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白と黒の特異点〜互いの家族を殺した2人が出会うまで〜  作者: 福岡へむ
第五章 革命の光
115/122

56 分断(白)

 警報が鳴り響く第二軍の基地の中、ヴァルスとリシェルは裏口へ向かって走っていた。


「流石にコッチは人が少ないわね。」


「あぁ、極道が来ているのは東側だからな。コッチは手薄だ。」


 裏口は基地の中でも西側にあり、極道が襲撃してきた側とは反対側であるため、敵はいない。それ故に2人は容易に裏口へ到達出来た。


「ふぅ…裏口の守衛は10人程度…お姉様たち、大丈夫かしら?」


 2人は建物の影から裏口を覗いていた。


「あれぐらいなら大丈夫だろう。さっき連絡もしたし、そろそろ…」


「て、敵襲!!!敵襲!!」


 裏口を守っていた兵士の1人が突然大声で叫んだ。それを受けて周りにいた兵士たちも臨戦態勢を取った。



ゴゥウウ!!!



 しかし次の瞬間、裏口にいる兵士全員を巻き込むような大きさの巨大な炎が現れる。


「グハァア!!」


「ば、バケモノ!!」


 兵士たちはその巨大な炎になす術もなく飲み込まれた。その炎はヴァルスとリシェルの近くまで迫ってきていた。


「チッ!!リシェル!掴まれ!!」


「えっ!?ちょ、うわぁ!!」


 ヴァルスは咄嗟にリシェルを担ぎ上げて後ろに飛んだ。それでも炎は激しく燃え盛りながら2人の元まで向かってくる。


「クソッ!マズイ!!」


「ひっ!」


 ヴァルスはリシェルを庇うように前に立った。しかし、その炎は2人を飲み込む寸前で掻き消えた。ギリギリで被害を免れた2人はため息をつく。


「あ…危なかった…」


「ふぅ…怖かったわ…にしても何て火力よ。…見て、この辺の建物まで全部燃えてるわ。」


 リシェルが指差す方では炎に飲み込まれた裏口付近どころか、近くの建物にすら引火しており、今なお燃え盛っていた。2人が呆然としていると、焼けこげた裏口付近から複数の人影が出て来た。先頭を歩く女は右手に纏わせた炎を振り払いながら辺りを見渡す。


「…少しやり過ぎたかな。」


「やり過ぎだ、団長。こりゃあ…死体まで焼けこげてるぜ。兄弟やリシェルの嬢ちゃんが巻き込まれちまったらどうする気だ。」


「そうですよ、ヴァルスはともかくリシェルちゃんは絶対死にますよ。」


「この程度で死ぬほど2人はヤワではない。さて、先ずは2人と合流を…」


 それを見てヴァルスとリシェルは駆け寄っていく。


「ヒューラさん!イズカンさん!ナルキさん!!」


「お姉様!!」


「2人ともやはり来ていたな、予定通りだ。」


「よっ!ヴァルス、リシェルちゃん!元気だったか?」


「約束通り、『革命派』の精鋭を10人連れて来た。」


 そこには3人を含めて、かなりの実力者と思われる革命派の人間たちが控えていた。


「非常に頼もしいですね。」


「お姉様!!それよりも皆んなが!!」


 リシェルは皆んなを説得出来なかった事をヒューラに話す。それを受けてヒューラはリシェルの頭を撫でる。


「すまない、全員を救ってやることは出来ないだろう。しかし、その者たちは出来る限り生かすようにしよう。」


「…うん、ありがとうお姉様。」


「まぁ、大丈夫だろ。アイツらは思ったより強いだろうからそう簡単に死にはしないさ。」


 かつての同僚であるナルキはそう言ってリシェルを励ました。


「ヴァルス、目標の人物に関してはどうだ?」


 そしてヒューラは真面目な顔でヴァルスに質問した。


「すみません…末端である俺には何の情報も…」


「謝る必要はない、想定内だ。では、予定通りプランBで行く。私と副団長、内部に詳しいヴァルスとリシェルで内部に潜入し、目標を暗殺する。残りのメンバーはここで逃げ道を塞げ。ナルキ、お前はこの辺りの地形に詳しいハズだ、全体の指揮を頼む。」


《了解!》


 『革命派』のメンバーはその指示を受けて迅速に動き出した。


「それじゃあ2人とも、頑張ってな!」


「ええ、ナルキさんもお気を付けて。」


 ナルキも他のメンバーに続いて行ってしまった。



「さて、では我々も行こうか。2人とも、怪しい建物に関して案内を頼む。」


「はい!了解しました。」


「お姉様、私たち4人で大丈夫なの?相手も相当に強いんじゃ…」


「安心しろ、この国で私より強い人間は2()()だけだ。その2人がここにいる事は確実にあり得ないし、いた場合は即座に撤退する。現場での私の判断に従え、いいな?」


「分かったわ。」


「そんじゃ行こうぜ、俺も久々に頑張っちゃうからな。」


 そうして4人は内部へと侵入していった。




「な!敵か!?」


「グハ!」


 いくら人が少ないとはいえ所々には兵士が配備されている。先頭を進むヒューラがそれらを瞬殺しながら、目標の建物へ向かっていた。


「いやお姉様、いくら何でも強すぎでしょ。さっきの人、隊の中でもメチャクチャ強いって言われてる人だったのに…」


「この程度の事も出来ないようなら、私は団長になどになってはいない。ふんっ!」


「…グホォ!」


 ヒューラは走りながら遠目に見えた敵に対して炎の槍を適当に投げ付け、それが敵の心臓を貫いた。


「ふぅ…敵じゃなくて本当に良かった…」


 ヴァルスがヒューラの強さに安堵していると、少し遠くに巨大な建物が見えた。


「あれだな?」


「はい、アレが中央棟です。大切な会談などは基本的にアソコで行われます。この基地内で最も可能性が高いかと。」


「流石に現役の軍人に案内されると楽だな。さっさと…っ!?」




  キィィィィィイイイイイン!!





 その瞬間、頭を破壊する様な超高音が4人を襲う。


「グゥ!!何だこれは!!」


「頭が痛い!!」


「うぉおお、ヤッベェ!!」


 あまりの不快な音に対して、ヴァルスとリシェルとイズカンは耳を抑えて蹲った。そして3人が怯んだ瞬間、驚異的な速度で現れた男がリシェルの目の前で拳を振り上げていた。


「っ!?」


「死ね、裏切り者。」


 男の拳がリシェルに迫る中、ヴァルスとイズカンは反応が間に合わない。


「……舐めるな。」


「!?」


 リシェルの顔面の目の前で男の拳が止められた。リシェルの背後に立っていたヒューラが直前で腕を掴んで止めたのだ。


「…うぅ…お姉様…」


「ほう貴様、何故先ほどの超音波攻撃が効いていない?耳が悪いのか?」


 男はそう言って自分の耳に付けられた耳栓を取った。


「あの程度の音が攻撃とは片腹痛いな。目覚ましにちょうどいいくらいだ。はぁ!」


「うぉ!」


 ヒューラはそう言って男を片手で投げ飛ばした。しかし男は軽やかな身のこなしで着地した。


「貴様、ただ者では無いな?名乗ってみよ。」


「貴様らに名乗る名前など無い。」


 そう言ってヒューラは両手に炎を纏った。それを見て男は冷や汗を流す。


「この威圧感…その力…まさか『炎巫女(えんみこ)』のヒューラか!!…ふむ…お会いできて光栄だと言いたいところだが、我々の敵である貴様を野放しにしておく訳にはいかないようだな!」


 その瞬間、男は強烈な踏み込みでヒューラに襲いかかった。しかし、ヒューラ以外の3人はその速さに反応すら出来なかった。


(速い!!おそらくリミ姉のトップスピードと同等!)


 ヴァルスがそう考えている中、神経を研ぎ澄ましたヒューラにはギリギリで見えており、男の拳を再び掴んだ。


「ふん。」


「アッチィ!!」


 掴まれた男の拳は、ヒューラの手に纏われた炎で焼ける。男は咄嗟に離れようとするが、ヒューラの強靭な握力によって逃げる事が出来ない。


「貴様、自属性なのに何という力!!流石は『炎巫女』といったところか。」


「このまま腕ごと焼き切ってやる。」


「うぅ!!…はぁあ!!」


 男は咄嗟に体勢を低くして回し蹴りを放った。


「シュッ」


 ヒューラもギリギリでそれを回避したが、反動で腕が離れてしまった。男はバックステップで後ろに下がり、掴まれた腕を抑える。


「アチチ…」


「貴様のその速さ、聞き覚えがある。おそらく今の()()()()()だな?」


「…ふぅ…いかにも。私が東軍の将軍のオルバンだ。」


「やはりな、しかし貴様がここにいるという事は、近くにいるのだろう?護衛している相手が!」


 ヒューラはそう言ってオルバンの背後の建物の奥を指差した。


「さぁな。」


「図星か、だが良かった。ここで貴様ら全員を殺せるのだからな!」


 そう言いながらヒューラは思考を巡らせる。


(あの建物の奥の気配は3つ、そこそこ強いのが2つと弱いのが1つ。おそらくそのどれかが目標の人物だろう。この男が最初に出てくるという事は、おそらく『大将軍』はいない。皇帝独特の威圧感もない…来ているのは一体だれだ…)


「まぁいい…貴様では私に勝てない。背後にいるヤツを差し出せば、貴様の命は助けてやる。」


 ヒューラはオルバンにそう告げた。しかしそれを受けてオルバンは邪悪な笑みを浮かべる。


「確かに貴様は強い…私では正面から貴様を倒す事は出来ないだろう……しかし…貴様は間抜けだ!」


 次の瞬間、オルバンがその場から消えた。


「な!?」


 ヒューラですらその姿を見失ったが、オルバンはすぐに姿を現した。


「人質を3人も連れて来ているとは、何とも間抜けな女よ。」


「キャァ!!」


 オルバンが現れたのはリシェルの真後ろであり、リシェルは反応も出来ないまま背後から首を掴まれる。


「リーシェ!!」


「動くな!コイツの首を握り潰すぞ!」


「うぅ!!」


 ヒューラは咄嗟に駆け寄ろうとするが、オルバンはリシェルの首を強く締めた。それを見て3人さ混乱する。


「リシェル!!」


「クソが!!卑怯なヤツめ!!」


「リーシェを離せ!!」


 オルバンは笑いながらリシェルを前に出して脅迫を始める。


「そう言うワケにはいかん。コイツには役に立って…」


「やぁ!!」


 しかし次の瞬間、リシェルがスカートのポケットに指を入れると、リシェルの背中が爆発した。


「ぐうぉ!!」


 そして背後の男は爆炎に包まれる。そしてリシェルの首を掴んでいた手が離れ、3人はリシェルに駆け寄った。


「大丈夫か!?」


「ゴホッ!ゴホッ!…えぇ、少し背中が痛いけど大丈夫よ。」


 そう言ってリシェルが背中を指差すと、衣服の中に着込まれた防弾チョッキのようなモノが姿を現した。


「一回しか使えない手だけど、何とかなったわね。」


「お前そんなもの仕込んでたのか…」


「えぇ、東側(アッチ)にいる時にお姉ちゃん(とある人)教えてもらったの。」


「なるほど……それで、アイツは…」


 そうして辺りを見渡すと、少し遠くにオルバンが立っていた。煙から出てきたオルバンは額から少し出血しており、衣服も少し破れていたが、全体的にダメージは少なかった。


「くだらん罠を使いよって…貴様らは絶対に許さん。」


 そしてオルバンが再び構える。それを見てヒューラは決断する。


「3人ともよく聞け、この男はおそらく東軍(ここにいる敵)の中で1番強い。そしてお前たちを守りながら勝てる相手ではない。私がヤツの相手をする、だから後ろにいる3人を頼んだ!」


 そう言ってヒューラが右手を前に出すと、再び巨大な炎が射出される。


「ふんっ!」


 オルバンは軽くそれを回避した。


「この程度の速さで……っ!?」


 しかし今度は回避した所にヒューラが迫っていた。ヒューラは炎の中に身を隠し、突然現れたのだ。


「はぁあ!!」


「うぉおお!!」


 そしてヒューラは渾身のアッパーを放ち、ギリギリで反応したオルバンがクロスさせた両腕に命中した。しかし、ヒューラのパンチの威力を消すことが出来ずに、少し遠くへ飛ばされる。


「…やるな、女。」


「ふぅ………」


 距離が出来たところで、ヒューラは目を瞑って両手を合わせる。


「はっ!!」


 そして両手を一気に広げると、2人を囲むように炎がドーム状に包み込んだ。閉じ込められたオルバンは不敵に笑う。


「分断か…何としても()()()()を暗殺したいようだな…しかしこれほどの能力を使ってしまって大丈夫か?先ほどのも含めて相当消耗しているのではないか?」


「ようやく身体が温まってきたところだ。さて、さっさと決着をつけよう。仲間たちが待っている。」


「…そうだな。では参る!!」


 炎のドームの中で2人の激しい戦いが始まった。




 外に残されたリシェルは中の様子を心配していた。


「お姉様、大丈夫かしら?」


「あの人なら大丈夫だろう。ですよね、イズカンさん。」


「あぁ、俺たちの団長を舐めんなよ。それよりも俺たちにもやらなきゃいけねぇ事があるな。気合い入れろよ2人とも。」


 イズカンがそう言って建物の奥を指差す。ヴァルスとリシェルも臨戦態勢で構える。すると、奥から3人の男女が現れた。


「あのクソアマは炎のドーム(そこの中)ですか…これで脱出も容易になりましたね。」


「そうですね父上、将軍閣下があの女を足止めしている間に急いで脱出しましょう。」


「……」


 それを見てヴァルスは思考を巡らせる。


(あの態度と服装…後ろにいる男がおそらく件の…。護衛は2人、何とかなるか…)


 ヴァルスが剣を抜いて構えようとした瞬間、隣にいたイズカンが叫ぶ。


「ニィールズ!!キサマァーー!!」


 そして次の瞬間、目を迸らせたイズカンが3人に襲いかかる。ヴァルスとリシェルは咄嗟の出来事で動けなかった。


「え!?」


「イズカンさん!!」


「何ですか、貴方は。」


「父上、ここは俺たちが。マレン。」


「…うん。」


 高身長の男がそう言うと、女が手を前に出した。


ドンッ!!!


 そして女の手から巨大な音と共に衝撃波が放たれる。


「グゥッ!」


 イズカンはそれをまともに受け、足が止まる。


「迂闊過ぎるね。はぁ!!」


 怯んだイズカンの目の前には高身長の男が立っており、無防備なイズカンへ貫手を放った。


「危ない!!」


 しかし、ギリギリで間に割り込んだヴァルスがその手を掴み取った。


「おっ、やるな。だがしかし…うぅ!?」


「ふんっ!」


 ヴァルスはそのまま電撃を発動させ、男の身体を痺れさせる。しかし男は一瞬だけ白目を剥いたが、すぐに正気を取り戻した。


「や…やるな。自属性でその身のこなし、相当に鍛えられている。…マレン!!」


「…」


 その掛け声と共に再び女から衝撃波が放たれる。3人はそれをまともに食らう。


「ぐぅう!!」


「チィ!!」


 ヴァルスとイズカンは耳を抑えて膝をつく。しかし、男は何事もなかったかのようにしている。


「隙あり!!」


 そして男から再びの貫手が放たれる。


「うぉおお!!はぁ!」


 ヴァルスはイズカンを庇うようにして両腕をクロスさせてガードする。


「なに!?」


 男の貫手はヴァルスの腕を貫通する事なく、皮膚を少し削っただけで止まった。


「その硬さ…まさか!?」


「兄弟!!ソイツは任せるぜ!!うぉらああ!!」


 立ち上がったイズカンは男を無視して再び突進する。


「マズイ!!マレン!!」


「…来ないで!!」


 女がイズカンに向かって再び手を構える。しかし次の瞬間、女の背後に気配が現れる。


「私を無視しないでもらえるかしら!!」


「!?」


 女の背後を取っていたリシェルは不意をついてナイフを振るった。しかし、女も超反応を見せてギリギリで回避する。


「やるじゃねぇか、カオリーの娘っ子!!ソイツを頼むぜ!!」


 それによってイズカンは歩みを止める事なく、奥にいた男の元へと辿り着いた。


「貴様…」


「よう、クソ野郎。テメェを殺しに来たぜ。」


「頭が高いぞチンピラ。私を誰だと思っている。」


「あぁん?皇帝(ゴミ)に従う宰相(ゴミ)だろうが。臭え息を吐くんじゃねぇよ。この星が可哀想だ。」


「貴様ぁ!!私だけでなく、陛下の事をゴミ呼ばわりしたなぁ!!絶対に許さんぞ!!貴様は私が直々に処刑してやる!!」


 皇帝の事になって態度を一変させた宰相は腰に下げた細い剣を抜いた。イズカンも懐からナイフを抜く。


「それはコッチのセリフだこらぁ!!ぶっ殺す!!」


 そうして2人は激しい戦闘を始めた。



「父上!!今すぐ加勢に…っ!?」


 高身長の男が宰相の元へ行こうとしたところで、ヴァルスは再び腕を掴む。


「貴方の相手は俺だ。ふんっ!」


 再びヴァルスの能力で、男は電流が流れる。


「ぐぅう!!離れろ!!」


 男は器用にヴァルスの手から逃れ、少し距離を取った。


「…どけ、私は父上の元へ行かねばならない。」


「断る。俺はあの人に貴方の相手を任された。だから、ここで貴方を倒す!!」


「く…仕方ない。では、君を殺してからあの男を殺すとしよう。」


 2人は互いに睨み合いながら構えた。しかし、その横顔は何故か似ているような雰囲気を感じさせた。




「あっちも始まりそうね。私たちもやりましょうか。」


「……」


 リシェルの言葉を無視する女に対してリシェルはナイフを構える。


「何とか言いなさいよ。」


「…不思議…どう見ても貴女はこの中で1番弱い。なのに何で私と戦う?貴女では絶対に私には勝てない。」


「言ってくれるわね、確かに私は弱いわ。でもね、女にもやらなきゃいけない時ってのがあるのよ!!」


「…現実を教えてあげる。覚悟だけじゃ埋まらない力の差を。」


 2人の女も構えながら睨み合った。

ヒューラvs東軍将軍オルバン

イズカンvs宰相ニールズ

ヴァルスvsバルガム

リシェルvsマレン

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