第17話『名推理』
18話です。
初期プロットで構想していたところを書き切りました。
「――その正体はクラーケンだ。」
「は?なんで、クラーケンと地震がつながるのよ!説明しなさいよ!」
「えっ!?もしかして皆さん分かりました!?まずい、ユウリさんと同類だ!!」
「それどういうことよ!」
荒唐無稽なレイチェルの答えにユウリは逆ギレのような態度を取り食い気味で割り込む。ユウリと同じく、話を理解できていないゲンマは焦っていた。
その中でミヤビさんは静かに俯いていた。
何となくだが、この話の中身を理解しているのは、俺とレイチェル、それにミヤビさんと言ったところかな。
地下下水道の配列。クラーケンの存在。
そして、その2点を含めたレイチェルの味見によっては得た情報を考えれば分かる。
俯いていたミヤビが口を開いた。
「ふふ……“クラーケンが動いたことによって地震が起きた”でしょ?」
「正解!ミヤビさん!俺ちゃんの仮説でいったら、それが一番強い。」
「ふふん――。起きた理由も言えるわよ。レイチェルさんがさっき言ってた通りに、このロンドには街全体に通っている地下下水道が存在しているの。」
「ほうほう。それで?」
「クラーケンの巨体で地下下水道を通れば揺れるでしょ。この街の地下下水道全体が揺れを増幅する装置みたいになってるのよ。」
レイチェルはまるでミヤビの推理を楽しんでいるようにも見える。
「そこに何故か近辺に生息していたクラーケンが、地下下水道に足を入れて休憩していたの。クラーケンは食事の度に地下下水道から出ないといけない。今日の地震もそうだわ。」
「ん!?今日、地震が起きたのか?」
「それは俺ちゃんたちが海底ダンジョンにいたからじゃない?。それにしてもいい推理だね。」
「合ってた!?」
「大方はね。それに恐らくだけど、そのクラーケンは幼体だと思うね。親とはぐれた個体が住み着いたのかもしれない。成体のクラーケンは100メートル超はあるからね。そんなのがいたら大騒ぎだ。」
「そうよね。昔、遠海で見たクラーケンは凄く大きかったもの。足だけで船を覆えるぐらいには大きかったのを覚えてるわ。」
あのクラーケンは幼体だったのか、Aランクのモンスターと聞いていたが、撃退できたのはそれもあるだろう。
いや、レイチェルが否定していたことはどうなる?
「なぁ、さっきクラーケンの体液は無色透明もしくは青色と言っていたな。」
「そうだね。俺ちゃんの言った通り、クラーケンの体液は無色透明もしくは青色だ。
それに、“味見
”で見た、石に付着している粘液、石灰質、情報はすべて“若いクラーケン”だったしね。でも――」
レイチェルは頭をひねらせながら、考えを口に出す。
「――黒い体液、特徴だけを聞くと、腐敗した体液なんだ。腐敗臭とアンモニア臭、ヘドロのような死滅し蓄積した体内物質、まるで死体だ。だけど、それは生物としては不成立だ。」
「もしかして、ネクロマンサーじゃないの!?」
ユウリは自分の考えを口に出して、元気よく提案する。
「ネクロマンサー。死体を操るモンスターの1体だね。生息域がまるで違うが特徴は合っている。黒い体液から考えられるのは3つの説だ。」
「3つもですか?」
「1つ、異常個体説、体内の組織は異常に変化して、生命活動中にも関わらず、老廃物を外に出せずに血管内に蓄積している。
2つ、死体操作説、これはユウリちゃんが言った、ネクロマンサーのモンスターや何かしらのモンスターが死体を操っている説だね。でも、そのような行動を起こすモンスターの生息域と合っていないんだ。
3つ、近似生物説、ありえないけどクラーケンと似たような生物が近海に生息していて、これが悪さをしている。」
レイチェルの仮説に全員が喉を唸らす。
「あってそうだけどなぁ……遠くから来た俺からしたら現実的ではないな。」
「だよね。自分で言ってて、馬鹿げていると思うよ。でもね、こいつがいれば疑似地震がまた起こるかもしれないんだ。」
「じゃあ、討伐すればいいじゃない!気になるんだったら倒して調べればいいでしょ!」
ユウリの何気ない一言にクスッと笑みがこぼれてしまう。
「何よ!私が頭が良くないから笑った!?」
「――いや、違うんだ。俺たちは物事を難しくとらえてしまう癖がある。だから、ユウリみたいにバシッと言ってくれると、考えてばっかの俺が馬鹿馬鹿しくてな。」
「何よそれ……。調子狂うわ。」
「とにかく、クラーケンを倒せばいいって話ですよね!よーく分かりました!いきましょう!!」
「ゲンマちゃん。そのクラーケンがどこにいるか分かってるの?」
「――あぁぁ……ぁあ」
ゲンマが力強く倒れていく、どうやら忘れているようだ。
「ゲンマ、これなんだと思う?」
俺は小型のナイフをひらひらと掲げ、見せつける。
「ぁぁ!“マーキン”だぁ!!そう言えば投げてましたね!!」
「これがまだ刺さっていればの話だがな。試してみるか?」
「ねえ、当たり前のように進んでるけど“マーキン”って何?」
また、ここに魔法具の事を知らないミヤビやロンドの人々に“マーキン”について説明を行なった。
「凄いわね、もう片方が手元にあれば、もう片方の場所がわかるなんて!」
「今から、詠唱をしてみるので、赤い線が微かにでも動いていれば、“マーキン”が刺さっているはずです。」
そして、唱えるのは“マーキン”の詠唱。3回目にもなると慣れたものだ。
「――愛しき姫よ、その護り手よ。その手綱を戻し、赤き糸を結べ!――“マーキン”――」
赤い線が港の方を指している。よく見てみると、赤い線は微かに移動しているようだ。
「この動き方だと、刺さってそうだね。」
「地震は今日の下水道から出た際の1回だけだったし、まだ近海にいそうね。」
「クラーケンを見つけたとして、どう本体にトドメを刺すんだ?」
「それに関しては私たち“ロンド”の民に任せない。何を隠そう、私たちロンドの民は海の民よ。昔から海洋モンスターとは戦ってきたノウハウと技術があるわ!準備は明日までに終わるから、あなたたちはゆっくりしてていいわよ。」
ミヤビはクラーケンの対策について、部下たちと話に出ていってしまった。
「俺たちはどうする?ゆっくりしとくか?」
「そうしましょう、今日はいろんなことで頭を使ったので疲れました……。」
「大丈夫かしらね。あのAランクのクラーケンを倒しきるのよ。」
「大丈夫なんじゃないかな?あの自信は無謀じゃなくて、策がある感じぽいし」
レイチェルはこんな経験は幾度もしてきたかのように、冷静にいる。
「そうだな、人事を尽くして天命を待とうじゃないか。」
「なんですかそれ」
「聞いたことないわ」
「嘘だろ……。」
「俺ちゃんもないね。」
「――」
俺たちはクラーケンを討伐することを決めた。
その裏にどのようなことが待ち構えていても、乗り越えていける気がする。




