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『女神から授かった権能“模倣”で悪魔ダンジョンを生き抜く』  作者: 近藤セカイ


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『第1話① 無権能』

多分ですけど、あんまり久しぶりではないですね。

はじめましての人ははじめまして。

近藤セカイです(表記をカタカナに変えてみました。)。

異世界系に関しては初心者なのでよろしくお願いします。

「じゃあな〜新木。また明日。」


「ああ、笹野。また明日。」


 学校が終わり、帰路につく。

 アスファルトから砂利の混じった砂地になる。折れた草木から臭う青臭い匂いが鼻腔びくうを走る。


「おーい!そこの人!こっちに投げてくれよ〜!」


 ん?、投げる?……、ああ、このボールか。

 俺は足元に転がってきたボールを拾った。


「これだな、よしっ、いくぞ!」


 体全体をバネのように使って、腰から肩へ、そして腕にエネルギー伝えて、投げる。


「おおーー!すげえー飛んだ!、ありがとうございます!」


 少年たちがお礼を言い、また河川敷の公園で試合を再開する。彼らには夢中になれる競技がある。だから今もお礼を言って、すぐに始めるほど熱中できるのだろう。


 野球といえば、昔やっていた野球教室の先生も言っていたな。

 お前は才能はあるのに辞めるのか?って、大人が子供にいうおべっかみたいなものだということは分かっていたし、何よりも俺は野球には熱中できる人間ではなかったということが分かっただけだった。


「頑張れ!庄司ぃ!打てぇ!」


 昔からそうだったな。俺は何をしても続けることができなかった。どんな習い事もすぐにやめていた。


「打った!走れ!走れ!」


 こう、なんというか……。やっている際に手応えというものがないのだろうな。


 そんなこんなで考えていたらすぐに家に着いてしまった。


「ただいま」


 家のドアを開けた。

 

 ……って、なんだここは?

 一面、真っ白の空間というか、ここは俺の家じゃない?。外に戻ろうとドアを開けるが、その先はやはり、同じような白い空間だった。


「そちらに行っても何もありませんよ。アラキマコトさん。」


「俺の名前って……いうか、あんたは誰だ。」


 見た感じは大人の女性。髪は緑というか黄色というのか曖昧な色だ。長さは腰まであるロングヘアーだ。海外の絵画にある聖母のような出で立ちに見えた。


「私ですか?人間に呼ばれている名は“リデフィー”つまるところは“女神”と呼ばれています。ね、高校生のアラキマコトさん。」


 高校生のって、高校生を女神と同一に呼んでいるのか、って話に乗るな。聞かなければいけないことが山程ある。


「なあ、女神様?」


「リデフィーです。」


「リデフィー。ここは何処だ?出来るなら家に戻してくれないか?」


「なぜでしょうか?」


「なぜって……普通はこんなところに連れてこられたら困るだろ。何だ?ここは夢の世界か?出来るなら出してくれ。」 


 リデフィーはアラキの問いかけに顔色一つ変えずに答えた。


「なるほど、帰りたいのですね。それは私にはできません。無から有を生み出すのは無理ですからね。」


 無から有。何を言って――


「あなたは死んだのですよ。アラキマコト。」


「待ってくれ、情報が急すぎる。」


「正確には死ぬ予定がなかった人間が死んだのです。そのような人間は10年に一人はいます。あなたはその一人なのです。」


「10年に一人は多くないか?」


「そういうものです。あなた方の文化圏でいうと“神隠し(かみかくし)”みたいなものです。」 


「……そうか。……つまりは、俺は死ぬ予定がなかったが急死したとする。そしてその救済として、今ここにいるってことでいいか?」


「その解釈で構いませんよ。仮に生き返ることが可能だとして、あなたは戻って何をするのですか?」


 ――それは、何も思い浮かばない。生きてやりたいこともない。それに俺が亡くなって困る人間や悲しむ人はいるけど、生き返ったとしても空虚なだけかもしれない。


「――何もないな……」


「そうですか、私はあなたに二つの道を示せるのですが、聞きますか?」


「何か分からないが聞かせてくれ」 


「私は元々はこの世界の女神ではないのです。もう一つの世界で女神をしています。そして、私はその世界にあなたを転生させることができます。」


「少し、考えさせてくれないか?」


「いいですよ。ここで流れる時間はないものなので。別の世界で生きるかそのまま理不尽に死ぬか選んでください。」


 もしも、その世界に転生したとしてもすることはあるか。それに俺は生前にあの世界に満足できていたのか。俺は自分を見つけることができていたか。悩むなら答えは一つだ。


「――決めた。その世界とやらに俺を転生させてくれ。」


「決まりですね。何もなしで私の世界に落とすのも忍びないので一つだけ私から贈り物をあげましょう。手を出してください。」


「贈り物?何をくれるんだ?」


 リデフィーの手に手を乗せる。すると身体の奥底から不思議に力が湧き出してくるような感覚に陥る。


「これはあちらの世界で権能と呼ばれるものです。まあ、スキルのようなものすね。あなたにあげるのは“模倣”の権能です。」


「ーー“模倣”……。かたどってならうか……。俺にお誂向きだな。」


「権能の説明を少しだけさせてもらいますね。――  以上です。質問はありますか?」


 リデフィーの説明はすんなりと頭の中に入ってきた。気付けば説明は終わっていた。 長い話を聞いたはずなのに、不思議と疲労感はない。


「ないな……。いいものを渡してくれてありがとう。いいのか?こんないいものを。」


「いいんですよ。捨てる神があれば拾う神ありです。この世界に送る際の些細なプレゼントですよ。……あっ、補足ですけど、相手のことを知れば知るほど“模倣”は強くなります。」


 リデフィーに言われた権能の内容を頭で反芻させながら、意を決する。


「ここの扉から出たら異世界なんだな。」


「ええ、いってらっしゃい。」


 俺はここから新しい世界に出かけた。

 

 扉を開けると木製の建物の匂いがした。古びた木と少々ホコリの匂いもする。壁には大量の紙が貼っており、それを人々が見ている。まるで、人が集まる集会所のようだった。


「ここは?――」


「頭の中に失礼しますね。いわゆるギルドの集会所ですね。」


「リデフィー?!あっ……」


 びっくりした。頭の中に急に声が聞こえてきた。 思わず声が出た。少しだけ周りの目が集まる。


「草原に飛ばしてもよかったのですが、そこで獣に襲われて死なれたら夢見が悪いので、ここに飛ばさせてもらいました。」


 助かる。心の中で話しても聞こえてるのか?。


「聞こえてますよ。確かに人間が独り言を言ってるのは不自然ですからね。」


 そういうことだ。ここで俺はまず何をすればいい。


「まずは冒険者登録じゃないですかね」


 冒険者登録か、どれだろうか。


「あれじゃないですか?」


 カウンターの隅っこでビシッと生真面目そうな女性が座っていた。


「すみません。冒険者登録はここですか?」


「あっ、冒険者登録ですか?ここですよ。失礼ですが年齢は?」


「……――17歳です」


「17歳ですか、出身はどちらの方で?」


「出身は日本です」


「日本?……少し待っててください。」


 受付嬢はそのまま裏側に引っ込んでしまった。どうするべきか。身分やお金のことは何も考えてなかった。


 なあ、リデフィー。俺の身分は――


「このっ!離してよ!!」


 突然、人混みの奥で女性の声が聞こえる。どうやら何か問題が起きているようだ。


「見に行ってみましょうか、アラキマコト。」


 ああ、騒動があれば役所仕事は動かないだろうしな。

 

 人混みをかき分けて、声のする方へ歩いていくと、男が女性の手を掴んで連れて行こうとしていた。


「離しなさいよ!あなたたち!私をパウンドの人間って知っててやってる!?」


「知ってるさ。そのパウンドの人間だからやってんだよ。」


「そうだ!そうじゃなければスティンガーの兄貴がそんなことはしないぞ!」


 スティンガーか。それがあいつの名前か。後は触れるだけで権能を“模倣”することができるんだなリデフィー。


「そのとおりです。よく覚えていますね。アラキマコト。それでどうするのですか?正義の味方のような事をするのですか?」


 まぁ、“模倣”のお試しだ。正義の味方には興味がないが、もらったものを使わないのは少しもったいないからな。


「なあ!そこの二人。男二人で女性を囲んで、恥ずかしいと思わないのか?」


「あ?誰だてめえ?」


「見ない顔だなあ?お?兄貴にケンカ売ってんのか?お?」


 取り巻きの男が殴りかかってくる。


「えい、邪魔だ」


昔習っていた空手の正拳突き。体重移動だけで十分だった。殴られた子分はコミカルに飛んでいった。


「ゔっ、〜兄貴……」


「ぢっ……、D級のくせに出しゃばるからだ。」


 兄貴分の男は女性から手を離し、こちらに歩いてくる。


「てめえ、どこのもんだ?」


「日本人だ」


「ニホンジン?どこだよそれ」


 大きく息を吸って、大声で相手を威圧しろ。


「――俺の名前は新木誠!正々堂々勝負をしろ!貴様も名を名乗れ!」


「クックック……騎士様のお真似か?いいだろう、()()()()()()()()()()()()。『毒牙の蠍(どくがのさそり)』だ。」 


「おお、うまくやりましたね。アラキマコト。」


 ああ、模倣は相手のことを知れば知るほど、効果を上げることができる。つまりはフルネームを知れば相手のことを更に知れる。問題は相手の権能が分からないことだ。対策が取れない。


「来ねえのか?ならばこっちからいくぜ!権能解放『毒牙』!!」


 その時、スティンガーの右腕が蜂の針のように変形した。ポタポタと先端から汁が垂れている。汁が落ちた床は黒く変色して異臭を放っている。形状、状況から察するにあれに刺されればまずいだろう。


 左足を浮かせる。 毒牙あれは剣だ。 剣を捌く動きでいい。スティンガーの初撃は大振りの右だった。


「俺の毒針を喰らえい!!」


 予想通りだ。右腕が必殺技ならば攻撃も右から攻めるに限るだろう。それを躱して、すれ違いざまに触れることに成功した。


「あん?触るだけかよ――」


 「――よしっ……権能解放“模倣”。対象は()()()()()()()()()()()()


「あ、“模倣”?」


 右腕に熱が走る。筋肉が膨らんでいくのを感じる。それは徐々に重さを増していき、異形の形へと変形した。


「うおっ……重たっ」


「――俺の権能と同じだと……」


 その右腕に生えてきた毒針はスティンガーの持っているそれと同じものだった。


「これで条件は同じだ。騎士様の真似でもしてやろうか?」


 右腕を剣のように振るい、スティンガーに見せつける。


「やれるもんならやってみろ!」


 スティンガーは明らかに俺の挑発に乗っていた。


 怒りに任せた一撃はどんな攻撃よりも受けやすいことを経験が知っている。


 スティンガーの毒針の先の重心を左に逸らす、するとスティンガーはそのまま倒れるだろう。あとは――


「チェックメイトだ。スティンガー。まだやるか?」


「くっ……てめえ!覚えてやがれ!!いくぞ!ブン太!」


「待ってくれよ。兄貴!」


 スティンガーとその子分はギルドから逃げるように去っていった。


「凄いなお前!あのスティンガーを負かすなんて!」


「あいつはBランクだぜ!」


「見たことないが?初心者か?」


 称賛の声が溢れる。どうやらスティンガーはあまりいい印象を持たれてなかったようだ。


 すると、先ほど捕まっていた女性が近づいてきた。髪は茶髪で身長は俺より少し小さいか。


「ありがとう。あなたとっても強いのね。あいつ最近ずっと付きまとっていたから困ってたの。」


「気にしないでくれ。オレがムカついたからしただけだ。」


「それでいいの。私を助けてくれたことにかわりないから。私はユウリ。ユウリ・パウンド。よろしくね。」


「俺は新木――」


「すみませーん。さっき、冒険者登録をしようとしてた人ーー!」


 どうやら受付嬢が戻ってきたようだ。


「ごめん。俺、冒険者登録の受付がまだなんだ。」


「そうなの?邪魔してごめんなさい。終わったらでいいからお話できる?」


「分かった。また後で。」


 俺は急いで、受付の方へ向かった。


「あっ、さっきの人。日本でしたよね。ありました。10年前のギルドの記録に一つだけ。」


 あるんだ。日本。正直に言ってとても驚いた。


「えーと、身分は一般市民でいいですよね。後は権能をお願いします。」


 すると、受付嬢は水晶玉のような機械を下から取り出した。


「これは権能測定機で手をかざせば、権能を教えてくれます。」


「なるほど。」


 これに手をかざせば、“模倣”と出るのか。俺は手をかざした、


「えっ、嘘!。権能無し?……。普通は出るはずなのに……。えっと、すみません。壊れているかもしれないので、明日まで待っててもらっていいですか。」


 水晶玉には何も映らなかった。もう一度かざしたが、変化はなく仕方ないので手を引っ込めた。


「大丈夫ですけど……。俺が壊しちゃいました?」


「いえ、壊れることなんてないと思うんですけど……。故障だと思うので気にしないでください。」


 無権能と言われた瞬間。その時、周りから見られる目が変わった気がした。

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