第10話『エピタフ領へ』
10話ですね。
2桁ですよ。
「よく戻ったな!マコト!ユウリ!俺はお前らの帰りをずっと待ってたんだぜ!」
ギルドに戻るとマルコさんが早速、こちらに話しかけに来た。
「速達で聞いた。悪魔が出たんだってな……。俺が行かせちまったばかりに……お前らを死なせてしまったらと思うと……夜……夜しか眠れなかったぜ!」
それが正常なんだよ。俺たちはその後、言われたとおりに桜鉄の欠片を納品して依頼をクリアした。
その後、ゲンマのパーティ登録を行なった。
「……ゲンマ様ですね……ランクはCランクの冒険者。以前のパーティからは除籍されてますが何か問題が?」
「いやあ、それがですね。気づいたらパーティメンバーが全員、どこかに消えてしまってたんですよ。不思議ですよね。」
「ははは……はぁ…、これでパーティの加入登録は終了です。次の依頼なんですが、ギルド長から地質調査の護衛の依頼が来ています。詳細を聞きますか?」
「お願いします。」
「はい、場所はエピタフ領のロンドです。依頼主はこれまたエピタフ領の領主であるミヤビ・エピタフ様です。依頼内容ですが、以前から港町であるロンドが地震被害に悩まされており、外交や住民の日常が脅かされて非常に困っています。原因究明のためにギルドから専門家を派遣してほしいとこのことです。その際に専門家の護衛もそちらから出してほしいとのことです。」
「なるほど。その依頼は俺たちが受けても問題ないのですか?言っちゃなんですがDランク二人とCランク一人ですよ。」
「それに関してなんですが、依頼主のミヤビ・エピタフ様と年齢が近い人間の方がいいだろうというギルド長の判断ですので問題ないと思いますよ。それにあくまで行うのは、地質調査の護衛なので危険は少ないかと。」
「そうですか……。では受注と言うかたちでお願いします」
「ありがとうございます。出立日は――」
「すぐでもいいぜぇ!子猫ちゃんたちぃ!」
すると、異世界には似つかないファンキーなファンションをした男性が肩で風を切りながら歩いてきた。
「受付嬢さん、この方は?」
「ええと、この方は――」
「俺の名はレイチェル・クロン!しがない地質学者だぁ。よ・ろ・し・く・な」
「――です。」
「そうですか。レイチェルさんよろしくお願いします。」
俺は手を前に出して握手をしようとしたが、その手は無視をされてレイチェルはユウリの方へと歩く。
「君がパーティリーダーかい?俺をしっかり守ってくれよ〜!」
「……パーティリーダーは私じゃなくて、そっちのマコトです。」
ユウリが冷たい目でレイチェルと喋りながら俺を指差す。
「えっと!君かぁ!頼りなさそうだがよろしくぅ!」
「……はい、よろしくお願いします。」
俺は貼り付けたような笑顔をキープし続けた。
怒るな。まだ怒ったらダメだ。笑顔を続けろ。
「こちらも準備があるので出立は明日にしましょうレイチェルさん。」
「仕方ないな〜。海が俺を呼んでいるが、ここは焦らしてあげようか」
「俺は宿場に戻るけどお前らはどうする?」
「僕は魔法具の最終補充にいきます。依頼にあった物があるか見ておかないと。」
「……」
「ユウリ?」
「あ……、私は用事があるから先に戻っといて」
「分かっていると思うが、あまり遅くなるなよ。あと、ゲンマは人に道を案内してもらえよな!」
「子どもじゃないんだから分かってるわよ!」
「了解です。」
その後、俺は一人で宿に戻った。
次の任務はエピタフ領か。どんなところなんだろうな。外交やレイチェルが海とも言っていたし、外交貿易がさかんなんだろうな。海か。ここ数年は行っていないな。最後に行ったのはいつだったか。
ベットで横になりパーティメンバーの事を考える。
それにしてもユウリの様子がおかしかったな……。何か気にしていたし、恐らくだが俺の権能のことで何かあったんだろう。……聞いてみるか。
「リデフィー、いるか?」
「久しぶりに声をかけてきましたね。アラキマコト。何の用でしょうか?」
「この世界には必ず権能があるんだよな。」
「はい。私はこの世界の人間すべてに権能を授けましたね。それがどうしました?」
「俺はユウリの権能である“高速化”を“模倣”したんだが、失敗した。原因はわかるか?」
「そうですね。“模倣”が失敗する要因はいくつか心当たりがありますが、一番可能性が高いのはユウリという人間があなたに嘘をついている可能性ですかね。」
「やっぱりそうか。偽名や条件違いなどいろいろ考えたが、『嘘』をつかれているのは確かだろうな。」
「どうするのですか?あなたはパーティリーダーで、ユウリという人間はパーティメンバーです。そのような人間をとどめておくのですか?」
「……まだ確定したわけでもないし、人間誰でも何かしらの原因で『嘘』をつきたくなるだろ。あいつが言ってくれるを待つしかないさ……」
「待つのですか。私だったら待てずに私の力を使いますがね。それで喋ってもらいます。」
「そういうのはやめろよな。……もちろん。なあなあにするわけにはいかないさ。それでも時間をかけてでも、ユウリから言ってもらうことに意味があると思う。俺は信じたいから……」
「そうですか。ならば自白などは必要ないですね。これは私の胸に秘めておきますね。」
「そういうことだ。相談に乗ってくれてありがとうなリデフィー。」
「いえいえ……また呼んでください。」
翌日、馬車を取って以前のように王都デフィーを出た。アーム領の道に比べてかなり舗装されていて走り心地はかなり良かった。ユウリも前よりは姿勢も態度もマシだと思う。距離はアーム領の方が短いが道の影響もあってか、速度はこちらのほうが速かった。
街道をひたすら走り、5時間半ぐらい走っていると磯臭い匂いがしてきた。暑さが増しているのも感じた。
ユウリが大型犬のように窓から外を覗いている。
「あなたたち海よ!」
後ろから窓を覗き込むように見る。一面、大海原だ。
「久しぶりに見たな。これはビーチか。」
「そうよ。時間があったらみんなで遊びましょう!」
「いいですね!これが海ですか!僕も海は初めてなんですよ!!何度か行こうとしましたが何故か着けなくて」
「俺ちゃんは!?俺ちゃんも一緒に行っていいよね。」
「……(×3)」
「もう!なんか言ってよ〜!」
馬車の中が騒々しいが、いい傾向だろう。磯臭いそのまま、俺たちはエピタフ領へと入った。




