第9話『アーム領後日談』
第9話です。
アーム領編はこれにておしまいです。
その後の話だが、悪魔の出現と巨人対戦によって崩落したダンジョン内は一時閉鎖となった。
その被害は冒険者だけではなく産業や工業などに大きな打撃を与えた。
しかし、このダンジョンが一つの稼ぎ口の彼らは、日夜改修作業を繰り返している。
まるでこの街全体が、酒場の諍い程度に争いなど気にせずに、復興を急いでいるようにも見えた。
俺たちはと言うと、まず俺は悪魔の攻撃を受けて、肩と腕と肋骨が折れていた。
ゲンマは悪魔に殴られた際に壁に背中を打ち付けたが当たりどころがよく、全治3日で回復したらしい。
ユウリに怪我がなくて、本当に良かったと思っているが、どこかよそよそしいような気もする。
「ほんと良かったわ。あんたたちが生きてて。(全治0日)」
「それにしてもよく倒せましたね。あんな化け物。僕なんか顔面を思いっきり殴られましたよ。(全治3日)」
「運が良かっだけさ。それにゲンマが魔法具を残してくれていたから討伐までいけただろう。(全治7週間)」
「怪我もギルド専属の医師がやってきてくれるらしいから。その日までの辛抱ね。」
ギルド専属の医師?ここにも医療機関があったが専用の権能持ちがいるのか?
「マコトさんとユウリさんはこの後はどうするんですか?祝勝会には出るのですか?」
「祝勝会?そんな話あったか?」
「どうも、あんたが寝ている間に決まったらしいわ。ダンカンがダンジョンは壊れたが悪魔を倒した!宴の準備をしておけ!ってね。起きたらやるって言ってたわ。」
「そうか。あの酒飲み連中と飲むのか……。」
「お二人ともお酒は飲めないのですか?」
「俺ら二人とも未成年だからな。」
「ええ!2人とももう少し年齢を取ってると思いましたよ。」
「それ!どういう意味よ!」
「いやあ、マコトさんは僕に比べるとすごくオトナびているじゃないですか。」
「私は!?」
「ハハ……そういうゲンマの年齢はいくつなんだ?」
「僕ですか?24歳ですよ。今年で25です。」
「ゲンマさんだったわ……」
「ゲンマさん、生意気言ってごめんなさい……」
「いいんですよ。今までどおりに接してくれれば――」
「そう、じゃあゲンマでいいわね。」
「そうだな。お前は“さん”よりも呼び捨てが似合う男だ。」
「待ってくださいよ。今までどおりにとは言いましたけどそこまでします?」
数時間後、ギルド専属の医師と思わしき人物が訪ねてきた。
「どうも〜。君が患者か?元気そうで何よりやわ。どう見てもケガしてんのにな!」
トークが止まらない人だな。ずっと一人でしゃべっているぞ。服装はというとこれはチャンパオか?中華風の服装だがそういうファッションもあるのか?髪は黒髪で胡散臭さもある。
「それで!?どれや?ああ、これは折れてんな。俺な見てわかんねん。どれ!俺がチョチョイのチョイで楽にしてやるわ。」
そういうと、俺の胸元に手を当ててくる。折れた骨に痛みが来る。
「ッ――!」
「痛いやろな〜。ちょっとの我慢やで触れへんと治せへんねん。権能解放“治癒促進”」
すると身体の血流が速くなるのを感じた。身体が熱くなる。それに少しだけむず痒いというかなんというか。とにかく身体に違和感があるのを感じた。
「今、お兄ちゃんの身体の中は倍近い速度で治ってんねん。身体も痒いやろ?皮膚が入れ替わってんねん。それで全治7週間といったところやから。後2分も経てばくっついて終わりちゃうか?」
2分間、患部に触れられていたが徐々に痛みが引いていくのを感じた。それに身体の骨がくっつく感覚が分かる。
「凄い……。痛みがなくなった。それにくっついたのか?もう治ったのか……。」
「はい、これで終いや。礼はマルコのおっさんに言っときや。手術料もそっちから払ってもらってるし……ほなおおきにな。」
そのまま名前も言わずに去っていった。もう動いてもいいのか?俺は布団から這い出た。
「もう終わったんですか?早いですね流石に。うわさに聞くだけはありますよ。」
部屋を出るとゲンマとユウリが待ち構えていた。
「コウ・エピタフ。生まれも育ちもエピタフ領のロンド。得意なのは権能“治癒促進”による回復。ランクはBランクだってよ。もう回復したか?マコト」
「ダンカンさん!お見舞いに来てくれたんですか?」
「それもあるがよ。お前が治ったってことは宴会に出れるってことだよな?逃げられる前に捕まえに来た」
「アハ、もう逃げられませんねマコトさん。」
「がっしりと捕まえられたわね。」
どうやら二人も捕まっているようだ。腰に思いっきり縄が括られている。
「よっしゃ!お前たち!今日は早いが飲むぞ!!ガハハハ!!」
「おおぉぉ!!!」
その宴会の主役は俺たちらしいが。酒を飲んだのはゲンマだけだった。その宴会は壮絶で負傷者も多数出て、更には吐くものまでいる始末。ダンカンさんも酒に飲まれてゲンマやその他大勢とプロレスを始めていた。
俺はそんな宴会からしれっと抜け出して、酒場のラウンジでゆっくりとしていた。
「ほんと、こういう場所は疲れるわね。」
「そうだな。正直言って俺もこういう宴会は苦手だ。」
「そうだと思ったわ。あれでしょ。ワイワイ!テンションを上げて!じゃなくて、しんみりとお話ししたい感じでしょ?」
「正解だ。俺はそっちのほうが得意だな。こうやって涼しい縁側で誰かと話すのはいいな。」
「ほんとね。ここは風が気持ちいい。」
ユウリの茶色い髪が風に揺れる。
「明日になったら王都の方に戻ろうか。依頼の内容は全部達成しているしな。」
「そうね。私もギルドが恋しくなってきたし。帰りましょう。」
「ああ、そうだな。今日はもう寝ようか。お休みユウリ。」
「お休み、マコト。」
俺たちはそのまま宿場に向かい、その日を終えた。
翌日、出立のときがやってきた。お見送りにはダンカンさんやその他大勢の人が来てくれた。
そこにはゲンマの顔はなかった。
「もう行っちまうのか?まだ飲み足りねえだろ?マコト、ユウリ?」
「いえ、俺たちも任務で来ていますので、そろそろマルコさんも心配しますから」
「それもそうだな。ほれっお土産だ。マルコにでも渡してやんな。」
そういうとダンカンさんは一升瓶をこっちに渡してきた。
「これは?」
「ここの地酒だ。今は乾季だが雨季になると渓谷が大河になるんだ。その水ではないがこの辺の水はうまくてな!そいつのうまいぞ!いつか飲める年齢になったらまた来い。うまい酒をたらふく飲ませてやるよ。」
「ありがとうございます。今までありがとうございました。」
「気にすんなって、じゃあな!お前ら!」
「じゃあ帰ろうか。ユウリ」
「ええ、行きましょう。」
「お~い!待ってくださいよ!!なんで皆さん北門にいないんですか!探しましたよ!」
「ゲンマ!ここが北門だぞ……。」
「えっ……じゃあ僕がいたのは」
「南門とか西門なんじゃないの……」
「……そんなことよりも僕を置いていくなんて酷いじゃないですか!」
「えっと……どういうことだ」
「僕も一緒に旅に出ますと言っているんです!ちょうど僕は何故かパーティー登録が切れてたので冒険に出れなかったんですよ。」
「そういうことなら……ユウリ?いいか?」
「いいわよ。マコトさえよければ」
「ほんとですか!やったあ!ありがとうございます!これから魔法使いゲンマ!このパーティーにお世話になります!」
俺たち三人はアーム領を後にした。この先どんな冒険が待っているかは俺たちは知らない。
それでもより良いものになることは想像に難くなかった。
関西弁のキャラを初めて書いた気もする。
次の章からは1日1話投稿になると思います。




