に触れて、自身を上に押し上げるように権能を発動した。

 

「…ハァ…ハァ…合っていた!!」

「マコトちゃん!!大丈夫!?」

 

「――……このクラーケンの触手は再生しない」

 

 その言葉を聞き、一度疑念を浮かべるが、それを打ち消すほどの信頼がある。

 そして、レイチェルの表情が好転する。

 

「―――ッ!!皆んな!!触手を出来るだけ切るだけでいい!!再生はしない!!だから、次の潜水時に銛を当てれるように準備をしてくれ!!」

「ハッ!? どういうことだよ」

「知らねえ、やれるだけやんぞ!!」

 

 その情報は少しばかりだが、戦場の戦意が向上させた。

   

 この船に乗るのは、無念無想のの剣豪や武の極地の格闘家ではないが、それでも海を主戦場にしてきた者たちである。

 

「仕方ねえ! 切ってやるよ!!」

「てめえら!! 準備しとけよ!!」

 

 クラーケンの触手はみるみるうちに長さを失っていく。

 その傷口とは同様に、黒いヘドロが漏れ出している。

 踏ん張りがなくなっていき、次第と面積も減っていく。

 

 ――そして、好機が訪れる。

 

「クラーケンが体制を崩したぞ!!」

「撃てぇ!!」

 

 その雄叫びとともに、主力艦から銛が射出される。

 銛はクラーケンの胴に突き刺さった。暴れるが銛の返しが引っかかり、抜けなくなっている。

 銛に付いている鎖が伸びていき、クラーケンは距離を取ろうとしている。

 

「今だ!! 網を連結させろ!!」

 

 事前に用意していた網がクラーケンの逃げ道を塞いだ。

 これにより、クラーケンは“ロンド”にしか逃げられなくなる。

 

「旋回!! 目標は“ロンド”!! 全力前進だ!!」

「おお!!」

 

 船の帆が風を受けて張っている。その力を受けて船はぐんぐんと突き進む。

 クラーケンは暴れるが、船にかかるその力の全てはダイオウの権能“不転”によってダイオウに置換されている。

 

「弱ってるな!! さっきよりも楽勝だ!!」

 

 なるがままにクラーケンは港まで牽引された。

   

「ここはてめえを殺すために作ったたフィールドだ!! さっさと死にな!!」

 

 そして、港で待ち受けるのはギルド武器開発研究所の秘密兵器“竜槍”である。

 その槍は時速200キロで対象を貫き、絶命させる。

 

「来たぞ!! 構え!!」

 

 湾岸整備隊とロンド市民会の人員が竜槍のロックに手をかけて、引き上げる。

 解放された鉄の槍はクラーケンの軟骨の中心に綺麗な風穴を空けた。

 絶命、一撃、それが竜槍の力である。

 

「勝ち鬨を上げて!! 私たちの勝ちよ!!」

 

 ミヤビの勝ち鬨が港に響いた。

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