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白と黒の特異点〜互いの家族を殺した2人が出会うまで〜  作者: 福岡へむ
第五章 革命の光
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60 残骸(白)

・・・と言う事だ。」


 バルガムは己の知る全てをヴァルスへ話した。そしてそのまま続ける。


「お前が父上の目的である『特異点』である事を父上に知らられば、兄弟たちはほぼ間違いなく始末されてしまうだろう。だから…父上に知られる前にお前の事を殺さなくてはならない。」


 そう言ってバルガムは再び構える。それを見てヴァルスも右手を構える。


「事情は分かりました。ですが、俺も簡単にやられるわけにはいかない。貴方を倒し、宰相も倒す、それが俺に与えられた役目だから。」


「もはや許しは請わない。愚かで無能な兄を恨みながら死んでいってくれ!」


 その瞬間、2人は同時にスタートを切った。


ドガァアン!!


 互いの右拳がぶつかり、鈍い音を響かせる。しかしその軍配はヴァルスに上がる。


「はぁあ!!」


「ぐぅ!!この力!!やはり力属性も使えるのだな!!」


 弾き飛ばされて隙を晒したバルガムの懐をヴァルスが取った。そして右手の人差し指へ波動を込め、貫手を放つ。


「それはやらせんぞ!!」


「!?」


 ヴァルスの貫手はスレスレのところでバルガムに掴まれた。その瞬間、ヴァルスの右手が悲鳴を上げる。


「ぐぅ!!また!」


「この奇妙な右手から潰させてもらおう!!はぁあ!!」


 バルガムが再び関節技を仕掛ける。ヴァルスの右手首を捻り上げ、破壊しようと試みる。激痛で顔を歪めるヴァルスだが、咄嗟に左足を跳ね上げた。しかし、バルガムは右足と右腕で容易にガードする。


「お前の攻撃は見えている!!ふんっ!!」


「ぐぅあああ!!」


 あたりに鈍い音が響き渡り、ヴァルスの右手首の関節が外された。あまりの激痛に膝をつくヴァルスだが、バルガムは追撃を加える。


「ふんっ!」


「カッ!!」


 膝をついて下を向いたヴァルスの顎を思い切り蹴り上げた。まともに食らったヴァルスは1メートルほど吹き飛ばされ、そのまま大の字で地面に倒れた。それでもバルガムの追撃は止まらない。意識も絶え絶えで、無防備を晒したヴァルスの鳩尾目掛けて、全体重を乗せた拳を叩き込んだ。


「ゴフッ!!」


 ヴァルスは倒れたまま激しく吐血する。そしてヴァルスの目が虚となり、そのまま動かなくなった。


「…終わりだ、弟よ…」


 血に濡れるバルガムの顔からは涙も同時に流れ落ちる。力なく倒れるヴァルス()の顔を見て決意を決めたバルガムは再び拳を振り上げた。


「ふんっ」


「!!ブフゥウ!!」


 その瞬間、ヴァルスが口から血を霧状に吐き出した。それは最後のトドメのために油断していたバルガムの顔に直撃する。


「なに!?しかし、死ねぇ!!」


「はぁ!」


 目が見えない状態でも拳を振り下ろしたバルガムだが、ヴァルスは地面を転がって回避した。そして即座に立ち上がり、バルガムへ突進する。


「身体の丈夫さが俺の取り柄なんですよぉ!!」


「チッ!!」


 一瞬反応が遅れたバルガムは再び懐を取られる。しかしヴァルスは両腕がまともに機能しない。それを見たバルガムが笑みを見せる。


「ふん!その腕では何もできまい!!また足で攻撃…」


「やぁあ!!」


 その瞬間、ヴァルスは全身に力を漲らせた。そして少ししゃがんだ状態から思い切り()を突き上げた。


「何!?ぐっ!!」


 ヴァルスの頭突きがバルガムの額を捉える。防御するのが遅れたバルガムはまともにそれを食らい、後ろによろめく。


「ぐぅ…」


「まだまだぁ!」


 ヴァルスは怯んだバルガムへ蹴りを放つ。その蹴りはバルガムの脇腹に直撃した。


「ガハッ!!」


「これも食らえ!!」


 次の瞬間、バルガムの脇腹を捉えた左足から電撃が放たれる。


「ぐぁあ!!」


 蹴り飛ばされながら電撃を食らい、バルガムは遠くへ吹き飛んだ。


「はぁはぁ…ゴフッ!」


 ヴァルスは膝に手を突き、吐血する。先ほどのバルガムからの攻撃により、かなりのダメージを受けていたのだ。


「…はぁはぁ…あの人は…」


 ヴァルスが見つめる先には、満身創痍で立ち上がるバルガムがいた。


「ふぅ…不意の毒霧に、頭突き、そして蹴りに電撃か…素晴らしい連続攻撃だ…ゴフッ!…はぁはぁ…だが、この程度で俺は死なんぞ!!」


 そう強がっているバルガムは脇腹を抑えながら構える。それを見てヴァルスも立ち上がって構えた。


「互いに…あと一撃ですね…」


「…そうだな…だが、俺は負けない。俺を待ってくれている兄弟たちの為に…お前に勝つ!!そして証明するのだ!!『特異点(最高傑作)』など眉唾だと!弟たち(お前たち)は失敗作ではないと、そう言ってやるのだ!!それが兄としての俺の役目なのだ!!」


 その瞬間、バルガムは懐から煙玉を抜いた。そして2人の間に投げ付け、辺りを煙で包む。


「クッ!!」


(視界を塞がれた!!おそらくあの人の特質は視力、この中でもある程度俺の姿が見えているはず!!ならば、一度攻撃を受けてのカウンターしかない!!)


 そうしてヴァルスは防御力を高める。しかしそのタイミングで地面にとある物が転がって来る。


「これは!手榴弾か!!」


 気付いたヴァルスは咄嗟に後ろに回避した。


「掴んだぞ。」


「っ!?」


 しかしそれを読まれていた事でヴァルスは背後にいたバルガムに再び右腕を掴まれてしまった。さらに、先ほど回避に力を使った事で防御力は手薄そのもの、咄嗟に防御しようとするも間に合わない。


「ふんっ!!」


「グゥウ!!!」


 ヴァルスの右腕は下向きに捻り下され、明後日の方向へ曲がる。しかしヴァルスの目は死んでいない。


「ならば!!」


 ヴァルスは脱臼した左腕を無理矢理に肩で動かした。それはバルガムの腕に当たって、そのまま掴んだ。そして電撃を発動させる。


「ぐぅっ!!」


 バルガムは苦痛に顔を歪める。しかしバルガムの目も死んでいない。


「こんのぉ!!」


 バルガムは袖に隠し持っていた六角を握りしめ、ヴァルスの腹に突き刺した。


「うぅう!!でも、負けない!!」


 ヴァルスは腹を穿たれたまま左腕の出力を高める。それと同時にバルガムも右手に力を込め、六角を深く突き刺す。


「うぉおお!!!」


「はぁあああ!!」


 2人にもはや小細工はない、どちらが先に倒れるかという持久戦となった。己に残った全ての力を出し切る2人の咆哮が周囲に響き渡り、激しい波動のぶつかり合いが交錯した。



 数秒後、決着が訪れる。


「カハッ!」


 電撃により全身の力を失ったバルガムがその場に倒れる。


「はぁはぁ…ようやく…」


「……ぐぅ……ま…だ…まだ……」


 地に伏せるバルガムは最後の力を振り絞りヴァルスの足首に噛み付いた。しかし、力が抜けているバルガムの噛みつきはヴァルスには全く効かなかった。


「…終わりです…貴方の負けだ。」


「…ち…くしょう……お…おれは……」


 他に伏せたまま涙を流すバルガムを、ヴァルスも複雑な気持ちで見ていた。




ーーイズカンとニールズーー


 全てを聞き終えたイズカンは激昂する。


「テメェ…やはり救いようのないクズだな。ここで引導を渡してやる。」


「雑魚が、いきがるなよ。貴様如きにこの私は殺せん。」


 2人は再び殺気を爆発させる。そして先に動いたのはニールズだ。先ほどのナイフを再び投げ付ける。


「ふんっ!」


 しかしイズカンも容易にそのナイフを弾き返した。


「俺の能力はな、弾き返されれば手元に戻す事しか出来ねぇんだよぉ!」


 そう言って距離を詰める。ニールズは迎撃すべく、剣を抜く。そして2人の激しい斬り合いが始まった。しかし先ほどまでと違いイズカンが押している。


「うぉらぁ!!」


「チッ!」


 ニールズの身体から鮮血が舞う。しかし、どれも擦り傷で致命傷には至らない。


「おらおらぁ!どうした!!そんなモンか!!」


「…な、舐めるなよぉ!下民!!」



 キィイイイイン!!



 その瞬間、2人の周囲に超音波が鳴り響く。


「グワァ!!」


 急な攻撃にイズカンは耳を塞ぐ。それを見てニールズはニヤリと笑う。何故なら超音波を出したのはニールズだからだ。ニールズの能力は受けた攻撃の模倣。先ほどのマレンの攻撃を遠くで受けている(耳栓はしていた)事から模倣の条件は満たしていた。それをここまで隠しきり、この最高のタイミングで使ったのだ。


「ふっ!愚かな。隙だらけだ!」


 致命的な隙を晒したイズカンに対してニールズの剣が迫る。


(クソッ!避けられねぇ!!)



ドスッ!!



「ゴフッ!!」


 ニールズの剣は無常にもイズカンの鳩尾を貫いた。それはイズカンの身体を貫通し、完全な致命傷となった。


「終わりだ、下民。せいぜいあの世で……ん?」


 勝利を確信したニールズの目に映ったのは、腹に剣を生やしながらもニールズの剣と持ち手を強く掴んだイズカンだった。


「はぁはぁ…ゴフッ!!……掴んだぞ!!」


 イズカンの目は未だ死んでおらず、ニールズを強く睨みつける。しかし、イズカンの傷は明らかに致命傷であり、地面には既に大量の血が流れ落ち、イズカンの命は時間の問題であった。


「ふっ、最期の悪あがきか。くだらんな、ふんっ!!」


 ニールズは手に力を込め、イズカンに刺さった剣を捻った。


「グゥッ!!ガハッ!!」


 それにより更に腹を抉られたイズカンは激痛に顔を歪め、倒れそうになるが何とかギリギリで踏み止まった。


「はっはっは!!無様だな!!さっさとくだばって楽に……あん?」


 目の前の瀕死の男を見て高笑いするニールズだったが、その違和感に気付く。自分の腕を掴んでいる右手とは別に、イズカンの左手はポケットに入れられていた。


「…貴様、何の真似だ?」


「…へっ、こうなっちまったからには仕方ねぇよな…」


 そう言ってイズカンは笑みを浮かべる。それを見たニールズは少しだけ恐怖した。


「仕方ないだと……ま、まさか貴様!!」


 ニールズはイズカンの企みに気付いた。その瞬間、イズカンの首元から黒いネックレスが見える。


革命派(俺たち)はな…全員コイツを携帯してるんだ…ゴフッ!!…敵に情報を渡さないため…そして、1人でも敵を道連れにするためになぁ!!!」


「クソッ!!放せ!!」


 ニールズは焦りながら逃げようとするが、イズカンに掴まれている事で逃げられない。


「本当は華麗にぶっ殺してやりたかったが…まぁしょうがねぇよな…一緒に地獄へ行こうかぁ!!」


 次の瞬間、イズカンは左手のスイッチを起動させた。


「クソガァあ!!!この私が、こんなところでぇ!!!貴様のような雑魚にぃ!!ふざけるなぁ!!」


「地獄でほざいてろ………すまねぇな、団長…後は任せた………菖蒲…待たせてすまなかった……今からそっちへ…………」


「チクショォ!!」


 その瞬間、イズカンの首にぶら下げたネックレスが爆発した。



ドガァアアン!!!!



 爆風が2人を飲み込み、土煙が舞い上がる。その衝撃波により周囲の建物のガラスは割れ、地面には1メートルほどの大きさのクレーターができていた。数分後、土煙が無くなった後にそこに残っていたのは、残骸となった2人の肉片だけだった。

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