第12話『あなたがしたいこと』
12話です。
今日は心情描写マシマシにしてみました。
お上がりよ!
1日目の調査を終えたマコトたちは、調査内容についてミヤビに報告をした後に集まっていた。二日目の調査を始めようとしてたメンバーに対して、マコトが提案をする。
「一つ、提案があるんだがいいか?」
「提案?何よ?もったいぶらないでいいなさい」
「もしかして……僕たちクビですか?」
「マコト……もしかして役に立て――」
「ーー違う違う。適材適所ってやつだ。このパーティーは各々得意分野が違うだろ?俺とレイチェルは地震の知識があるからそちらの調査にあたる。それでほかの二人にも違うアプローチで調査を進めてほしいと思ってな。」
「例えば?」
「ユウリは貴族の暮らしや商業の流れに詳しそうなところが見えた。それに俺たちが本件に呼ばれたミヤビさんと年齢が近い同性だ。だから手伝いをしてきてほしいんだ。」
「私が?」
「そうだ。マルコさん曰くミヤビさんは地震の一件でいつもの数倍の仕事量になっているらしい。彼女は領主になってから日が浅いし、楽をさせてやってほしい。それにユウリの視点からしか見えないこともあるだろ?」
「なるほどね。やっぱりよく見てるのね。……いいわ!私に任せなさい!」
もう一人、仕事を早く教えてくれと後ろでアピールしている奴がいる。
「僕は!?僕は!?」
「ゲンマは直接、外交品の荷下ろしや街の雰囲気の調査だ。お前のコミュニケーション能力の高さと発想力で何か見つけてきてほしい。」
「ふふふ……任せてください!僕が一人でこの一件を解決まで導いてあげましょう!!」
「待て、お前に一つだけ注意することがある」
「何ですか?」
「一人で行動はするな、もしくは人に道を案内してもらって動けよ。」
「善処します!」
「じゃあ、解散。俺とレイチェルは機材が来るまでは待機だが、お前らは明日から、朝すぐに迎えが来ると思うから気合入れてけよ。」
「了解です!」
「任せなさい!」
後日、朝早くにユウリが手伝いに行くのが分かった。俺は二度寝したが。ゲンマが何時にでたかは知らないが、俺たちよりも早く起きて出ていったことは確かそうだ。
そして、俺たちの作業は早くても昼からになるらしい。機材の搬入が遅れているようだ。
レイチェル曰く、「俺ちゃん特製の秘密道具だから、流石のマコトちゃんでも難しいかもね〜 。」らしい。
俺も地理や理科の知識は高校生レベルなので専門用語が出てきたら分からなくなるな。
エピタフ領領主の仕事の始まりは早く、明朝には既に仕事に取り掛かっている。到着が早い船だと4時あたりになるため、1時間以内には確認のために起床をしていなければならない。深夜帯の船の着工はないためこの時間は最速である。
彼女、ミヤビ・エピタフも成人し、領主になった3年前からそのような生活を日々、繰り返している。
「今日から手伝いに来ました。ユウリ・パウンドです。」
「ユウリちゃんよね。ティーチ君からいつも話を聞いてるわ。改めて、ミヤビ・エピタフよ。今日はよろしくね。喋り方はいつも通りで大丈夫よ。」
「……じゃあ、分かったわ!私が手伝ってあげる!」
ユウリは挨拶をした後にそのまま、ミヤビの執務を手伝った。
仕事内容は様々で、外国からの荷物の管理、王都へ送る資材のチェック、外国から王への返上品の最終検査、来賓の方への挨拶、アーム家と協力して、全国へと資材の運搬などである。
ミヤビはその仕事量を一日でかつ一人で行なっている。更にここは港町ロンド、リデフィー神聖王国の外国窓口なため人が来ない日がないのである。
そのため、マルコは大人数のパーティを以前から派遣しようとしていたのである。
「ちょっと休憩しよっかユウリちゃん。お昼休みだから。」
「やっと休憩だ〜。疲れた〜…何よあれ……仕事の量が多すぎでしょ……」
ユウリはソファーに倒れ込むように寝転んだ。
ユウリは『7貴族』であるが兄の影響で箱入り娘だったため、このような仕事は行ってこなかった。
更にギルドに入り浸っていた期間が長かったため、普通に体力が落ちているのである。
「お疲れ様ね。お昼からは持つ少しだけ人が増えるわよ。ふふふ。」
「……どうして、こんなに大変なのに笑ってられるのよ〜……」
「だって、今日はユウリちゃんがいるから。それになんだか妹ができたみたいで嬉しいわ。」
「ふふ…何故かお姉ちゃんが出来たわ。……そう言えば、ティーチ君って言ってたけどお兄ちーー…兄とは仲がいいの?」
「特段、仲がいいわけではないけど……年齢が近いし、よく合わされてたが近いな?ユウリちゃんはそういう子いなかった?」
「へーそうなのね。私は年齢が近い子がいなかったから、そういうのは分からないわ。」
「そうなのね。それもそうよね。私の弟は権能が特殊だからそういうのには参加してなかったものね。」
「弟がいるのね、名前は?」
「コウ・エピタフよ。会ったことはあるかしら?」
「……たぶん、ないわ!」
「そう。じゃあ、そろそろ仕事に戻りましょう。」
その後、ミヤビとユウリは貿易船の荷下ろしの様子を見に来ていた。そこはゲンマの職場の予定だった場所である。
「おかしいわね?ゲンマがいないわ
よ。」
「ゲンマ君ってあの、焼きそばの容器の子?聞いてみるわね。ちょっといいかしら?」
作業員の一人はミヤビに肩を触られドキッとしている。
「ミヤ……領主様!?こんなところに来て頂きありがとございます!おかげで頑張れます!」
「聞きたいのだけど、ゲンマ君って子は来てる?」
「ゲンマ?……ああ!確か冒険者の手伝いでした!そいつがどうしたんですか?」
「どうやらいないらしいのよ」
「来てないからですね。」
「嘘でしょ!あいつ!来てないの!!」
「来てないな。呼びに行ったやつが宿の人間に聞いたら先に出ていったらしい。」
「あいつ……マコト言われたこと忘れたの!?バカなんじゃない!?」
一方その頃、宿の店主に道を聞き、最初の道を右に行って左に曲がるを間違えて、別の地区にたどり着いていたバカはというと。
「おかしいですね……。言われたとおりに左に行って右に曲がったのに、一向にそれらしき現場にたどり着きませんね。宿の人が間違ってたのでしょうか?」
案の定、迷っていた。本人に迷っている自覚はないが、事実として現在進行系で逆方向に進んでいるのである。
ゲンマの方向音痴は自覚ある場合とない場合がある。
ある場合は誰かに先導してもらいながらも違う道に進んだ場合である。ない場合は道を聞いて自分で進んでいる場合になる。
現在の状態は後者になる。つまり彼は迷っている自覚は毛頭ないのである。
「おや?あちらから音楽が聞こえますね。あっちの人に聞いてみましょう!」
ゲンマは耳を頼りに音楽が聞こえる方向へと歩いた。
港町ロンドは3つの区分に分けられる。一つは交易区、貿易を行なっている海外のものが滞在する場所である。二つ目はゲンマが迷い込んだ興行区、娯楽が集まっており図書館などの公共施設も集まっている区間である。3つ目はロンドの住民が住まう居住区である。
「ここですかね。ここから音楽が聞こえます。おや?これは?地下下水道ですか――」
そして、ユウリとミヤビは荷下ろしの現場を後にして、執務室に戻ってきた。
今日だけでも様々な執務を行ったが、そのどれもがユウリにとっては貴重で重要な体験になったであろう。
定時になると仕事を停止するのはどの領主も共通のことである。それはギルド長のマルコや鉱山長のダンカンも同様である。
「ホントに疲れたわ……。何をする元気も出ない……。ここから動けない……」
「頑張ってユウリちゃん。後は宿まで戻るだけよ。」
「無理〜、体力ゼロ〜……。」
「もう、仕方ないわね、権能解放 “███”」
ミヤビの喉から出た声はこの世のものとは思えない美声だった。震える音が身体に響けば、響くほどに身体が元気になっていく気がした。
音楽が人に力を与えるとはいうが、ここまで効果があるとはとユウリは思った。
「…凄い…身体から力があふれる!もう一度働けるぐらい元気!っていうか歌、上手ね!」
「そんなことないわよ。昔は歌姫って言われていたけど、最近は歌えてないからもう下手っぴよ。」
「そんなことないわ!私が聞いた中では一番上手よ!」
「それはうれしいわね。でも、歌うのはおしまい。私は領主だからお仕事をしなきゃ」
「……それって本当?」
「どういうことかしら?」
「本当に歌いたくないって思ってるの?」
ユウリのまっすぐな発言にミヤビの口は開かなくなった。
「私はそうは思わないし、ミヤビさんには歌ってほしい。歌っている顔が一番楽しそうだったし。本当は領主じゃなくてーー」
ユウリが何かを言う前に白状するかのようにミヤビが遮った。その対応が自身の心を表していた。
「ーーそうよね。私も歌いたいと思っているわ。でもね、私の時間はみんなの時間で、私の仕事はこの街を守ることだから。じゃあ、ユウリちゃんは何で“冒険者”になったの?私が言うのも何だけど、ユウリちゃんは『7貴族』じゃない?領主は主権能を持っているティーチ君だし、他にもできることはいっぱいあったはずでしょ?」
ミヤビは心の奥底から言葉を引き出し続ける。
「主権能じゃない権能を持ってて、自由に冒険ができて、面白くて頼もしい仲間がいるのに、今のユウリちゃんはどうしてそんなに苦しそうな顔をしてるの?」
ユウリは自身の顔を触る。口は笑顔を作るように引きつり、まるで誰かに持ち上げられているようだ。
そんなことはない。自分は苦しくない、そう思っても心と肉体がそれを否定した。
ユウリ・パウンドは自分からは見えない返しのついた嘘という針が心に刺さっている状態である。幾度かその嘘が心に痛みを与えていたが、それが顕著に現れたのはマコトが巨人に飛び込んだときであろう。
周りが時間を与えてれる。仲間が猶予を与えてくれる。真心が許しを与えてくれる。
そのどれもが苦しかったのだ。どれもが優しすぎたのだ。何も持っていない自分に対して痛くなるほど辛かったのだ。
それでも仲間はそんな自分に更なる施しを与えてくることに辟易してしまう自分すら嫌いになってしまう。
無理をして気持ちを前に出しても、楽なのはその時だけで、後がもっと辛くなる。だけどもこの真実を喋る勇気は私には無い。世界が私を拒絶するかもしれない。
「私は……“冒険者”になりたかったわけじゃない……。
いや…私は、みんなが思っているような強くて優しい人間じゃない。マコトはいつも優しくしてくれるけどその善意に似合う力を持ってすらいない。
マコトたちの隣に立つ資格なんて私みたいな嘘つきには――」
「――そんなことないよ……あなたのパーティリーダーさんならそう言うでしょ。大丈夫。私は何人もの人を見てきた。だからね。
誰かのそばにいることに資格なんて要らないし、誰も隣に立つ人にそんな事を求めてないの。これだけは私は強く言える。
私は皆んなの前じゃなくて、隣に立っていたいからステージを降りて、領主になったの。歌劇団の歌姫から私を観てくれていた人は領主になった私を認めてくれた。
だから、あなたを見てくれている人の目はあなたの嘘を認めてくれるはずよ。その嘘を最初に言うのは私じゃなくて良いから……自分に優しくしてあげて」
「良いの?私は皆んなを騙して、マコトを命の危機にさらして、それでも一緒に冒険してもいいの?」
「いいのよ。嘘でも虚勢でもそれがあなたなら認めてくれる。それが冒険者のバーティでしょ?私がしてみたかった仕事だし、だから、私に夢を見せてほしいの。」
「夢?」
「そう。私の夢は『7貴族』の冒険者なの。それは弟に取られちゃったけどね。憧れも理想も期待もすべて込めた夢をあなたに託したいの。だめ?」
「……私で良かったら……あなたの夢になってもいい…かな…」
「やった!じゃあお友達になりましょ!私ねあなたのようなお友達が子どもの頃から欲しかったのよ。」
「……いいわよ。私からもお願いしてもいい?」
「もちろん!あなた、すごくかわいいわね。ティーチ君が熱中するわけね。」
「どういうことよ……それ。」
この日、ユウリの心の針が一つだけ抜けたかもしれない。その針が与えていた痛みが和らぐだろう。
しかし、針が抜けた後に、そこには穴が空いている。
俺たちがこの問題を解決するのはまだ当分先になるだろう。
権能名はぽわって測定で出てきた系統のものを自分で名付けるので、かなり名称にばらつきがあります。
こだわりのない人はそのまま愚直に名付けます。
レイチェルのように我が強い人間だと別名をつけたりします。
家によっては名付け役がいて、その人が名付けをしたりします。
『7貴族』の領主の権能である主権能は元から名前がついてます。




