第19話①『前哨会議』
19話です。
キャラが増えてきて、頭がパンクしそうですたい。
『餅は餅屋』という言葉があるが、それは大した知識を持たないものを諌める言葉でもある。
逆に言えば、知識を持ったものに任せろという意味にもなる。
――今日の明朝頃だろうか、王都から数台の馬車が止まり、迎賓館に向かっていった。
レイチェルも朝早くに用事があると、出かけていった。
その際に俺とゲンマを見比べながら、「うん、」と
割と即決で俺を選んで、「マコトちゃん、ちょっと時間ある? 2時間ぐらいかな?」
と言い、言われるがままに交易館に連れて行かれた。
交易館に着くと、レイチェルとは違う部屋に通された。
客間のような部屋で、お茶とお菓子を出されて、そのまま何も言われず放置された。
恐らくだが、奥の部屋で行われているのは、クラーケンを対策するための会議だろう。
俺が呼ばれた理由は不明だが、俺が呼ばれるまでは、ここでゆっくりとお茶をしばく。
ずずっ――と、口の中に茶を流し、お菓子の残りを喉に流す。
悪くないなと、思いながらも暇をふけていた。
話し相手はいるが、今は話す気にはならないし、奥から話し声は微かに聞こえるから、それを聞きながらぼーっとしておこう。
扉一枚隔てた向こうでは、“ロンド”の命運を決める会議が始まろうとしていた。
「諸君、集まっていただきありがとう。私はハウル・エピタフ。“ロンド”市民会の会長をさせてもらっている。」
この、大きな髭が似合う初老の老人はハウル・エピタフ。
ミヤビ・エピタフの父であり、先代領主でもある。
「今回の件は“クラーケン”の幼体が近海で現れたための討伐とお聞きした、相違ないな?ミヤビ。」
「はい、お父様。今回、ギルドからお呼びした専門家の皆様。“ロンド”を日頃、守っていただいている皆様。センジ王国のダイオウ様、先んじて、ご協力ありがとうございます。」
「いいよ。オレ様的には、そっちに恩を売れるとなると美味しいからね。交渉は既に終わってるから船は好きに使ってよ。」
口を開いたのは、黒い眼帯が似合う伊達男。センジ王国“ダイオウ大船団船長”のダイオウである。
彼は隣国、“センジ王国”の輸入出を管理している男であり、今回は見事にミヤビに捕まってしまった。
「皆様の、金銭交渉はすでに済んでおりますので、本題に入りましょうか。」
“ロンド”で資源管理長をしているフワが会議を進めようとする。
「では、現状の報告から始めましょう。レイチェルさん。説明をお願いします。」
ミヤビは会議の主導権をレイチェルへと渡す。
「はーい。地質学者のレイチェルでーす。よろしくね〜。現在、この“ロンド”で起きている地震は計13回ほどで、すべてが震度4以上の揺れを伴いながらも、震源がほとんど同じという状況にあった。
調査の結果、“ロンド”の地下に張り巡らされている排水用の地下下水道管にクラーケンの幼体が休息に訪れていることが第1要因として挙げれている。
以上、今のところ質問は?」
しんと静まる会議室に、挙手というかたちで静寂をきり裂いた幼女がいた。
床につくほど長い黒髪が一塊の団子状になっている。その髪は毛先まで手入れされていて、手がかかっていそうだ。
ギルド武器開発研究所副代表コマ・フルニンだ。
「は〜い!さっきの話で聞いたんだけど?クラーケンの幼体ってどれぐらいなの〜?具体的な大きさが分からないと、私たちも適した武器を渡せないよ。」
「そうだね……。憶測になるけど、触手のサイズが30m前後だった。クラーケンは身体は触手の大きさから三分の一程度になる。なので、全長は40m程度かな。幼体だから10m程度は可変するね。」
「ふ~ん40m程度ね〜。いまいち実感わかないね〜。ネギちゃん。持ってきてたやつに3式はあった? 海洋生物に効きそうなやつありったけ持ってくるって言ってたけど?」
「えっ…、確かですけど……クラーケンと聞いてたので、撃砲の2番〜6番と竜槍の3式から5式までは持ってきてますね……。はい」
しどろもどろに答えた彼女は同じく、武器開発研究所の対巨大生物部門代表のネギマである。
「当てるのが難しいので……効果は期待しないでください……すみません…」
「そうなんだよね〜。何せ巨大兵器だから、標準は合わせにくいし〜。安定した台座がないと、竜槍は撃てないんだよね〜。」
ダイオウが深々と椅子に腰掛けながら意見する。
その目はさながら、少年と大人の中間のようだ。
「海で当てれないなら意味ないじゃないか?撃砲ていうやつだけでやれるのか?」
「ん〜、無理かな~。弱らせるだけの砲弾だし〜。」
「はぁ? なら、竜槍とかいうカッコよさそうなやつは使わないのか?」
「安定した台座が必要だから、陸地がいるんだよね〜。」
「――ニャるほど。そうなると、俺たちの出番だニャ。」
「猫ちゃんがやっと喋った!」
「俺は猫の獣人だが、“猫”呼ばわりされるのは腹が立つニャ。訂正をお願いするニャ。」
「ごめんね〜。悪気はないんだ〜。」
竜槍の設置の件で渋い声を上げたのは、“湾岸整備隊”隊長、猫の獣人のモウトウである。
彼は猫の獣人で始めて、7貴族から勲章を頂いた獣人として有名である。
「俺たち整備隊が、撃てる場所を作ってやるニャ。それでどうだニャ?」
「いいね〜。ネギちゃんもそれでいいよね。」
「えっ、あっ、はい。」
「設置の方はハウル会長。少し、人手を借りてもいいニャ?」
「構わん。もとよりやる気のあるやつは戦闘員や補助員として動員する運びになっていた。仕事が増えるだけだ。やつらも喜ぶだろう。」
「誘導と言いましても、どうする予定でして?クラーケンの居場所が分かるわけがないですわ?」
その点を指摘したのは、ギルドの海洋気象工学の専門家であるハーレー・クウィーンである。
「そうだぜ。どれだけオレ様たちが凄くても、場所が分からなければ倒せない。」
「ふふっ、安心しなよ〜。その点は、解決している。クラーケンの居場所を追跡する方法を確立している。そこの君、呼んできてくれないか?」
一方、マコトはお茶に含まれる精神安定効果により、ほんわかとしていた。
トン、トン、トン、と使者の一人がノックをならすが、マコトは気づいていない。
ズカズカとマコトの座っているソファーを覗いた。
「マコト様、レイチェル様が――」
そこにはお茶により、完全に決まっているマコトの姿があった。
「マコト様、マコト様。……すみませんが、失礼します。」
パチンと強烈な音が部屋に響いた。
その衝撃はマコトを呼び起こすのには十分だった。
「いった?!……何? ねてた? 俺。」
「マコト様、レイチェル様がお呼びです。どうぞ。」
マコトは急な呼び出しに戸惑いながらも、フラフラとした足運びで隣室に入る。
「あ、どうも。」
「紹介するよ。マコトちゃん。一応、パーティでリーダーをしてる子で、実際にこのクラーケンとも戦闘を行なった。」
レイチェルが耳打ちで「ほっぺた赤いけどどうしたの?」
と聞いてきたが、俺にもよく分かっていない。
「あー、マコトです。何で呼ばれたかは分からないですけど、よろしくお願いします。」
「マコトちゃんには“マーキン”を使用しているところを見せてほしいんだよね。今、できるかい?」
「――できますよ。えーと、んっづっ!」
マコトはゆっくりと喉を整えて、マーキンの詠唱を思い出す。
「――愛しき姫よ、その護り手よ。その手綱を戻し、赤き糸を結べ!――“マーキン”――」
赤い線が剣先から伸びる、その線は真っ直ぐと港を指し、海に向かっていった。
「わっ!? なにそれ!? どういう仕組み!?」
コマが興味津々に魔法具について聞いてきた。
「仕組みはよく分からないですけど、魔法商人のタガモさんって人が作ってます。」
「タガモ? ……あー、あのタガモか〜。元研究員のタガモね。知ってる知ってる。」
「あなた、この線の先にクラーケンがいるということでよろしくて?」
「はい。そうなりますね。」
「剣を動かさないで、海図と地形図を持ってきて、その間に角度だけでも測らせてもらいますわ。角度は47°……。」
その後、ハーレーは角度を照らし合わせながら、地図と海図から現在地を割り出していた。
再度、“マーキン”を唱えては、角度を測り、「ここですわ。」と言いながら、地図に点を打つ。
3度目になると、角度から予想地点を複数割り出して、海流によるクラーケンの数時間後の位置予測までしていた。
「場所は分かりましたわ。問題はクラーケンを港まで運ぶ方法でしてよ。何か案はありまして?」
「オレ様に任せろよ。40m程度の個体なら多少の攻撃は耐えれる。網で掻っ攫って、陸まで持ってってやるよ。」
「網の強度が気になるね〜。後で見せてよ〜。改良費は――」
「もちろん、こちらで費用を出させていただきます。」
「わ〜フワ君、太っ腹。」
「その船には私も乗りますわ。現在位置を分かる人間がいないと意味がないですわ。」
「どうやら、決まったようですね。作戦内容を簡潔にまとめると――」
①“マーキン”で捕捉し、網で陸地まで掻っ攫う。
②網とこちらで用意する包囲網で、クラーケンを逃さない状況を作る。
③確実に当てれる状況を作るため、クラーケンの動きを制限する。
④陸地に誘き寄せたら、陸地の竜槍や大砲などの通常兵器。海上からの撃砲の波状攻撃。
「それでいいかしら?」
「異議なし」と全体から声が出る。
「こちらでチーム分けも行わせてもらったわ。
海上チームはダイオウ様、ハーレー様、コマ様、マコト君パーティでいいわね。
陸上チームは私、お父―ハウルさん、ネギマ様、モウトウでいくわ。こちらも異議は?」
「無いな」
「それしかないよね〜。」
「決行は明日。以上で、クラーケン対策会議を終了するわ。ここからが正念場よ皆様のご協力を改めてお願いするわ。」
そして、ミヤビさんの一声により会議は終了した。




