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白と黒の特異点〜互いの家族を殺した2人が出会うまで〜  作者: 福岡へむ
第五章 革命の光
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61 弟(白)

ドガァアアン!!


「何だ今のは!!爆発か!?」


 戦闘を終えたヴァルスはその爆音の方を見た。その周辺では煙が上がっており、ただならぬ気配を感じた。


「あっちは確か、イズカンさんが……まさか!!」


「おにいちゃん!!」


 最悪の事態を考えたヴァルスが走り出そうとした瞬間、少し遠くから声が聞こえた。


「っ!?お前は!!」


「…ま…マレン…」


「…おにいちゃん…おにいちゃん!!!」


 そこに立っていたのはマレンだった。マレンはヴァルスの足元で倒れたバルガムを発見し、驚愕していた。ギリギリで意識を繋いでいたバルガムもマレンと目が合い、動き出そうとするが立ち上がることが出来ない。


「…く…そ……」


「…よくもおにいちゃんを……」


 そう言って殺気を剥き出しにするマレンに、ヴァルスも臨戦態勢を取った。しかしその瞬間、ヴァルスはマレンが背負っているモノに気付いた。


「リシェル!!」


 マレンに背負われていたのは意識を失ったリシェルだ。遠くからでは、生きているのか死んでいるのか分からない。パニックになったヴァルスが近寄ろうとした時、マレンがそれを制止する。


「っ!!動かないで!!そこから少しでも動いたらこの子を殺す!!」


 そう言ってマレンはリシェルを盾にして、首筋に刃物を押し当てた。


「…殺す…という事はまだ生きているんだな!!そうなんだな!!おい!!」


「…そう、この子はまだ生きている。でも、このまま生かすかどうかは貴方次第。」


 それを聞いたヴァルスは心の底から安心した。


「はぁ…よかった……それで?どうすればリシェルを解放してくれるんだ?」


「…交換条件。おにいちゃんをそのまま置いて2人でここから消えること。それだけでいい。」


 マレンも焦っていた。弱々しく倒れる兄を一刻も早く救うために2人を遠ざけたかったのだ。


「…なるほど、了解した。なら」


 二つ返事で了承したヴァルスだが、バルガムが異論を唱える。


「…ま…待て!マレン!!……コイツを生かして返したら……兄弟たちが殺されてしまう!!……俺の事はいい…だから、その女を人質にしてコイツを殺せ!!」


 地に伏したバルガムが力を振り絞ってそう言い放った。


「…おにいちゃん…」


 マレンはバルガムを心配そうに見つめる。


「…そこまで兄弟の事を…」


「やれ!マレン!!お兄ちゃんからの最期の命令だ!!何があってもこの男を殺すんだ!!」


 バルガムの魂の叫びは耳の良いマレンにも十分に聞こえている。

 マレンは少し下を向いて考えた後、顔を上げた。


「…無理だよ…おにいちゃん…おにいちゃんがいなかったら私…私………」


 そう告げるマレンの顔は涙で濡れていた。それを見たヴァルスは笑みを浮かべる。


「…妹はアンタの命が大事なんだってよ。」


「…マレン、お前……良いのか…この男のせいで兄弟たちが殺されても!!」


「いいわけない……でも……でも!!…私は…ずっと昔から迫害されてきた…辛くて痛くて苦しい時、おにいちゃんが助けてくれたから…だから頑張って生きようと思えた。おにいちゃんがいない世界なんていらない!!私にはおにいちゃんしかいないの!!だから!」


 そう言って再びマレンは泣き出した。


「マレン……ぐぅっ!!すまない!!無能な兄で本当にすまない!!俺が負けたせいで、お前を2度も泣かせてしまった!!もう2度と泣かせないと言ったのに!!」


 そしてバルガムも涙を流した。そんな2人を見てヴァルスも笑顔を見せる。


「…ここは互いに平和に行こうぜ、俺の事もアンタが喋らなければ暫くはバレないだろ?今のうちに兄弟を逃すなりすれば何とかなるって。行く当てが無いなら俺が《革命派》に取り次ぐからさ。なぁ、()()()。」


 ヴァルスからの提案にバルガムも涙を拭いながら答える。


「…ぐぅ……ヴァルス…すまない!感謝する!」


「一応俺の弟たちでもあるからね、無関係ってわけにはいかないからね。みんな助けよう。」


 ヴァルスはそう言ってバルガムを立ち上がらせ、肩を貸した。それを見てマレンも近付いてくる。


「…貴方、やっぱり私たちの…」


「ああ、そうらしい。まぁ、これからよろしくな(マレン)。」


 ヴァルスはそのまま右手を差し出した。


「……ん。」


 手を握るかと思いきや、関節の外された手首を見て、マレンがその部分を掴む。


「え。」


 ガコッ!!


 次の瞬間、マレンが力を加えると、ヴァルスの右手首が音を立てて元に戻った。


「うぉお…すげぇ、元に戻ってる…」


「…そのままじゃ手を握れないでしょ…よろしくね、()()()。」


 そうして2人は手を握った。


「それじゃあ、先ずはおにいちゃんを見せて。応急処置するから。」


「マレンはそんな事も出来るのか?」


「…一応、医師の免許を持ってる。それに私の能力を使えば色々なことが出来る。」


 そうしてマレンは様々な医術と能力を使ってバルガムを治療した。

 しばらくして施術が終了した。


「ふぅ…ありがとうマレン。だいぶ楽になったよ。もう自分で歩ける。」


 治療を終えて立ち上がったバルガムはマレンの頭を撫でた。


「…うん。でも、無理しちゃダメ。早く病院行こ。」


「ああ、でもその前に…」


 バルガムはヴァルスへ向き直る。


「ヴァルス、すまなかった。俺は兄弟たちを守るために、お前を殺そうとした。お前も紛れもない俺の弟の1人なのに…俺は皆の兄であり、皆を守る事が生きる意味だ、お前も含めてな。だから全員で助かる道を探す、お前も協力してくれ。頼む。」


「…もちろんだよ、兄さん。これからよろしく。」


 そうして2人は固い握手を交わした。すると、ヴァルスが思い出したかの様に話し始める。


「おっと、それよりもさっきの爆音だ。あれは多分イズカンさんと宰相のところ、行かなくちゃ。」


 しかし、バルガムがヴァルスの手を握って制止する。


「待て、俺たちの関係を父上に知られるわけにはいかない。だから、お前は父上に見つからない様にしてくれ。お前が生きている事がバレたらマズイ。」


「あ、そうだった。分かった、様子だけ見てくる。それと、リシェルの事を任せるよ。」


「ああ、将来の妹になるかもしれない子だからな。任せろ。」


「ちょっ、…はい、よろしくお願いします。」


 顔を赤くしたヴァルスは煙の上がっている方へ走って行った。


「ふんっ、あの様子じゃあ結婚もすぐだな。めでたい事だ、なぁマレン?」


「……」


 リシェルを背負ったマレンは何も言わずにヴァルスの走って行った方を見続けていた。


「どうしたマレン?…アッチばっかり見て何が……おい、まさか!!」


 バルガムはマレンの表情を見て何かを察した。


「…うん…」


「…そうか…これから俺たちはどうなるのかな。」


 マレンは知っていた。エコーロケーションによって、爆発した場所を見ていたからだ。そしてそこで何が起きたのか、誰が死んだのかを。

 全てを理解した2人はただ空を見上げるしかなかった。




 ヴァルスは少し走った後に煙の発生源に辿り着いた。


「すごい爆発だ…周辺の建物が壊されている。一体ここで何が…」


 そう言って物陰に隠れながら様子を伺いながら、煙が晴れるのを待つ。しばらくして煙が薄くなってくると、中心部の様子が見えてきた。


「あれは……血…それに焦げた肉片?…誰かが巻き込まれたのは間違いない…誰だ…誰がやられた………っ!?」


 煙が完全に晴れた後、ヴァルスは近くに落ちていた複数の服の切れ端を見つけた。それはヴァルスの覚えている限り、イズカンの物とニールズの物であった。


「これはイズカンさんの…そしてこれはアイツの…まさか…2人で自爆を…そんな…」


 全てを理解したヴァルスは周囲を見渡す。一縷の望みに賭けてイズカンが現れる事に期待したのだ。しかし、どれだけ待っても誰1人として現れる気配が無い。


「やっぱりそうか……イズカンさん…」


 ヴァルスはイズカンの服の切れ端を拾い、空を見上げた。


(残念です…貴方とは短い付き合いでしたが、俺を助けてくれた事は本当に感謝しています。天国で母さんと仲良く暮らしてくださいね。)



ゴゥウ!!!



「っ!?」


 ヴァルスが想いに耽っていた時、少し遠くから業火が立ち上った。その場所は先程、ヒューラが闘っていた場所とはかなり離れた場所だった。


「あれは…ヒューラさんか!!そう言えば色々なことがあってあの人の事を忘れていた。2人が闘っていた炎のドームが消えてる…また、別の敵と闘っているのか…行ってみるか…」


 ヴァルスは切れ端を握りしめたまま、業火の方向へ走っていった。

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