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女神から授かった権能“模倣”で悪魔ダンジョンを生き抜く  作者: 近藤セカイ
第1部 第2章『エピタフ編――歌わない歌姫――』
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第13話『味見』

13話です。

ストックが消えて、投稿がゆっくりになる季節がやってきました。

 ユウリとゲンマが働きに出た日の昼ごろに、2台の機材が王都デフィーからロンドへと搬入された。

 4台の馬車に牽引される形で運ばれた。それはロンドの人を驚かせ、俺の目から見ても異質なものだった。

 2台の機材にはそれぞれ横に車輪のような物がつけられている。

 運ぶ際はそれを使い、馬車や人の手で引っ張っている。

 どのような見た目かはブラインドで塞がれていて、全貌は未だに見えないが、その大きさはゆうに7メートルはあるだろう。


「どう?マコトちゃん!俺ちゃん特製のハイパー掘削マシーンとハイパー巻き取りマシーンは?」


「これがか!?到底そう見えないんだが、早くその幕を取ったらどうだ?」


「…それもそうだね。じゃあ!しかとご覧あれ!俺ちゃんのラブマシーンを!!」


 2台の機材のブラインドが同時に剥がされる。メタリックな外装が太陽に照らされ、その光がこちらを見ている。重厚感のあるその機体は鋼鉄の建築物が現れたようだ。


 1台目の機材の中央には大型の螺旋状ドリルが据え付けられていた。それに地面に機体を固定させるための高さを上げる台座に、中央の炉には“すす”が付いていた。

 2台目の機材は中央の透明な管にメートルが書かれていて、管の下には穴が空いていて下から何かを入れるように見えた。メートル間隔で切れ目が入っているようにも見える。それにこちらにも固定させるための台座が存在している。


「これは……」


「そうかい!驚きすぎて声も出なくなるか!?無理もない!」


 ……これって、ボーリング調査に使う機材そのものだよな……。


「動力源は?こんな大がかりな機材に何を使うんだ?」


「これはね、世にも珍しい火で温めた力で動く装置だよ。そこの炉に石炭などの燃料を入れて、その圧力差を使って中の装置を動かしているわけ。」


「蒸気で動くか……火薬だったり蒸気だったり進んでいるな」


「それじゃあ早速調査に向かおうか。昨日の時点でさらに怪しい地点をピックしておいたから、そこをこいつらで見ていこう。」


 数人の機材を動かすための人手を借りて、俺たちは調査を開始した。まずは機材で土を掘り上げるようだ。


「レイチェル!地下に張り巡らされている、地下下水道には気をつけろよ。そいつにぶつかれば漏水どころの話じゃないからな!」


「わかっているさ!事前にそこは避けるように調査を進めているからね!」


 まずは1台目の機材をピック地点に運び込む。そして火をつけて温度を高める。その後、蒸気圧で足場を固定する。。


 蒸気が吐き出される。

 次の瞬間。

 ――ギュルルルルルッ!!

 耳障りな金属音と共にドリルが回転を始めた。

 周りの牽引していた人が耳をふさいだ。


 蒸気の排気音がゴォォォと鳴り、螺旋状の刃――ドリルが下に沈み始め、直下で土や石を掘り進めていく。掘り出された土は螺旋状の刃の上に乗って外に排出されるため、中で土が詰まるようなことは起きないらしい。ドリルの届く長さは約15メートルほどで、目標はそこの土や石をほぐし、次の作業を行いやすくするためだ。


 地面が程よくほぐされたところで次の機材の出番だ。

 こちらはそこの地層のサンプルを採集するための機材だろう。

 柔らかくなった土を簡単に透明な管が沈んでいき、徐々に管の全体が見えなくなっていった。

 そして、管が完全に沈みきった際に、上部の装置を押して、引き上げを開始した。

 採取物が漏れ出すのではないかと思ったが、まるで真空状態で密閉されたかのように採集物が固定されている。

 蒸気の気圧差を使って固定したのだろうか。


 レイチェルに聞いたところによると、「管の下部には逆流防止用の弁が取り付けられており、内部の蒸気圧を瞬間的に変化させることで、採取した土砂を管内へと吸着・密閉している」らしい。


 俺にはあまり理解できないが、レイチェルが珍しく専門家のような賢いことを言っていた。


 そして、管から採集物のサンプルをメートルごとに並べていき、再度、“味見スキャン”を行うようだ。


「この作業が一っ番疲れるんだよねえ〜」


 レイチェルが土を口に入れながら、ぼさっと独り言をつぶやく。


「俺も手伝ってやるよ。」


 そう言って、マコトはレイチェルの肩に触れて心のなかで唱えた。


(権能解放 “模倣” 対象 レイチェル・クロン “味見スキャン”)


 舌にものすごい違和感が襲いかかってきた。舌に触れている空気そのものが自動で頭のなかに分析されながら入ってくる。

 空気の味、空気の成分、空気の重さが頭を埋め尽くす。


 ……これは凄まじいな。権能を“模倣”した瞬間に脳内に情報が溢れ出した。しかも、情報を取捨するには口の中にとどめなくてはならないのか……。これで土を食べたらどうなるんだ。


 マコトは恐る恐る2メートルの表記がある土を口に運んだ。そして、舌の上に乗せて――ゆっくりと回す。


 口の中に大量の泥水が溢れ出したようだ。たくさんの情報がこれでもかと詰め込まれている。土の味、土に含まれた生物の糞尿、土の水分量、土の種類、土に含まれる砂や礫の情報――


 マコトはたまらなくなって、口から土を吐き出した。同時に“模倣”の権能を解除した。


「っぺえ!」


「マコトちゃん!もしかして、俺ちゃんの真似しようとしたの!?無理無理、俺ちゃんの権能ありきだからそこで待ってなよ」


 レイチェルは口の中に土を含みながら、マコトをいたわる。


 これを何度も!?それも口の中に土をとどめながら!?頭の中はどうなってんだ!?

 こんな情報量に耐えながらも、必要な情報が取れるまで口の中にとどめておくなんていい意味でイかれてる。


「これも違うか〜、次いこうかぁ」


 そう言いながらもレイチェルは土や岩を食べ続けた、その結果ーー


「ここはだめだね。次のピックアップ地点に向かおうか。」


 その後、俺たちはいくつかのピックアップ地点を回ったが、特に得たものはなく進展なく、ただレイチェルの腹が膨れただけだった。


「ここが最後だね。地面は地面が砂質で、海岸線に最も近いピック地点だ」


「なぁ、なんでここを最後にしたんだ?ここなら最初の方にも近かっただろうに」


「俺ちゃんの気分かな。可能性が高そうな所を回りたかったっていうのもあるけどね…」


「なるほどなぁ。なんでここは可能性がそのなかでも低いんだ?」


「それはね。どちらかというと直下型地震の味に近かったからだね。ここはもう海溝型の地震だと決めつける地点だから。」


「じゃあ、ちゃっちゃっと始めるか」


 マコトたちが作業を始めると同時刻、地下下水道中から音楽が聞こえたため、そこにいる人に道を聞こうとして、ゲンマは地下下水道の中にいた。。


 先に答え合わせをしておくと、ロンドの街全体は大雨時や台風時の際に満潮になると、街全体が浸水する危険がある。そのため、街全体の地下に巨大な排水用の地下下水道が造り込まれている。

 ゲンマが聞いたのはその地下下水道のパイプを音が伝って、地下下水道中に響いたものだろう。

 その事をゲンマは何も知らない。


「すみませーん。音楽を鳴らしてた方はどこですか〜!」


 その音はパイプを伝い、近くのパイプの出口から不気味な音を響かせていたため、人々に怖がられていたことをゲンマは知らない。。


「誰もいませんね。ここは本当にどこでしょうか?僕は帰れるんですかね? 来た道を戻れば出口があるはずなので、戻りましょうか。」


 そして、同時刻のマコトたちは調査を既に終えていた。

 しかし、レイチェルの顔は暗く難しかった。


「どれも違う……。なんだ?何がおかしいんだ?深さはすべて共通だからそこは分かった。地表から約30メートル下。なのに、これは地震じゃない……のか?」


 既に手詰まりの状態であった。マコトも同様、全ての知識をフル活用してもレイチェル以上の答えは生まれなかった。


 そして、ゲンマは歩いた方向と序盤は同じ場所を歩いていた。しかし、最初の曲がり角を間違えてしまっていた。


 そして、歩きに歩いてゲンマは気づいた。これは元の道ではないことに。

 ゲンマは壁に背をかけて考える。すると背中の壁に違和感を感じる。


「なんだか柔らかいですね。それに少し色が違う?……気の所為ですかね……」


 ここでゲンマ、思いつく妙案。


「そうだっ!“マーキン”を使いましょう!!マコトさんに片方を渡してたのでした!」


 そう、マコトはゲンマが一人でどこかに行った際に探すことができるように“マーキン”の片割れを半ば強引に受け取っていたのだ。 


「愛しき姫よ、その護り手よ。その手綱を戻し、赤き糸を結べ!――“マーキン”」


 ゲンマの持っている剣の片割れとマコトの持っている剣の片割れが赤い線で繋がれる。


「よしっ!戻りましょう!」


「んわぁ!?なんだコレ!?」


 突如、地下から赤い線が繋がれる。マコトは腰に繋げていたゲンマ用のマーキンが反応しているのを見た。


 これは“マーキン”か。それにしてもなんであいつは地下にいるんだ?仕事中なはずだろ。それに地下下水道は危険だから入るなと言われていた。後でこっぴどく叱らなくては……。


「待ってくれ……これはどこから伸びている?」


 レイチェルは赤い線を指差しながら聞いてくる。


「あー……地下下水道はたしか……地下30メートルまで、ある……!」


「震源の深さと一致している。……それに今回の地震の奇妙なところは地震が移動しながらもプレートそのものを無視していること……」


「待てよ……それってつまり、“地震そのもの”が生きてるってことか?」


「いや、もしかするとこれは本当に地震ではなく、何か別の要因で揺れているのかもしれない……」


「そうなると……地下下水道の調査か?」


「違う……そこの君!ここいらで地下30メートル付近にある建物はあるか!?」


 レイチェルは機材を引いていた者を指しながら質問する。


「えーと……、確か海底ダンジョンが……それぐらいだった気がしますね」


「なぁレイチェル、これは調べる価値がありそうだぜ」


「そうだね。地下下水道と海底ダンジョンは調査の甲斐がありそうだ。」


「早速と言いたいところだが、今日は上がりにしようか、時間も遅いし、夜の海は危険だ」


「そうだね。今日はゆっくりと休もうか。」


 ロンド調査二日目終了。

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