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『女神から授かった権能“模倣”で悪魔ダンジョンを生き抜く』  作者: 近藤セカイ


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『第1話② ギルドにて』

第1話の後編です。

この時期は風邪っぽくて困る。

「嘘、あの子権能がないの……」


「マジかよ」


「権能がないってことはさ……」


「でもさ、さっきなんか出してたぜ」


 周囲がざわめき始めた。権能が出ないことがそんなにもおかしいものなのか。


「えーと、私はこれで……失礼しますね〜」


 受付嬢はそそくさと機械を持って裏側に引っ込んでしまった。依然、周りの空気は悪いままだ。鋭い視線が俺に集まるのを感じる。これは――


「あなた、こっちに来て」


「ん?、おわっ!」


 ユウリに腕を掴まれて、そのままギルドの外に引きずられていく。ギルドの扉が閉まった瞬間、 中のざわめきが一気に遠くなった。


「どうしたんだ?急に引っ張って――」


「いいから、来る!こんな人が多いところはまずいって!」


 俺はユウリに言われるがままに、そのまま路地裏まで連れて行かれた。ギルドの方からまだ誰かがこちらを覗いてるような視線も感じた。


「何で!そんなにスンッとした顔でいれるのよ!」


「悪い、俺は他所から来ていてここの常識がないんだ。権能がないことの何がマズイんだ?」


 ユウリは俺の答えを聞き、妙に納得したような顔つきになる。そして、深くため息をついた。


「そうなの、どうりで知らない地名を話してたわけね。――いい、そもそも権能というのは女神リデフィーが私たち人間に授けた機能の一部なの。呼吸ができない人間はおかしいもの。」


 ユウリの説明を聞き、俺のなかでも合点がいった。


「確かにそれはマズイな。人間なのに心臓がないですって言ったら、誰もが驚くし怖がるな。」


「たぶん……さっきのは機械の故障だと思うけどね。実際にさっきも私を助けた時は権能を使ってたし。」


「そうだな。俺の中に権能があるという実感は存在しているし、不安がる要素はないな。」


 それをあなたが言うのかみたいな顔をしていたが、気にしない。ユウリは話を戻すかのように手をたたいた。


「何かあっても安心して、権能がなくても私はあなたのことを人だと思っているから。それじゃあ、じゃあね。」


 ユウリが我先に路地裏から出ようとした時に、思い出した。


「待ってくれ、一つだけお願いがあるんだがいいか。」


 ユウリは振り向いて話を聞く体勢になった。


「何?私にできることなら。」


「すまないが、お金を貸してくれないか。」


「えっ?お金を……」


「さっきも言ったが俺は他所から来てここの通貨を持ってないんだ。何か対価がいるなら渡すし――」 


 そう言いながら、俺はポケットに入っているスマホに手をかけた。これなら少しは価値があるだろう。


「――いいわよ。タダであげるわ。さっき助けてもらった礼だと思ってくれればいいから。返さなくてもいいわよ。」


「いいのか?タダでお金をくれても。」


「いいわよ。早くしなさい。私の気が変わる前に。」


「ありがとう。恩に着るよ。」


「宿はあそこを使ったらいいわ。私も使ってて、安いけどサービスも充実してるわ。」


 ユウリは表街道の先を指差す。


「私は先に宿に帰るから、護衛とかで付いてこなくて結構だから。」


 そんな事を言おうともしていなかったが、助かったことは事実だ。もう出会うことはないだろうが、感謝しなくては。


「すみません。1日泊まりたいんですけど。」


「うちは5日泊まりしかやってないよ。」


「じゃあ、それでお願いします。」


「じゃあ、1000デフィーね。」   


 1000デフィー……。俺は渡された袋の中を見る。中には紙幣が数枚と硬貨がいくつか入っていた。


 リデフィー、ここの通貨の数え方は分かるか?。


「あなたが住んでいた日本と同じですよ。」


 本当だ、1000デフィー札に、500デフィー硬貨。小銭も日本と同じだ。じゃあ、


「1000デフィー札で。」


「はいよ、鍵だ。部屋は2階の206号室を使いな。チェックアウトは5日後の10:00だ。」


 キィキィと鳴る古い木の階段をゆっくりと登り、言われた部屋に入る。中は良くも悪くも小綺麗で何もないビジネスクラスのホテルの宿版のようだった。相場は分からないが、1日200デフィーと考えれば安い方ではないか。


 俺はそのままベットに流れるように倒れ込む。この数時間で怒涛の展開の連続だった。異世界。権能。模倣。無権能。ユウリ。スティンガー。後は誰だっけ、あの子分、名前は呼ばれてたけどな。


「アラキマコト。これからどうするのですか?」


 ここならば一人で声を出していても問題はなさそうだな。


「取り敢えずは明日、ギルドに行って冒険者登録をするつもりだよ」


「そうですか。無権能についてはどう対策します?まさか、無策で行くわけではないですよね。」


「それについてだが、いくつか考えていたんだが。あれはこの世界にある権能を測定する装置であって、リデフィーの権能は測定できないんじゃないのか?」


「ああ、ああ!そういえばそうですね。私が作った権能だから測定できなかったということですか。」


「そうじゃないのか?俺はてっきりそういうことだと思っていた。」


「こういうことがあまりないので忘れてましたよ。そうでした。私の権能は測定されない。以前もそうでしたね。」


「それで相談なんだが、“模倣”を測定できるように機械に細工できることはできるか?」


「できますよ。少しだけルールを書き換えるので時間はかかりますが。」


「すまない、やっておいてくれ。」


「分かりました。私は少しだけ消えますね。」


 ふぅ。頭の中がようやく静かになった。頭の中で会話できるのは便利だが、耳元に直接喋りかけられているみたいで少し疲れる。


 少しだけ外の空気を吸うか。

俺は立ち上がり、窓を開いた。


 少しだけ過ごして分かったことがある。ここの雰囲気は中世のようだが、文明レベルは現代と遜色ないことだ。

 あの街灯は電気でついているし、この部屋にも電気が通っている。

 一番ありがたいのは部屋のトイレが水洗で洋式だったことだな。日本人ならば誰でも気にすることだろう。

 人々が本を持っているため活版印刷などの文化も発達しているのだろう。

 権能を生活に応用している人間も多く、この世界は権能で発達しているように感じた。


「戻りましたよ。あの装置に細工をして“模倣”の権能を測定できるようにしてきました。」


「助かるよ。これで懸念点は無くなったしゆっくりと休める。」


 その日はとてもよく寝れた気がする。身体が疲れていたのだろう。こんな風に眠りが深くなったたのは久しぶりだった。


 翌日、俺はいつもより少しだけ遅めに起きた。学校がないため油断していたのだろう。宿で朝食を取り早速ギルドに出かける。


「あら、遅かったじゃない。よく眠れたかしら?」


「ユウリ!?何でここに?」


「あなたを待ってたのよ。昨日のことがあったし気になってね。ほら、私って優しいじゃない?」


「そうだな。ユウリは優しいと思う。」


「なっ、何、本気にとらえてるのよ。冗談よ。冗談。それより、ギルドに行くんじゃないの?」


「ああ、無実を証明しないといけないしな。冒険者になってお金を稼がないといけないし。」


「策はあるの?」


「……ないよ。自信はある。」


「自信って、ちょっと待ちなさいよ。」


 そのまま足早にギルドまで歩いた。まあ、歩いてすぐの距離だから言うまではないが。中にはいると目線がこちらに集まったことがすぐに分かった。昨日よりは明らかではないが、コソコソと話す声は聞こえる。


「あっ、先日の日本のお方!冒険者登録の続きですよね。お待ちしておりました。」


「はい、早速ですけどお願いします。」


「はい、事前に準備していましたので後は手を置いていただくだけです。」


 全員が測定機と俺を見ていたのが分かる。それだけ注目されているということだ。不思議な空気感が漂っていたが、俺の心は冷静だった。


「……!権能ありです!これは……“模倣”?ちょっと待っててくださいね。ギルド長を呼んできます。」


「“模倣”?聞いたことあるか?」


「権能ありかよ。じゃあ機械の故障じゃん。」


「面白いもの見れると思ったんだけどな。」


 俺を見ていた視線達はそそくさとギルドの外に出ていった。後は本当にギルドに用事がある人間だけになった。


「お待たせしました。あっ、ギルド長こちらです。」


 ギルド長と呼ばれて出てきた人物は無情髭を生やしており、年は30代ほどか?身長は少し俺より高いだろう。顎のまばらに伸びている髭をジョリジョリと触りながらゆっくりと歩いてきた。


「おー。こいつが“模倣”だっけな?その権能持ちか。先日はこっちの不備で迷惑かけたな。俺はギルド長のマルコ・デフィー。一応、この街の市長もしている。よろしくな。」


「新木誠です。マコトでお願いします。」


「マコトか。いい名前だな。日本から来たんだってな。昔もいたぜ。日本から来ましたってやつ。いつからか見てないけどな。」


「ギルド長。お話はいいですけど、マコトさんは冒険者登録に来てまして。」


 受付嬢の一人が話を遮るように入ってきた。


「どこまでやっている?後は俺が引き継いでやってもいいぜ。」


「ギルド長は仕事がたまっているでしょう。戻ってください。」


「ええ!せっかく呼ばれて来たのに!?」


「早く戻って仕事してください。」


「わかったよ。ああ、そうだ。終わったらギルド長室に来てくれ。早速だが俺から依頼がしたい。」


 マルコは受付嬢達に押されて自分の部屋に押し込まれた。 


「お待たせしました。既に資料の大半は完成しているので、後は権能とマコト様のサインが必要になります。」


「それだけでいいのか?」


「ええ、昨日の内に完成させておきました。褒めてくれてもいいんですよ。これに書き込んでください。」


「ありがとうございます。ここで良いですね。」


 漢字で書こうと思ったが、文化がないと思ってカタカナにした。後で分かったことだか、人名に漢字は使わないが、漢字自体は存在するらしい。


「アラキマコトさん。これで完璧ですね。後はこちらでやっておくので少しだけお時間をください。そういえば先ほどギルド長が呼んでいましたよね。そちらに行ってみては?」 


「そうします。ありがとうございました。」


「いえいえ。お仕事ですので。」


 これでひとまずは終わりか。言われた通りにギルド長室に向かうか。


「マコト。良かったわね。権能が測定されて。」


「ユウリ!本当にありがとう。君がいなかったら大変だっただと思う。」


「そんなに褒めても何もでないわよ〜。」 


 嬉しそうに頭をかきながら、えへへと言っている。動きが多くて面白いな。


「そういえば、あなたもマルコの部屋に行くのよね。」


「“あなた”もってことはユウリも?」


「そう、さっきあなたと話した後にこっちに来てね。話があるからマコトと一緒に部屋に来いって、何かしらね。」


 要件はよく分からないが、あまり良くないことのような気もする。そんな事を考えながらギルド長室の前にたどり着いてしまう。


 ドアを3回ノックすると、返事が返ってくる。


「マコトとユウリだろ。入っていいぞ。」 


「失礼します。」


「んで、何よマルコ。私を呼んで」


 ちょっ、ユウリ。傍若無人にもほどがあるのでは?


「ああ、気にするなマコト。こいつとは長くてな。」


「それで用事は何ですか」


「そうだな……。単刀直入に言おうか――。」


 マルコは面白がってえらく長いためをしている。その考えは顔に出ていた。


「――お前らパーティー組め。」


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